293 ヤマタノオロチ出荷戦 ③
最近遅れ気味ですよね。エタるつもりは毛頭ないんです。
原因としては仕事が忙しくて書いてる気力を維持できないんですよ。最近暑くなってきて鬱陶しい季節ですしね。
なるべく更新は定期的になるように努力します。
私はアリシアさんに髪を乾かして貰いながら、精霊魔法でヤマタノオロチ居る場所から外側に結界を張る。
これは浄化の結界だ。風の精霊が毒を弾き、光の精霊が毒を浄化する魔法だ。
ヤマタノオロチは全ての首を振りまわして悶え苦しんでいる。
「毒に対する耐性は持ってないみたいだね」
「仮に持っていても姫様の毒に耐性が有るとは思えませんが……」
「と言うか毒まで作ってたのか! 」
やべ、お兄様に毒作ってるのがバレた。私のほっぺがお兄様に蹂躙される。
「危ない物を作ってはいけないって何時も言ってるだろう? どうして悪い事ばかりするのかな? 」
「おひいはまいはい」
私の頬保護条約が必要だ。何でお母様もお兄様もマダムも執拗に私の頬を攻撃するのだろうか。いや、お母様とマダムはお尻もドラムの如く叩くけど。
そんな事は後だ。私を縛る鎖を破壊して自由になれば良いだけの話だ。自重と言う言葉は私の辞書には無いのだ。他にも妥協とか平和とか色々抜けてるけどね。
ヤマタノオロチは頑張っている。定期的に分身を吐き出すのだが、吐き出された分身は一時的に力尽きたヤマタノオロチの口から再び体内に侵攻して毒をまき散らす。
アレ、若しかしてもう砲撃する必要が無い?
「ヤマタノオロチ弱くね? 」
「一体どんな毒を使ってるんだろうね」
「拓斗、使ってる毒ならVXガスを主で、他にも色々とブレンドした私スペシャルだよ。ヘリオスなら5分で死ぬね。クート君には効かないけど」
ヘリオスも古竜だから毒耐性が強い方だけど、私の毒には耐性が無い様だ。何故かクート君は耐性が有るので恐らく効かない。
「猛毒持ちのヤマタノオロチすら地獄の苦しみを受けてるのにクートには効かないのか……」
そう言えばコイツ毒持ちだったっけ。一度も使う様子が無いから忘れてた。
そんな事を考えながらヤマタノオロチを観察している私達。
その時、苦しんでいたヤマタノオロチの首の一つがこちらを向く。怪しい極彩色の煙を口から出しながら(私の毒)血を吐くヤマタノオロチ。しかし、その瞳はまだ諦めていない。
『お前も道連れだ』と言う意思を感じられた。何かするつもりなのだろう。
ヤマタノオロチが口を開く。多分毒のブレスでも吐くんじゃないかな? 私はそう思った。
まあ、撃たれても結界で弾かれて浄化されるだけだけどね。でもそれが我慢できない人も居た。
「誰に毒を吐こうとしてるんだ? 」
先ほどまで私の近くに居た筈の拓斗がヤマタノオロチの頭の上に居た。
「何時の間に」
「転移だね。発動だけなら私よりも早い」
流石は女神の選定した勇者だね。勇者専用の魔法は詠唱も殆どない物だ。これは汎用性が無く、勇者にしか使えない魔法であるので、私的には価値は無いので研究対象外だ。
拓斗は毒を吐こうとしていたヤマタノオロチの首を刀で切り落とす。毒を吐こうとしていた首が地面に落ちる。凄まじい切れ味だ。あの刀……聖剣かな? いや、それにしては力が弱い。
多分女神は聖剣すら生みだせない程に弱っているのだろう。あれじゃお兄様の刀に真っ二つにされるね。精々切れ味の良い刀程度だ。
HAHAHA無様だな女神アナスタシア。今のお前はダシを取られた後の煮干の様な存在だ。無能神に相応しい状態じゃないか。
まあ、障壁も無ければ防御に魔力を回しきれないヤマタノオロチの首くらいなら拓斗の技量と合わせれば切り落とせる。私もそうだが、魔力が無ければ防御力は高くないのだ。
って言うか毒!
「拓斗直ぐに戻って」
「呼んだ? 」
一瞬で拓斗が転移で戻ってくる。
「ヤマタノオロチに使ってる毒は皮膚に接触しても死ぬから危ないよ」
「俺毒効かないんだ。それに結界も使えるし」
毒すら効かないのか。確かにお父様も殆ど効かないけど。
私? 勿論効くよ。今近づいたら死ぬね。ヤマタノオロチに使ってる混合した毒は皮膚からも効くタイプが幾つか混ざっているのだ。
一応拓斗の血液サンプルは貰う事にする。一度は拒否されたが、私の毒に結界無しで耐えれる自信が有るのか聞いたら普通にくれた。
むふふ。勇者の血液サンプルget!
「また悪い顔してますね」
「いつの間にか俺のクローン量産しそうで怖いんだよなぁ……」
神はクローン等許しません。でも神が否定するならやるべきだよね。神の言う通りに生きるなんて神の家畜だし。
でも作らないよ。勇者の遺伝子を組み込んだ強化人間には興味は有るけど、作る気は無い。
やる気が出ないのが一番の理由だが、現状でクローンを作るには母体が必要だ。つまりクローンの代理出産を頼む必要がある。でもね。それって母体の影響を受けるから完全じゃないんだ。前世では人工子宮を作って母体の影響を完全に排除して作ったけど、この世界で同じ設備を作るのは面倒なのだ。そう、とても面倒なのだ!
何せ|私≪アイリス≫しか作れなかった物なのだ。
しかし、研究段階から研究資料を偽装した上で逃げる時にデータを破棄したから地球でもう一度作るのは一から研究する必要が有るだろうね。サルベージしても資料が偽装されてるせいで金の無駄使いで終わると言う罠も仕込んでるし。
それが出来るのは何時になる事やら。|私≪アイリス≫を騙して悪さしてた連中にはザマァ! と言ってあげる。ついでにモモニクⅡをネットに放流しておいたから盛大に報復されているだろう。彼の報復システムから逃げれる人など殆ど居ない。
取り敢えずは私の持ってる毒の耐性とかを調べるだけで終わらせる予定。勇者の毒耐性とやらを見せて貰おうか。
「まあ、それは後でやるとして。拓斗の結界なら多分毒も大丈夫だと思うけど、一応防護服着ようね」
「俺もベイダー卿になるのか……」
「メルトダウンした原子炉の内部だろうが、バイオハザードの発生したレベル4研究所内でも問題無いし、限定的だけど宇宙空間でも活動できる優れ物だよ」
「何でそんなに多機能で高性能なのかねぇ……君、もしかして……」
「おっと邪推はいけない」
何で作ってあるかは私の機密事項だ。一つだけ言うなら道具は必要だから作られる。それだけだ。
「と言う訳で拓斗には邪魔な首を全部刎ねて貰うよ」
「簡単だな」
毒のせいで地獄の苦しみを受けているヤマタノオロチは全ての首を振りまわしている。拓斗に切り落とされた首も再生が始まっているが、毒の対処が最優先なのか、再生は遅い。毒を受ける前は物凄い速度で再生してたのにね。
分身は定期的に吐き出されるが、吐き出した首が一時的に力尽きて地面に倒れると、再び口から体内に侵攻して内部で毒をまき散らしている。そして再びヤマタノオロチが吐き出そうともだえ苦しんでいる。
こっちはヤマタノオロチの周囲に対毒用の結界を張っているので問題ない。自分の毒で死ぬわけないだろう。しっかりと対処法も用意しているのさ。
拓斗が了承すると同時に私の前から転移で消える。それと同時にヤマタノオロチの首が一つ地面に落ちる。
「何時の間に」
アリシアさんが驚く。やっぱり拓斗の転移は早い。首を刎ねた瞬間、別の首に刀を振り落としているのだ。わ、私だって頑張れば出来るかも知れないし!
僅か数秒で全ての首を刎ねた。うむ、流石は女神が最後まで奪われまいと抵抗した勇者の力を持つ者だ。実にバランスブレイカーである。因みに分身は根元から刎ねられた首の断面から顔を出したが、内部に戻っていった。居心地が良いのかも知れない。
しかしまだ魔力は残っている。ヤマタノオロチは再生を始めた。
「一本ずつしか再生出来ないのかな? 」
「恐らく複数の再生だと再生速度が落ちるのでハ? 」
私の疑問にエイボンが答える。成程、拓斗を強敵だと判断したヤマタノオロチが取り敢えず一つの首を再生させる事を選択したのか。全部再生すると遅くなる。再生が終わる前に切り落とされるのが落ちだからね。
でも無駄だった。再生した瞬間に首が落ちる。
私はカウボーイの様にクルクルと縄を回す。
「何をなさっているのですか? 」
「ちょっとあの首欲しくなった」
お前ヤマタノオロチだろ? なあ首を寄越せって奴。
ふんす。と拘束の縄を投げる。これも魔導具だ。お父様拘束用だが、魔物相手にも使える。地面に落ちている首に絡みつくと、持ち主の方に引きずってきてくれる優れ物さ。でもお父様だと半分の確率で引き千切って逃げるんだよね。金属製のワイヤーにも劣らない強度なのに。
そんな事を考えながら宝物庫内にヤマタノオロチの首を持ち込む。
光の精霊に頼んで毒を浄化し、首を検分する。
「この眼アイオーンの瞳に加工できると思わない? 」
「ふむ、可能でしょうネ。実に興味深イ」
私が興味を持ったのはヤマタノオロチの眼だ。加工すれば魔導具に出来る可能性が有る。
帝国との戦争中に拾った魔導戦艦には膨大な量の書籍が積み込まれていた。意図は不明。コンピューター的な物が積み込まれているのだが、生体認証式のせいで起動しないのだ。多分古代魔法王朝に何が起こったのかとか分かる物だから、現在はクラック中だ。
まあ、コンピューターの方は現状起動しないが、古代魔法王朝時代の超貴重な書籍が山積みなのは技術開発局の魔法使いが狂乱する程の発見だった。どれか一冊でも普通ならば国宝だ。存在を魔法王国に知られれば宣戦布告間違いないの物ばかりだ。
何故なら古代魔法の魔導書や錬金術等の技術書が大半なのだ。この書籍だけでアーランド王国は魔法王国を上回れるだけのポテンシャルを手に入れた。
因みに魔導戦艦本体は積み込まれていたコンピューターを含めて魔導具を降ろし、現在解体中。隣で建造しているキング・オブ・ドラコニア型魔導戦艦の一番艦キング・オブ・ドラコニア号の資材へと流用されている為、現在は船の前半分が解体されている。
技術開発局の魔法使いが大泣きしてるけど、置いておいても使わないからゴミだし仕方ないね。
アイオーンの眼はその魔導戦艦の内部で発見された古代魔法王朝の魔導兵器の名前だ。強力なレーザー照射機の様な物であり、高温の熱線を放つ魔導具だ。問題は照射装置が強力な魔物の眼を錬金術で鉱物化させた物が必要な事だ。それ以外は現在の技術で再現できる。
「むふふ。これを量産して国境沿いに迎撃モアイを並べてイースター島ごっこが出来そうだよ」
「その島の事は知りませんガ、凶悪な国境になりそうですネ」
私、この戦いが終わったら帝国がまた攻めてきた時の為に国境に迎撃装置を並べるんだ。
取り敢えず首の確保だ。
「拓斗頑張って首を量産して」
「なんだか力が抜けるなぁ……」
拓斗には首狩り族になって貰おう。大丈夫直ぐに終わるよ。
「良し、拓斗がヤマタノオロチの首を刎ねている間に作業を開始するんだ」
「面倒」
「自分でやれ」
「と言うか死ね」
私の分身は反抗期である。
「いいから作業する! 」
「「「「うーい」」」」
分身達が資材の入った収納袋を持ってヤマタノオロチに殺到する。ヤマタノオロチは再生する度に拓斗に首を刎ねられ抵抗出来ない。
そしてその日の日が傾く頃、ヤマタノオロチの全ての首の根元にギロチンが設置された。
「むふう。これで自動的にヤマタノオロチの首が回収出来る。
「キシャアアアアアア! 」
憎悪の声をあげて再生したヤマタノオロチが声をあげた瞬間に首を落される。ボトリと根元から首が地面に落ちた。
そしてギロチンは自動で元の位置に戻る。どうよ。全自動式の斬首装置は。
私が自慢げに周囲を伺うと、アーランド勢は微妙な顔になり、和の国勢は真っ白になっていた。
「キシャアアアアア! 」
戦場にはヤマタノオロチの憎悪の雄叫びと、同時に首が刎ねられる音しか響かない。
アリスティア「お前が資源になるんだよ! 」
ヤマタノオロチ「イヤアアアアアアアア! 」
アーランド勢「こうなりそうな気はしてた」
和の国勢「我が国厄災が……」




