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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
ヤマタノオロチを出荷せよ
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294 ヤマタノオロチ出荷戦 ④

 ヤマタノオロチの全ての首の根元にギロチンを付けて3日が経った。


「むふふ。首が748個も手に入った。目は倍の1796個。良いねアイオーンの瞳が作り放題だよ」


 これをモアイ像に仕込んで国境沿いに置けばモアイ像は立派な守護像になる。今は亡きイースター島の人達も喜ぶだろう。

 モアイ像は良いぞ。あの独特なフォルムは気に入っている。是非アーランドにもその素晴らしさを知ってほしい。何故か私の邪神像とか言われてるからね。解せぬ。

 私が邪神を信仰する筈がないだろう。アイツが出来る事は私も大抵出来るのだ。信仰する価値が無い。

 最もそれは行わないけどね。それは私が邪神になると同義だ。面倒極まりない。テトも邪魔するだろうし。

 さて、目の前には哀れな古代の生物兵器であるヤマタノオロチが一匹。

 その全ての首の根元には断頭台が設置され、再生する度に首を刎ねられる。再生には魔力を消費する為、ヤマタノオロチは魔力を垂れ流しにしているのだ。

 何故ここまでされて首を再生する事に拘っているのか。簡単だ。ヤマタノオロチは首が無ければ大した事が出来ない。何故なら封印魔法で体の自由が利かないのだ。魔法を使おうにも脳が無ければ術式の構築も出来ない。無意識レベルで発動する魔法は聖剣が邪魔で発動しない。

 つまりヤマタノオロチが何かをする為には首の再生が絶対的に必要なのだ。


「楽勝過ぎて欠伸が出そうだね」


「君は転生してから慢心家になったよね」


「実際相手にならないよ。もっと対マダム用の兵器を30は用意してたのに。封印だけで終わるなんて思っても無かった」


 マダムなら残りの30の手段を用いても……五分五分だし……いや、勝率は4割……ごめんなさい1割以下です。調子にのりました。

 拓斗も暇そうだ。実際、断頭台を設置してから毒の注入も止め、ヤマタノオロチの首を刎ねるのを観察するしかやる事が無い。

 既に周囲の毒も浄化したので結界も解除した。困ったな。本格的にやる事が無い。ちょっと帝国に宣戦布告してきて良いかな?


「ニコ」


 駄目らしい。お兄様が黒い笑顔でこっちを見てる。最近勘が鋭すぎない?


「ちょっとだけ。国家予算分くらいお金分捕ってくる程度なら……」


「次やったら確実に中央国家連盟が介入してくるだろう。それに国家予算を分捕るのはちょっとの範疇を超えてるよ。

 第一帝国にそれだけの金が残っていると思うかい? 今だって我々王国同盟に貪られているのに」


 そう言えば内乱煽って物資売ってたっけ。お陰で次期皇帝を名乗ってる皇族が30人程居て、独立運動や重税からくる暴動が頻発しているらしい。残っている軍事力も日に日に減っているから、もうアーランドの敵じゃないね。まあこっちも軍の再建で大忙しだけどね。

 中央国家連盟も帝国の内乱で稼ごうと動いたらしいけど、ジルビットの方が商売では上手らしく、完全に利権を王国同盟に奪われているそうだ。

 しかも質が悪い事に、特定の勢力を支援するのではなく、全ての勢力に秘密裏に支援しているのだ。そのせいで才能が有る皇族や貴族の居る勢力が有っても戦況が有利にならない。有利になると輸送を妨害されたとか適当な理由で支援を減らして他の勢力を煽ると言う悪辣な方法を取っているのだ。

 ついでに有能な皇族と貴族の居る勢力を他の勢力に潰させて将来的な脅威も排除している。王国同盟が極悪過ぎる。しかも、この手法を提案したのがお兄様だと言うのだから恐ろしい。一見穏やかな王太子であるお兄様は王国貴族全員が恐れる程の腹黒さを持っているのだ。

 そんな話をしながら私は暇つぶしを続けた。どうせヤマタノオロチの魔力が尽きるまでは暇なのだ。

 そしてそれから3日が経った


「拓斗、カッコいいと思わない? 」


「何で敵を改造してるんですかねぇ……」


 私達の目の前には改造され、機械の首を付けられたヤマタノオロチが居た。


「メカキングギ○ラみたいでカッコいいと思う」


「いやいや」


「このまま改造してペットにするのも有りかと思う」


「駄目に決まってるだろう! 」


 お兄様が反対する。私は騎士達に視線を向ける。彼等ならきっと理解してくれるはずだ。ダサい生物兵器からサイボーグに生まれ変わったヤマタノオロチの素晴らしさがね!


「カッコいいのは認めますが……城に置くには大きすぎませんか? 」


「確かに心躍るフォルムですが邪魔ですよね」


「ば、馬鹿な……」


 誰も賛同してくれなかった。せっかく改造したのに。

 私が項垂れると同時にメキメキと嫌な音が響く。ヤマタノオロチからだ。

 私がヤマタノオロチに視線を向けると驚愕の光景が広がっていた。

 ヤマタノオロチの機械化された首の下から新しい首が生えて来たのだ。いや、普通に再生しただけだ。せっかく付けた機械の首が無残に壊され地面に落ちる。


「こ、コイツ」


 私の怒りゲージが臨界点を超えた。

 せっかくダサい生首からカッコいい機械の首を付けたのに要らないと言われたのだ。

 私はパチンと指を弾く。それと同時に再生した首がギロチンで刎ねられる。


「どうやら教育しないとペットに出来ないようだね」


「教育のしようがないと思うよ」


「……私のペットに加えるには知性が足りなかったか。そこ、ヘリオスを見ない」


 ヘリオスは一応従順だからね。ヤマタノオロチみたいな事はしないだろう。多分。


「ところでもう毒使ってないんだよね? 内部の分身どうなってるの? 」


 露骨に話を変えて来るお兄様。

 でも、そう言えば戻ってこないね。魔力的には消えてない筈だ。


「ちょっと中を見て来る」


「ちょ! 」


 私はストレージカードを展開し、ダースベ○ダーになると、首の断面から内部に入る。

 内部は正直酷い場所だ。私は食道を泳ぐように胃を目指す。


「痛い。って何か通路になってる? 」


 体内に潜って直ぐに私は落下した。周囲は金属製の道が存在し、明かりまで設置されている。


「成程、最初からサイボーグだったのか」


 内部構造なんて知らなかったよ。これはもしかして制御室的な物が有るのかな? いや、あり得ないだろう。制御出来ていれば封印処分されてないし。

 じゃあ何でこんな物が? 考えながら少し進むと扉が有った。私は躊躇いなく開く。場所的には胃の辺りだ。この先に何があるのか楽しみだ。財宝とかあるかもしれない。

 扉を開けると窓の無い部屋だった。特に珍しい物は無い。部屋の中央には椅子とテーブルがあり、人がお茶を飲んでいる。


「(´・ω・`)」


「(´・ω・`)」










 私は無言で帰還した。


「あ、戻ってきました」


 体内から脱出するとアリシアさんが駆け寄ってきた。止める間もなく体内に入ったからね。心配させたかも知れない。


「アレ? 分身は? いや、本体? 」


 次にお兄様が駆け寄ってきた。


「私が本体だよ」


「分身は? 」


「奴なら死んだ」


 とんでもねえ奴だったよ。ヤマタノオロチの内部に巣を張っていた。アレ作ったの分身じゃないか。私の期待を返せと言いたい。

 仕事が終わると次の仕事があるからとヤマタノオロチの内部でサボっていたのだ。しかし奴は出荷したので問題ない。

 あ、でも研究は少しだけしてたみたい。ヤマタノオロチの血も魔導具の材料になるらしい。まあ、別にヤマタノオロチの血でも問題ないと言うレベルだけどね。高位の魔物等の血を使った魔導具は少数ながら存在する。それに使えると言う程度だ。


「だからってこれは酷すぎる」


 魔導具の材料になる事が判明して次の日。ヤマタノオロチの体中に杭が追加された。

 鱗は邪魔だったので拓斗が精神剣を使ってテコの原理で引っぺがしてくれた。

 杭は内部が空洞になったタイプでそこから血を採取している。


「さあ、どんどん再生するんだ。肉はクート君が割と好みで、血と眼は魔導具の材料。骨は……肥料? 鱗は師匠へのお土産。ヤマタノオロチに捨てるところ無しだね」


「ちょっとピリピリするのが良いな」


「それ毒が残ってる奴だよ」


 クート君は毒で汚染されたお肉も美味しそうに食べていた。ヘリオスは少し食べると「好みじゃない」と別のお肉を食べていた。

 わんこ―ず達にも人気のお肉だ。


 そうか私が間違っていた。コイツは敵じゃなかったんだ。そうヤマタノオロチは資源だったのだ!

 ならば最大限採取を効率化しなければ。

 何やら再生したヤマタノオロチの眼が死んでる気がするが気にしない。一瞬で首を刎ねられるのだ。気にする必要などない!

 拓斗は精神剣でお肉の採取を任せよう。何かヤマタノオロチが懸命に防御魔法を自分に掛けているせいで無駄に硬いからね。

 血はどんどん集まるからこのままで良し。眼も同じだ。

 こうして解体を続けて暫くすると、念のために呼んでいた武装飛空船がやってきた。航海の訓練に丁度良かったよ。最も道に迷ったので、私が持っている携帯目指して途中から一直線で来たので、いくつかの国の領空を侵犯したが見つかっていないので問題ない。


「姫様……我々が必要でし…たか? 」


 艦長がヤマタノオロチの有様を見ながら呆れた様に尋ねる。


「丁度良い所に来てくれたよ。ちょっと魔力供給装置借りるよ」


 武装飛空船は都市の防衛も任務としている。今はまだだが、将来的にアーランドの都市には都市防衛結界の魔導具が設置される予定だ。しかし、それは万能ではない。魔物の物量で押し切られて破壊される可能性もある。

 だから武装飛空船には外部に魔力を供給する装置が積まれている。これで魔力が足りない時に武装飛空船から魔力を供給出来るのだ。

 何故これが必要かって? 簡単だヤマタノオロチの殆ど魔力が尽きたのだ。中々再生しない。これでは効率的な採取が出来ない。

 でも聖剣抜くと体の方から魔法を放ってくる可能性が有る。じゃあ聖剣を刺したまま魔力を供給すればいいのだ。

 幾人かの船員がホースを引きずって来る。


「何処に差し込めば宜しいですか? 」


「うーん。首に刺すと再生した時に外れそうだし……拓斗が肉を削いでる場所も同じだね。ちょっと待ってて」


 私はヤマタノオロチの周囲をグルグルと回って良い場所が無いか探す。

 すると尻尾付近に穴を発見したのだ。


「ここで良いと思うよ」


「「「では、せい! 」」」


「キシャアアアア! 」


「うお! 」


 びっくりして転んだじゃないか! 死力を尽くして一気に首が再生したヤマタノオロチだが、案の定首を刎ねられた。


「全くもう。驚かせないで欲しいよ。魔力供給開始! 」


「「「了解しました! 」」」


「キシャアア! 」


 魔力を流し込んだ瞬間、全ての首が勢い良く再生したが、全部刎ねられる。


「うん生きが良いね」


 お前を倒すのはもう少し先になるだろう。もうちょっと素材を取らせて貰うぞ。

 私は腕を組んでうんうんと頷いたのだった。

Q 何処に刺したの?

A 尻


 アリスティアはヤマタノオロチの尻に刺した事に気がついていません。

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