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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
ヤマタノオロチを出荷せよ
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301 これはアンデッドですか? いいえ官僚と文官達です

 最近商人達が「人手が足りず部下が死にそうです」と世迷言を言っているが、私に言わせてみれば、うちの官僚や文官達を見ても同じこと言えるの? と言いたい。

 アーランドでは現在私発の新技術を山の様に流している。各種魔導具が工業的に生産される態勢を構築しているのだ。

 結果、それに関する法令の整備や、ヘリオスから貰った財宝や帝国から奪い取った賠償金を財源にした、まさしく国家規模の膨大なインフラ整備等の公共事業が行われている。その結果、官僚や部下の文官達が24時間戦えますか? を実戦する程の仕事が発生したのだ。

 うん、彼等は城で暮らしている程の忙しさだ。

 何やら、仮眠室の窓には脱走防止用の格子が取り付けられてると言う噂を聞いたことが有る。何度か素手で捻じ曲げて帰宅しようとする官僚や文官が居たらしく、オリハルコン製の格子に交換されたらしいと言う現実味のある噂だ。

 そんな彼等は私の開発した魔法薬「元気でハッピーになれる薬」を常用している。いや、し過ぎてしまった。結果、肉体は活性化しているのだが、精神的にアンデッドの様な感じに成ってしまった。宰相さん曰く「まだ使える」そうだ。

 確かに一見アンデッドだけど、仕事はしているからね。

 まあ、こんな感じで24時間戦士が戦っているのを近くで見ているので、商人達の泣き言に耳を貸す気は無いんだよね。

 足らぬ足らぬは企業努力が足りないんだよ。もっと頑張りたまえ。帰ったら文句が言えなくなるまで追加で公共事業を受注させよう。いやぁ景気の良い話だ。


「殿下ぁ~お戻りをぉ~」


「く、来るな! 大人しく城に戻るんだ! 止めろ離せえええええええ! 」


 あっという間にお兄様が亡……官僚と文官の群れに取り囲まれる。おお、容赦なくロープで縛りあげている。絶対に連れ戻すと言う確固たる決意を感じるね。

 お兄様も部下であり、居なくなると困る彼等を斬る訳にも行かないし、「元気でハッピーになれる薬」をキメてる文官と官僚達は地味に強い様だ。あっという間にお兄様は捕縛された。強硬手段を取らざるおえない程に仕事が溜まっているのだろう。

 そしてお兄様を捕まえた官僚と文官達の視線がギロリと私に向けられる。私はジリジリと後退する。


「私も捕まえる気? お兄様みたいに群がってきたらセクハラだよ」


 不敬罪を使うのも已む得ない話だ。


「ヒメサマ……シゴト……シゴト、タノシイデスヨ」


「っく! 」


 既に言語もおかしくなってる。こんな副作用無かったはずなのに……過剰に使い過ぎたんだろうな……

 しかし私には秘策があるのだ!

 私はポケットから「元気でハッピーになれる薬」を取り出して、亡……官僚と文官達に向ける。


「ウオぉぉぉぉ! 」


 すると彼等は朝日を浴びた悪霊の如くもだえ苦しみ、両手で顔を隠しながら私から距離を取る。私は「元気でハッピーになれる薬」を向けたまま前に一歩進む。すると彼等は2歩下がる。


「コワイ……クスリコワイ」


「これを見ても私を連れ帰るつもり? 」


「シゴトガタマッテオリマスヒメサマ」


 ええい諦めの悪い連中だ!

 この状況で私が戻る訳が無いだろう。絶対にとんでもない量の仕事が待っている筈だ。じゃなきゃ、彼等が問答無用でお兄様を拘束するなんて暴挙を起こす筈がない。

 この状況で城に戻れば私は仕事に忙殺されて悪戯をする時間すら与えられないだろう。こうなれば仕方ないお兄様を生贄にするしかない。

 お兄様を生贄にすれば、私が帰国するまでに大分仕事も減っているだろう。これは仕方のない犠牲なのだ。


「選ぶが良い。薬をキメるか、お兄様を連れ帰るだけで妥協するか」


「………」


 亡……官僚と文官達は両手で私の持つ「元気でハッピーになれる薬」を遮りながら互いに顔を向ける。


「アリス! 私を生贄にするつもりか! 」


「……お兄様がいけないんだ。私の提出してる3時のオヤツ法を毎度却下するお兄様が悪いんだ」


 もう300回も提出してるのに、最近じゃ読まずにゴミ箱行じゃないか。絶対に許さないぞ。


「それは法律で義務付ける事じゃないだろう! 」


「アーランドは脳筋過ぎる。せめて3時にはゆとりを持たせて知的におやつを食べる習慣を持たせた方が良い」


 力の信望者みたいな国民性なんだぞ。子供の趣味の第一位はゴブリン退治と言う脳筋過ぎる国民性だ。

 特に何もしなくても、見つけ次第殲滅されるのがゴブリンと言う生き物だ。アーランドにおいてゴブリンは基本的に無害な魔物だ。何故ならば、害を及ぼす前に討伐されるから。

 他国だと繁殖力の高さから、割ととんでもない被害を出す面倒な魔物らしいけどね。アーランドじゃ2足歩行するお小遣いと言う扱いなのだよ。子供が血眼で探し回ってるよ。


「まあ、その話は後だ。私はこれから和の国でバカンスを楽しんでから帰るから、お兄様だけ連れ帰るんだ」


「狡いぞアリス! 」


「すまないお兄様。私は仕事に忙殺されるつもりは無いんだ。頑張って仕事してね。

 さあ、お兄様を連行するんだ! 」


「オオオオオ……」


 亡……官僚と文官達も私を怒らせると割ととんでもない被害を出す事が理解出来ているのだろう。例えば、わんこーずとにゃんこーずが足元で変顔しながら、残像を残す程の速度で高速移動して煽ってくるとか、適当に発明品の量産を命じて法令の整備を強制するとか色々やるぞ。

 それが理解出来たのか、お兄様を担ぎ上げると、武装飛空船の中に入って行った。


「放せえええええ! 」


 私と騎士達は無言で敬礼してお兄様を見送るのだった。




 お兄様が強制送還されると同時に和の国の人達がほっと息を吐いた。亡……官僚と文官達はアンデッドと思えるほどの負のオーラを放っていたからね。威圧感が凄まじかった。更に言えば、髪はボサボサで目元は隈で真っ黒だし、眼も血走っていた。

 うん普通に怖いね。


「しかし酷い有様だったな……労働基準法が必要だと思うよ」


 拓斗の言葉に私は首を横に振る。


「一応策定の動きは有るけど、宰相さんと官僚と亡……文官が強力に反対してるよ」


「なんでだよ! 」


 宰相さんは「1日8時間労働は人権侵害です! せめて23時間50分にするべきです! 」って言ってて、亡……官僚や文官達は「ナカマハ、オナジクルシミヲワカチアウ」と言う意味不明な反論をしてる。

 因みに経済界からは「策定はよ」と山の様な陳情が出てる。人材雇用担当なる役職の人達が悲鳴をあげてるとか寝言言ってるよ。


「宰相は兎も角、他は道連れにしたいだけじゃないか……」


「そのせいで策定が遅れに遅れてるんだよね」


 まあ、無くても私は困らないけどね。やりたくない時は周囲に押し付けるのが私の流儀だ。その際に利権でも渡せば文句は言われないのも学習済みだ。餌で釣って面倒事を押し付けるのは楽でいいよ。

 因みに彼等は武装飛空船の転移装置でやってきたので、既にアーランドに戻っているだろう。大使館に置いてる奴と違って転移の人数制限が無い奴だからね。


「さて、私はお土産とかを買って、仕事が減るまでバカンスを楽しもう。ここは暖かいし海とか良いかもしれない」


「それなら皇族の方々がお使いになるプライベートビーチが有ります。と言うかそこ以外は水竜やクラーケンの危険が有りますので、海水浴には向きません」


 和の国の外務大臣のヨシオキさんがニコニコ顔で教えてくれた。この人はヤマタノオロチを出荷した辺りから凄い好意的な人だ。

 プライベートビーチは皇族等の貴人専用に結界を張って水生の魔物の侵入を防いでる特別なビーチらしい。私達が使うなら確実に許可を取ってくれるそうだ。お礼的な感じだろう。

 後は都に戻って色々と買い物がしたい。美味しいお菓子とかあるかもしれないからね。和の国のお菓子は大陸お菓子大全と言う誰が編集したか分からないけど、大陸中のお菓子を記載した本(多分暗部が作ったと思う)が有るんだけど、それに載って無いんだ。遠すぎて和の国までアーランドの諜報が届いてないのが原因だろう。

 因みにこの本に乗っているお菓子は殆どアーランドのお店で買える。私が他国にそれ程興味を持たないのもこれが原因の一端だろう。

 でも他国のお菓子が普通に売ってるって不思議だよね。この世界の情報伝達能力は低いから不自然ではある。別に不利益無いからどうでも良いけど。

 そしてこの国は気象的には熱帯地域だが、日本っぽい所がある。つまり私が前世で好物だった大福が存在する可能性が有るのだ! あったら2万個くらい買って帰らなければならないだろう。

 後はフルーツとかも欲しいね。工芸品は……うーん……お土産になるかな? これと言って興味ない。妖刀とかカッコいい武器が有れば買うけど。店売りしている可能性は低そうだ。

 え、カリバーンは店売りしてたって? アレは魔剣グラディウスとして堕ちていた時に前の持ち主を呪い殺してて、その遺品として売りに出されてたっぽいからね。売ってた武器屋の人も正気じゃなかったし。


「良し、まずは買い物を先にしよう」


 ついでに都には温泉も有るらしいので、最近の疲れを癒そう。私達は飛空船で都に戻るのだった。





 一方その頃ギルバートは。


「なんだこれは……」


 連行されたギルバートは執務室を見て絶句していた。

 まず部屋の殆どが天井まで書類の山で埋まっていた。執務室は4つの机が有る。国王であるドラコニア用の物と、王太子であるギルバート用。そしてアリスティアとシルビアが兼用している机と宰相用だ。基本的に王宮の執務室は王と王太子と宰相の3人が執務する部屋なのだ。アリスティアとシルビアは執務は苦手で有り、アリスティアは最近必要になったので置かれている。

 これは3者が一緒に仕事をしていた方が情報伝達が速いと言う理由である。

 また、それが原因で執務室は結構な広さを誇っているのだ。しかし、現在それは中央の人が二人ギリギリ通過出来るスペースを除いて天井まで積みあがった書類の山が築かれていた。

 細い通路を通ると、ドラコニアは机で干からびていた。両足と腰には武骨な鎖が取り付けられている。しかし、ギルバートがドラコニアの視界に入ると、ドラコニアは当たり前のの様に鎖を引き千切ってギルバートの元にジャンプして机を飛び越えてやってきた。そして両手でギルバートの肩をがっしりと掴む。


「ようやく……ようやく帰ってきたか! 俺は退位する。お前が今日から国王だ」


「……寝言は寝て言ってください。後20年は退位なんてさせませんよ」


 寝言を言うドラコニアにアイアンクローを決めると、ギルバートは強引にドラコニアを椅子に座らせ、新しい鎖で縛る。

 チラリと横を見るとキラキラと輝きながら書類仕事に励む宰相ボルケンの姿が映った。

 年齢は20台半ば程度であろうか。仕事のし過ぎで若返っていた(実年齢は60台半ば)。しかも机をコの字に並べ、3方向同時に仕事をしているので阿修羅の様な残像が出ている。物凄い処理能力だが、彼の処理速度を持ってしても書類が減る事は無い様だ。人材不足は王宮でも深刻であった。


「……幸せそうだな」


「人生とは素晴らしいものですな! 」


 相変わらずの仕事中毒者であった。

 まあ、彼は回遊魚みたいな存在なので1年も仕事をしなければ老衰で亡くなってしまうのだが。

 ギルバートはため息を吐くと、自分の机に座り書類仕事を始めるのだった。

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