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37 授業

 初めての授業。初めての教室。何か初めて、と言うか馴染みが無い感じです。前世の影響か、色々と既視感が有る事はあったのですが余りそう言う感じがしません。前世の私が何者なのか?少し興味がある事ですね。知識はあれど教室に既視感が無い。何処かで独学で学んだのでしょうか?まあ貴族科なので馴染みが無いのは仕方ないのでしょう。

 教室は日本の教室と変わりません。大学の講堂のような施設もありますが基本的には20~30人で一つの教室でここで授業を受ける事が多いようです。今日の最初の授業はダンスだそうで、体育館的な場所に移動してます。更衣室で簡易的なドレスに着替えてからの移動ですが周りを見れば無駄に豪華なドレスを着た幼女を散見します。子供の頃から贅沢させるのは余り良くないと思うんですけどね。

 ダンスは同じクラスの男子と軽く踊ってみよう。と言う事で私も今日初めて会った、何処かの子爵家の長男とダンスしてます。結構面白いですよ。


「あた」


「ご、ごめんさない‼」


「気にしないで」


 まあ割と足を踏まれる事が唯一の欠点ですね。バランスも良い方ではないので足を踏まれて一度2人で転びましたし。周りも似たり寄ったりでこれが年相応なのでしょうね。

 マダム・スミスの拷問染みた教育を終えてる私は足を踏む事などありませんが、他の生徒は慣れてい無いようでちょくちょく足を踏んで止まってるペアも居ます。

 納得できませんよ‼何であんな厳しい教育をこの歳で受けたんですか‼どう考えても早いでしょう。私だけ…少し落ち込みます。


「その…ごめんね。アリスちゃん」


「気にしてませんよ」


 どうやら私が怒ってると勘違いされ謝られました。しかしこの歳でも皆貴族の子供。何処かしこで誰が上手いとかあれはあそこの貴族の息子だとか小さい社交場と化しています。幼くても彼等は貴族なのでしょう。私ですか?別に何処の貴族だろうが悪意を持って接してこなければ構いませんよ。

 例えば隅の方で私とアリシアさんを見てコソコソ話してる――亜人を連れてて恥ずかしく無いのか。とか言ってる人はお断りです。アリシアさんがこっちを食い入るように見て無ければ魔法で水を落とすのに…恐らくそれを感じ取って余計な事をするなと無言の圧力を加えてるのでしょう。


「それにしてもアリスちゃんってダンス上手いんだね」


「私の家が少し厳しいだけです。慣れればこれくらいは誰でも出来ますよ」


「僕も頑張るよ」


 子供ってどうしてこう可愛いのでしょうね。と同じ歳なのに感じる私は変なのでしょうか?そう言えば同じ歳の貴族の子供って何故かアーランドに居ないんですよね。貴族級以下なら居るけど何故か同い年に生まれた子供は居ないらしく私も同じ歳の子供と遊んだ事がありません。年上か年下のどっちかで少し気を使うんです。

 行き成りで少し顔が熱いですが別に恋愛感情はありませんよ。私から見れば皆年下のような物ですからね。私はダンディーなおじ様の方が良いです。大人の魅力と言うのでしょうか?かっこよく感じます(筋肉は要らない)。

 そんな感じでダンスの授業は終了。私は要警戒者数人を心の中でリストアップしこのクラスの大まかな勢力図も把握しました。要警戒者とはなるべく関わらないようにしましょう。明らかに私を見下した視線で見てました。

 その後は大まかな大陸の歴史ですが、私は大陸史と言う全30巻の分厚い本を読破してるので新しい事は何もありませんでした。


「うう、立派にダンス出来てましたよお嬢様」


「何で泣いてるの?」


 休み時間にアリシアさんの所に行ったらアリシアさんが泣いていた。


「最近のお嬢様は自由気ままに奔放し過ぎだったんですよ~優雅さよりも好奇心の塊じゃないですか。もうこのままずっと猫かぶっててください」


 失敬だな。私だってやる時はやるんですよ。ただ私生活まで優雅に暮らすと疲れてふにゃぁってなるからやらないだけです。

 次から幼等科を離れ特進クラスに移動です。あそこはおおよそ50人程のクラスで学年は関係ないそうです。なので私もお兄様と同じクラスになるのですが子供を混ぜて大丈夫なのでしょうか?基礎とか…関係ないのでしょうね。有能な人材の卵は年齢など関係なく、多くの人と関わるべきだとか何とか言ってましたが眠くなってたので殆ど聞いてませんでした。

 クラスの扉を開けると………私は無言で扉を閉め元来た道を戻ろうとしました。


「帰る」


「ちょ~と待った‼」


 光速で出現したお兄様に捕まりました。バタバタと暴れて抵抗するも、私の身体能力では大した抵抗も出来ずに教室に連れ込まれました。

 再び中に入るとやはり生徒全員がこっちを見てました。全員が私の2倍は歳のある人達で一部凄い形相で見てます。決闘に敗れたAも居ましたが、彼は私を見ると目を逸らしました。彼だけ孤立してますが決闘に負けた人はあんな感じだそうです。


「うちの妹だ。苛めると怒るかなら」


 お兄様がそう言うと、睨みつけていた人達が目を逸らした。どうやらお兄様はクラス内でかっこたる立場を作ってるようです。

 そして始まる授業。まずは自己紹介。Aの名前を初めて?知りましたが興味が無いのでどうでも良い。今年は彼と私の2人だけのようで例年に比べて少ないそうです。

 そして教師の男の人は先ほどから値踏みするような、ねっとりとした視線を向けてきますが私は何かしたのでしょうか?流石に気持ち悪い視線です。


「彼女は魔術師なので君達より魔法は優れている。彼女に負けないように努力すると良い」


 ああ、魔法の実力が全部な人なんですね。別に優れているとかどうでも良いんですけど、他の人を煽るような事は言わないで欲しいです。何で私の関係の無いところで敵を作らなきゃいけないんですか。


「アリス・フルールです。若輩者ですがよろしくお願いします」


 取りあえず頭を下げる。威張る必要など無いのです。何人か驚いてるようですが、私は平穏に暮らしたいので頭くらい平気で下げますよ。どっかのアホとは違うのです。

 授業は最初に大陸史。これは幼等科より結構細かいのですが、歴史は国毎に勝手な編纂をされる事が多いので所々生徒がそれは違うと声を荒げますが教師は無視。特に帝国貴族の子供が声を荒げる事が多いです。帝国の歴史は侵略の歴史なので真実をかなり捻じ曲げてるのです。それに比べてこの国の歴史は客観的に見た歴史のようで恣意的な改ざんは許されないとの事。


「アリス君、これを解いてみたまえ」


 教師の人はニヤニヤしながら歴史の問題を私に解かせようとする。それは大陸史でもかなりマイナーな部分で私も大陸史を全部読んでなければ答えれないでしょう。現に生徒の殆どが首を傾げてます。


「はい」


 私は覚えてるので、その答えと見解を黒板に書き込んで席に戻りました。予習みたいでそこそこ楽しめます。


「……正解だ」


 何故か苦虫を噛み潰したような顔で言われました。所謂苛めでしょうか?残念ですが歴史系は大好物なので読んだ内容は殆ど覚えてます。この程度で満足する人ならもっと難しい問題を返してやる事も出来ますよ。

 何故かお兄様が近くでドヤ顔してますが私は関係ありません。あんなだらしない顔をしてる人とは関係ありません。

 授業も終わり休み時間になりました。


「ところで何であんな所を覚えたんだ?本にも余り乗って無いぞ」


「大陸史って本を読んでたら載ってた」


「あれを読み切ったのか…私には無理だった」


 まあお兄様は読書家ではありませんからね。しかし何故いきなり目を付けられたのですか?いきなり魔術師になったのが気に入らなかったのでしょうが、あれは私関係ないです。私も寝耳に水ですから‼


「ちなみに今読んでる本は?歴史系で」


「セルニア王国興亡記」


 1000年前の国の歴史ですね。特に目立った産業も無ければ目立つ英雄が居る訳でも無い自然に出来て滅びた国の歴史です。


「渋いな」


 お兄様も名前くらいは知ってるようです。まあマイナーな国ですね。普通なら見ないでしょうけど、目についたので読んでます。そこそこ勉強になりますよ。目立った事は無いようですが、政策のバランスは評価できます。

 次は魔法実技です。特進クラスはどんな形でも魔法が使える生徒しか居ないので魔法実技、特に実践的な魔法を学びます。私も魔法は好きなので目に映る魔法全てを解析して覚えてますね。解析に特化させた魔法は割と簡単に作れたので視れば大体使えます。


「魔法を使った戦闘は諸君も将来体験するだろう。今から慣れると言う事は将来の危険を回避する手段を得ると言う事だ。最後に役立つのは体だが、魔法が有れば最悪の事態を回避出来る可能性を上がる。魔法が使える者は的に当てるように。魔力剣を使える者は武器を取り的を攻撃しなさい。的は魔法防御を備えた素材で出来ているから手加減は要らない」


 私は魔法が使えるので的に当ててるのですが…何やら他の生徒と的が違う。他の生徒に壊せてるので同じくらいの威力で当ててるのにヒビの一つも入らない。

 なので解析を発動し的を解析する。結果は魔法防御が5倍、素材の強度もアダマンタイト並となってました。嫌がらせか‼


「他の生徒はこれくらい壊せてるぞ、それでも魔術師か?」


「…」


 少し怒りました。私は魔力を高める。すると私の周りで魔力が荒れ始めた。別にキレてませんよ。あの的は私の中に眠る闘争本能を呼び覚ますに相応しい的だと言うだけです。


「術式解凍【白焔】【フレイム・バレット】融合。【白炎弾】装填」


 私の前に5つの白い焔が出現しました。【白焔】は中級魔法。それを弾丸サイズまで圧縮しリボルバーのように手の周りを回ってる。そして私が装填と命じると1つが指先に止まった。


「ショット」


 打ち出された白い焔の弾丸は的を貫く。しかし完全には破壊できない。それほどの強度だった。しかし残りの4発を同じ所に打ち込んだ結果、的はドロドロに溶けていた。 


「壊れました?」


 壊れたと言うより溶けましたね。何で皆下らない嫌がらせをしてくるんですか?しまいには登校拒否して図書館に引きこもりますよ。


「…よろしい。それとその術式はどうなっている?」


「術式の秘匿は魔法使いの権利ですが」


「っく!学生が下らない事を言うな‼」


 教師がとたんに怒り出した。詠唱保持は私独自の方法ですし詠唱の少なさは、私の努力の結晶です。知らない人に教える気はありませんよ。まあお父様に頼まれた場合、アーランド関係者に教えると限定してなら良いですけど。

 しかしこのくらいで怒られるとは思いませんでした。魔法とは本来秘匿技術ですから、市場に出回る魔道書に載ってる魔法が全てじゃないんです。各魔術師には流派もあり流派毎に秘匿してる魔法も多いのです。


「先生。うちの妹に無理強いしないでいただきたい」


 いつの間にか現れたお兄様が私を背後に隠す。的はどうしたのかと見れば粉々になっていました。流石お兄様、頼りになりますね。私はお兄様の背後から顔だけ出して、みますが、お兄様の背中に戻されました。どうやら見せたくないようです。


「君の妹は何か不正を行ってこのクラスに来たのではないか?我等はそれを疑っている。彼女は誰かの手を借りて魔法を使ったように偽装したりしたのでは?」


「あり得ませんな。妹の才能はこの国の国王陛下が保障してくださっている。さっきも見たでしょう?普通に魔法も使ってますし学力も問題ない。」


 ふむ。どうやら私が特進クラスに居るのも魔術師なのも何か不正を行ってなったのではないかと疑われてるのでしょう。急に怒りも引っ込みましたよ、だってこの歳で魔法が使えるのって珍しいですからね。先天的魔法保持者とか居ますが、基本的には制御が出来ない年齢なので不審に思われるのでしょう。流石に私が異端の部類なので、これは仕方ない事なのでしょう。

 ・・・・・・・・・・・・・・・あ‼クート君見っけ‼

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