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38 クート君発射実験

 お兄様と教師の言い争い中、私はトコトコ歩いてるクート君を見つけました。使い魔…まあクート君はまだ本契約前なので仮契約ですが一度契約すれば魔物も人を襲わない(下手に手を出せば襲われます)ので学校内に限り、放し飼いを許されてます。クート君も他の生徒の使い魔に混ざっているかと思えば、一人…一匹だけで、上を見ながら歩いてました。何を見てるんでしょうね。尻尾をフリフリ…フリフリ………。


「きゃうん‼」


「つ~か~まえた‼」


 背後に居たアリシアさんが目を見開く程のスピードでかつクート君の反応する前に背後に回り込んで抱き付きました。

 モフモフですね。しかし何を見てたのでしょうか?上を見てみると…鳥?

 【遠視】を発動し、対象を【解析】するとグルメバードと言う鳥で魔物ですね。あの鳥は手を出さない限り人を襲いませんが美食家で、グルメバード自体も美味しいらしいです。クート君曰く、昔の同族に舌もとろける美味しさだと自慢されて、どうしても食べたかったとの事。もがくクート君から聞き出した私はピキーン‼と閃きました。これはクート君に実験に参加して貰う良い機会でしょう。


「そんなに欲しいの?」


「わふ!わふわふ」


「なら、私が捕まえるお手伝いしてあげる」


 私の顔を見ると、クート君が少し青褪めた気がしますが問答無用。心なしか少し後ろに下がってる気がします。

 私は取り出す物が持てる重さじゃないので宝物庫を出さないといけませんが、【身体強化】と【ブースト】で私の身体能力を上げ、【クイック・ドロー】を発動。取り出したのは2つの筒とリュック。それを戸惑うクート君に取り付ける。見た目はリュックを背負い、両サイドに金属製の2本の筒が付いた狼です。


「さあ、飛ぼうか」


「…ふわ」


 ここで私の警戒レーダーに反応アリ‼私の後方に敵を確認しました。他の生徒はお兄様と教師の口論を見ててお兄様と教師も言い争いでこっちを見てませんでしたがアリシアさんだけはこっちを見てた模様。物凄い形相で近づいてきてます。しかし私はお母様のもっと表情豊かにしなさいを教訓に覚えた笑顔を見せると立ち止まり震えだしました。チョロイ‼。


「眠りえ誘え、【スリープ】」


 惚けていたアリシアさんは碌に抵抗できず、その場に崩れ落ちて眠ってしまいました。


「チャンスは今。クート君、飛んだら姿勢制御なんて出来ないから絶対に捕獲するんだよ。ブースターが切れたら首を左に捻って。そしたら下りる分には何の問題も無いから」


「…………わふ」


 耳が垂れてヘタレてますが、気にしません。クート君をロケットのボディにするには強度に問題が出そうなので、立て‼のポーズにさせて【プロテクト】を掛ける。そしてついでに出したゴーグルをクート君につける。え?準備が良すぎって?勿論いずれクート君には飛んで貰う予定でした。だって私がやると怒られますし。

 これで即席、クート君ロケットが完成しました。ブースター部分は【フレイムブースター】と言う魔法を作り、それを魔道具化したもので簡易的なロケットブースターが出来ました。それの試作品の試験をクート君を使ってやろうと思います。

 唯のブースターなので自由には飛べず、まっすぐ飛ぶだけです。


「指し示せ、我が望むは魔弾の射手。百発百中の弾丸【着弾点予測】」


 気候等の影響を反映した着弾点や弾(クート君)のコースが私の目に映りました。これが空をクルクルと円を描くように飛んでるグルメバードと一致する少し前にクート君ミサイルを発射します。クート君は立ったままの姿勢でプルプルしてるがもう少し我慢です。私も発射に巻き込まれないように、【錬金】を発動し、設置型の盾を近くのアリシアさんの前に作り、私も一緒に盾の後ろに入る。ここはお兄様たちから少し離れてるので他の生徒やお兄様は大丈夫でしょう。

 私はクート君の魔道具の…と言うか私の作った魔道具の遠隔起動魔道具を持ってるので鳥が近くに来たらブースターを起動させるだけです。


「え…あれ?…お嬢様?って何してるんですか‼」


「ちょ‼」


 こんなに早く起きる魔法じゃ無いですよ‼。掛かれば一時間以上起きないのに、速攻で起きたアリシアさんは速攻で私を捕獲した。しかし、この瞬間、空の鳥が発射予定地点に入ったのでスイッチを押す。スイッチは取られると拙いので直ぐに【クイック・クローズ】で仕舞う。アリシアさんにスイッチの存在を知られる訳にはいかないのです。

 そして轟音をたてながら空に飛び出すクート君。クート君は轟音と恐怖で半泣き状態ですが、目はしっかりとグルメバードをロックオンしています。その心意気は良し‼。アリシアさんは口を開けたまま空を見てます。【飛翔】を使って飛ぶのは珍しくないけど火魔法を使って、それを推進力に飛ぶ方法は私もこの世界では聞いた事も無い。しかしこれでブースター部分に損傷が無ければ、実用化も近いです。


「……何してるんですか」


「クート君発射実験。飛んでるグルメバードを食べたいって言うから、お空の旅をプレゼントした…ついでに試作品の実験」


 ふふん。と胸を張る私に呆れるアリシアさん。額を抑えてます。

 線のように煙を吐き出しながら飛んでいくクート君。グルメバードを一瞬の交差で捕まえたようですが、そのまま空に飛んでいく。大体3000m位は飛べるので、そのまま空の彼方へ飛んでいきました。心なしかクート君の情けない声が聞こえるようです。少ししたらブースターの効果が止まり、落下が始まりました…あ‼どうやらパラシュートを出せたようです。首を思いっきり引けばパラシュートが開くよう細工しときました。


「ふむ、中々の出来だった。これは実用化も検討できるが、使い道をどうするか…」


 ロケットからバーニアに変えて…ゴーレムに乗せるか…ロマンを求めて有人ロボット的な物でも作るか…夢が広がりますね。いくつか試作品の候補を出しつつ私も研究モード。

 パラシュート自体も魔道具で私の居る位置に風を操って降下してきます。これも良い出来ですね。特に固形や液体燃料を使わずにそれらを再現できるこの世界は素晴らしいものだと改めて理解出来ました。この調子なら現在想像の域にある物も再現できそうです。携帯とか作れませんかね?…あったらお父様とお兄様から迷惑電話で疲れそうなので、作れても最後の方にしますが。私は今回の結果から思い浮かんだ魔道具をスケッチしていく。これから詳しい設計図に入るけど私は基本的に完成形から内部を作る。まあスケッチと全く同じにはならないけどアイデアとしてのスケッチなのでこれでいいのです。

 スケッチが終わる頃には無事クート君も着地に成功しました。パラシュート自体の出来は良いんですが安全性の為に大型化したのがめんどくさい結果になりました。クート君が下でもがいてます。これは指定した折りたたみ方で自動でリュック内に収納できるように改良しましょう。


「素晴らしい実験だったよ妹よ」


「流石お兄様、この素晴らしさを理解出来ましたか」


「後で私も飛ばしてくれ」


「安全性はそこまで考慮されてないよ。まあ私が近くに居れば最悪魔法で受け止めるけど」


「ならば問題ないな」


 わっはっはと笑うお兄様。はて?言い合いは終わったのでしょうか?周りを見渡せば何やら皆が私を見てます。教師も口を開けたままこっちを見てます。はしたない人ですね、これが教師だとは情けないと思わないのですか?

 再び警戒レーダーに感アリ‼。私は直観に従い横にスライドするように移動しました。そして私が居た場所、頭のあった場所を腕が空を切った。どうやら私の頭をアリシアさんが鷲掴みにしようとしたのでしょう。しかし何度も何度も頭を鷲掴みにされた私は驚異的な察知能力を獲得し回避すると言う偉業を…はい捕まりました。


「…国に帰ったらマダム・スミス様がお嬢様を待っているんでしょうね。きっと笑顔で待っててくれますよ。今度私から再教育の依頼を出しておきます。お嬢様の現状を知れば前回より厳しい教育を施してくれるはずです」


「卑怯者め」


「そうだな。アリシア、私の権限でそれは許さない。可哀そうだろ」


 ふふん。お兄様は私の味方でお父様も涙目で頼み込めば無しにしてくれます。勝機は今まさに私にあります。


「いえ、奥方様は乗り気でしたよ?これは決定事項でしょう。お嬢様には今一度再教育が必要です」


 ふむ、これは魔術師になった事で実現可能になった、あの件も考えないと…どっちにしてもマダム・スミスさんの再教育には間に合わない…詰みですか。仕方ない暫く時間はあるので、それまでに何かしらの…お母様も私を認める発明をして許してもらおう。美容に良い魔道具でも作れば許してくれるでしょうか?いくつか作って送りましょう。


「功績さえあれば……」


「こら、城のアホ貴族みたいな事を言うな」


「?」


「アイツらは爵位を剥奪された奴等だから…マネしてはいけない」


 そうだったのですか…確かに死んだ目をしてましたが、そういう事だったのですか。確かに真似をしてはいけないのでしょう…しかし‼私も彼等とそう変わらない気持ちなのです‼後が無いんです‼何か…何か必要なんです。マダム・スミスの拷問染みた再教育を回避する為に、平穏を守る為に、私は再教育を華麗に回避するしか無いんです。

 こうなれば『工房』を何処かに建造しなければ。今は最低限…まあ魔道具作りに必要なのは全部ありますが、もっとグレードの高い工作道具を作り私専用の工房を作り多くの魔道具を作りましょう。宰相さんも仕事がし易い魔道具を送りまくれば私に味方してくれるはずです…その結果、お父様が仕事漬けになるかもしれませんが、それは普段サボってる付けがまわって来ただけなので問題はありません。


「しかし、これで妹の件は納得できましたよね?うちの妹は元来の研究者だ。当然魔法や魔道具も秘密にするし、これはアーランド王国、国王陛下よりの勅命でもある。妹は将来王国に作られる魔法研究所に入る人材だからね。当然無理難題をして、妹から何かを奪えば当然国際問題になると思っていただきたい。それに魔術師は己の魔法を秘匿する事を国際法において保障されているのです。無理に聞き出そうとすれば先生の魔術師資格は剥奪されますよ」


「ぬぐ…しかし魔術師は魔法の発展を…」


「それは、その魔術師が許す範囲で公開する物です。決して強要してはいけません」


 魔法研究所ってお父様あれ冗談じゃ無かったのですね。前にそんな事を言ってた事がありましたが、お母様が許さないだろうな~と思ってました。このお兄様の発言でお父様の好感度ゲージが限界突破しました。これは帰ったら抱き付いても良いと思えるほどです。しかし勅命は聞いてない。お兄様が公言してる以上、勅命はあるのでしょう。後で無いとか言われたらガチでヤバい事です。伯爵家の長男だろうが王太子だろうが、王の勅命を勝手に語る事は許されないからです。当然事後承諾も許されません。

 まあ魔法も魔道具も見せるなら良い。逆にそれで盗めるのならその程度の技術ですし、魔法は兎も角魔道具は特殊な術式を混ぜてるので解析などさせません。

 しかし欲しければ作れば良いのに…私だって一から魔道具も魔法も作ったのですから多少なりとも魔法とか魔道具とか改良すればいいのにね。色々と大変な人なんでしょうね。



 その頃アーランド王宮


「ぬおおおおおおおおお。何か知らないが俺の時代が来た――――――‼」


 城にある塔のてっぺんで国王が謎の雄叫びをあげていた。

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