337 古代魔法王朝の負の遺産
意識が戻った時、私達は砂漠の外に居た。
「どれぐらい寝てた? 」
「10分程です姫様。それと、精霊様によると、この先は姫様は入れないそうです」
「なん……だと……」
まさかの入国拒否! 何で!
――アリス、その先は魔力が汚染されてるから危ないぞ――
――アリスは中途半端だから毒だよ――
――人間辞めるか、精霊女王辞めないと危険だ――
――古代の遺産じゃー! 絶賛浄化中? 後20億年くらいで浄化が終わるよ――
――遺産が絶賛稼働中だしねぇ。私達も近寄れないから対症療法しか取れないし――
――と言うか上位精霊じゃないと精霊でもキツイ場所だ。何でこんな所に行くんだよ――
話を聞くと、古代魔法王朝が邪神戦の際に使った魔導兵器が今も絶賛稼働中らしく、魔力汚染を続けてるらしい。因みに砂漠の下に埋まってるんだとか。
シャハール王国が立地的に砂漠化はおかしいと思ってたら、これが原因か。
そして私は自然の魔力を人よりも取り込み易いのと、魂が精霊王の力を取り込んでいる関係で人と精霊との間に位置する状態で過剰に拒絶反応を起こすらしい。
と言うか、放置すると後20億年はこのままなのか……なんてもんを作ったんだ。
いや、原理は解る。と言うか元々対邪神用の兵器じゃない。これは対精霊用の兵器だ。
この魔導兵器が起こした魔力汚染の環境下では上位以下の精霊は活動出来ない。どうやら古代魔法王朝は精霊からの脱却を目指していたらしい。
精霊王の記憶を持つ私からしたらアホな連中だ。そしてこの手の事を考えるアホがこの世界では定期的に湧く。そして滅ぼされる。
そもそも、精霊王はこの世界の管理者であり、全ての生物は生存する事を許されている側だ。闘って勝てる相手じゃない。
そして精霊王は基本的に星を滅ぼさない限り人間のありように口出ししないのだ。君臨すれども統治せずの様な感じである。脱却以前に言う程人間を管理していないのだ。
最低限のルールさえ守れば何も言って来ない。そして、その最低限のルール違反は人間の生存に直結するのだ。別に敵対する理由ないだろうと言いたい。
因みに星の核であるスター・コアに手を出すと、文明を滅ぼされるぞ。実際月の月面人類はそれで滅んだ。
私もスター・コアに手を出そうとしているが、精霊女王だし大丈夫でしょ。精霊王が目覚めたら滅茶苦茶怒られそうな気がするけど、後1万年は世界樹の下で死んでそうだしヘーキヘーキ。一応将来使ったスター・コアは死ぬ前に精霊王のそばに封印しておこう。邪神戦に使うだけで、人類が使うには過ぎたる代物だ。
後、もっと早く教えて欲しかったが、精霊に国名言った処で覚えてないし、この場所に来たことが無いので直前で気がついたらしい。
何と言うか、砂漠の外と中で全然気配が違う。中に入らないと薄っすらとしか感知出来ない。こりゃ精霊の結界だな。砂漠が結界外に広がらない様にしてるせいで判断が遅れたのだろう。
「うー頭痛い。全く古代人も碌な事をしない」
「姫様だけ国にお戻りください」
アリシアさんが私に苦言をする。どうやらこの国は私の天敵らしい。国が敵なら国土も敵だ。と言うか無策で突入すると普通に死ねる。
「絶対嫌。拓斗結界張って。ちょっと魔導具作るけど、魔力でシャハール王国側に察知される可能性が有る。無いとは思うけどね」
この国の魔法技術は低い。そりゃそうだ。魔導兵器のせいで魔力が汚染されている。この地で生まれ育った魔法使いは慣れているのだろうが、他国出身の魔法使いには居心地が悪いだろうし、魔法の発動や制御にも悪影響が出ている筈だ。
成程、こう言う事情で生き残ったのか。そりゃ帝国も後回しにする訳だ。
取り敢えず、拓斗が魔力を隠す結界を張り、魔導具開発。
要は自然魔力が汚染されていて、それを取り込むと私が拒絶反応を起こすのだ。なら周囲の自然魔力を完全に遮断する魔導具が有れば良い。
対処法は簡単だ。但し、精霊の場合は基本的に難しいだろう。彼等にとっては呼吸の様な物だ。生存に直結する。
但し上位クラスの精霊は何とか耐えれるらしい。但し、力が激減する。この国は、この世界でも珍しい精霊の加護が殆ど無い国なのだ。そりゃ砂漠化も改善されない訳だよ。本来なら精霊は砂漠を嫌うからね。
命を愛する精霊は殆ど命の宿らない砂漠を無意識で嫌い、緑地化してしまうのだ。砂漠にも生命は有るんだけどなぁ。他に比べると少ないのが不満なんだろう。
「良し完成。但し、この国では私の力も制限が入る」
「それって大丈夫なのか? いや、俺や近衛の人も居るが、計画より君の護衛を増やすべきだ」
「駄目だよ拓斗。それじゃ計画に悪影響が出る。
それに制限されるって言っても、魔力の回復量が常人の10分の1になって魔法の制御に難が有るだけだし」
「魔法使いにとって致命的ですよ姫様! 」
魔法使いは自身で生み出した魔力と自然の魔力を混ぜ合わせる形で取り込む事で魔力を回復させる。
自分自身で発せられる魔力はそれ程多くは無い。
そして自然の魔力は元々人の魔力と性質が違う為、自身の魔力と混ぜ合わせる事で自分に害の無い様に取り込むのだ。
私の場合は精霊王の力で自然の魔力を掌握し、無理やり取り込む事が出来るが、それは人の体には猛毒を取り込むのに等しく、そのせいで倒れやすかった。まあ、これまでは精霊王の力が壊れていたせいで、制御出来なかったからね。
なので、それも封印だ。
因みにリリーの吸魔の魔眼は自然魔力の吸収と自身との魔力との混合を効果的に行える物だ。自然魔力をそのまま取り込む物じゃ無い。
そして魔法制御だが、特にコントロールが難しくなる。実は魔法は魔力で照準を定めるのだ。私みたいに魔力の見える人には魔法のルートが見える。
そのルートを魔法が通る。無論爆裂系の様にルート以外にも被害を与える魔法は多いが、基本的に魔法の通る道を作るのだ。
これをしないと、見当違いの場所に魔法が飛んでいく。これも出来ない。
まあ、オートでは無く、手動で撃ちこめば良いだけの話だ。面倒だけど。
「話を聞く限り、かなり制限されている様に思えるけど」
「魔力の制限なんて問題ないよ。基本的に使い切れる程魔力量が少なくないし」
私の魔力量は膨大だ。回復量が落ちても問題ない。それに回復したければポーションも有るし、最悪宝物庫に有る魔導炉から魔力を取り込むので実質無意味だ。
精霊に関しても動きが阻害されるだけで、私から魔力供給すれば無視できる。でなければ、この国に精霊は存在しないだろう。そして私の視界には砂漠を漂う精霊が見えている。結構疲れてるな。ミイラみたいになってるよ。働き過ぎている様だ。
因みに対精霊用の魔導兵器であるせいで、本体は破壊出来ないらしい。と言うか近寄れない。多分精霊の忌諱物質を使ってるな。
これは想定以上にアウェーだぞ。しかし、この程度の障害で止まる程私は温くない。煮えたぎる怒りを胸に突き進むだけだ。
「良し完成。こんな物でしょ」
腕輪型の魔導具完成。取り敢えず自然魔力を取り込まない様に阻害する効果だけで十分だ。
「……本体」
「そう言えばこっちも問題でしたね」
分身の声が聞こえると、何故か全員が渋い顔をしていた。
何だよ。とそっちを向くと、そこに居るのはウィル・ス〇ス。
「何だお前! 」
「砂漠に入ったらウィル・〇ミスになっちゃった」
分身がバグって姿変わってるじゃねーか。何でそうなるんだ。シャハール王国絶対おかしいよ! マジで何でこうなるの?
残りを確認すると、全員ハリウッドスターになってた。
「なんてこった……私はア〇ェンジャーズが良かったのに……」
残りの分身見ると、どう見てもエクスペンダブ〇ズだった。いや、一体ウィル・ス〇スだけど。
「アァオ! 」
「ウルセエ! 」
取り敢えず分身をぶん殴って大人しくさせる。
「本体本体。今ならハリウッドスターになれる気がする」
「馬鹿め。中身が私な時点で無理に決まってるだろ」
彼は凄い俳優なんだ。私には真似出来ない。
「そう……」
そう言い残すと、ウィル・ス〇スは大人しく力尽きるのだった。
「いや、マジでどうなってんのコレ? 」
「知らない。術式の一部がバグって容姿が変わってるだけ。まあ、不都合はないでしょ? 」
「スゲエ威圧感放ってるんだけど」
「そりゃエクスペンダブ○ズだし」
あのマッチョ軍団だぞ。怖いに決まってる。揃って悪人面だ。一体ギャグ世界の住民居るけど。いや、真面目な作品にも出てるけど、ウィル・ス〇スはギャグキャラの方が好き。今も起き上がって謎ダンスを踊ってエクスペンダブ○ズに銃撃されてるけど、何故か銃弾が当たらない。どうやらギャグ映画のウィルに変身した様だ。
と言うか映画ごっこするの止めろ。無駄にカッコいいじゃん。マジで止めろ。私はマー〇ル派なんだ。
兎に角! まずはこの謎現象を検証しなきゃ!
「すげえ、一瞬で目的が変わったぞ」
「大丈夫だよ拓斗。時間的余裕は全然ある」
どうやら拉致被害者の輸送ルートはかなり大回りなので、後数か月は時間が有る。
兎に角検証だ。
「何でこの国は、こんな事で私の好感度を稼いでくるの! 」
私は怒っていた。砂漠に分身が入ると姿が変わるのだ。取り敢えず100体程突入させたが、全員姿が変わった。
どうやら私の記憶にある姿に変わるらしい。そして、私と同じ姿にはなれない様だ。
これ、すっごい面白い! 拉致被害者の奪還作戦が無かったら半年は遊んでられるよ。
でも不満も有った。マーベ〇作品のキャラにはなってくれない。
この世界は〇ーベル成分が枯渇している危険な世界だ。どうやら私にはマーベ〇成分をこの世界に満たす使命がある様だ。
取り敢えず、後でヒド〇を組織してマー〇ル成分を生成しよう。
あ、私ヴィラン派だからヒーローは要らん。あいつ等集まると直ぐに喧嘩するアホだし。特にメタリックな鎧着てる奴には今一理解出来ない。
私は同じ科学者で、しかも兵器開発を得意とするが、アイツみたいに悩んだ事無いよ?
兎に角、ヒーローよりヴィランの方がカッコいいと思うのだ。そうだよ、何時か皇国辺りにヒ〇ラを作ろう。聖教の変な信仰ポーズしてる集団の前でハイル・〇ドラさせたら絶対面白い!
取り敢えず近衛の皆とキャッキャしながら分身の面白変身ショーを楽しんだ。因みに分身は宝物庫に戻ると、姿が戻った。
「ふう、とんだトラップ地帯だ。シャハール王国……何て恐ろしい国だ」
「全くですね姫様。こんなにはしゃいだのは子供の時以来ですよ」
流れる汗を袖で拭う私と近衛達。因みにクート君達はシャハール王国に入るのが物凄い嫌そうな顔をしていた。
多分害は無いけど、不快感を感じているのだろう。このくらいならブラッシングを知れば我慢出来そうだ。因みにわんこーずは走ってついて来た。最近運動不足だったらしく、凄い楽しそうに走ってたよ。やっぱり狼じゃなくて犬だよね?
「姫様は兎も角、貴方達まで……」
アリシアさんは近衛の人達を睨んでいた。許してよ。凄い楽しかったんだから。
「取り敢えず、この面白現象のデータは取ったし、解析は後回しだよ。害についても対策出来たし、このまま入っても問題ない。突入! 」
取り敢えずシャハール王国への侵攻を開始した。進むは砂漠。それも岩だらけの砂漠では無く、砂の砂漠だ。
2台のトラックと指揮車両はホバー移動で砂漠を進む。
「でね、この鉱石が有る場所を知りたいんだけど、出来れば鉱脈が浅くて、周囲に人が居ない場所とか無い? 」
――んー俺は知らないなぁ。ここの地下とか潜らないし――
――だよねぇ。地下とか凄い魔力汚染されてるし――
――お前2000年くらい前に潜ってなかったか? ――
私は現在精霊とのお話し中。
――この先に有るぞ――
集めた土の上位精霊達に目的の物が無いか尋ねていると、一柱の土の大精霊が場所を知っているらしい。
その土の大精霊の導きのままに3日程進んだ。
「何もないですね」
「この地下に目的の物が有る。精霊魔装展開! 合体だ! 」
――ヨッシャー! 久しぶりの出番だ! ――
私は土の精霊と精霊魔装を展開する。光が私の体を包み込み、一瞬で姿が変わる。
白い肌が褐色に変わり、ダボダボのズボンの様な物を履き、胸は晒を巻いている状態で、上着を肩に掛けている。そして額に鉢巻。
土の精霊魔装だ。
「ちょ、長時間は無理! 」
精霊魔装を展開した瞬間に物凄い負荷が私を襲う。ヤバい魔導具が機能してない。精霊に近くなり過ぎた。
しかし、短時間なら問題ないのは既に調査済み。
「もっち上がれえええええええ! 」
私が砂丘を両腕で叩きつける様に殴ると、地響きが広がる。
ゴゴゴ! と重厚な音と共に砂漠の底から岩――いや、鉱脈が地面を突き破って姿を現す。
そのまま小山程度の高さで止まると、今度は周囲にも鉱脈が出てくる。
それと同時に精霊魔装が強制解除された。
私は呼吸を正しながらも、震える腕で腕輪型の魔導具を起動させると、大の字で倒れた。
「ハァハァハァ。流石に鉱脈を持ち上げるのはキツイ」
この国以外ならもっと負荷は少なかった。流石に想定以上の疲れだ。だけど、魂に異常はない。消耗しただけだ。
この国じゃ精霊魔装は展開出来ても20分程度が限界か。
こっそり練習して1時間は保つ様になったんだけどな……。
「アリス、これは? 」
「金鉱脈。これを精錬して奴隷の購入費用にする」
「資金も現地調達なのか……」
拓斗がハンカチを渡してくれる。私はそれを使って汗を拭うと、フラフラと立ち上がる。うん、疲れただけだ。大丈夫。
後、今回の奴隷解放作戦に私の金は使わないよ。だって私のお金が奴隷商に渡るとか嫌じゃん?
この国で勝手に金を採掘して、それを使えば良い。本来この国の金なのだ。私の懐は一切痛まない最高の作戦だ。魔法は便利である。
「さて、お前達」
「「「アイサー」」」
エクスペンダブ○ズと化した分身達が【ファクトリー】を発動する。
すると鉱脈から金が流れる様に集まり、インゴットの山に変わっていく。
3時間程で10トンを超える純金のインゴットに変わった。また鉱脈持ち上げないと……。
取り敢えず、当座の金は用意出来た。
私の体力も戻った時には既にテントも張られていた。
そしてその中で最後の作戦を行う。
改めて各班に指示を出す。
「第一班と第二班は帝国貴族と皇国の神官に扮してジグラッドに向かって。そこで王弟にワイロを渡して奴隷の購入許可を取って。
第三班は暫くここで金を取った後は私の指揮で動く。こっちは資金の確保が終わったら首都のハワスに向かう」
「「「ハッ! 」」」
私の言葉に敬礼で返すと直ぐに第一班と第二班が動き始める。
因みに馬車と馬に偽装したゴーレムと人員水増しの為のダミーゴーレム(人にそっくりなゴーレム)を渡す。
これにより、各50台の馬車の部隊が出来た。
そして、わんこーずを10匹ずつ護衛として派遣。これは首輪をつけて獣魔のフリをさせる。物凄い嫌がったが、クート君の一吠えで従った。因みに帝国側のわんこーずは怪しまれない様にシャドウ・ウルフだ。馬車の陰に潜んでいるので見つかる事は無いだろう。
そして彼等はジグラッドに向けて出発した。
それから3日。全力で金を掘り尽くし、私も首都への行動を開始する。
「さあ、国崩しの始まりだ」
ギルバート「アリス元気かなぁ……」
アリスティア&近衛「キャッキャ♪」
何で敵国の国境で遊んでるんですかねぇ……
因みにアリスティアはヴィラン側です。ヒーローがヴィランの研究所に潜入して、発見されて隠れる為に逃げ込んだ部屋に居る研究者みたいな感じ。
因みにヴィランに属してる深い理由もこれと言ってないので、状況次第では味方になる可能性も有るが、基本的にヒーロー陣営には入らない面倒な奴。




