閑話7-1 アリスティアジュース作るぅ事件
3話連続更新だ! ストック無しで書き上げました。
「ふー面白かった」
アリスティアは呼んでいた本をパタンと閉じる。そして優雅にジュースを飲む。仕事をサボっての読書は楽しかった。
「やはり幼馴染と言うジャンルこそ覇権を握るべき存在。ぽっと出の女など魚雷に詰めて発射してしまえば良いのだ」
読んでいたのは女の子が幼馴染の男をGETする恋愛小説だった。ぽっと出の女なんて居なかったんだ! と言うくらいの幼馴染無双だった。
余韻に浸りながらジュースをもう一口――
「アレ、もう無いじゃん。アリシアさんは近衛の仕事で居ないし……果実水も飽きちゃったな……良し! 」
ここは新しいジュースを創造する時だ! と、アリスティアは立ち上がる。
そして幾重にも張り巡らされた防衛網(アリスティアを厨房に近づけない為の物)を突破し、厨房を占拠した。
「あー、アリス! 君は包囲されている。大人しく投降しなさい。今ならお説教だけは勘弁してあげるよ! だから厨房から出てきなさい」
「何で私が厨房に入ると警報が鳴るのかなぁ? 酷くない? 」
「ただちに厨房に張った結界を解除せよ! 」
アリスティアが厨房を占拠して5分で厨房は外から完全に包囲され、ギルバートが投降する様に勧告していた。まるでテロリストじゃないかと憤慨するアリスティア。
「ちょっとジュースを錬成するだけだよ? 」
「ジュースは錬成する物ではない! ただちに投降せよ! 」
ここで材料を紹介しよう!
まずはバナナ。そして砂糖と牛乳をミキサーで混ぜる。しかし、ここでアリスティアの謎の拘りが発動!
料理には革命的な一手間が必要だと、ミキサー毎錬成台(錬金術用の台座)に乗せて錬金術を発動!
そしてミキサーと中身は怪しげな光に包まれ出す。
「うわ、ヤバい反応だ! 」
しかし錬成は失敗。危険物が生成され始めた反応が出始めると、宙に浮かんでいるミキサーだった物を上下からカプセルで挟み、封印する。そして同時に錬成終了。
アリスティアは見覚えのある物体に解析を掛ける。
「何だ純度99,9%のPu239か、ウラン有るし要らないや」
状態保存の掛かった専用カプセルは放射線を完全にカットする空間歪曲機能も備わっている。そして核反応は状態保存で発生しない。なので危険は無かった。
そしてアリスティアはプルトニウムには興味が無いので、ゴミ箱に使っている空間収納にぽいと投げ捨てた。
そして何も無くなった錬成台を見る。
「(´・ω・`) 私のジュースとミキサーが……」
アリスティア製の特性ミキサーは中身毎プロトニウムに変わり、消えてなくなってしまった。
「まあ、良いか。何かお菓子も作りたくなってきちゃったぞ♪ 」
調子が出てきた! とばかりに今度はお菓子作りにだって挑戦しちゃうアリスティア。
鼻歌を歌いながら生地をコネコネ。ニトロで爆破してまたコネコネ。時折怪しいポーションが混入するが気にしないったら気にしない。
しかし、ここで終わらないのがアリスティアクオリティ。上機嫌過ぎて詠唱保持している魔法が謎の魔法反応を引き起こす。更に上機嫌過ぎて魔力制御も乱れ、魔法に必要な魔力が勝手に供給され始める。そして材料を出す際に間違って取り出し、そこらへんにポイした魔法触媒も奇跡の魔法反応に組み込まれる。
「うおーいアリスさん!? 凄い魔力が渦巻いてるんだけど! 中で何してるの!? 」
「むふー、むふー」
瞳をキラキラと輝かせながらお菓子作りする姿は年相応だろう。作ってる物が謎の物体なのと、頭上に怪しげな魔法が誕生しようとしている事以外は。
そして手に負えなくなったときにアリスティアは気が付いた。
「何か煩いなぁもう! ってん?………ちょ! 」
頭上に浮かぶ魔法をアリスティアは即座に解析した。解析出来た。だって発動過程は全く違うが、アリスティアはそれと同じ魔法を作ってるし、魔導具かしてアノンの装備に仕込んでいる。
「や、ヤバい! 」
持っていたお菓子の材料(否定する者はシベリア送り)を投げ出して厨房からダッシュで逃げる。結界も解除!
「アリス! 何をしてるんだ! 」
「知らないよ! 何か色々混ざって凄い事になっちゃった!
警備室に連絡してコード4456を発動して厨房を時空の彼方へ飛ばして! 城が崩壊する事は無いから! 」
「マジで何してるんだ! 」
コード4456とは王城内で魔力災害、或いは魔法災害クラスの事故が発生した場合、時空間魔法でその区画毎別世界に放り込む装置だ。少し前に金剛武装の開発失敗で研究区画が消し飛んだ事の反省から設置された物だ。
送る場所は世界と世界の間。そこならそれほど被害は出ないし、別世界に迷惑をかける事も無いだろうと設置された。
因みにアリスティア式異界門のプロトタイプである。因みに生物が内部に居ると発動しない。試作品なので無機物専用だ。
ギルバートは即座に魔導携帯を取り出して警備室に連絡する。
「私だ。今すぐ厨房区画にコード4456を発動しろ! 」
「りょ、了解です! 」
天井や床で見えないが、厨房区画の上下に魔法陣が出現する。そして輝きが強まり、一瞬にして厨房が消えた。
「ふう、ヤバかった。装置の設置が間に合って良かったよ」
袖で汗を拭うアリスティア。装置が無くても対処出来るが、暴走状態だったので自分で抑え込むのはごめんだった。
因みに自力で何とかする場合は魔力で強引に発動を抑え込んで自分事何処かに転移する事になるだろう。
自分事転移する理由は、そうしないと転移魔法を発動した瞬間に魔法が発動し、転移先と王城の両方に被害が出るからだ。
(アレは最終兵装天使のラッパに付与したのと同じマイクロブラックホールだった)
実にヤバかった。アリスティアも冷や汗が止まらない。
取り敢えず建築家アリスティア(分身)が早速厨房の修理を行っている。20分で元に戻るだろう。
そろりそろりと移動するアリスティア。しかし、両肩をがっちりと捕まれる。
「ア リ ス ? 」
「ゆ、許して」
「母上の所に行こうか? 」
「やあああああああ! 」
アリスティアはその後3時間程説教され、シルビアの同伴を除いて、改めて厨房への立ち入り禁止が告げられた。
流石にアリスティアも自分がちょっとばかり料理音痴なのを自覚した為に同意するのだった。
次の日
「君さぁ、行き成りマイクロブラックホールを僕の部屋に送ってくるの止めてくれない? 」
アリスティアの元に手乗りサイズのテトが居た。
「ッチ、死んでなかったか」
「あそこに僕が居るって解っててやったよね? 流石に僕もちょっと怒るよ? 」
アリスティアは無言でテトを握りしめると背後の空間を裏拳の様に殴る。そして空間が砕け散り、アリスティアの個人所有世界『冒涜世界』へテトを引きずり込む。
「へーここに居た奴ってそこそこ強い筈なのに奪い取ったんだ。っで? こんな所に連れ込んで僕をどうする気だい?
ここは世界に見えるけど狭間でもある。言ってみれば僕の準領域だよ? 」
アリスティアは無言でテトを投げ捨てると、宝物庫から【アリスティアの禁術書】を取り出す。
「禁術展開【神殺しの凶弾】」
パラパラと禁術書が捲れ光を放つと、禁術書は一丁の拳銃に変わる。
それは一見するとフロントロック式の拳銃通称ターン・オフ・ピストルの様な形だ。
しかし、それを見たテトの表情が歪む。
「削りだすは我が憎悪」
アリスティアの持つ憎悪が削り取られる。
「憎しみの焔で精錬されるは復讐の弾丸」
憎しみの焔で憎悪を精錬し、弾丸へ変える。そしてピストルへ装填される。
「ちょっと死のうか? 」
「え、ちょ! 何で、何で魔法ごときで」
テトが慌てて距離を取りながら数百の障壁を展開する。
「装填。そして発射! 」
放たれた憎悪の弾丸はテトの障壁を物ともせずに打ち砕く。しかし、弾道が逸れ、テトの顔の横を通り抜ける。
テトの顔から汗が流れる。
まさか、魔法如きが自分を殺しかねないとは思っても居なかった。
この世界はテトの領域に近しい特殊な世界。故にテトはこの世界ではかなりの力を発揮できる。
展開された障壁は一枚一枚が女神の神壁を上回る強度だったのに、僅かに魔法を逸らす事しか出来なかった。
テトは確信する。これは自分を殺せる魔法だと。
「やってくれるねえ! 」
生命の危機を感じたのは2度目だった。
「お前、私に嘘ついてたでしょう! しかも何なのこの世界。このままじゃ滅びるじゃん! 」
テトはアリスティアに嘘をついていた。転生が存在しない事。そして、邪神の事。
特に邪神の事は容認出来ない事だった。
「いや、放っておけば君なら気が付くだろうし、そのまま倒してくれるかなぁって? 」
「死にたいの? 」
再び銃口を向ける。
「ちょ、ストップストップ。それは止めて。と言うか何なのそれ? 」
「対神用に作った禁術」
「うん、魔法で神を殺すって普通は不可能なんだからね。神の持つ通力の下位互換の魔力じゃ本来どう足掻いても勝ち目ないから」
「やってみる物だよ? 」
「勘弁してよ……」
「さて、この落とし前どうつけようか」
「僕に出来る事なら何でもするから許してよ。正直僕だってカードが少ないんだ。あの邪神は危険で、倒せる可能性が有るのは君くらいだった。丁度良かったんだ。
でも真実を知らせると、君が邪神化する危険性も有ったしね」
「やっぱり邪神って私と同じなの? 」
「そうだよ。取り戻せぬ物を求めて憎悪で種子を芽生えさせた者の成れの果てさ。君もそうなりかけていた」
「私に種子なんて無い筈だけど? 」
「君は色々特殊だからね。本当に帝国との戦争の時は焦ったよ。最悪僕が休眠する事になっても君を封印しようと考えたくらいだし」
「拓斗をこの世界に呼んだのはお前? 」
銃口を向ける。
「違う。アレは皇国の仕業だ。それにアナスタシアが介入した」
だから拓斗は召喚までに猶予が有ったから多くの物資を持って来てるし、召喚先の情報を女神から聞いていた。
アリスティアは銃口を下げる。
「改めて君に頼むよ。世界を救ってほしい。具体的には隣接世界の邪神を滅ぼして欲しい。君ならば可能だ」
「まあ、私は今の生活も気に入ってるから良いけど。当然こちらにもメリット有るでしょう? 」
報酬も寄越せとテトを強請るアリスティア。
「別に良いけど。何が良いの? この際、僕にできる事なら手を貸すよ。と言うか貸さないと僕を変態神として祭ろうと企んでるでしょ? マジで止めてね。シャレにならないから」
「バレたか」
テトは強力な存在だが、同時に曖昧な存在だ。弱点は定義する事だ。定義してしまえば、テトはそうなってしまう。だから本来テトは人には関わらない存在だ。何故なら定義されかねないから。
更に、何かに変異する事になっても、変態神はごめんだった。
「じゃあ……合衆国のGDP5年分の貴金属を貰おうか」
「え、そんな事で良いのかい!? 」
「寧ろ良いの? 」
「物資程度なら人の居ない世界から集めれば済む話だし。いやぁ助かるよ。尽きない寿命とか高位種族になりたいとか無茶ぶりされるよりずっとマシだ。
うん。分かった。もう決定だからね! 変更は無しだよ! 」
(コイツ幾らだか見てないな)
テトとしては軽い条件だった様だ。もう少しぼったくれば良かったと後悔したが、テトは逃げるように姿が消えて行く。
「じゃあ、荷物は君の宝物庫に入れておくからね~」
こうしてテトは消え去った。
「いや、まあ家族居るし、世界を救うのは別に構わなかったんだけど……何か納得できない」
もう少し渋ると思ったのにあっさり受け入れられた事が納得できないアリスティアだった。
「ふぅ~ヤバかった。アレで力が空ってのが恐ろしい話だ。でも邪神化の心配は無さそうだ。
最初はアナスタシアも余計な事をしたと思ったけど、あの様子なら27災の時の様にはならないだろう。と言うかなると世界の危機なんだけどね」
テトは自分の空間で寛ぎながら知的生命体の居ない世界から物資を集める。
テトの方針は簡単だ毒を持って毒を制す。世界を滅ぼしかねない邪神に世界を滅ぼしかねないアリスティアをぶつけるだけだ。
「まさか魔法で僕を殺す方法が有るとは思っても居なかったよ。
やっぱり彼女なら邪神を滅ぼせるだろう。これまでの様に。
さて、合衆国だったかな? 彼女の転生前に一時期住んでた場所……GDPって何だろう? これかな……プ―――――! 」
必要な物資量を知ったテトは思わず吹き出していた。
そして次の日。
「(´・ω・`)」
アリスティアの宝物庫に約束通り、黄金や銀に宝石の原石等の山が出来ていた。
「アイツ本当に用意しちゃったよ。と言うか多くない? 」
アリスティアの言葉に分身が答える。
「アイツ宝石を原石で送ってきたじゃん。これ原石の値段で計算してるんじゃね? 」
「割と適当だよねテトって」
「何処まで世界を救う事を願ってるかも疑わしくなる適当さだ。
しかし、これだけの物資が有ればやりたい放題出来る! 」
「いや、これ放出したら金が大暴落するって……」
アリスティアの言葉に分身がやれやれと言い放つ。
「え、じゃあどうしよう? 王国に献上する? 」
「怒られるんじゃね? 」
「じゃあ勝手に贈ろう」
その日の晩。王城中に警報が鳴り響き、探照灯が屋根の上に居る人物を照らす。
「フハハハハ! 我が名は『怪盗アンパン三世』である。
この城の宝物庫に忍び込ませてもらった! 」
それはサル顔アンパンマスクをかぶり、猫と和解せよと書かれたマント。そして赤いジャケットとネクタイを装備した怪しげな存在が立っていた。
それを眺める騎士が大声で叫ぶ。
「あー、姫様! こんな時間に屋根に昇ったら危ないですよ! 」
「王女じゃないし! 」
Q 何でばれたん?
A 体格&そんなアホな事をするのはアリスティアしか居ない




