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番外編 王女の部屋を攻略せよ2

アリスティアの部屋の攻略は困難を極めた。

 まず部屋の明かりが点かない。中で松明を燃やそうがライトの魔法を使おうが一切明かりが点かないのだ。そして何処まで歩いても壁にたどり着く事も無いらしい。


「うぎゃあああああああああああああああ」


「……またか」


叫び声が聞こえて暫くすると急に部屋のドアが開き中に入っていった兵士が放り出される。顔は完全に白目を剥いてよほど恐ろしい物を見たのだろう。


「シルビア…これどう思う…」


「恐らく精霊魔法で暗闇を作ってるのでしょう。他のトラップも恐らくは精霊魔法を使った物でしょうね、精霊魔法なら魔法で干渉出来ないので魔法使いを使ってもどうにもならないでしょうね」


精霊魔法は魔法の上位に位置する為、普通の魔法で干渉出来ないのだ。


「しかし…これでは無駄に犠牲が増えるだけ…姫様に解除させるしか」


ボルケンが手を顎に置き呟いている。


「アリスティアに命令した所でこればっかりは聞かないだろうよ」


アリスティアが何らかの目的で封印してるのだ。本人も不要だと判断すれば解体する筈なので何か意味のある物だとは思うのだが。


「姫様が封印してるのは15点程の発明品です」


「何で知ってるんだ?」


俺も何個封印してるのか知らなかった。


「姫様はちゃんと何を作ったか、それに何を使ったか等の詳細を提出しています。封印物は封印としか書かれてないので数だけなら分かってます」


確かに提出してたが…何も律儀にそこまで書かなくても良いと思うのだが…


「封印物まで詳細を出してたのか…律儀だな。俺誇らしいわ」


「そうですね。その封印物の概要だけでも書いてくれてればもっと良かったのですが」


俺とボルケンがのほほんと会話を続けて居るが依然部屋に入った者達は気絶して部屋から放りだされてる。


「貴様等‼何の為に金を払ってるのだ‼しっかり回収してこい‼」


あれから一週間たったが誰一人何も持って部屋から出てこない。出てくるのは気絶した者達だけだ。中に何か居るのか?

 それにしてもオットマン伯爵は酷過ぎる…確か贅沢三昧が響いて家の財政は破綻寸前だったな。どうしてもアリスティアの発明品が欲しいのだろう。既に周りが見えていない。


「どう考えても攻略出来ないだろうな…俺は手伝わんからな」


「そこを何とか」


「テメエの考えが足りなかったんだろう‼手を出すべきじゃなかった。その判断の誤りは他の騎士や兵士に降りかかる不幸なんだろうな騎士団内でのお前の信頼は既に地に堕ちたぞ?これが戦場ならお前だけ見捨てられるな」


やっと自分のミスが致命的だと理解できたのだろう。ボルケンは額から汗をダラダラと掻き続けている。


「し…しかし姫様が何を作ってるのか…知るべきだと私も思うのです‼何故姫様は自室を改造してまで隠しているのか」


「今は実現できない物の試作品だとか言ってたな。具体的には分からんが技術が足りないせいで未完成の物らしい。その状態でも使い方が広まると影響が大きすぎる為に封印してるとは聞いている。危険だが本人以外に使えないだろう?なら何も問題は無いと思うぞ」


具体的な物までは俺も聞いてないしシルビアとアリシアもそれとなく聞いたらしいが満足な回答は帰ってこなかったらしい。


「それではこれ以上被害が出る前に諦めた方が良さそうですね…他の5侯は逃げましたし」


確かに賛同はしたものの5侯はアリスティア個人に嫌われたくない為何かと理由を作って領地に逃走している。奴等も最初はちょこちょこ進捗状況を見に来ていたがアリスティアがガチで容赦無しのトラップを仕掛けてる事を知ると我等は関係ないとばかりに逃げたのだ。これで嫌われるのはボルケンだけだろう…オットマン伯爵は元々評価外まで評価が低いのでこれ以上下がらないだろうな。

 しかし止めようにもオットマン伯爵が粘ったそれはもう粘った。5侯に手を回し議会でさらに承認(5侯の委任状を使った)を取り粘ったのだ。5侯はオットマン伯爵をスケープゴートにしてアリスティアの怒りから逃げたかったのだろう。



そして2週間がたった。


オットマン伯爵は頑張った方だろう。壁を破壊しようとして壊れなかったり。部屋を私兵で満たし物理的に何かを得ようとするも部屋のドアは数人入るだけで勝手に閉まり無理だった。他にも私兵に金をチラつかせたりして部屋の捜索を進めたが結局何も出てこない。

 そして捜索から2週間を超えた時、部屋に変化が起きた。


「陛下…姫様の部屋のドアの隙間からこの紙が出てきました」


政務をしてるとボルケンが追加の書類と一緒に持ってきた紙を俺は見る。

『部屋の警備モードが通常から悪夢に変わりました。王国の人間は立ち入らない事をお勧めします。 第一王女アリスティア』


「………どう思う?」


「私としては今までが通常だと言う事が恐ろしいです。オットマン伯爵が何かを起動させてしまったのでしょうか?それとも何らかの手段で姫様は我等が部屋を捜索してるのを察知したのでしょうか?」


「さり気なく俺を混ぜるな!俺は関係ない。お前が悪いんだから全ての責任はボルケンお前にある。余計な事を考えたものだ。オットマン伯爵と一緒に後悔でもしてろ」


ボルケンは既に顔が青い。最近軍部や捜索の反対派から相当嫌味を言われてるようだ。これでさらに被害が広がるから今まで以上に嫌味を言われるんだろうな…自業自得だ。

 そして今日も俺達は部屋の捜索を廊下から眺める。だがいつもとは違った。部屋の外には屍のように動かない兵士やオットマン伯爵の私兵が倒れていた。全員が虚ろな目をして前のように錯乱したりアリスティアに謝罪したりしていない。座り込んだり倒れたまま虚空を見ている。


「…お前の責任だな。貴重な戦力がほぼ廃人と化している」


「……」


元々ボルケンはアリスティアを甘やかさないし鋭い目をしてるので嫌いではないだろうが怖がられてるのだ、きっと簡単には許されないだろう。下手をすればそこで顔を真っ赤にして騒いでるオットマン伯爵のように面会拒否の憂き目に会うだろう、そうなれば軍部や反対派も許さない。何故なら本人が許してないから。本人もそれを理解しているのだろう。必至に打開策を考えているようだ。


「貴様等‼さっさと起きて捜索しろ‼」


オットマン伯爵はここまで来てもアリスティアを侮っている。確かに怪我をしたり死んだりした者は居ない。心に尋常じゃない被害を受けるだけだ。だから現実が理解出来できていないのだろう…そこしか考慮されていない事を。


「オットマン卿。これ以上は被害が広まるだけだ、これ以上の査察を許可する事は出来ない。もしこれ以上査察をするのなら自分ひとりでやるんだな。一回だけ許可しよう」


この豚をアリスティアの自室に入れるのは許可していなかったがここまで堅牢なのだ、一回入れて大人しくして貰おう。


「成程、私のような高貴な人間でないとここの査察は出来ないでしょう。ならば私が入ります」


何処にそこまでの自信があるのか分からない。この豚は血筋以外に取りえの無い貴族なのだ。国の要職につける程の実力も無く家の財産を食いつぶすだけなのに何で自分なら出来ると思うのだろうか。

 そして豚が部屋に入って30分後何とか自分で部屋から出てきた…逃げるように。

 豚はよほど怖かったのだろう髪は全て白くなり憔悴していた。


「ハアハア…何て部屋だ‼…ハア…クソ何で私がこんな目に…これでは私は…」


正気を保ってるだけ我は強いのだろう悪い方向で。


「何か見つけたのか?」


俺はニヤニヤと笑いながら豚に問いかける。どうせ何も取れていないだろう。


「…クソ…いえ申し訳ありません」


豚は苛立ちを隠せないと言う風に言い捨てる。そして手に持っていた物で汗を拭う。俺達はそれを見た瞬間硬直した。


「…貴様…それは何だ?」


「は?」


豚は気が付いていない。だが俺は見た。あの布きれに王家の紋章が刺繍されていた事を…そしてそれが下着だと言う事を。


「貴様は娘の下着を盗むのが目的のようだな」


豚は汗を拭っていた物を見て固まった。何故ならそれは黒のパンツだからだ。妙にエロイスケスケの黒の下着で汗を拭いていたのだ。サイズ的にアリスティアの物以外には無い。何故なら王家の刺繍が入ってるのだ。シルビアのサイズではありえない小ささなのでアリスティアの物だろう…


「いえ‼これは何かの間違いです。部屋で転んだ時に引っかかったのでしょう」


豚は何かと良い訳を言ってるが俺は言ったいちおアリスティアの自室だと。倉庫なので何で下着が…しかも年齢に合わないエロイ物があったのかは分からない。とにかくこの豚の死が確定した。


「王族に対する不敬罪だな。捕らえよ」


おれが命令するとまだ部屋に入っていなかった騎士達が豚を捕らえた。騎士達は恐ろしく殺気立ってる為、豚も動けず(仮に騒げば剣を抜く気配をだしてる)震えながら捕まった。豚は死罪である。


「釈然としない終わりですね」


「ああ。まだ泳がせるつもりだったがこれではオットマンだけだ他のゴミは証拠を揃えなくてはなならん。面倒だな」


しかし何故下着が一緒に封印されたのだろうか?俺は気になったのでまた軍部に捕まったボルケンを放置してシルビアの元に向かった。


「どう思う?」


「小さくても女の子ね‼もう勝負下着を持ってるなんて」


…早すぎる…早すぎる‼大事な事なので2回思った。まさか子供だと思ってたのは俺だけか?俺だけで想像以上に娘は大人なのか?


「早すぎる…俺は父親として周りに居る男を今から抹殺してくるわ」


全てを無に帰せば必要の無い物だろう。


「冗談よ。多分アリシアが冗談半分で用意したのを捨てるに捨てれずやむ得ずあの部屋に隠したのでしょう」


「奴は戻ってきたら徹底的に話し合う必要があるな」


娘よ疑って悪かった。流石にお前がこれを用意する事は無いだろう。

 そして後日手紙で確認すると焼却処分を求める依頼とアリシアが犯人だと言う事の確認が取れた。アリシアは戻り次第説教が確定し豚も死刑になりお家が取り潰しになった。そしてボルケンは心労で1ヵ月程仕事を休んだ。

 こうして部屋の査察の成果はアリスティアの下着だけが見つかり失敗に終わった。豚のアホさ加減は相当社交界で馬鹿にされ王女派の力を削ぐ事は一部成功した。

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