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28 蹂躙する決闘 1

 手袋を投げつけられたあの子は目を白黒させている。各国の貴族に認められた決闘は男性同士が基本なので私に挑んだ時点で失笑物ですが今度は女の子である私から決闘を挑む。これは相手を侮辱する行為なのだ。

 この世界で女性の地位は低い。アーランドではいちお女性貴族も認められてますし場合によっては女王も可能ですが継承権は男子優先なのです。なので私にお兄様が居なくて弟が居た場合も私は継承権第2位になります。

 国によっては女性貴族だけじゃなく女性騎士も無い国も多いので女性が貴族になるのは難しいし男性が女性に舐められるのもかなりの侮辱と取られます。さらに帝国はガチガチの男尊女卑な国です。


 「決闘は男である自分からする物だと思ってた?」


 私は首を傾げながら問いかける。あの子は明らかに馬鹿にしてる私の態度に気が付き顔を真っ赤にさせた。


「女の分際で‼身の程を知れ‼出てこいサラマンダー」


 そう言うと後ろの取り巻きが左右に離れ後ろからトカゲが出てきた。

 サラマンダー。火山などの地域に生息する魔物だ。尻尾には常に火が灯り火の魔法を行使できる希少な魔物である。なので使い魔としても人気が高いが生息域が生息域なので滅多に会えない魔物でもある。

 サラマンダーは火の魔法以外にも走るのが早いので移動用にも人気が出ている為、魔物商に行けばそれなりの値段で買える。強いのでテイムするのは苦労するけど一流の冒険者が捕獲し奴隷と同じく隷属の首輪で無理やり支配出来るので高いけど入手出来なくもない魔物なのだ。ちなみにクート君こと銀狼?はプライドが高い魔物なので首輪を見せた瞬間、死をも恐れぬ猛攻を行って来る。捕まえてもご飯を食べずに飢え死にする事が多いので使い魔にしている人は少ないのです。


「魔法使いの決闘は使い魔を使う事が許されている。どうだ‼貴様なんぞ目でもないぞ」


 目の前の人…本気で名前を思い出せないのでAと呼びます。Aは思いっきりふんぞり返ってます。確かに目の前のサラマンダーはもう少しで成体…だけどクート君より小さいんですよね。しかも自分でテイムしたのではなく隷属の首輪が付いてるので買った、つまり自分で従える実力も無しと。実力があれば魔物商で買っても隷属の首輪は要りません。


「別にサラマンダーなんて珍しくも無い。私を驚かせたければ属性竜でも使い魔にしなさい」


 私の発言に野次馬の何人かが噴いた。属性竜の使役なんて物語になる位に珍しいのだ。勝つだけではなれないだろう。でなければお父様の使い魔は竜で埋め尽くされる。


「強がっていられるのも今の内だぞ。俺が勝ったらお前は俺の玩具にしてやる」


 貴族の決闘は互いに要求を求める物だ。勝てば要求を呑むのが決まりだけど要求は相手が叶えれる物なら何でも良い。土地、名誉、女、金何でもありです。そして今回は私の身柄が欲しいそうです。ロリコンですか、世の中の同胞(幼女)の平穏の為にしっかりとした教育が必要ですね。


「じゃあ私が勝ったらアリシアさんに亜人呼ばわりした事を土下座で謝る。後アリシアさん?余り暴れると眠らせるよ?」


 さっきからもがいているアリシアさんに忠告もしないと。みっともないので大人しくお座りして待っててください。


「それと私も使い魔を呼ぶから。そっちも居るし良いよね?」


「はん‼どうせゴブリン程度だろう」


「見て驚くがいい。ふ――――――」


「…」


 私は指を銜えると思いっきり息を吐く………残念ながら音が出る事は無かった。

 何人かの人が笑いを堪えているが別に失敗じゃない。学園の外から物凄い音と一緒に砂塵が見えてきた。流石クート君、耳の良さが別格です。

 この学園はセキュリティーの為高い塀と結界に守られてますがクート君はそれを粉砕して壁に風穴を開けて入って来た。そうクート君が気が付いた時点で失敗はしていないのですよ。


「ワン‼」


 はっはっは‼と尻尾を振りながら私に頭を擦り付けてくるクート君…3m越えの巨体だったのに今じゃ私を乗せれる大型犬サイズ。町に入る際、大きすぎじゃね?ってアリシアさんと話してたら走るのが疲れたと子犬になって馬車に入って来たのだ。どういう原理かは想像もつきませんが私と契約したら出来た。使い方は契約した時に覚えた。としかクート君も分からないらしいのでアリス・フルールの時は大型犬で冒険者の時は子犬になってローブに隠すか本来のサイズになると言う事で決定したのだ。


「…銀狼だと?…ふん首輪も付けれないのか」


 若干引き気味のAは少し下がり…サラマンダーの陰に隠れるように話す。壁は兎も角、結界はかなり巧妙に隠してるので気が付いていないらしい。後、教師が壁を見て気絶しました。


「魔法が使えるのに無知なんですね。普通に私がテイムしたんですよ?そんな物に頼る必要は無い」


 テイムしたか首輪で支配かは隷属の首輪だけでなくピアスなどアクセサリー化してるのも多いので一目では分かりにくいですがテイムは簡単です。額に紋章が出るので一発で分かります。後テイムした場合は魔物もかなり言う事を聞いてくれます。現にクート君は人を襲う気は無いそうです…うちの食事が人肉より美味しいとはクート君の言葉です。

 私の発言にピクっと反応するが特に何かを言う気は無いらしい。確かに銀狼はサラマンダーに比べるとテイムするのは難しいけどサラマンダーの方が強い。だがそれは成体同士での話で相手のサラマンダーはまだ幼体でもう数年しないと成体には成れない。だが私のクート君は一見幼体ですが実際は成体の上に縄張りを持てるほどの実力を持ってます。そして謎のサイズアップでさらに実力も上がっているので下手をしたら私でも勝てない。勿論手段を択ばない&周りの被害を無視するなら私の範囲魔法で消し飛ばせますが。


「ふん、どうせでまかせだ。俺がお前の実力を周りに教えてやろう。お前程度の使い手等この学年No4の実力者である俺には勝てないんだ。田舎者らしく隅っこで大人しくしていれば良い‼」


「そう言うのはNO1になってから自慢する方が良いと思う。せめて次席とかなら凄いけど4番目って何か地味」


私の発言にさらに周りが吹いた。実際NO4の実力者って他人が言えばへー凄いですね。ってなりますが自分から言い出すと微妙ですよ。いきなりNO1だったら私も焦りますけど今の私で学生のNO4程度にも届かない程度の実力しか無いのなら夢を持つ資格は無い。国の平和を目指すなら私は誰にも負けれないのだ。

 無敗。それこそが畏怖を生む。お母様が各国に居る王国筆頭魔導士の中でも特に有名なのは誰にも負けないからだ。無敗故に恐れる。お母様が戦場に出るだけで敵は怯え統率に僅かでも乱れが生じる程に。

 私が目指すのはその先だ。負けない。倒せない。私が出れば敵は負ける。そう思わせる実力と意志が私が欲しい。戦いは怖いけど逃げない強さを手に入れるんだここで逃げる弱虫なら私は隠居する。


「口先だけは一人前だな。おいサラマンダー、あの犬を直ぐに八つ裂きにしろ‼」


「キュ‼……キュル…」


 Aはサラマンダーにクート君を倒すように命令しますが命令されたサラマンダーは明らかに無理でしょ‼って顔で主を見ている。サラマンダーはその本能でクート君と自分の絶望的な戦力差を理解出来てるらしい。

 どう考えてもクート君には勝てないしさっきからクート君のお腹が盛大に鳴ってるのがさらに恐怖を増大させてるのだろう。

 クート君や、魔物同士の戦いはどっちかが死ぬまでだけど…私の目の前で食べないでね。


「凄い弱そう。クート君は…問題無さそうだね」


 勇気を出してクート君の顔を見ると既にご飯だ‼と言う顔をしている。これは酷過ぎる。クート君にはこれは戦闘では無く捕食らしい。あとアリシアさんが宿にクート君を置いてきた時に餌を与えていなかったらしくクート君は現在飢えています。それはもう怖いくらいに。

 明らかな戦力差をAは気が付いてるのでしょうか?そもそも何で私に突っかかって来るのか理解出来ませんがこれは帝国的思考なので仕方ない。あそこは帝国人こそもっとも優れた人種だと宣言できる図太い人達なので他国の人間である自分は理解出来ない。後それと同じ考え方をしていた独裁者は前の世界にも居たしその末路も知ってるので余り良い考え方には思えない。


「ワン‼」


「キュ‼」


クート君は待ちきれないとばかりにサラマンダーを威嚇?してサラマンダーを怯えさせます。しかしサラマンダーの首に付いている隷属の首輪が光ってるので逃げる事も出来ずクート君と戦うしかないようです。哀れサラマンダー、飼い主を選べいないせいで大人には成れないようです。私も魔物相手だとよほど酷い殺し方をしなければ罪悪感を持ちません。だって基本的には人類の敵ですから。


「どうした‼さっさと殺せ‼何の為に高い金を払ってお前を買ったと思ってるんだ‼」


Aは思った通りに動こうとしないサラマンダーを蹴っている。クート君との戦いはそう長引かないと判断し私はAに杖を向ける。早くしないとアリシアさんが魔法を食い破ってくる気がするんです。さっさと終わらせてアリシアさんの教育もしてしまおう。主たる私に対する数々の無礼を謝罪させ反省させてお母様達への報告を誤魔化させるのです。これぞ完全犯罪…ふふ私も悪な女です。


「まだ待つの?その子は戦いたくないって」


 もうお嬢様ぶるのは辞めです…大分前から辞めてますが令嬢モードは言葉が堅苦しくて苦手です。それにさっさと躾をしないとね?馬鹿な話をしてますがまだ私は彼を許していない。アリシアさんの前に跪かせて頭を下げさせる必要があります。それまで私は止まらない。


「貴様‼」


 Aは剣をこちらに向けるとそのまま突撃してきた。それは国の騎士団の訓練を見慣れている自分には余りにも遅く幼稚な突撃。だがこれでさえ私は避けれない。まあ避ける必要すら無いんですけどね。


「何?」


 剣は間違いなく私を切り裂いた。だが私に怪我が無い処か服に傷すらつけれない。安定の【プロテクト】です。

 どうにも生ぬるい。これがこの程度が学生レベルなのでしょうか?…いえ前に見たお兄様はもっと鋭かった。つまりこの程度なのでしょうか?いえまだ切り札を持ってる筈です。殺しはしませんが心を折るには切り札を出させてなお私が圧勝するのが望ましい。それに試していない魔法ならいくらでもあるので殺さない程度に試してみます。

 彼に対するお仕置きはまだ始まったばかりです。

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