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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突! アリスティアVSシャハール王国 そして不死鳥のケモナー連合編
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339 同志よ。処刑されるとは情けない

  これはマジでどうしようか……。

 ここで暴れるの? アウェー過ぎる。私は幾つものプランを同時に修正する。こうなったら暗殺団の始末は諦めよう。後々命を狙って来るだろうが、そんなのは前世でも同じ事だった。もう慣れている。

 第一暗殺するようなアホの思考なんて経験則で理解しているのだ。対処法も簡単だ。

 前世同様洗脳でもして送り返せばいずれは解決できるのだ。

 さて、暫く目の前のアホの国のアホな立地の王都を眺めていたが、王都が移動してくれると言う奇跡は起こらなかった。何てノリの悪い王都なのだろう。

 私もアーランドの王都が飛んでカバディする様にしたいとお兄様に伝えた事が有るが、何故か理解されなかった。これが天才故の孤独と言う奴か。誰も浪漫を理解しないのが辛い。


「……じゃあ行こうか」


 私は腕輪を放棄し、狐の仮面とローブを装備している。これで汚染魔力を遮断出来るのだ。

 ちょっと探査魔法を地下に撃ちこんだが、古代兵器は地下600mに埋まっているくらいしか解らなかった。

 コイツは本格的に放置しよう。無理だ。何か東京ドーム10個分くらいの建造物が有る。うん私知らない。古代兵器何て興味ない。どうせ碌な代物じゃない。

 だから王都に護衛と入ろうと思ったのだが……


「「「「どうした? 」」」」


「いや、お前達何時までエクスペンダブ○ズしてるの? 」


「変身系の魔法が発動しないんだよね。つまり、消えるまで私達はマッチョ軍団だ」


 くっそ鬱陶しい軍団が視界の邪魔をする。今すぐに爆破したいのだが、何故か勝てるイメージが浮かばない。銃を向けた瞬間、蒸気抜きされそうだ。手にパイプを持ってるシュワが居るからな。奴は間違いなく私の命を狙っているだろう。まあ分身のほぼ全てが私を殺そうと考えてるけど。


「良し、お前達は別行動だ。時が来たらその見た目の通りに暴れるんだ」


「爆弾は何個まで使って良い? 」


「地下の古代兵器が爆散しなければ幾らでも使って良い。但し、魔導具型の爆弾は駄目」


「了解」


 魔導兵器を刺激したくないからね。まあ、一つ止めれる可能性のある方法を知っているんだけどね。でも古代魔法王朝製の魔導兵器に効く可能性は低い。まあ、時が来たら試すけどね。切り札だ。

 さて、エクスペンダブ○ズは近衛が持ってた偽造の市民カードで堂々と王都に入っていったが、私達は無理だ。何せアリシアさんが居るし、私は狐の仮面を付けている。ケモナー罪で死刑にされかねない。

 なので王都に潜入出来る地下の坑道から王都に入った。

 何で坑道が有るのかって? そりゃアーランドの工作員がせっせと掘ったからだよ。掘った工作員の1人が私の近衛だ。随分出世したね。

 アーランド王国とシャハール王国は密約で不干渉を約束したが、それを信じる程アーランド王国人はお人好しでは無い。裏切った時の保険は用意されていた。

 警戒はしていたのだ。最も帝国戦前に暗部は帝国と皇国に大打撃を受けて機能不全を起こしていた。動く可能性は低いとシャハール王国に派遣されていた暗部は一部が帝国や皇国に送られ、残りは暗部から情報省へ組織が拡大した事から教員として本国に戻っていた。

 しかし、幸運な事に坑道は残されていた。上手く隠していた様だ。

 そして、坑道を管理していた工作員も残っている。こうして私達は普通に王都に潜入に成功した。


「スンスン……欲望と憎悪の臭いがする。前世を思い出すね」


 王都に入った私の感想である。

 その言葉を聞いたアリシアさんが何故か拓斗の胸ぐらを掴む。


「おい貴様、姫様の前世に何が有った」


「何故俺が怒られるんだ……」


 理不尽な事を言われている様だ。


「いや、前世だと私を貶めるか利用する人間ばかりだったし」


「君も敵を増やす性格だったしね」


「あの頃は若かった」


 あの頃は抜き身の刃の様な性格だった。今思えば臆病だったのだろう。だから敵に過剰に反応して排除していた。

 うん、敵ばかりだったのも頷けるね。寧ろ少数でも仲間が居た事が奇跡だった。それに気がつくのが遅すぎたな……。

 ちょっと前世のパパの知り合いの小父さん達を思い出したが、思い出した顔が般若だったので、頭を振って考えを切り替えた。そう言えば絶対怒ってるよ。あの人達。


「さて、まずはケモナー探しだけど……」


「探す手間が省けたようだね」


 どうにも王都が騒がしいと思ったら、広場で同志ケモナーが処刑される様だ。

 そして処刑されるのは灼熱の太陽の副首領カシム……おい!

 何で捕まってるの? お前死んだら私の計画が瓦解しちゃうじゃん!

 どうせ地下に潜ってるだろうって探すのが一番難しいと思ったら何やってるのさ。

 しかも斧が振り下ろされる直前だ。何か叫んでいるが、そんな事は如何でも良い。

 今行くぞ同志ケモナー!


「術式解凍【短距離転移】」


 私は一瞬で処刑台に跳び、振り下ろされた斧を受け止めた。














 カシム視点


「聞け! 愚かなるテロリスト共よ! 貴様らもここまでだ! 」


 私は捕まった。どうやら私の抵抗はこれまでなのだろう。

 だが、終わるのは私だけだ。


「同志達よ。俺を助けるな! これはお前達をおびき寄せる罠だ! 」


「黙れ! 」


 処刑人が容赦なく私を棒で殴る。

 そうだ。これは見せしめであり、囮だ。

 私を餌に同志をおびき寄せ捕らえる。見捨てられても灼熱の太陽はお終いだろう。

 兄であった首領を失った灼熱の太陽は組織が瓦解寸前だ。多くの幹部も失った。ここで私が死ねば組織も死ぬ。

 だが、だが! 組織が死んでも同志が居る限り我等は終わらぬ。我等の抵抗はまだ続く!


「聞け同志諸君! これは終わりじゃない。我等の抵抗に終わりは無い! 」


「黙らぬか! 」


「苦汁を噛みしめろ。恥辱に塗れろ。それでも耐えよ。

 だが忘れるな。我等は決して孤独ではない。志を同じくする同志は世界中に居る。彼等が居る限り、我等は決して孤独ではない!

 地下に潜れ。復讐の機会を伺い、牙を研ぎ澄ませ。我等の抵抗に終わりは無い! 」


 私の命はここで終わるべきなのだ。ここで私が死ねば灼熱の太陽は終わる。だが、生き残った同志は憎悪を胸に再び地下に潜むだろう。

 済まない兄上。貴方の残した灼熱の太陽を終わらせてしまった。貴方の憎悪を受け継げなかった。かつて8000人のケモナー兵を有した大陸最大にして最強のケモナー勢力を終わらせてしまった。


「イスハーク! 小賢しい貴様の思い通りになると思うなよ。何時か必ず貴様も報いを受けるだろう。先に地獄で待っているぞ! 」


 バルコニーの上から私を見下ろす下種野郎を睨みながら憎悪を吐く。兄を奪った怨敵であり、彼自身もまた兄である。

 だが、尊敬した兄ではない。寧ろ下種の極みだ。

 出来れば亡き兄。灼熱の太陽の首領にして第一王子アラム。(アフマドは偽名)のたむけとして討ち取りたかったが、それももはや敵わない願いだ。

 私の言葉が癪に障ったらしく、バルコニーから怒声が響く。ざまあ見ろだ。

 そして、イスハークの言葉で私の処刑が開始された。馬鹿な奴だ。怒りで囮だと言う事すら忘れたか。


「去らばだ。同志諸君。君達との抵抗は私の誉だった……」


「死ぬには早すぎるよ同志? 」


 ガチンと鈍い音が響き渡ると同時に幼い声が私の耳に響く。

 顔を上げた私の眼には狐と言う動物の様な仮面とローブを纏った……子供? が、斧を片手で受け止めていた。

 その子供? の眼を見た瞬間、私の中に宿ったのは怒りの焔だった。


「何故だ! 何故助けた! 」


 その子供が誰なのかは解らない。声も知らない者の声だ。

 だが、私には解る。彼女は同志ケモナーだ。物凄いモフモフ力を纏った同志だった。















 アリスティア視点


 ムフー処刑阻止が間に合って良かったよ。

 本当にギリギリだった。少しでも躊躇っていたら間に合わなかっただろう。


「何者だ! 」


 処刑人が力の限り斧を押し込もうとするが、この程度の男の腕力に負ける訳が無い。

 闘志が闘気が足りない! アーランドの騎士なら私を真っ二つにする事も可能な程度の防御魔法すら破れない。

 温い、温すぎる。この程度か!


「振動破砕」


 私の声をトリガーにガントレットから掴んでいた斧に振動が伝わり、一瞬で処刑人の腕の骨毎砕け散る。

 んーちょっと反応が鈍いなぁ。まだ調整が必要だ。具体的には認識にコンマ2秒のズレが有る。

 実はこのガントレットっぽい物は、正確にはガントレットでは無く、私専用魔導甲冑の腕部分だ。

 更に言えば魔導甲冑では無く拘束具なのだが、王女の正式装備が拘束具では沽券に関わるので魔導甲冑と呼ぶ。因みにロールアウトしたのだが、不具合だけで500も有るので、改修中だ。と言うか私の魔力に耐えれるのが5分とかあり得ん。

 因みに他に使ったのは身体強化の魔法。ぶっちゃけカスみたいな魔法だ。私の練度だとアーランドの騎士なら余裕で真っ二つであるので、実は内心ビビってた。

 しかし、振り下ろされる斧が余りに遅かったので直ぐに怖くなくなった……いや別に最初から怖くなかったよ。でもちょっと刃物が目の前に来てるってゾワゾワするじゃん? そんな感じだ。王女たる者、振り下ろされる斧程度に怯えてはいけないのだ。

 曾祖母のシンシアナは帝国の将軍の戦斧を指2本で受け止めて、そのまま砕いた程である。

 私も同様の事が出来ないと王女の沽券に問題が出ると思ってるが、何故か周りは「流石にそこまでは……」「比較対象が間違ってます! 」と反対気味だ。解せぬ。


「失せろ禿げマッチョ」


 私の回し蹴りで処刑人を処刑台から蹴り落とす。全く、日差しが反射して眩しんだよ。何で全身に油塗ってるの? 何でブーメランパンツみたいな物しか履いてないの?  馬鹿なの?

 そして周囲を見る。おおう……全身黒ずくめ集団が現れた。観衆に紛れ込んでたか。

  これが暗殺者か……お前等馬鹿か! 何で目立つ格好してるんだよ!

 何だそのセンスの欠片も無いダサい仮面は! 何だそのお前等の性根みたいに曲がった剣は! と言うか毒塗ってるじゃん。垂れてるって。もっと薄く塗ってどうぞ。ちょっと手に掛かってたので、そこを狙って袖口からニードルガン撃ちこんだら、毒で倒れた。もう駄目だコイツ等。

 暗殺者ってさぁ……普通奇襲とかで相手倒す奴じゃん? 正面戦闘なんて騎士の仕事だよ?


「取り敢えず挨拶は大事って古事記にも書いてあるらしいし、挨拶しておくか」


 私は宝物庫から手りゅう弾を取り出すと、バルコニーに投擲。盛大な爆発音と共に「へ、陛下ぁ!」と言う叫び声が響く。ッチ殺り損ねた。

 まあ、良いだろう。今回のは入国の挨拶の様な物だ。それに貴人が防御魔法の使い手か魔導具を常備してるのは当然で、あの手りゅう弾は普通の物だから突破は無理だ。

 何故投げたって? そりゃ騎士の相手をしたくないからだよ。だって絶対強いじゃん。

 私は王城に居る時はよく演習場に行ってるから詳しいんだ。この世界の騎士と呼ばれる人間は鉄の剣で岩を真っ二つにするし、訓練が殺し合いにしか見えなかったりとヤバい人達なのだ。

 なので連中に国王の救助と護衛の仕事に専念させる。この国の場合はそっちが優先される筈だ。

 尚、アーランドの国王に手りゅう弾を投げると国王を放置して犯人を殺しに来る模様。お父様は手りゅう弾程度じゃ傷つかないから仕方ないね。

 私は身体強化を続けたままにカシムの拘束具を破壊して肩に担ぐと、処刑台を飛び降りる。処刑台の下に居た暗殺団に包囲された。


「諦めろ」


 無駄口は叩かない有能タイプの様だ。但しダサい恰好である。


「この程度の手勢で私を捕まえる? 冗談も程々にした方がいい」


 ざっと数は50人。アーランド騎士でも50人じゃ、逃げる私を捕縛するのは不可能だ。100人は使う。


「ならば死ね」


「お前達がね」


 私の命令を受けたシャドウウルフが影を伸ばす。良い日差しだ。影もしっかり出ている。一瞬で暗殺団の全員が影を拘束されて動きを止める。


「殺せ」


 私の命令一つで包囲していた暗殺団の暗殺者達の首が盛大に回り息絶える。

 うん、シャドウウルフが災害級なのもよく分かる強さだ。最も影を用いた戦闘以外はそれ程強くないけど。

 それ程と言うかかなり弱い。特殊能力に特化した魔物なのだ。だが、その影魔法だけで災害級と呼ばれるだけ厄介な魔物である。

 クート君は一体どうやって捕まえてきたんだろうか。

 取り敢えず私は大声で叫ぶ。


「同志達よ、ここは私が預からせてもらう。同志は治療の上に君達に無事に返却しよう! 」


 返事はどうせ帰ってこない。しかし、同志の気配が少しずつ離れていくのを感じる。どうやら向こうさんも私が同志だと理解出来たのだろう。

 私はカシムにガスマスクを着け、自分にも付けると、催涙ガス手りゅう弾を30個程ばら撒いて広場を大混乱に陥らせると屋根に飛び乗り、逃げ出すのだった。














「「「「………」」」」


「許して……」


 転移で拠点の一つに戻ると、待っていたのは般若と化した護衛とアリシアさんだった。拓斗は私の性格に慣れているので呆れた顔をしている。


「分かってますよね? 」


「うん分かってるよ? 」


 何を怒ってるって? そりゃ私が追跡されて居場所がバレている事だ。うん、戦闘自体は正直弱そうって感じだけど、本当に腕は良い連中の様だ。しっかり距離を取られて追跡された上に荷物カシムが居るので振り切れなかった。


「転移魔法で普通に振り切れたでしょうに……」


「荷物有るし、自分の居場所が良く分からないから難しいかな? 」


 いや、この王都だと転移魔法もしんどいんだよ。視界内の転移なら問題ないが、視界外への転移はちょっと面倒。出来ないとは言わないけど。


「このままだと突入してきますよ」


「丁度良い。連中を捕縛して爆弾にする予定だったんだ」


 別に無策で追けられた訳じゃ無い。連中には役割が有るのだ。


「と言う訳で、なるべく殺さないでね? 手の一本くらいなら無くても構わないけど、自分で帰って貰う予定だから足とか切り落とさないでね? 」


「ハア、姫様の近衛も大変だなぁ……」


 近衛の人達も呆れた顔で剣を抜く。しかし、抜いた瞬間に顔つきが変わる。

 彼等は魔導甲冑装備ではないが、魔導具モリモリで強化しているので普通に勝利するだろう。

 私は取り敢えず休憩しろって言われた。これくらいの襲撃なら肩慣らし程度にはなるらしい。

 アリシアさんも問題ないって言っているので、私とカシムと拓斗はお茶会の開催だ。拓斗は最後の壁扱いされている。いや、護衛突破して来たら普通に戦うからね?

 何でお茶会?


「我等にも出番くださいよ……近衛ですよ? 」


「何時も護衛対象が先陣切るって間違ってますよ」


「でもアーランドじゃ常識だよ? 」


 近衛の言葉に反論してみる。

 いや、近衛に守られる王族ってそれ程多くないよ。もっぱら露払いだよ?

 駄目らしい。最近は近衛が王族を護るのがブームらしい。解せぬ。

 しょんぼりしながら気絶してるカシムを治療する事にした。そして、同時に窓をけ破って黒ずくめ集団が入って来た……と同時に「ドアから入って来い! 」退出した。

 うん、飛び込んだ瞬間に近衛の膝蹴りでお外に飛んでったのだった。

Q 騎士って人外なの?

A アーランドだけです。

Q 訓練ガチ過ぎない?

A アーランド騎士「姫様が治療してくれるので内臓破裂くらいへーきへーき」

 アリスティア「また怪我してる……仕方ないなぁもう……」

Q アーランド騎士の弱点無いの?

A 極端な精鋭主義なので数が少ない&消耗率が高い。

Q 近衛の役割間違ってない?

A アーランドの王族は英雄である事を強いられた一族なので、守られるだけの存在ではない。寧ろ守る側。近衛は先陣を切る王族の露払いと言う立ち位置です。

 尚、王族が絶滅危惧種なので、騎士は本来の近衛の仕事がしたい模様。国民が脳筋ならば王族も脳筋である。

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