表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
ヤマタノオロチを出荷せよ
293/377

275 隠蔽は王女の嗜み ①

 不味いねぇ。グリザイユ計画は既に役目を終えている。これは私の中では公に出来ない物だ。

 正直言えば、あの時の私は既に正気じゃ無かった。だからあんな物を作ってしまった。

 不味いよ。王国に知られる訳には行かない。アレは危険すぎる。正気になった私でも持て余す。

 どうする? 今から帝国にでも捨てて来るか? 多分帝国は完全に崩壊するし、汚染されて人の住めない魔境に変わるだろう。

 しかし、帝国には混乱してアーランドの防壁になると言う役目がある。盛大に内乱を起こして貰う役目が有るのだ。今更滅ぼす必要はない。

 よし隠蔽しよう。


「何の事だか解らない。アレは一種のプロパガンダ。予算? 計算間違いだと思うよ」


 念話を発動! って使えない!


「アリス、既に念話は出来ない様にしてあるよ。大人しく話しなさい」


 くっ、プロパガンダと言う言い訳は通じないのか。

 その時、お兄様がハッっとした表情になる。何故か手を上げ、私――の背後の壁に向けて手を放つ。

 その瞬間、私の鍛え抜かれた第六感が告げた。

 

 第六感「お腹減った」

 

 違うお前じゃない。第七感だ!


 第七感「戦争終わったし、いい加減お菓子解禁しようよ」


 違うお前でもない!ええい私の直感は何処に行ったのだ!


 第八感「それは壁ドンと言う奴だ。それをされるとフラグなる物が立つ事になるだろう」


 お前だったのか。私は転移でお兄様の背後に転移すると、両手を上げ、勝利のポーズを取る。

 そして同時に何かが崩れ落ちる音がしたので、後ろを振り返ると、お兄様が誰も居ない壁をドンしながら崩れ落ちていた。


「何故だ……何故躱すのだ」


「危険なフラグなる物が立つ予感を感じた。それとお兄様に邪念を感じる」


「殿下! まだ諦めていないのですか! 」


 私の言葉に一部貴族が声を荒げる。


「黙れ! 私は諦めぬぞ」


 復活したお兄様は謎のポーズで貴族に答えた。復活早いよね。でも足がプルプル震えているから精神的なダメージは大きかったようだ。


「これ何のコント? 」


「拓斗よ、お兄様はシスコンなんだ。今のは危険を感じた」


 いい加減何とかしないといけないと思うんだ。婚約すれば大人しくなるかもしれない。社交界のお姉様方よ、お兄様を物理的に捕まえてほしい。多分逃げ足がはぐれメ○ル並だと思うけど。


「ええい! そっちは後だ! グリザイユ計画の全容を話して貰うぞ! 」


 暫く貴族と言いあっていたお兄様がこちらを振り返る。


「あ、アリス。ちょっと厨房借りて良い? 」


「拓斗、このタイミングで料理したいの? 」


「地球から食材持ってきてるけど」


「城のは無理だから、私の宝物庫の厨房を使うといい」


 私も後で別けて貰おう。拓斗はそのまま宝物庫に入っていった。


「さあ、アリス。これに座って兄をじっくりと眺めつつも真実を話すんだ」


 取り調べで使われるようなテーブルとイスを持ち込ませたお兄様。取り敢えず座るか。


「話す事は何も無い。アレはプロパガンダ。予算は計算ミス」


 話す気は無いぞ。と決意ある表情で私は語る。

 それと同時に靴で床をコツコツと叩く。


『グリザイユケイカクノショウコヲインペイセヨ』


 音を用いたモールス信号だ。私の影からシャドウ・ウルフが一匹出ると、トコトコと外に歩いていく。口には音を保存する魔導具を銜えているが、小さいので外からは解らない。

 それを見た貴族の肩がビクっと動いた。そう言えば危険な魔物だったっけ。普段は私の影に隠れているから見慣れて居ないのだろう。


「お腹減ったみたいだね」


「………衛兵、その魔獣を拘束しろ! 」


 !


「焦ったねアリス。音に規則性が有る。

 恐らく音を用いた暗号を使ったのだろう? 」


 その言葉を聞いたシャドウ・ウルフはダッシュで駆けだした。一瞬で外に出るが、暫くすると騎士に捕まり運ばれてきた。しかし、シャドウ・ウルフは任務を終えたと言う表情だ。


「ッチ、情報が流れたか」


「感の良いお兄様は嫌いだよ」


 その言葉を聞いたお兄様が硬直する。

 全く、何で音で暗号を伝えたって解るんだ。でも謁見の間の近くに隠れていた分身に命令は届いた様だ。頑張ったねセカンド。暫く騎士に捕まっているだろうけど、後で助けてあげるから大人しくしててね。抵抗するとギュッってされちゃうからね。

 私の頷きを見たシャドウ・ウルフのセカンドは大人しくなった。


「グハ! ハッハッハッハッハ……死ぬかと思った」


 硬直から解けたお兄様は血を吐くと、膝を着いて胸を押さえていた。ダメージ大きすぎじゃない? 一瞬でストレスゲージ振り切ったよね?


「殿下! 宝物庫に使われていたと思われる資金が戻っています! 」


「アリス~随分動きが速いじゃないか」


「私知らな~い」


 分身め、露見が速過ぎるぞ。

 いや、多分お兄様は私が後でこっそりと戻す事を警戒して、普段より警備を厳重にしていたのだろう。寧ろ一瞬の隙を突いて資金を戻した分身は有能だ。つまり私が有能だと言う事である。

 因みに資金は帝国から分捕った関係でたんまりとあるからね。一部城の地下に隠してたから、それを使ったのだろう。

 お兄様はため息を吐くと、私のほっぺを抓る。


「むぎゅう」


「は な し な さ い」


「わらひはしらないもん」


 いくらほっぺを抓っても私は喋らんぞ。


「つまり言えない物を作ったという事か。

 そう言えば王都に爆撃機を待機させていたね。でも乗組員には具体的な命令が無かった。

 君は戦場に居たから王都に待機させる意味は無い……君の魔法で生み出した分身が、この王城の何処かで何かを作って居たと言う事だよね?

 さて、それは何処にあるのかな? 」


 ……感が良いってレベルじゃない! ほぼバレてるじゃん!


「……お兄様、私子供だから難しい事わかんにゃい」


 ここは幼女に成って誤魔化すしか道は無い。


「その誤魔化しが常に通用するとは思わない方が良いよ……可愛いけど」


「むふ~何の事だかわかんにゃい」


 通用しなければ通用するまで押し切るんだ! しかしお兄様はじっと私の目を見続ける。


「何処に君の秘密の研究所が有るのかな? 」


「し、城中に有る」


 馬鹿め。研究所なら城中に作って有る。この城の地下は既にアリの巣状態だ!


「…………君って本当に地下が好きだよね。じゃあ、グリザイユ計画を行っている場所は何処かな? 」


 ツ~っと額に汗が流れる。追い詰められてる? 馬鹿な。私は何も言っていない。

 時間を稼ぐんだ。既に撤収作業が始まっている。後数時間後には痕跡を残さずに闇に葬れる筈だ。


「……成程ね。大よその場所は解った。衛兵ついてこい! これよりアリスの巣を強襲するぞ! 」


「「「ハッ! 」」」


 いやあああ! 何故かバレた!


「この場は解散とする」


 貴族達は私を怒らせたくないのか、あっさりと解散する。


「アリスにも着いて来て貰うぞ」


 封印魔法を発動! 私の体を石に変えて封印する【封石】を発動する。因みに意識は残す。


「こ、これは……考えるアリス! 」


 私は考える人の恰好で石になった。最初からこうしていれば余計な事がバレる事は無かったのだ。

 その後、お兄様は私を運ぼうとしたが、封印系の魔法は基本的にその場所から動かせない。そして、私の封印魔法を魔法師団の魔法使いでは解呪出来ない。

 既に私が証拠隠滅に走っている事を察知しているお兄様は諦めて兵を率いて私の秘匿研究所を目指した。後は時間との勝負だ。頑張れ分身。お兄様が向かっているぞ。


「……何やってるの? 」


 お兄様が謁見の間から出ていって30分程経った時、宝物庫から拓斗が出て来た。

 拓斗は石に成っている私を見ると、軽く手を振る。解呪の術式が放たれ、私の石化が解ける。


「流石は勇者。本気じゃなかったけど、あっさりと解呪された」


「面白い事してるね」


 拓斗はお膳を机の上に置く。お兄様が撤去しなかったのでそのままだ。


「さて、邪魔も居ないから丁度良いね。

 君の事だから碌でもない物を作ったんでしょう? これでも食べて話して貰おうか? 」


 私の第六感が歓声を上げる。丁度お腹が減ってたんだ。ってお前は黙っていろ!

 私の第八感が告げる「取り調べの最中にカツ丼を食べてはいけない」と。

 そう。拓斗が作ってきたのはカツ丼だった。

 随分久しぶりだなカツ丼よ。もう10年近く食べていない。私はゴクリと唾を飲み込む。

 しかし私はお前を食べる訳にはいかんのだ。これは巧妙な罠だモグモグ。


「で、何を作ったの? 」


「モグモグゴクン。原爆を100発程」


 カツ丼には勝てなかったよ。


「…………」


「闇に葬るので問題なし」


「何で作れるんですかねえ」



「そりゃ地球の保有国のセキュリティーがガバガバだったからね。モモニクⅡを使えば普通に設計図から実験データまで手に入る。まあ、物理的に外部と繋がっていないのは無理だったけどね。全部の保有国がそれをやってる訳じゃないし」


 前世の私事アイリスは世界中の保有国から情報を抜いていた。時折しつこい国のサーバーを初期化している事も有った。

 割と盗めるんだよね。そして今の私は思うがままに部品を作れるだけの技術を持っている【ファクトリー】の魔法は便利だ。完璧に使いこなせるのは私だけだけど。


「因みに日本で作ろうとしたらパパに物凄い怒られたよ」


「材料が手に入らないだろう」


「日本政府にちょっとお願いしたんだよ。辞典くらい分厚い知られたくない情報を使ってね」


 情報セキュリティーの甘い日本で良かったよ。知られたくない事が山の様に手に入った。


「外国から監視してる組織有るんだけど」


「ああ、あれね。不祥事のオンパレードで仕事している暇なかったしね」


 誰が不祥事流したんだろうね。不思議だね。何故かアイリスに都合の良いようの大混乱だったよ。

 日本政府は関わりは無いよ。唯、ちょっと書類と実物の量が合わないから足りない分を存在しなかった事にしただけだ。よくある事さ。

 まあ、政府内部に欲しがっている勢力が居たのも関わりがあるだろう。

 そして準備が出来そうな所でパパにバレて怒られた。

 結果として実験データや設計図もお蔵入り。日本政府には詫びとして商業用の核融合炉の設計図を渡して、もう一度規制組織を混乱させて、その隙に書類を改ざんして終わったのだ。

 アレ? 前世も割とやりたい放題だった気がする。


「よく逮捕されないもんだ」


「証拠が無ければ問題ない。但し、その後はかなり監視が厳しくなった」


 一日中屋敷の外に黒服が居たからね。ある意味これ以上余計な真似はするなと言う脅しのつもりだったのだろう。黒服送った国のトップが次の日に不祥事が露見して辞任したけど。


「取り敢えずヤバすぎるから隠蔽だね。存在すら知られる訳にはいかない」


「流石に国に怪しまれるんじゃ? 」


「私が怪しい動きしてるのは何時もの事だし」


 最悪地位返上で許してくれるでしょ。駄目なら王籍返上だな。リリーのメイドにでも就職しよう。

これが今後出て来る事は無いでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ