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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
ヤマタノオロチを出荷せよ
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307 一方その頃

 アリスティアが深海で財宝集めを行い、その後海で釣りを楽しんでいたころ、武装飛空船は和の国の武士団と外務大臣を船に乗せ、水棲の魔物退治を行っていた。


「こちらが戦闘指揮所となります」


「ほぉ……」


 武士団や外務大臣のヨシオキは見た事の無い設備の数々にキョロキョロと周囲を伺い、まるで上京した田舎出身者の様相だった。

 しかし、それを笑う者は居ない。船員達も最初は同じだったからだ。

 これは一体何の魔導具だ? これはなんだ? と、ヨシオキは船員に尋ねる。

 船員もアリスティアから教えて良い物は先に伝えられている為に可能な物は説明し、説明出来ない物は機密だと答える。

 武装飛空船に積み込まれた高度な魔導具は地球でも通用するレベルの代物であり、説明を受けたヨシオキは驚愕する。


(我が国とは技術が違い過ぎる……)


 飛空船とは基本的に木造船だ。しかし、この武装飛空船は金属製だ。作るのに必要な技術は桁違いだ。


「こ、この船は古代の発掘品なのでしょうか? 」


 一縷の望みを掛けてヨシオキは尋ねる。これが発掘品であって欲しい。外務大臣として相手に感情を読ませるなんてあってはならない失態。しかし、彼には表情を取り繕う余裕すらなかった。

 これが発掘品であっても脅威である事は変わりがない。しかし、発掘品であれば数に限りがある筈だ。しかし帰ってきた答えは彼の望み通りでは無かった。


「いいえ。この船は姫様の発明品であります。現在我が国は同型艦が17隻存在します。計画では100隻の艦隊を用意する予定です」


「ひゃ、100隻!? 」


 既に武装飛空船艦隊計画も隠す段階を超えている。アーランドの技術力と軍事力を示す為に同盟国には明かす事を許可されているのだ。因みにオストランドはこの計画を知った時に乾いた笑いしか浮かばなかった。そしてオストランド王は他国に先んじてアーランドとの友誼を結んだ事で権威を強めていた。

 武装飛空船。それは大陸最大の航空戦力を有していた帝国飛空船艦隊を単艦で圧倒したまさに大陸最強の飛空船。それをアーランドは100隻揃えるのだ。アーランドの財務大臣は毎日枕を涙で濡らしている。彼の苦労は終わる事が無いだろう。


「ええ、更に強力な飛空船も建造しておりますけどね」


 ニヤリと笑う軍人に和の国の者達は顔が引きつる。帝国船で武装飛空船のあげた戦果は既に和の国にも轟いている。

 それよりも強力な飛空船が生み出されると言われれば、硬直するのも仕方のない事だった。

 因みに魔導戦艦もプリンス・オブ・ギルバートが既に完成間際であり、キング・オブ・ドラコニアは建造中に主砲の自動装填装置の改良型が開発された為に一度砲塔を取り外す大規模な改修が行われた為、若干の遅れが出ているが、こちらも完成間際で有る。

 こちらの存在は未だに秘匿されているが、アーランドが異常なまでの金属を輸入している事から何かを作っているのは同盟国だけでなく、中央国家連盟も気が付いているだろう。それ程膨大な金属がアーランド王国に流れているのに、アーランド王国内での金属価格は上昇を続けているのだ。

 一応国内景気が最高に良いので金属価格の上昇は文句こそ出ているが、国民生活を脅かす程ではない。補助金を出す事で金属価格の統制も行われてるのも理由の一つだろう。


「では、これより和の国を脅かす魔物の掃討作戦を行います」


 武装飛空船の速度は既存の飛空船を遥かに凌駕していた。この快速と巨大な4つの主砲で帝国の艦隊と渡り合ったと言う説明にヨシオキは頷くしかなかった。

 和の国にも大砲は存在する。帝国との小競り合いで鹵獲した物のデットコピーだ。

 今まではその性能に不満を持つ者は居なかった。確かに本家の帝国産の大砲に比べれば精度も耐久性も若干劣る。しかし、その程度の問題は運用で如何にでも出来る問題だった。実際帝国の船や飛空船を沈めた経験も多い。

 しかし武装飛空船に搭載された127ミリ砲は和の国が持つ大砲より遥かに巨大で洗練されていた。更に言えば装填も照準も自動だと説明された。

 最も今回はそれらを使う予定は無い。

 暫く進むと、武装飛空船は目的地上空に到着する。そして高度を落とすと、ブイを水面に落とす。


「今落としたのは魔物を集める特殊な音を放つ魔導具です」


「音ですか? 」


 ヨシオキの言葉に軍人は頷く。


「本来は魔物が嫌う音を放ち、水上艦の航海を安全にする為に作られた物ですが、どうにも魔物はこの音を聞くと音源を破壊しに集まる全く逆の物になったそうです。

 詳しい原理等は制作した技術開発局の魔法使いに聞かないと解りませんが」


「これはアリスティア殿下の発明品では無いのですか? 」


「いいえ違います」


 それはアーランドの魔法使いも優れた技術を持っていると言う事だった。

 更に水中の魔物を索敵するブイを投下し、音響装置を起動させる。直ぐに効果が表れた。


「大型の魔物が接近方角は11時の方向で距離1000」


「爆雷投下用意! 」


「爆雷投下用意完了! 」


「速度上昇してます! 」


「ブイの回収。連中はアホだ。獲物が無ければ水面に顔を出す。その時に爆雷をくれてやれ! 」


 指揮官の言葉通りだった。音源のある筈の場所に到着したのは巨大なイカの魔物であるクラーケンだ。

 しかし目的の場所が無いと海面に顔を出してキョロキョロと周囲を伺う。そこに爆雷が落とされた。

 爆音と共に水柱が立ち、その衝撃でクラーケンに致命的ダメージが与えられる。基本的に水棲の魔物は防御力はそれ程高くは無い。亀型の魔物等の例外は存在するが、水竜やクラーケンはそれ程高い防御力を持っていない上に、基本的に水棲の魔物は各上とは戦わない。その為ヘリオスの様に強い相手との戦闘経験が殆ど無いのだ。

 爆発に防御する術が有ってもクラーケンはそれを行う事が出来ずにその命を刈り取られる。


「ロケットアンカー射出! 」


 浮かんでいるクラーケンの死骸が沈む前に錨がロケットで発射され、クラーケンの死骸に突き刺さる。

 この船は地上でも係留する事が有るためにロケット推進の錨を装備しているのだが、それを利用してクラーケンの死体を確保したのだ。

 確保すればやる事は一つ。お持ち帰りだ。水棲の魔物から取れる魔玉は水属性の魔力を帯びている事も有り、その入手難易度と有用性から価値が高い上に、クラーケンや水竜は戦闘経験の乏しいカモであるが、上質の素材になる為にこのまま海に捨てるのは惜しい。更に捨てていくと他の魔物の餌になるので害にしかならないのだ。

 その後、クラーケンの死骸を死体置き場として決めていた地点に放置し、先ほどを同じように魔物をおびき寄せては爆雷で殺して持って帰ると言う実に簡単な作業を繰り返す。

 何度か複数の魔物が集まるハプニングが発生したが、武装飛空船に乗っていたアリスティア分身がその場でバルーン付きのモリを作り、それを突き刺して戻ってくるまで海に浮かべると言う手法で解決したが、案の定少し食べられていた。

 そして丁度アリスティアが海底での作業を終える頃には100を超える水竜やクラーケンを駆除していた。


「我が国より多いですね」


「原因は不明ですが、数十年毎に増えるのです」


 外務大臣のヨシオキが指揮官の問いに答える。

 和の国も普段からこれほどの魔物が居る訳じゃない。短時間で100を超える大型の魔物が闊歩していたら、如何に和の国でも海運なんて行えない。

 しかし数十年に1度の割合で魔物が増えるのだ。最も和の国は基本的に古代の浮遊島が着水したものであり、地上の魔物はそれ程多くないので地上は安全だ。

 因みにアーランドは地上の方が危険である。海の魔物は上陸させれば経験不足のカモでしかないが、アーランド内の魔物はゴブリンがオーガに襲い掛かる程の修羅の国だ。普通のゴブリンは臆病で各上の魔物からは逃げるか従属するが、アーランドのゴブリンが血に飢えてるので一切容赦しない。経験豊富な魔物の宝庫である。最悪の環境と言えるだろう。良くぞそんな場所に建国して帝国を退けながら独立を維持出来たものだ。


(アーランドとは敵対するべきではない)


 外務大臣ヨシオキはそう心の中で呟いた。

 ヤマタノオロチの討伐――出荷戦でアーランドの軍事力を理解した気になっていた。


(アレはアレで目を疑った程に異常な光景だった。しかし、航空戦力も異常だ。いや、我が国にはこの武装飛空船なる物の方が遥かに脅威だ)


 ヤマタノオロチ戦で見た戦車は上陸させなければ脅威ではないと思った。今まで通り海で排除すれば良いだけだ。

 しかし、この船の戦力を目の当たりにして、その考えが如何に短絡的なのか理解した。

 戦車なる兵器を生み出すのだ。何故それが飛空船に使われないと思ったのだろうか。いや、使われて欲しくないと思い込んだのだ。

 この時からヨシオキは身命を賭してアーランドとの関係強化を行うと決意した。決してアーランドの牙を和の国に向けてはならない。

 そう考えれば和の国が如何に危うい選択を行う所だったかと冷や汗が止まらなかった。アリスティアのお気に入りの侍女であり騎士であるアリシアを無理やり奪えば最悪の場合、この戦力が出向いて来るのだ。

 たかが一人の為に戦争になる事は無いと当初は思った。確かにそうだろう。しかしハエが近くを飛んでるのならどうだろう?

 普通に叩き落すだろう。下手をするとアーランドはハエを叩き落す感覚で和の国に懲罰を加えかねない状況だったのだ。戦争と認識もされないだろう。

 アーランド王国は魔物と帝国と言う重すぎる敵を抱えながらも独立を維持してきた。その結束力は何処の国よりも強いのだ。

 そして何故アリスティアが直々に出向いて来たのか理解した。


(手を出せばこの戦力が和の国を焼き払うと言う無言の恫喝か。

 危うく竜の逆鱗に膝蹴りを入れる所であった。しかしまだ間に合う。関係は決定的に悪化した訳じゃない)


 もし本気で関係を悪化させるならこんな面倒な手は取らないだろうし、悪化させる意思が有るならアリスティアは和の国に金を落とさないだろう。

 しかしアリスティアは和の国にそこまで強い怒りは今の所は持っていない。精々手を出すなら覚悟しろと脅しているだけだ。

 そして同時に巨額の貿易を行おうともしている。カカオやバナナ等の果実やボーキサイトの輸出は和の国のこれまでの同盟を結んでからの努力は一体何だったのかと言いたくなる程に巨万の富を和の国にもたらすだろう。その金でアーランドの高性能な魔導具を揃えたり、内需を拡大させて国力を増強し、侮られる事の無い国家にするのだ!

 アリスティアは脅しているが関係を強化する意思も有る。つまり今はどん底ではない。


(ならば私のやるべき事はただ一つ)


 既に少数派に転落している反開国派を更に切り崩す。ヨシオキは既にアーランドと同盟を結んでいれば中央国家連盟と全面戦争に成っても勝てると確信していた。

 その為には和の国の閉鎖した環境を改める必要がある。国民の意識を改革し、公家や武士団の意識も改革する。

 更にアーランドに人を送り、進んだ技術を学ぶ必要がある。目に見える成果がもっと必要だ。そう考えると楽しくなってきた。楽しまなければ胃に穴が開くだろう。

 和の国もアーランドと同じく鎖国を行っていた。いや、アーランドは裏で複数の国と繋がっていたので、それ以上の引きこもりだ。故にヨシオキは外務大臣では有るが、それほど外交の経験が有る訳じゃない。人生で最大の仕事になるだろう。

 楽しもう。でなければ心が折れそうだ。ヨシオキは汗を流しながらそう考えていた。

 因みに武士団は真っ白に燃え尽きていた。彼等の多くは非開国派だったが度重なる驚愕の光景についに限界を迎えてしまったのだ。

 口を開いて床にへたり込んでいた。


 そして武装飛空船から降りたヨシオキは呑気にバーベキューの準備をしているアリスティアの姿を見て力が抜けるのだった。

和の国「陸だけじゃなく空もヤベェ」

魔物「(´・ω・`)」

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