284 逃げられない
私は現在ロープで縛られドナドナ中。
「解せぬ」
私は王女だ。この扱いは無いだろう。そう思った。しかし途中で考えを改めた。
「さあ陛下、|牢屋≪しつむしつ≫へお戻りください」
「今牢屋って言わなかったか! 俺国王だぞ! 」
「宰相閣下がお待ちですよ」
ドナドナされている途中にお父様と遭遇した。お父様は手枷と鉄球付きの足枷を付けられて執務室に連行されている様だ。恐らく膨大な仕事に嫌気がさして逃げたが、あっさり捕まったのだろう。
まあ何時もの事だ。執務室に着いたら椅子に鎖で固定されるのだろう。そしてお父様が鎖を破壊して逃げて捕まるのが王城での日常だ。そろそろ頑丈な鎖が欲しいって私の元に要請が来そうだね。今度は金属製のワイヤーを贈ろう。
お父様と私の目が合う。
(娘よ、お前もか……)
(お互い大変だね)
親子の絆が深まった気がする。
その後滅茶苦茶お説教された。3時間を超えた所で私がキレてマダムに跳び膝蹴りを入れようとしたが勝てなかったよ……しかも終わりかけていたお説教が伸びた。
大体さ、私が大人しい王女だったのは猫の皮を被っていただけだ。
女神よ、どうか私の願いを聞いて欲しい。ちょっとお説教されるの変わって! 駄目だよね。知ってたよ。お前は何時だって私の願いを聞き入れてはくれない。お前に何度願っても変わってくれなかったもんね!
だから私はお前を信仰しないのだ。この役立たず!
まあ、今更従順な王女に戻るつもりは毛頭ない。昔はマダムに勝てるとは思えなかったが、今の私はマダムを上回っている筈だから従う理由など無いのだ。あっお尻を叩くのは止めて欲しい。反省も後悔もしていないけど、お尻が真っ赤になるのは屈辱なのだ。
何時か絶対マダムを討伐してみせる。そう決意した日だった。
マダムの再教育を部屋を爆破する事で回避する事に成功した。どうもアリスティアです。
最初からこうしておけば良かったよ。謎の爆発で城内が慌ただしいが、私は関係ないよ。多分事故じゃないかな?
私は漸くお菓子の在庫が精神を安定させるレベルに到達して復活した。嫌な事件だったよ。アリシアさんは1週間程、毎日12時間はお菓子を作ってたし、王都の製菓店が軒並み休業して私の大量発注に対応してくれた。
お陰で王都ではお菓子の材料の食材の値段が高騰しかけたが、私は国民を困らせる気は無いので、王都の商会に補助金を送って価格高騰を抑えた。景気よくお金が消えたけど後悔していない。どうせ来年にはそれ以上のお金が溜まっているだろう。
と言うか収入が多すぎて困ってる。王国側としては私に報酬を払う義務があると押し付けられるが、些か法外過ぎない? 私の正規の収入って多分大陸で一番多いけど……ああ、新技術が多すぎるだけか。
出来る限り多くの人に利益が回るように動いているけど、私が動けば動くほど私の収入が増えてしまう。そして私から利益を得ている人が私にも利益をと動くのだ。
仕方ない。投資でも始めるか。まずは学園を作りまくろう。後は孤児の育成だね。孤児は元々多い。何せ万年紛争国だったのだ。隣の帝国が戦犯だけどね。
今は正教に寄付金を山ほど積んで孤児院を増やしているけど、どうにもまだ足りない様だ。ここらで大規模な孤児院と育成施設を作らせよう。景気よく私の資産を消費してくれるだろう。ついでに孤児の犯罪率も下がって将来的な王国の力にもなる。誰も反対しないと思う。
後疑問に思った事を言いたい。私は正教に大聖堂を建てる援助をした。したけど……何で大聖堂2つ建設してるの? えっもう一つは天使教? 知らない宗教だ……新興宗教ですかそうですか。
大聖堂を建てれる程の新興宗教って凄くない? アリシアさん曰く正教の信者が天使教も一緒に信仰している事も有るらしい。まあ、アーランドの法律や正教の戒律では複数の宗教を信仰するのは別に禁じては居ない。普通は無いけどね。
アリシアさん曰く怪しげな活動は無いクリーンな宗教だそうだ。最も微妙な顔をしていたが。
まあ、正教との仲は微妙らしい。そうだよね信者半分奪ってるような物だしね。しかも大聖堂を建設してるくらい勢いが有る。
天使教自体は正教を嫌っていないのが救いだろう。そして何で私に天使教の名誉司祭の称号送ってくるのかね? 一応私正教の名誉司祭の称号持ってるけど……兼任して良いの? 正教の神官泣きそうな顔だったけど。
まあ、別に貰っても女神信仰しないけどね。アイツは役に立たない駄女神だ。聖教に力奪われる程無能なごく潰しだ。
何故そんな駄女神の事を考えているのかと言うと、実は現実逃避だったりする。
「姫様! いい加減諦めるザマス」
「否、私の辞書に諦めの文字は無い」
再教育から逃げ切った私には第二の試練が訪れていた。
マダムの悪しき野望を打ち砕いた私は王都へ赴き、屋台巡りを敢行しようと意気揚々と部屋の外に出ようとしたのだが、部屋のドアを開けた瞬間ノックをしようとしていたマダムと遭遇したのだ。無言でドアを閉めようとしたが捕まった。
どうやら戦勝会に出る為に新しいドレスを用意したらしい。
帝国戦ではアーランド王国自体の被害は軽微だが、軍の被害は甚大だ。半数近くが戦死する大参事だった。当然一部貴族も戦死したし、諸侯軍も大打撃を受けた。
それの立て直しで戦勝の宴がかなり遅れたのだ。お兄様の誕生日の宴も遅れた。
まあ、誕生日のその日に祝うと言う決まりはこの国には無く、祝える日に祝うと言う感じなので遅れても問題ない。実際誕生日前にパーティーを行うとかも割とある。
そして、遅れに遅れたパーティーは戦勝とお兄様の誕生日と私の誕生日の3つが重なってしまった。盛大に祝おうぜ! とばかりに普段以上に王都が賑やかなのだ。
私は出ないよ。私は社交界的には完全な引き籠りだ。この手の宴には基本的に出ない。絶対嫌だ。
前に帝国との国境沿いの紛争に勝った時の宴は酷い物だった。参加する気も起きない。筋肉の狂乱と忌々しい駄肉を押し付けられると言う屈辱を味わったのだ。
私の腰をがっちりと掴み、部屋の外に連行しようとするダマムと、両手両足を入口にひっかけて抵抗する私。
「マダム・スミスよ、聞こえるか? 今私の四肢は悲鳴をあげている。時期に折れるだろう」
「だったらすぐに放すザマス」
「笑止、両手両足が折れればパーティーに出る事は出来ない。一向に構わないのでへし折るが良い」
両手両足の骨が折れるくらいで欠席出来るならば安い物だ。ついでに私の骨をへし折って周囲から怒られるが良い。
「まだ抵抗していたのか」
マダムと激戦を繰り広げていると、疲れ果てたお兄様がやってきた。
「いや疲れてるの君のせいだからね! 少しは手伝ってくれよ。父上なんか毎日逃げてるぞ」
「私は発明する代わりに公務は最小限」
「ぐっ……あの書類の山は軽く死ねるぞ」
「私の知った事では無い。貴族を脅迫して手伝わせればいい」
「全員潰れているんだよ」
あら、お兄様の常套手段は使い尽くしたのか。まあ、お兄様の手伝いは貴族の人達が一番嫌がるからね。死神に監視されながら仕事をするような物だって皆言ってるよ。
基本的にお兄様は怖がられているのだ。実際悪い貴族を虐めるのが趣味だし。
『普段増長しているアホが惨めに絶望して震えているのを眺めるは気分が良いよね』
とはお兄様の言葉だ。
「それで何か用? 私がお兄様の公務を手伝う事なんてあり得ないって解っているでしょう? 」
必殺の土下座を使われても手伝わないよ。私は今マダムから自由を勝ち取ろうと抗っているのだ。
グググと引っ張られているが、私の両手両足は入口にしっかりと掛けてあるので問題ない。今もミシミシ悲鳴をあげているだけだ。
「さあマダムよ、いい加減諦めるんだ」
「姫様が諦めるザマス」
「まあ、それは置いといて……君がシェフィルド家の令嬢に贈った鎧の件だが」
「私は関係にゃい」
「そう言う訳にはいかないだろう。せめて性能とかは把握したい。今は可能性が低いが、オストランドが敵国になる可能性だってあるんだ。
危険な兵器とか搭載してないよね」
「…………………してにゃい」
「うぉい! 」
「してにゃいもん」
言えねぇ……絶対に言えねぇよ。ノリでマイクロブラックホール生成装置、最終兵装【天使のラッパ】を搭載しているなんて誰にも言えない。
発動すれば半径10㎞に影響を与えるマイクロブラックホールを生みだす何て言えねぇ。
私は横を向いてフーフーと口笛を吹く。ちょっとこの部屋暑くない? 私汗かいてきちゃった。
私が何も知らないアピールをしていると、腰を掴んでいたマダムが手を放す。私は即座にお兄様を盾にする。フシャー!
「………今からでも取り戻してきなさい」
「私に一度下賜した物を取り返せと? 」
「流石に擁護出来ない」
……ふむ。
「お兄様、ここに簡易魔法適正検査キットと猿でも解る魔法の書(全属性)と新型汎用の杖の設計図が有る」
「……………」
お兄様が渋い顔をする。
「私が何を言いたいか解るよね? 」
「黙認しろというのかな? 」
「違うよ。お兄様は何も知らない。私は危険物を他国にあげた事なんて無いんだよ。分かった? 」
「それが解析されると、どうなるか解るよね」
「お兄様は間違ってる。あの鎧を解析する力が有れば、この世界の魔法技術はショボくない」
「ショボいって………」
「それに使われている術式はそこまで機密じゃないしね」
「……それは君がどうでも良いって事じゃないのか? 」
「昨日完成した新型の『魔法の櫛1724号』に比べれば玩具なんだよ。
これは私が魔導炉を暴走させてあそ………暴走時の影響を観測していた際に見つけた未知のエネルギーで有る【虚無エネルギー】を使う事に成功したんだ。
そして1台だけ完成した虚無機関は、凄まじいエネルギーを生み出す事に成功した。もう魔導炉なんて旧時代の遺物だね」
「今遊んでって言いかけたよね! 」
「お兄様五月蠅い。
まあ、機関って名乗ってるけど、正体不明の世界から謎のエネルギーを取り出してるだけだけどね。
それに何故かこの魔法の櫛に搭載した機関しか正常に稼働しないんだ」
他に同じ構造の機関を作ったのだが、謎の世界に接続出来ない。と言うか私も無気力で寝惚けて作ったせいで何で繋がったのか良く分からない。
何が悪くて他の機関が稼働しないのかも分かっていない。
完全に同じ構造なんだけどなぁ……何で動かないんだろう。
まあ、動かない物は仕方がない。私は生み出した虚無機関を空間収納を駆使して魔法の櫛の動力源にしたのだ。いや、当初は武装飛空船用の魔導炉積もうと思ったんだけど、アレ空間収納と相性が悪くて、異空間に入れると不安定化する事が分かったんだ。それと生成される魔力が足りなかった。
チクショウ魔法詰過ぎた! と絶望したよ。術式を積層させ過ぎたんだ。まあ1724号は術式を7029層も積層させているからね。
これ程までに術式を積層させるのは不可能だって地下に閉じ込めてるエイボン(最近また城内でセクハラを働いた罰)も言ってたよ。術式が1ミリ処か1アト(am)ずれるだけで大爆発するからね。製造難易度がとんでもない事になった。
寧ろ1アトもズレずに7029層も手作業で術式を積み上げるのは神業だってエイボンに絶賛されたよ。私の職人魂をつぎ込んだ最新作だ。
「ソレってもうアーティファクトじゃね? 」
「まだ完成してないし」
「まだ上を目指すのか………」
「漸く道の半ばにたどり着いた気がする。
アレは確かに素晴らしかった。アリシアさんの尻尾を見た獣人の人達が滂沱の涙を流しながら崇めるくらい綺麗になったよ。
まあ、私的にはまだまだなんだけどね」
寧ろあの程度のモフモフを崇めている様じゃモフモフ職人には成れないね。
私は芸術家なんだ。もっと素晴らしい芸術が作れる気がするんだ。諦めたらあの程度のモフモフで終わってしまう。私は歩みを止める事は出来ないのだ。
術式をもっと積み上げるんだ! 目指せ20万層!
私は拳を握りしめ決意を示す。
「うん。君の決意は分かった。貴重な一個しかない謎の機関を安全確認もせずに魔法の櫛に使った事も、まあ良いだろう。複製出来ないんじゃ意味がないしな。精々技術開発局の魔法使い達が絶望するだけだろう」
「あの人達には秘密だよ。解体されちゃうもん」
あの人達に虚無機関の存在が露見すれば絶対に解体して調べようとするよ。これ解体したらどうなるか私も知らないんだよね。と言うか解体出来ない気がする。とんでもない被害を出す予感がするのだ。
まあ、危険だから異空間に放り込んだとも言える。でも勿体ないから異世界から取り出す謎エネルギーは頂いただけだ。
「それで、あの鎧が敵になった場合の事は想定しているのかな? 」
「アノンちゃんがアーランドにあの鎧を使う事は無いと確信している。
仮にオストランドがアーランドに敵対したら、この死の秘薬を散布してオストランド王が後悔する事になるだろう」
これは毛髪が全て抜ける生命の秘薬の製造過程で生まれる産業廃棄物だ。
フッフッフ。禿を恐れるオストランド王がこの秘薬の存在を知れば絶対に敵対する事はあるまい。そしてオストランド王はもう知っている筈だ。だって帝国で使ったもんね。
前世じゃ同じ効果の薬作って日本の総理を禿にして嫌がらせしてたっけ。アイツ元気かな。実に嫌な男だった。|アイリス≪前世の私≫とよく賭けをしてたっけ。
あの野郎の事は忘れよう。唯一麻雀で勝てなかったとかもう良いんだ。許そう。海水から貴金属とか取り出す技術を奪われたとか革新技術を幾つも奪われたとか許そう……って言うとでも思ったか! 将来地球に乗り込んで不倫してる事を新聞社に流してやる。梅干しの恨みは転生しても忘れないぞ。今まで忘れてたけどね。もう思いだしたから許さない。
「いや、王だからね。頭部の事より国が優先だから…………多分」
「まあ、騎士団用の新しい魔導甲冑も作ってるから大丈夫だと思うよ」
天使のラッパの事は内緒だぞ☆
「ほほう。それも聞いてないぞ」
「量産の開始したダークマター合金と、私がそれを元に作ったホワイトマター合金を使った2種類の魔導甲冑を設計して現在作ってる最中だよ。
基礎構造はアノンちゃんと同じかな。でも向こうはアリス鋼だから基礎的な防御力とか魔力消費量とかはこっちの方が上かな。アッチは試作品だし」
「つまり、その魔導甲冑が完成すれば脅威ではないと」
「ソウダネー」
天使のラッパは存在しない良いね!
「………まだ何か隠してるね」
「細かい事を気にするお兄様嫌い(棒読み)」
「グハァ! 」
良し、お兄様は崩れた。今後の追求はこれで躱せるな。
さて、私は王都へ赴き屋台を巡るのだ!
私は意気揚々と歩き出す。と同時に肩を掴まれる。
「邪魔だ」
私は肩に乗せられた手をを弾く。しかしビクともしない。
私は振り返ると、無表情のマダムが私の肩を掴んでいた。
「私はこれから王都へ赴き屋台……王都の視察をするの。だから手を放して欲しい」
「姫様はこれから戦勝会に出るザマス」
「馬鹿な事を」
私は鼻で笑う。あの筋肉の宴に誰が出る物か。それに社交界には私の敵が多すぎるのだ。もう玩具にされるのはごめんだ。社交界に巣食うお姉様方は私を人形か何かかと勘違いしている。連中は敵だ。
何故か私を見ると抱きしめて来るのだ。そして抱きしめられると、身長の関係で胸の贅肉を私の顔に押し付けると言う嫌がらせをしてくるのだ。
『ニクイ……ニクイ』
黙れチンチクリンのまま死んだ前世の私! 今の私はお前と違って将来お母様みたいになるのだ。決して私が劣等感を持っている訳じゃない。これは前世の私の残滓に違いない。だから消え失せろ。
「アリス……一つ言い忘れていた……君は我が国と同盟国全ての承認……で、賢者に就任したよ……ガク」
お兄様が顔を上げたが、用件だけ言うとサムズアップしたまま気絶した。
その言葉を聞いた時、私は全てを許した。
確かにマダムには何度も私のお尻を真っ赤にされた。屈辱だった。
勝ち目がないので裏から手を回して地方に飛ばしたが、普通に地方での教育を終えて戻ってきた。そのまま地方に居れば良かったのに。
何度も襲撃しては返り討ちにされた。その度に私のお尻が大変な事になった。
でも許そう。だって私賢者だし。
賢者……よく解らないけど、多分大魔導士より強いよね。だって聞いた事無いし。多分大国級戦力とかだろう。つまり私は魔法使いの頂点に君臨しているのだ。
マダム・スミスよ、これまでの無礼な所業の数々を賢者として許してあげよう。感謝の涙を流しながら手を放すんだ。
そう優しく語ったのにマダムは私の肩を掴んだままだ。
「マダムよ、今の私は機嫌が良い。だからこれまでの所業を許すと言う慈悲を与えているのだ。私が怒る前に手を放すが良い。
後、賢者の権限で戦勝会は欠席ね。私はこれからにゃんこを率いて王都でパレードを開くのだ。そうお祭りだよ」
グググと私の肩を掴む手の圧力が強まる。マダムの手が震えている。
ムフーを私がため息を吐く。
「フッフッフ。マダムよ、マダムが今抱いている感情を当ててあげる。それは恐怖だよ。
ついさっきまで私もマダムに恐怖を感じていた。ほんのちょっと……そうこれくらい恐怖を感じてた」
私は指をちょっと動かしてマダムに感じていた恐怖を示す。
「でも今は怖くない。だって私賢者だし。最強の魔法使いだし。
私は強いんだよ。マダムなんてワンパンだよワンパン。だから手を放すんだ」
しかしマダムは手を離さない。
「ならば仕方ない。私の拳で討伐されるが良い。フンス!………アレ? 」
「リーチが足りないザマス」
私の拳はあろうことかマダムに届かなかった。素早く私の頭を掴むマダム。
「狡いぞマダム・スミス! 私と同じ体格に成って戦うのが筋だろう」
「ハアァ……」
拙い拙い。このままじゃ負ける。私は必死に逃げようとする。しかし頭を掴まれた状況で逃げるのは不可能だ。
どうすれば良い。私は思考する。そうだ!
「ニコ」
私は頑張って笑顔をマダムに向ける。
マダムはそれを見るとニコっと微笑む。
優 し い 世 界
ミシィ! っと私の頭蓋骨が悲鳴をあげた。
厳 し い 世 界
そのまま私は頭を掴まれたまま持ち上げられて連行された。




