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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突! アリスティアVSシャハール王国 そして不死鳥のケモナー連合編
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335 賠償金は払わせるものでは無く、奪い取る物

 今日は散々な一日だった。

 王都に出れば妙にきな臭い誘拐事件に遭遇するし、取り敢えず誘拐犯を罠にハメて言い逃れの出来ない重罪化させたら、何故か誘拐事件現場に国民大集合で、ケージに入れられたまま掲げられた。

 王女の尊厳が汚されてしまった。今度王都歩くと絶対ちびっ子共が【やーい檻入り王女】って煽って来るぞ。絶対だ。

 とても許される事ではない。

 そして、そんな屈辱を受けて震えながら自室に戻ると、そこに居たのは一匹の白猫。

 奴は一枚の紙を咥えていた。中身は肉球のスタンプ。猫語で解析すると、【管理能力欠如につき、縄張り没収】と書かれていた。

 こちらの言い分を聞いて貰おうとしがみ付いたが、ケッケッケと毛玉を吐いて逃げられた。

 その時点で私はサウス・カロライナに罠にハメられた事を悟った。

 あの野郎絶対に許さん!

 これで奴はニャルベルデ四天王の中でも最大の縄張りを持つ野良猫になった。いずれ奴はニャムラス大統領に反旗を翻すだろう。

 まあ、ニャルベルデ四天王の内、サウス・カロライナを含めて3匹は反乱分子だから何時かは反乱が起こるだろうが。

 まあ、それは後だ。どうせ反旗を翻しても粛清されるだけだ。その時煽ってやれば良い。

 私が猫達に接触してたのは何も世間話に興じる為だけじゃない。実は捜索任務中だったのだ。

 ちょっと私の所の社員の1人がここ2週間程行方不明なのだ。

 行方不明事件の捜査は王女の仕事じゃないって?

 そりゃそうだよ。でも彼女は私の直臣なのだ。

 副王家の家臣名簿を作ったら末端の方に小さく名前が載る程度だが、直臣である。

 因みに副王商会連合の社員は陪臣だ。これもややこしい。

 副王商会連合のトップの経営陣は直臣だが、副王商会連合自体は彼等に運営を任せているので、陪臣と言う扱いになった。

 但し、旧スラム孤児を中心に組織した副王工房の社員は私の直臣だ。

 実は直臣は地位や領地の広さによって大体この程度の数と言う慣例があるのだ。

 私的には直臣の数を競う直臣バトルを開催したかったのだが、お兄様が「無駄で余計な騒動を率先して起こそうとしないでくれ。ノリの良い一部貴族が喜んで参加するじゃないか! 」と怒られてしまった。

 因みに副王工房の社員が直臣なのには理由がある。

 一つは副王工房が魔導具の生産を行っていると言う事。副王商会連合も作っているが、魔導レンジは現在ここにしかない。アレは本来危険なのだ。用途を商業用と偽っているが、使い方次第で魔導兵器も直接作れる。

 副王商会連合でも工作機器を作っているが、直接兵器を作っているのは王国から監視されている。

 対して副王工房は直接兵器が作れる。魔玉に魔法を付与した兵器をだ。それを隠すのと、囲い込みが理由の一つ。隠す理由がこれを兵器転用するメリットが少ないからだが。危険視される理由は無い方が良い。

 そしてもう一つが私のプライドの問題。

 私は彼等を助けると宣言した。だから私には彼等が真っ当な生活を送れるようにする義務がある。身分も家族も金も無い彼等に副王家の直臣と言う身分と仕事と金を与えたのだ。

 私の手は小さい。全てを救うのは不可能だ。だから助けれる人間は全力で助ける。

 何か事件に巻き込まれたのかもしれないと思うと、どうにも気が荒立つ。そして縄張りを失ったショックで床に横たわりながら青筋を浮かべてると言う謎の状態で部屋で転がっていた。

 その時、お兄様が部屋にやって来た。何故か私を見た瞬間に一歩下がったが、誘拐事件の情報を教えてくれた。


「へ~シャハール王国はアーランド王国との密約を忘れたんだ」


 しかも拉致しただけでなく、既に国外に送ったのか。


「君も密約は知ってたか」


「やったの王女だし」


 あの報復って当時の王女がブチ切れて自身の近衛を率いてシャハール王国に潜入して行った物だ。因みに近衛全員と王女は戦死したらしい。あの国も領主は基本的に暗殺団を抱えてるくらいヤベー国だからね。

 うちの血統はヤバい奴しか居ない。時速100キロの高速ハイハイで爆走して城壁をそのまま頭突きで破壊して走り去る暴走系赤ん坊のリリーを見た老人の貴族達が「リリアーナ姫はお淑やかじゃ! 王家は安泰じゃ! 」と泣くくらいヤバい王女が多い。因みに私の評価は喧嘩を売らなければ大人しい方らしい。

 まあ、夜泣きで城を半壊させたりとか、王国内部の腐敗貴族を自分で槍で串刺しにするとかは流石にしないしね。曾祖母のシンシアナみたいに自分の旗を帝国兵の血で真っ赤に染めたくらいでヤバい扱いされる。

 旗って大事な物だからね? 喜々として血染めする物じゃないから。大体帝国兵の血で染めるって汚いじゃん。私じゃプライド的な問題で耐えれない。普通に新しい旗に変えちゃうよ。


「で、お兄様はどう落とし前をつける気なの? 」


 問題は密約を破った事じゃない。やったことに対する報復だ。

 やっちまった事は仕方ないのだ。何を考えてるか分からないけど、やったなら、相応の報いを与える。

 これは絶対だ。


「……」


 だが、お兄様は渋い顔をして沈黙する。

 まさか……


「何もしないつもり? 」


「……報復は行うさ。こちらにもプライドがある。だけど、君が期待する程の事は出来ない。大事にする訳には行かない。

 今、中央国家連盟は帝国の崩壊で混乱している。そちらに目が向いていて、アーランドと事を構える余裕も暇も無い。如何に自国の損害を押さえ、不利益を他国に押し付ける事しか考えていない。

 もし、今大きく動けば、中央の眼はこちらに向かう。【今】はまだ大戦は起こせない。それは君が一番よく知っている筈だ。何せ、そうしたのは君自身だ」


 怒りで視界が真っ赤に染まる。だが、思考はクリアだ。

 お兄様の言っている事は理解できる。が、納得は出来ない。

 精神が揺らいだ事で魔力操作が乱れ、全身から魔力が吹き出す。

 驚いたお兄様が一歩下がる。手に持っていた紙の束が床に散らばる。


「落ち着きなさい。今中央と戦争なんて起こせない。私がシャハール王国に目を向ければ、中央がこちらに送っている工作員を潰せなくなる。この国の情報が洩れれば脇目も振らずに攻め込んで来るぞ」


 そうだ。今アーランド王国は中央との諜報戦を行っている。

 アーランド王国を調べに来た諜報員を捕らえ、中央に情報を送られないようにする。また、偽の情報を逆に送って向こうを混乱させたりもしている。

 何が正しい情報なのか、何が間違っているのか、情報が錯綜し過ぎて分からない様にしているのだ。流石のお兄様も全ての工作員を潰すのは不可能だ。だから偽の情報も流して混乱させている。

 もし、お兄様がシャハール王国に手を出せば、その分だけ中央への諜報戦で劣勢になる。この国の諜報の指揮はお兄様が執っているのだ。

 特に魔導具を作る魔導具辺りはヤバい。魔法王国が絶対に宣戦布告してくる。今はそう言うプロパガンダを流している。実は優れた魔法集団を手に入れたと魔法王国に思わせているらしい。

 だから魔法王国はその【居もしない】魔法集団を探している。技術開発局のMAD達は基本的に研究所から出ないので存在の秘匿は可能だ。会話しても諜報員じゃ話が通じないだろうし、狂人扱いされるのがオチだしね。

 いや、技術開発局のMADは私でも会話が困難なのだ。突然別の事を話しだしたり、行き成り変な事を閃いて実験し始めたりする。

 試作の魔導具が爆散して吹き飛んだ研究員を無事な研究員が指さして笑い転げる連中だ。

 全く。お兄様は何時になったら私の辞表を受け取ってくれるのだろうか? 何時も差し出すと目の前で破かれる。甚だ遺憾である。


「だから生温い対応で許すと? 」


「君なら理解できると信じているよ」


 お兄様は正しいのだろう。政治家としては。

 そう、政治家としては正しい。今は大戦を起こせない以上はこちらに目を向けさせる訳にはいかない。


「被害者の奪還は? 」


「……難しい。指示した国王は無能だが、部下まで無能じゃない。

 こちらを過剰に警戒しているらしく、拉致部隊と輸送部隊は完全に別で、複数のルートを用意してあるらしい。捕まえた奴は複数ルートが有る事は知っているが、具体的なルート自体は知らないそうだ」


 ふざけやがって。


「ふーん……ん? 」


 私はお兄様の足元に散らばった紙に視線が向く。人の似顔絵が書かれていた。


「被害者の似顔絵だ……取り敢えず誰かは確認しないと」


「ニアス……カルラ……アニー……ベトラ……リベラド商会で働いてる人。カルカル工房の工房長の娘。アベル食堂の娘……他2人は知らない」


「ハァ! 何で知ってるんだ? 」


「王都に定住してる国民の顔の7割は覚えてるし、5割は名前も覚えてる」


 出歩けば大体知り合うよ。一部の子供の名前は私が付けたし。何故か生まれた子供の名付け親を頼まれることが多いのだ。未婚の幼女に親になれとはこれ如何に? と思いながら名前を付けている。


「何十万人居ると思っているんだ……」


 アニー……。

 その似顔絵を見た時、私の行動は決定した。


「お兄様、私が往く。報復は私にやらせてもらう」


「アリス! 」


 お兄様が私の肩を掴む。壁に押し付けられた。


「いい加減自分の価値を理解しなさい。認めれる訳が無いだろう! 」


「何で? 」


「君も解っているだろう! 嘗てそれをやった王女がどんな最期を迎えたか。

 あの国は今はトップがアホだが、世界最大の暗殺集団を抱えているんだぞ」


 嘗て報復の為に向かった王女はシャハール王国を屈服させた。だが、帰ってこなかった。来れなかった。あの国は内部闘争が激しく、暗殺合戦を繰り返している。それも数百年もだ。ヤバい国である。戦国時代の日本とか古代エジプト並にヤバい。


「私なら出来る。お兄様が動けないなら、私が動く」


 お兄様は正しいさ。小の為に大を犠牲には出来ない。だけど、私は違う。私は私の懐の人間を切り捨てれない。

 これは前世からそうだった。死んでも変わらない事だ。

 前世の時だって世界屈指のIT企業を倒産に追い込んだ。元凶のCEOは破産させた上にホームレスにさせて、這い上がれない様にあらゆる妨害工作を行った。

 お陰で合衆国がブチ切れてCIAの殺し屋がダース単位で送られてきた。まあ、最終的には私が勝ったが、1億ドル程所持金が減った。使える暗殺者雇うの高すぎ。後CIA長官が事故死して、大統領が朝起きたらモヒカンになってたそうだ。


「第一私の家臣が害された。これは副王家の問題でもある。お兄様が反対しても絶対に行く。アニーは副王工房の社員で、私の直臣」


「ほんっとうにあの国は!! 」


 お兄様も私が激怒してる原因が理解出来た様だ。国民を害されるだけでも許さないのに、寄りにも依って私の家臣に手を出した。


「解るよね。私が何が一番許せないか! 何をされたら私が激怒するか! 」


 私は怒りのままに背後の壁を殴りつける。張っていた木材が砕け散り、厚さ50センチのアリス鋼の装甲に拳がめり込む。骨が砕け血が流れるが、詠唱保持していた治療魔法を解放すると、巻き戻る様に手が元通りになった。


「あの子達は私が庇護するって宣言したんだ! 守るって宣言したんだよ! それを……それを……許さない……絶対に許さない。

 例え誰が止めても私はシャハール王国に行く。拉致された国民は全員取り戻すし、拉致を命じた国王は殺す」


 どうやって落とし前をつけようか。

 私の脳内で幾つものプランが同時に立案され、精査されて行く。

 そして最適のプランが完成。僅かに唇の端がつり上がる。

 成程成程。実に良い感じの報復だ。ついでにわざと目立って、暗殺団を釣り出して始末してやろう。報復しようにも手足が捥がれていれば何も出来まい。最も報復を決意した時に国が残っているかは知らないけどね。

 国王が馬鹿をやったのなら、その国王を擁立する事を認めた人間。黙認した人間も同罪だ。

 貴族・国民関係ない。それに異を唱えない時点で同罪だ。第一滅んでもアーランド的には困らないし。


「……私も結構邪悪王子とか暗黒王子とか陰口叩かれるけど、怒り狂った君程じゃない気がしてきた。

 処で、喜々として報復計画を考えてるようだけど、もし、私や父上が許可しなかったらどうする気だい? 」


「王籍を破棄して、唯のアリスティアになるだけ」


 別に王籍無くても血縁消えないし。ついでに王太子殿下・国王陛下と2人を呼んで虐めてやる。お父様とお兄様は私にそう呼ばれる事を最も嫌うからね。流石に公式の場では眉を顰めるだけで我慢するけど。

 アレ、中央が私とお兄様を争わせられるって考えてる理由はコレか? 外部から見ると仲が悪そうだ。実際はお兄様と呼んで! パパと呼んで! って眉を顰めてるだけなのに。

 因みにお兄様は私の返答に崩れ落ちた。


「先祖よ………今とても憎く思いますよ……何故、その凶暴性を王家の女性にばかり流すのですか? 」


「? 」


 何を言っているんだ?


「アリス……そのセリフを吐いた王女は、君で21人目だ」


「お、おう……」


 ヤベーな王家の王女。因みに曾祖母のシンシアナも当時の父王に同じ事を言ったらしい。

 曰く「王女としての務め(子育て)は果たしたので戦場に戻せ」と言ったそうだ。

 そして父王に反対されると、身分を捨てて一兵卒として戦列に加わるとまで言いだして、父王も頭を抱えたらしい。


「こうなったら認めるしかない……どうせ認めないと勝手に居なくなるだけだ! 」


「そうだよ」


 もう止まらないからな。〇蟲みたいに突撃するぞ。


「だから、だから約束だけはしてくれ! 」


「内容次第だけど? 」


 無理な事を約束させるのは駄目だ。


「護衛は必ず連れていく事。絶対に生きて帰って来る事。変な物を持ち帰ってこない事。そのまま皇国に攻め込まない事!」 


「護衛は近衛とわんこーずから犬部隊を連れて行くよ。にゃんこーずはお母様とリリーの護衛だから動かさない。

 皇国? ああ、そう言えばシャハール王国の隣だったね? 」


 ミサイル一発くらいは誤射だって言われてるらしいし、首都に核を打ち込んでも新聞社は許してくれそう。

 後変な物を持ち帰るなって……。


「変な物は持ち帰るかもしれない……城とか? 」


「あの国の城を持ち帰ったら次の日には灰になってるだろうね。後、凄い悪趣味で有名だからな。何と言うか下品だ」


 まあ、国民に焼かれるね


「そう言えば金銀宝石を埋め込んでるんだっけ? 」


「そういう城は無くも無いんだがな。私も直接見た事は無いが、父上は合わなかったそうだ。暗部からも悪趣味だって報告が上がってた」


 成金趣味全開の国らしい。良いね。賠償金を山ほど奪い取れそうだ。


「じゃあ、ちょっくらシャハール王国滅ぼしてくる」


「やり過ぎじゃないか? 」


「?? レート的には適正だけど? 」


 何を言ってるんだお兄様は。10人拉致する。しかも私の家臣も含まれてる。更に密約違反。滅ぼされても文句言えないよ?

 と言うか、あの国平然とやってるけど、他国で勝手に国民拉致するとか宣戦布告と同義だからね? アーランド王国は国民の拉致なんて許さないし。

 表立って攻め込めないなら内部に入り込んで滅ぼすだけの事だ。


「じゃあ行ってくるね」


「絶対に帰って来るんだぞ。後、身代わりの分身置いて行ってね。居ないと不審がられるから」


「解った」













 私は王城の廊下を進む


「アリシアさん」


 周囲には誰も居ない。しかし、私の眼は誤魔化せないよ?


「姫様……本当に往かれるつもりですか? 」


「嫌なら置いて行く」


「何処までもお供しますよ」


「近衛を集めて。彼等は元暗部でしょ? 私の手足に使う」


「人を使う事を覚えて頂く事に成長を感じますね。少し前の姫様なら単身突撃してましたよ」


「今回は流石に1人じゃキツイ」


 国を亡ぼすなら出来る。但し一切合切破壊すると言うやり方になるだろう。それじゃつまらない。面白くない。私が満足出来ない。

 あの国を惨めに這いつくばらせて自分の所業に慟哭しながら絶望させたい。

 アリシアさんは頷くと陰に溶ける様に消えて行った。別に隠蔽魔法使う場面じゃ無くない?


「234番」


 私は宝物庫から分身を取り出す。


「よう本体」


「私の家臣を含む10人がシャハール王国に拉致された」


「ブッコロ」


 直ぐに事情を理解した分身の眼が座る。


「お前はアーランド支部に行って」


「あそこで何するよ? シャハール王国燃やすのに支部要らないじゃん? 」


「全国ケモナー連合アーランド王国支部長の座が欲しい。手に入れろ」


「ふざけんな! 本体お前、それがどういう事か分かってんの? 毒も何もない蟻が獅子の群れに単身突撃するような物だよ! 踏み潰されるじゃん」


「いや、今支部長居ないじゃん? ちょっとシャハール支部に挨拶するから、肩書が欲しい。無いと相手にされないよ」


 ケモナー世界では表の身分も血筋もゴミみたいな物だ。

 そして私はひよっこでルーキーだ。うん、話を聞いてもらえる気がしない。


「何する気だよ。シャハール支部って陥落してるって噂が流れてるくらいじゃん」


「それが生き残ってる可能性が有る」


「ふーん」


「生き残ってるなら本部に出来る。本部だけがケモナー号令を発令出来る」


 シャハール支部は特別だ。今この世界で唯一本部を名乗る事が出来る支部だ。

 シャハール支部以外が本部を名乗っても他の支部は認めないだろう。

 だから彼等が生き残っている可能性に賭ける。

 彼等が生き残っていれば、組織として死んでいても本部を名乗れるのだ。

 欲しいのは本部との伝手だ。多種族保護の為にケモナー号令を発令する必要が有る。

 そして本部が復活すれば各支部との連絡も再開出来る。


「頑張るけどさ……期待しないでね? 普通に無理っぽいし」


 文句を言いながら渋々と別方向に歩いて行く分身。頼んだよ。苦労するのは私じゃないお前だ。そして支部長もお前だ。

 事が終わった頃にはお前は消えているだろう。そして私は支部長じゃないと主張する。そう分身が勝手にやった事なのだ。

 だってアーランド支部のケモナーって技術開発局のMAD以上にヤバい奴等だし。支部長居ないのも、自由人の極みの会員の統制を取りたい人が居ないのが理由だ。

 見返りは殆ど無いのに苦労だけはする支部長。うん要らないね。

 分身は私の邪悪な企みには気がついていないようだった。


「シャハール王国も馬鹿だ。私が介入する大儀を自分から作ったんだから」


 来たる大戦。その後の大戦の為に王国には更なる国民が必要だ。

 そしてシャハール王国は大陸最大の奴隷国家。さぞ彼等を憎悪する多種族が居る事だろう。

 そして、城から外に出る。すると、登城しようとしていた拓斗が居た。


「アレ、アリスじゃん」


「…………」


 私はじーっと拓斗を見つめる。


「え、何? と言うか君また騒ぎ起こしたみたいだね? 」


「拓斗……君を拉致被害者奪還及び報復作戦の臨時参謀に任ずる。行くよ」


「え、っちょ! 行き成り何? 」


 私は拓斗の手を掴むと、城と反対、外に向かって歩き出す。良い参謀拾った。拓斗も獅子堂の人間だし、この手の企みは得意だ。

 私は携帯を取り出す。


「お兄様、拓斗借りてくね? 」


 返事を聞く前に通話終了。そして携帯は宝物庫に仕舞っておく。


「行くのは良いけど説明して欲しいんだけど! と言うか、この書類は今日中に提出しないと王太子殿下に怒られる奴だって」


「大丈夫。紙きれ1枚より国民の方が重要。お兄様も反論しなかった」


「反論する前に切ってたよね? 」


「行くぞ拓斗。砂漠でひと暴れだ」


「あーうん理解した。君に砂漠の誰かが喧嘩売ったのね」


 付き合いの長い拓斗はある程度理解したようだ。

 一緒に  シャハール王国をぶっ潰そう。














「うああああああああああアリスゥゥゥ! その男を連れて行く事までは許可してないぞおおおおおおおおおお! 騎士団を出せ! 最悪タクト・シシドウは殺しても構わん。男と2人で旅行なんて許さんぞおおお! 」


「殿下ご乱心! 制圧しろ! 」


 騎士達がダッシュでアリスティアの下に向かおうとするギルバートを取り押さえていた。旅行じゃないし、近衛が居る事もすっかり頭の中から吹き飛んだ様だった。

 因みにドラコニアは執務室で報告を受けると、真っ白に燃え尽きていた。


「転生者とかどうでも良い。アリスティアは間違いなく王家の娘だ………何でこの国の姫はこんなんばかりなんだ……」

人間が覚えられる人の顔は5000人くらいらしい。

Q前世で何やった?

A画期的な次世代OSをカールスのスラム時代からの友達のベンチャーIT企業に5ドルで売った(ポーカーで負けた)

既存OSを売ってる企業ブチ切れ案件で非合法手段も講じて会社を奪い取る。

 アイリス報復。

 潰れた企業は米国有数企業で大統領の支援者。政府激おこからの暗闘。尚、勝利(争い続けると被害が増え続けるので諦めた)した模様。

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― 新着の感想 ―
[一言] 滅ぼされるより酷いことになることは確定と。 今回は取れる手段が増えるから、今まで以上のエゲツない行為になる予感…
[一言] こんなのが王(王女)なら誰もが従うよ。
[一言] 21人・・・多いな!( ゜Д゜) 更新ありがとうございます。 来年も楽しみに読ませていただきます。
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