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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
ヤマタノオロチを出荷せよ
342/377

323 孤児に救済を

リリーと一緒に寝た次の日。私はアリシアさんと城の茂みに潜伏していた。

 何故かと言うと……


「姫様ァ~~! 何処に居るのですかぁ~~! 」


「公務からは逃げられませんぞ! 」


 捕縛特化の近衛騎士に追われていたからだ。

 彼等は日々王都へ逃走するお父様を執務室に連行するお父様の近衛だ。

 何故か、お父様を捕縛する際はお兄様の指揮下に入る謎の部隊である。近衛の指揮権って各王族に有るんだけどね。私の近衛はお兄様の命令を聞く義務は無いし(協力関係ではある。あくまで指揮権の話)

 まあ、普段から公務から逃げてるお父様が悪いんだけどね!


「陛下を捕まえたぞ! 」


「離せええええええ! あんな量の仕事終わるかアアアア! 」


「「「うおおおおおおおおおお! 」」」


 私と同じく、朝食後に脱兎の如く逃亡したお父様は捕まった様だ。手枷足枷(鉄球付き)を装着され、周囲を騎士に囲まれ縄を回されてお父様は項垂れながら連行されていった。国王に対する所業じゃないよね。

 しかし不味いなぁ……これじゃお父様捕縛に向かってた騎士が私の捜索に加わるじゃん。逃げ場逃げ場……


「姫様、大人しく執務室で仕事をしましょうよ……」


「否! 私はやりたい事しかしない。その為なら全力で行動する」


 別に私が公務サボってもそれほど文句言われないし。技術開発局も空軍も私が居なくても回る様に組織構築が済んでいる。居た方が楽程度だ。

 そして私は王国に対して技術・資金的に多大な貢献をしている。このくらいは見逃されるべきだろう。分身も含めると明らかな過労だろう。旅行行きたい(帰って来たばかり)。


「仕方ない。今回はこの手で行くか」


 私は茂みの中でガサガサと音を立てる。周囲の騎士がピクリと反応し、近くの通路を封鎖するように動いた。こちらに来る者は居ない。


「この辺りだ! この辺りに潜伏している筈だ。今のは石でも投げたのだろう」


「絶対に逃がしませんぞ! 」


 残念だったな。私は騎士が離れた隙に別の茂みに移動する。


「何でこっちに来なかったのですか? 」


 アリシアさんは茂みで音を立てたのに誰も来ない事を不思議がっている。


「何度か茂みに石とかを投げて気を逸らした事が有るからね。解り易い囮だと思ったんだよ」


 お父様の連行が終わらない限り増援は来ない。限られた人員ではここを完全に包囲するのは不可能だ。だから明らかに囮の場所の捜索よりも私の腕で石を投げれる場所を重点的に捜索しようと考えたのだろう。裏を読み過ぎだ。

 私達は騎士の包囲網を軽々脱出する。


「はいこれ飲んで。変身薬」


 私とアリシアさんは変身薬を飲みネズミに変身する。最近動物に変身しても彼等は直感だけで私だと見分ける事が有るので脱出の際に使う様にしている。

 そして緊急脱出用の排水溝から城の外に脱出するのだった。



「むふー。どうせ表門も裏門も騎士が抑えてるから外に出れるとは思ってないだろう。今の内に目的を完遂しよう。3時間もすれば城に私が居ない事を理解して王都に出てくるだろう」


 それまでは、私が城内に隠れてると考えて徹底的に捜索するだろう。今回の脱出で幾つかの隠し通路が見つかるだろうが、見つかるのはダミーの囮だ。本命は分からない様に隠している。さっきの排水溝の様にね。あそこは水が流れない脱出用の通路なのだ。

 私は上機嫌で王都を歩く。


「姫様じゃん。さっき陛下捕まってたぞ」


 王都を歩いていると結構国民に話しかけられる事が多い。私は気安い王女なのだ。威厳とか基本的に存在しない。


「城の外まで逃げれたんだ」


「直ぐに捕まってたけどな! 姫様も後で怒られるぞ」


「そうそう。いい加減にしないと陛下みたいに囚人みたいに連行されちまうぞ! 」


「一国の王様にあの扱いは如何思う? 」


「自業自得だね! 俺達だって朝っぱらから酒場に行きてえよ! 」


 国民は辛辣である。王の威厳は常にある訳ではないのだ。

 まあ、あんな性格でもお父様は結構国民に慕われている。お父様の人格をお父様と接する機会が多いから国民も良く知ってるのだ。喧嘩が発生すると国王に止められる事がある国だよ。凄いでしょ。普通何で居るんだよ! ってなるよね。

 因みに私が城を脱走しているのは何時もの事である。似た物親子だと思われているが心外だ。私の方が逃走テクニックは上だ。お父様の逃走術は潜伏無視の筋肉式だ。立ちはだかる者を薙ぎ倒して逃走するのだ。

 私は、あんな屈辱的な連行は滅多にされない。多分帰った時にマダムにお説教されるだろうが、未来の事は未来に考えるのだ。きっと何とかなる筈さ。

 私は王都を見ながら歩く。くんくん……陰謀の匂いはしない。悪い奴らはある程度一掃されたと見ていいだろう。敵が居れば匂いで分かる。何故ならこっちが風下だからだ。

 王都の見回りも重要な私の仕事だ。周囲は他の事をしろって言うけどね。

 しかし日に日に王都の構造が変わっていくから迷わない様に気を付けないと。まあ、迷ってもいずれは目的地に着くだろうから大丈夫だろう!

 そして1時間程、王都を視察しながら歩いていると正教の大聖堂に到着した。まだ一部工事中だけど、既に殆ど完成し、正教の中枢と化している。

 今日は既に朝の祈りの時間は終わっているので人は疎らだ。

 しかし立派だな。皇国が歯ぎしりしてるらしい。女神教を乗っ取り、追い出した正統派が北に堂々たる大聖堂を建設したのだ。面白くないらしい。因みに抗議の使者は国境で警備隊の騎士に中指立てられて追い返された。笑えるよね。

 現在皇国の使者は入国拒否である。無理に入国しようとすれば問答無用で切り捨てられるよ。

 大聖堂の前には枢機卿のヨークさんが補佐の神官と共に待っていた。事前連絡はしてある。


「ようこそおいでくださりました姫様」


「お久しぶり」


 ヨークさんの案内で大聖堂の一室に案内される。

 ふむ、大分調度品も揃ってるが、下品な感じでは無く、穏やかな感じで良いセンスだ。

 幾つか世間話をしたが、正教は順調な様だ。

 元々正教の財政は悪かった。王国自体が景気が悪いのと、帝国と北の魔物のせいで王国政府にも余裕なんて欠片も無かったのだ。

 そのせいで寄付金も減り続けた。しかし、正教は弱者救済が教義だ。飢える国民の為に厳しい財政でも炊き出しや孤児の救済に尽力していた。だからこそ、国民は正教を認めている。

 この国では宗教の力は非常に弱い。国民は女神や精霊を信仰しているが、神官を信仰している訳じゃ無い。何でも彼等の言う事を聞く訳じゃ無い。

 更に正教は元々中央の聖教と同じ組織だった。普人至上主義を掲げる派閥に女神教を乗っ取られ追い出された神官達が正教を作ったのだ。

 彼等を責めるのは酷だろう。時代の流れだった。中央では普人至上主義が選ばれ、彼等は排斥されたのだ。無論抵抗は凄まじかった。

 しかし、元は同じ。自分達を中央から追い出した元凶の一派だ。正教が王国で国民に認められるまで長い時間が掛かった。でも彼等はやり遂げた。

 弱者救済と言う女神の教えに従い、疑われ、時に石を投げられても彼等は信仰に生きた。

 そして現在王都大孤児院の建設を始めたところだったのだが……


「まさか建設予定地に道路が通るとは思いませんでした」


 ヨーク枢機卿は苦笑いしていた。

 私の援助で王国各地の孤児院から一定年齢以上の孤児を王都へ集め、王都の国民学校で学ばせる。

 将来的には王国全土へ学校を建てる予定だが、教師の確保や土地・建物の用意に時間が掛かる為、これはかなり時間が掛かるのだ。故に王都に集める。

 しかし、孤児院の建設予定地に確保した土地が道路になる事が決まった。無論王国から補償金は出るが、一から場所を探す事になったのだ。

 孤児院計画が遅れているのである。


「話は聞いたよ。ところで、私が丁度良い建物を持ってるけど要る? 」


 私は立ち上がると窓を開ける。丁度いい感じに建物が見える。

 それは副王商会連合の単身用の集合住宅だ。鉄筋コンクリート製で8階建てであり、人部屋8畳お風呂トイレ付きである。

 20棟くらい建設しているが、王都の拡張に合わせて大急ぎで建てたら余った物である。いや、今も地方からどんどん人が来てるから数年で足りなくなるけど、現状では余裕が有る。

 だからこれの一部を孤児院にしてしまえば良い。新しい住宅地であり、警備の詰め所も目の前にある為治安も良い。


「宜しいのですか? 」


「今は余ってるしね。それと孤児院の予算も厳しいでしょ? ちょっと寄付するよ」


 和の国で稼いだあぶく銭を全部渡そう。お腹を空かせるのは可哀想だ。

 最も正教だけでは無く、精霊教と……天使教も少数だが孤児院の経営に乗り出してるので、そっちにも寄付する予定だ。天使教って大丈夫だよね。邪教じゃないよね?

 精霊教は元から有るから理解出来るけど、天使教については何も知らないんだよね。そして私の研ぎ澄まされた直感が警鐘を何故か鳴らしてる。でも悪い匂いもしないので基本放置だ。

 何故か宝物庫から金銀財宝を取り出して並べるとヨーク枢機卿だけじゃなく、他の神官達も顔面蒼白になっていた。ちょっと多いけど、私の資産的には問題ないレベルだ。これくらい有れば200年くらい予算も持つだろう。

 ついでに私の持ってる特許の利益を受け取る権利だけも幾つか渡しておく。

 これは特許その物は私の物だけど、それの利益は教会が受け取ると言う方法だ。流石に特許は渡すとお説教案件だから無理。

 そして神官が何人か気絶して倒れた。何故?


「大丈夫? 」


「え、ええ。流石に、これほどの大金を見た事が無いので驚いたのでしょう。誰か、彼等を医務室に連れて行きなさい」


「は、はい! 」


 倒れた神官を大丈夫な神官が肩に担いで医務室に運んで行った。運び方が雑である。


「これだけ有れば孤児達もお腹を減らす事は無いと思うね」


「姫様は何故ここまでなさってくださるのですか? 」


 ヨークさんがハンカチで汗を拭いながら問いかけてきた。ふむ。


「さあ? 気分とも言えるし、資産の整理とも言える。王国の為にもなるし」


 これと言って理由は無い。しいて言うなら貧乏は性に合わない。成るのも見るのも好まないのだ。敵対者が貧乏なのは無視するけど、身内が貧乏なのは大嫌いだ。


「解らない御方ですね。ですが、その様なものなのでしょう。善悪と言う物差しで事を考えるのではなく、姫様は己の考えで動いていらっしゃる。

 しかし、それで多くの者が救われる。不思議です」


「別に善人でもないしね」


 大量虐殺者だし。帝国兵死すべし慈悲は無いだから。

 これから中央で多くの人が死ぬ運命なのを放置する予定だし。まあ、戦力的に助けられないから仕方ないね。勇者である拓斗を使えば助けれる可能性は有るけど、邪神戦では仕舞っちゃう予定だし。

 姉ポジである私は、弟ポジの拓斗を戦場に解き放つ気は一切無いのだ。当然リリーも駄目。安全な要塞を建設して10万のゴーレムに守らせよう。

 拓斗はちょっと昔と変わって、やり過ぎそうな危うい感じになってるから特に仕舞っちゃわないと。危ない事は許しません。


「しかし多くの国民は姫様を聖女と呼んでおりますよ。いっその事、正教で認定しましょうか? 」


「またそうやって聖教を煽るんでしょ? 私聖女じゃないよ。ケモナーだよ」


 中央じゃテロリストの代名詞のケモナーである。聖女な筈が無いだろう。

 皇国の使者を同志にして送り返したし。ダース・ケモナー元気かなぁ。王国支部は外部との繋がりが無いから分からないや。お兄様は何故か教えてくれないし。

 でもニヤニヤしてたから元気なのだろう。


「我が国は聖女協定に同意していないので問題ないでしょう」


 解せぬ。

 因みに聖女協定は聖女は皇国に所属すると言う超不平等な協定だ。当然アーランドは批准してないし、建国以来、聖女認定された人間は生者には居ない。死後に認定された人は数人居るけど。因みに対象が男性だと聖人だ。

 これも中央が煩いのが理由だ。流石に死人を寄越せとは言われないしね。

 そしてヨークさんの表情は「いい加減抑えるの面倒なんだけど」って言ってる。それも仕事でしょ? 職務放棄すると、お父様みたいに捕まるよ。

 聖女とか柄じゃないのでNG。絶対舞とか和仁とか笑うし。

 後アノンちゃんも絶対笑って来る。アノンちゃんの場合は「やーい勇者」って煽り返すけどね。向こうじゃ小さな勇者って呼ばれ始めた様だ。苦情のメールはいい加減送らないで。私は悪くないもん。ちょっとオーパーツ的な兵器渡しただけだし。性能もまだ発揮してないし。問題ないと主張する。


 その後ヨークさんと別れる。彼は大至急で孤児院の稼働を目指してくれるそうだ。物凄く忙しそうだ。

 その後、精霊教の大聖堂と天使教の大聖堂に同じ話をしに行った。この国王都に3つも大聖堂があるな。私が資金提供で作ったのは女神教の正教と精霊教だ。

 天使教は良く分からない。何時の間にか誕生し、急速に勢力を広げた新興宗教だ。基本的に過去の偉人とかを崇拝してるらしい。後は女神とか精霊とかも信仰している。多分精霊教と正教が混ざってるのだろう。

 精霊教は大歓迎された。提案も二つ返事で即答された。天使教も同じだ。但し、天使教の大聖堂に有る天使像は何故か布が掛けられていた。まだ未完成なのだそうだ。

 ちょっと気になったけど、直感的に深く関わらない方が良いと感じたので放置した。衝動的に布の掛けられた天使像を攻撃しそうになったが、銃を抜いた瞬間その場の信者達が涙目になった。

 何故銃を抜いたのかも分からない。ただ今後は関わらない様にしよう。知り合いが滅茶苦茶多かったけどね。ほら、信仰と交友関係は別だから大丈夫。向こうも今まで天使教徒だって言って来なかったし。


「姫様~そろそろ城に戻らないと本格的に大変な事になりますよ。と言うか既に私の魔導携帯が鳴り止みません」


「仕事の時間は終わった。次は子供らしく遊ぶ時間だよ? 」


 私のお仕事は終わりだ。公務? アレならお父様とお兄様が何とかするでしょ。2人は犠牲になったのだ!


「いいえ姫様! もう逃がしませんぞ! 」


「我等が動いた以上、もう逃げられません」


「左様。我等陛下捕縛3人衆が居る以上、姫様には大人しく執務室に連行させていただきます」


「「「必殺封縛陣! 」」」


 突如現れた3人組の騎士がロープを投げると、一瞬で私は縛られた。


「フッフッフこれはオリハルコンを編み込んだワイヤーです。如何に姫様とて逃げられはしますまい」


「我らが健在である以上、公務から逃げる事は叶いません」


「さあ、陛下と殿下が執務室(ろうや)でお待ちですよフフフ」


「知ってるよ。これ作ったの私だし。と言うか何で居るのさ! お父様専用の捕縛部隊じゃん」


 捕まえる相手を間違っているぞ!


「今後は姫様も捕縛対象に加わりましたのであしからず」


 何と言う理不尽! 王女としてこの様な事は断固として認めない。


「あらら。捕まっちゃいましたね大人しく帰りましょう」


 アリシアさんめ! 私のメイド兼騎士なのに助ける気が欠片も無い。いや、彼等と正面から戦って勝てるか怪しいが。


「無駄、この程度の玩具で私を止める等言語道断。身の程を知るが良い」


 私は宝物庫から魔杖刀ベルゼバブを取り出す。ワイヤーは私の肘から上をグルグル巻きにしているので、関節は動かせる。

 刃の部分をワイヤーに当てる。


「食らえベルゼバブ」


 ベルゼバブの刀身が赤黒く輝くと同時に、ワイヤーが朽ち果て拘束が解かれた。


「「「なん……だと……我等の封縛陣が一瞬で……」」」


 自慢の拘束陣を一瞬で破られたショックで彼等は四つん這いになって項垂れた。


「ムフー。製作者足る者常に創造物への対処道具も持っているのだ。 さあ行くぞって邪魔! 」


 私は上機嫌に項垂れている彼等を放置し、立ち直る前に立ち去る為に振り返ったが、誰か背後に居た様だ。ぶつかってしまった。

 顔を抑えながら左に避けようとすると、目の前の人物は同じ方向に移動する。ならば右に移動すれば再び立ちはだかる。

 何と言う事だ。王女である私の道を塞ぐと言う無礼極まる行為に私は文句を言おうと顔を上げて……凍り付いた。


「マ……マダム……城を出る前に封印した筈……」


 私は城を出る前にマダムに封印魔法を掛けて石像にしたはずなのに、何故かマダム・スミスが立っていた。


「|私≪わたくし≫の教育から逃げるばかりか公務からも逃げ出すとは……何と言う事ザマス! 今日と言う今日は許さないザマス! 」


「一体どうやって封印を解いたの。100年は石のままの筈なのに! 」


「あんな物は気合で如何にでも出来るザマス! 」


 嘘でしょ!

 ぐわしと私の頭を掴んでそのまま持ち上げる。


「勉強から逃げたのはこれで100回目ザマス」


「老いたなマダム・スミス。マダムの授業をすっぽかしたのはこれで102回目だ。大人しく辺境で余生を過ごすが良い」


 私はマダムのお腹に拳を放つ。

 私の咄嗟の反撃にマダムは動く事も出来ずに私の拳はマダムのお腹に突き刺さる。さあ呻け。そして私の頭から手を放すが良い。今度と言う今度は私も許さん。ここで長年の確執を終わらせようではないか。勝者は当然私だ。

 マダムも私の覇道の礎に成れて光栄だろう。大人しく敗北を認めるなら辺境で穏やかな余生を過ごす事を認めても良い。


 ミシリ


「馬鹿な」


 私の頭蓋が悲鳴を上げる。効いてない!


「私の拳は猫の一撃に匹敵するのに」


「所詮猫ザマス」


 そのまま私は頭を掴まれたまま連行されていった。

















 屋台の店主があり得ないと言う表情で客を見ていた。


「姫様……捕まった筈じゃ」


 マダムがアリスティアを城に連行して10分後。アリスティアは王都の屋台で串焼きを買い、買い食いを嗜んでいた。


「残念だったね。トリックだよ」


 捕まったのは分身の様だった。分身との入れ替わりは最早忍者の身代わりの術と呼ぶべきレベルまで向上していた。

 捕縛3人衆のみならず、マダム・スミスすら今のアリスティアを拘束する事は出来ないのだ!

 アリスティアは上機嫌に串焼きを頬張り、マダムを嘲笑う。

 最も鼻が伸びればへし折って来る相手だと言う事をアリスティアは忘れている。いや、悲しい現実から目を逸らす。

 何故ならば、捕まえたのが偽物だと、直感的に判断して戻ってきたマダムが背後に立っているからだ。

 アリスティアはドラコニア同様に拘束されて連行されて行った。

天使教「危ねえ。危うく姫様の天使像を見られるところだったぜ」


 天使教の真実をアリスティアが知ったら羞恥心から燃やします。


精霊教「我々は何時でも姫様を歓迎しますよ」

正教「天使教の件で姫様との付き合い方が分からない。でも、天使教の事を姫様が知らない以上、姫様に文句を言うのも……どうしよう」

天使教「天使(姫様)を崇めよ!」

アリスティア「なんだこの人達……視線が怖いから近寄らない様にしよっと」


 アーランドの宗教界は今日も元気です。

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