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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
ヤマタノオロチを出荷せよ
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300 大魔導士復活計画

遅れました。内容は考えてるのに指が動かない事は初めての経験でした。

 土の精霊王代理は拓斗の転移により大海原へと旅立っていった。


「良し、これで土の精霊王代理は解放されたね」


「解放と言うか瓶に封印して海に捨てただけですよね? あんな事して大丈夫なんですか。土の精霊を統べる精霊ですよね? 」


 アリシアさんの顔色が若干悪い。まあ、精霊は自由な存在だが、怒らせると容赦なく災害を起こす危険な側面も有るからね。

 でも問題ない。


「大丈夫だよ。長年研究所の動力源やってた影響で下位精霊並に力弱まってるし、アーランドに嫌がらせして来たら滅ぼすだけだし」


 私に掛かれば精霊を滅ぼすの事も容易な事だ。特に低位精霊クラスまで弱体化した精霊なんて精霊王代理であっても、私には勝てないよ。

 これは私の魔力の特殊性だ。私の魔力は精霊に近いのだ。

 最も近いだけで精霊の魔力と同じじゃない。あくまで近いと言うだけだ。

 こうなった理由は私の魂が精霊王の力を取り込む形で転生した影響だと思う。

 本来なら自分の魂に寄り添う形で付与される精霊王の力が私の魂の一部に成っている事で部分的に魂が精霊化しているのだろう。最も、切り離しても問題ないように組み込まれてるので精霊王に力を返しても問題は無い。無論弱体化するだろうが。

 それで、精霊に近い魔力のお陰で精霊に攻撃魔法使うと結構効くんだよ。

 最もそれより大問題なのが精霊への魔力供給だけどね。

 精霊の成長とは保有魔力の増加だ。精霊は自身の有する魔力で格が変動する。そして、それは本来精霊が生きた年月で変わる。無論例外は居るらしいが、基本的にはこれだ。

 精霊なら直ぐに自然の魔力を吸収して強くなれると思う人が居るかも知れないが、それは人間と同じで無理。まず自然の魔力は精霊や人間の魔力と質が違う。

 これを無理やり自身の魔力に変換出来るのは精霊王だけだ。つまり、私は可能だ。但し、人間の肉体が耐えれないので負荷が強い。最悪死ぬ。

 リリーの持っている魔眼である『吸魔の魔眼』は自然の魔力を人間の魔力に変換して取り込める極めて珍しい魔眼だけど、これも使うと疲れる。魔眼は精神力か魔力。あるいは両方を消費する物だ。更に言えば、『吸魔の魔眼』は吸収速度はそれ程高い訳じゃない。まあ、常時魔力ポーションを呑み続けている様な物だけど。

 精霊も同じで自然の魔力を自分の魔力と混ぜ合わせてゆっくりと自身の魔力に変えるのだ。これは普通の魔法使いと同じだね。

 でも私は周囲の自然の魔力を無理やり取り込める。そして私の魔力は精霊の魔力に近い。つまり私と契約している精霊は魔力の吸収率が異常に高いのだ。私から好きなだけ魔力を取り込んでいるからね。

 最初は光と闇の精霊だけが上位精霊だったのに、今じゃ他の4精霊も上位精霊だし、光と闇の精霊は精霊王の記憶にある側近クラスの大精霊になっているのだ。

 恐らく土の精霊王代理もそれに気がついたのだろう。鬱陶しいので自然に返したけどね。

 さて、厄介そうな精霊王代理も自然に返したし、私達は精霊王代理が閉じ込められていた培養室の調査を行った。


「むふー。ここの研究資料は初めて見た物ばかりだ」


 ここは古代魔法王朝時代の最先端技術の結晶だ。正式に閉鎖された施設っぽいけど、ここで研究を行っていた研究者達は施設の再稼働を諦めていなかったのだろう。根幹技術はそのまま残してある。崩落した区画が無事なら更に資料が山の様に見つかった事だろう。実に残念である。


「魔導戦艦にも山ほど魔導書とか積まれていたんだろう? 」


 お兄様が私の言葉に疑問を持つ。


「確かに魔導戦艦にも大量の技術書が積み込まれてたよ。

 多分古代魔法王朝の持っていた技術を後世に残したかったんだろうね。でも最先端技術は余り多くなかったんだよ」


 確かに世の魔法使いが見れば絶叫をあげる程の発見だった。実際技術開発局所属の魔法使い達は血走った眼をしながら絶叫していた。

 しかしアレは古代魔法王朝崩壊時に慌てて持ち出した物だ。恐らく急いで手あたり次第に書物を船に積み込んだのだろう。内容が同じ書物とか、重要な部分が別の本に書かれているのにそれが無いとか、かなり雑だ。

 それでも古代の英知の結晶ではある。でも、ここの資料は今の所見つかっていない。ここは秘密裏に運用され、秘密裏に閉鎖された研究所だ。ここが残っているのが奇跡なのだ。


「成程、君が勝手に作っている研究室で何が行われているか我々が知らないのと同じだな」


「……内緒」


 お兄様よ。ロストナンバーズが勝手にやっている事まで私は責任を取らないぞ。奴らは反逆者だからね。見つけ次第地下の造船所送りだ。

 一応私が研究している物の一覧は渡しているが、詳しい説明はしないので、お兄様達も首を傾げる事が多い。

 むふー。後ちょっとで全自動果汁絞り機が完成するよ。これで果汁ジュースが作り放題だ。後、ルドルフが要求してる対地攻撃機も完成しそう。

 試作品はエンジン出力が高すぎて空中分解して壊れたらしいが、操縦していたのは分身なので問題ない。

 更に確保したヤマタノオロチの眼を錬金術で加工して兵器も作らないとね。拠点防衛用モアイ像を作るんだ。

 さて、話を戻すが、ここで研究されていたのは主に生物兵器だ。

 地球の様に細菌兵器とかではない。ヤマタノオロチの様な強力な生物を作りつつ、不老不死の研究も行っていた。

 この培養室に残っていた資料は主にホムンクルス製造と、対象の不老不死化の研究だ。

 まずは人間と違いの無いホムンクルスを作って不老不死化が出来ないか試していたのだろう。資料を見る限り、ある程度の成果は出ていたようだ。

 しかし、研究は打ち切りになっている。つまり深刻な問題が解消出来なかった。

 生み出されたのは不老不死に近い技術だ。但し、古代魔法王朝にとって代償は無視できない物だった。

 魔法の喪失と、完全な不老不死に至っていない事だ。

 まず、この技術を使って人間を改造すると寿命はほぼなくなる。しかし、対象は魔法が一切使えなくなるらしい。

 古代魔法王朝は現在の魔法王国もビックリの魔法使い至上主義国家だ。魔法の喪失は自身の権力を失う事に直結したのだろう。到底容認出来なかったらしい。

 更に言えば、不死の部分も完全ではない。限りなく不死に近いと言うだけだ。

 具体的には連続で細胞が傷つくと再生の際に崩壊する危険性が有るらしい。試験ではホムンクルスが1万回程連続で再生した際に崩壊して砂になったそうだ。これは個体差が有るらしいので、具体的な数は不明。やってみないと分からないようだ。

 更に細胞分裂がおかしくなって、老化と若返りを不定期で繰り返す。

 それだけでも凄いのだが、魔法を失うだけじゃなく不死すら不完全だと言う結果に古代魔法王朝の支配層は不満が大きかった。彼等は持っている権力をそのままに不老不死に至りたかったのだろう。

 つまりヤマタノオロチも同じだ。何か未知の物質を核に作られているが、殺し続ければいずれは細胞が崩壊するのだろう。ただ、何時死ぬのか分からないので太陽に捨てるのが一番だね。そのうち死ぬでしょ。

 魔法の喪失は再生の術式が常時展開しているせいで他の魔法を行使するリソースが足りないと見た。塵に成っても再生出来る秘術レベルの魔法が常駐するのだ。私かエイボンくらいの魔法使いでも初級魔法……いや、私だと魔力制御でかなりのリソースを食っているのでエイボンくらいしか魔法は使えないだろう。と言うか私にこの秘術を掛けると最悪私の持つ膨大な魔力を制御出来ず、魔力暴走を引き起こして半径20キロは焦土になるだろうね。持っている魔力が消える訳じゃないみたいだしね。


「つまり不完全という事か。

 一応聞くけど不老不死って可能なのかな? 」


 お兄様の言葉に私は呆れた表情をしているだろう。


「いや、別に成りたいとは思わんよ。長寿の苦痛はエルフのような長命種特有の悩みだからな。彼等の苦悩を思うと長生きするのも大変だって理解出来るさ。

 ただ、この技術が公になるのは拙い。有りえないと思うが、他に同様の研究施設が存在し、それが現存していた場合の事を考えての事だ」


 まあ、エルフの様な長命種が自分達だけで集落を作って引き籠るのも短命種との寿命の差が理由の一つだからね。

 せっかく仲良くなっても長命種からすれば短命種の寿命は短すぎる。多くの別れに耐え切れず同胞の居る森に籠るエルフはそれなりに居るのだ。

 まあ、不死者の願いなんて何処も同じだ。限りある命を願うか、壊れて生にしがみ付く怪物になるかだ。どっちにしろ正常な精神は保てない。


「可能か不可能かで言えば可能だね。但し精神がどうなるかまでは保証しない」


「ふむ、詳しく」


「そこに不死者の極みが居るじゃん」


 私は楽しそうに研究室を見回って、設備を調べてるエイボンを指さす。


「ある意味エイボンは不死の極みだよ。

 ただ、精神の波はかなり制御してるね。大きく感情が動かない様にしてるんだと思う」


 エイボンは肉体を失っているといっても過言じゃない。肉体と言う重しが無いせいで感情の制御は生身の人間より困難だろう。肉体と言う楔が無いせいで怒りや悲しみの感情を抑えきれずに負の感情のループに陥る危険性はある。


「成程、ではこの施設を再稼働させた場合は不死に近い兵器が作れる可能性はあるのかい? 」


「それは無理。材料が希少過ぎる。それに設備が有ればどうにか出来る物じゃない」


 資料を見た限り、現在では滅多に手に入らない物が数多く存在する。

 閉鎖されるのも当然なくらい資金を貪った事だろう。当時でも滅多に手に入らない希少素材が湯水の如く使われた筈だ。


「例えば、精霊が自分の魔力を結晶化させた精霊結晶なんて魔法王国の国宝に成ってるじゃん」


「確か錬金術の触媒で、世界樹の素材並に手に入らない代物らしいな」


 精霊にとって魔力は重要な意味を成す。そして精霊結晶は精霊と契約しただけじゃ作れない。その精霊が心から願わないと精霊でも作れないのだ。更に言えば、精霊でも無視できないレベルの魔力を消費するので、上位精霊クラスしか作れない代物だ。

 その代わり世界樹の素材並に応用が効き、錬金術では至高の触媒とも言われている。魔法王国に有るのは指先程度の大きさの物だ。どっかの高名な精霊使いを殺して奪い取ったんだっけ?

 因みに私は精霊への魔力供給と言う裏技で小山になるくらい宝物庫に仕舞ってある。増やし過ぎたね。

 精霊結晶以外にも数多くの素材が必要だ。まあ、私なら素材持ってるけどね。ヘリオスのお宝に材料が混ざってたが、それはアーランドに引き渡していない。魔法後進国のアーランドじゃ使い道が無かったのだ。今なら有るけど。

 そんな事を考えているとエイボンと眼? があった。


「エイボンの体作る? 」


「お願いできますカ? 」


 エイボンは体の維持で滅茶苦茶弱体化してるもんね。


「素材はブラッシングの時に抜けたアリシアさんの尻尾の毛に、引っ張ってたら抜けたクート君の髭。焼肉食べ放題の代わりに無理やりひっぺがしたヘリオスの逆鱗に研究所に入る前に拾った草(唯の雑草。効果は無い)。うん作れるね」


「ワタシの骨も提供しましょウ」


 そう言ってエイボンが頭蓋骨から背骨の一部を取り出すと私に手渡す。


「ワタシの体で残っているのはこれだけでス。魔法で保存しているので使えるでしょウ」


 魔法で保存してるならDNAも採取出来るかも知れない。上手く行けば、拒絶反応の無いホムンクルスの肉体を作り出せるだろう。

 因みに拒絶反応が起こると記憶や知識・自我が完全に消し飛んだり、最悪廃人に転生する可能性が有るので、適当な体を用意して憑依するのはおススメしない。ゴーレムに憑依なら問題ないけどね。


「後で記憶と知識を借りるよ。無いとホムンクルスに魂を移植した時点で記憶消えるからね」


 記憶と知識の転写技術なら転生前から持っている。安全策として記憶と知識のコピーは取っておくべきだろう。

 ある意味前世の私が願った通りの蘇生になるだろうね。

 最も前世では魂の存在を確認した時は手遅れだったけどね。エイボンみたいに自力で現世に残っていなければ魂は直ぐに別の生へと転生してしまう。完全な蘇生は肉体から魂が零れ落ちる僅かな時間にしか行えないだろう。うん、地球じゃ無理だ。


「それなら私の方で何とか出来るでしょウ。ワタシの方で調整しまス」


 エイボンも記憶と知識の移植が可能だったのか。恐らく肉体の再構築は考えていたのだろう。現状だと、エイボンのポテンシャルの殆どが己の存在の維持に費やされている。このせいでエイボンは大魔導士としての実力を発揮出来ない。

 とは言え、私もホムンクルスの製造は全く考えた事が無かった。前世の一件が軽くトラウマになっているのだろう。後はホムンクルスの必要性が無い。使い潰しの効く労働力なら分身が山ほど居るからね。アレは良いぞ。生み出した瞬間に逃走しようとする悪癖や、反逆を企んだり反抗的な態度などのデメリットも有るが、命令すれば従順だ。生み出すのもホムンクルスみたいに希少素材を使う必要も無い。



「成程。じゃあ続きはアーランドに戻ってからね」


「分かりましタ」


 まずはここの設備をしっかりと調べて同じ設備を揃える必要が有る。むう、人員が足りない。未だに地下ドックの底で穴を掘っている穴掘りガチ勢から人員を割こう。


「……」


 調査に戻ろうとしたら、拓斗がじ~っとこちらを見ていた。


「言いたい事は分かるけど、流石の私も懲りたからね」


「……本当に? 」


「流石にね」


 言いたい事は分かるが、今更前世の家族を蘇生させようなんて無謀な事は考えないよ。

 私がそう言うと、拓斗は無言で頷いた。


 そして、調査を一通り終えて、研究所の外に出た時、飛空船の中から亡者の群れが溢れだしてきた。


「オオォォ……」


「んな! アンデッドだと! 」


 和の国の人間が刀を抜いたり、槍を構える。対するアーランド勢は亡者の群れに哀れみの視線を向けると、和の国の人達との間に入る。

 私が前に出て説明する事にした。


「すみません彼等は一応生きてます」


「殿下ぁ~~~お戻りをぉ~~~」


 彼等は死者ではなく官僚達であった。

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