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26 王女は学園に入学する

 フリフリと何かが揺れる気配に私の意識は急浮上した。思わず伸ばした手には柔らかな感触が…私は思わずそれを胸に抱き毛布の中に引き込む。


「いだだだだだだだだ‼姫様痛いです‼離してください‼何でいつもこうしないと起きてくれないんですか‼いたーーーーーーーーーーい」


 私の至福の時間を妨害する副音声が聞こえると言う事はもう朝ですか。毎朝毎朝五月蠅いですね、静かに尻尾をモフらせて欲しいものです。仕方ないので私はベットから出る。


「アリシアさんおはよう」


「離してください‼引っ張られると本当に痛いんですから」


「本体も一緒に毛布に入ってこれば痛くないし私は尻尾を堪能出来るまさに一石二鳥」


 仕方ないので尻尾は離そう。


「そうしたらお嬢様は起きないでしょう‼しかも私の尻尾を口に…」


「?」


 最後が聞き取れなかった。まあいいや、とにかく着替えよう。私のモットーは自分で出来る事は自分でやるなので普通の服なら自分で着替えるし髪のセットも基本ストレートだから自分で梳かす。なのでアリシアさんの仕事はそこまで無いのだ‼流石に料理はさせてくれないのでいずれキッチンに潜入して自分で作ろう。


「いつも言ってますがお嬢様は王族ですよね?何で自分でやるんですか?」


「自分で出来るから」


 当然自分で出来るなら自分でやる。アリシアさんは基本的に観賞用メイドなのだ。その素敵装備を私に見せモフらせるのが仕事です。

 さて準備も済んだし学園に行こう。今日は入学式と試験だけです。試験は普通入学前だと思うのですが学園は基本的に学費さえ払えれば誰でも入れるので試験は入学式当日になってます。これの結果で寮でのランクが決まるので気合いを入れて行きましょう。


「本当に歩いて行くのですか?」


「馬車には暫く乗りたくない…また改造しそうだし…」


「ふふ……次ぎはありませんよ」


 ひぃぃぃぃアリシアさんが黒い微笑みを体得してる…お母様が2人になったみたいだ。今まさに私の天敵が2人になった。だが私はもう怯えない私が素晴らしい手柄を立てれば問題は無いはずだ。だって城に居た貴族の人も手柄があればと言っていた(目が死んでたような気もする)から手柄があれば許されるだろう。絶対にアリシアさんが泣いて今までの無礼を謝りだす手柄を立ててみせる。


「とにかく学園に行く‼魔法を一杯覚えて大魔導士になって人類獣耳計画を…は‼」


 ガシ‼っと頭を鷲掴みにされました。


「また碌でもない事を考えてますね。そんな事をしてどうするんですか?」


「獣人の人だけがそれ付けてるのはズルいと思う…だから全員獣耳になれば良い」


「ついに触るだけでは満足できなくなりましたか…絶対にさせませんよ?」


 むう…どうやら本気で妨害する気か、仕方ない企画倒れにしましょう。自分用に開発はするけど。


「仕方ないから諦める」


「分かればいいんです」


 っとそんな事を話してるうちに時間が‼さっさとGO。

 



 入学式は禿げた魔導士のお爺さんのめっちゃ長いお話に耐え切れず熟睡しました。立ったまま寝る事って可能なんですね私は子供なので本能に逆らえませんでした。だからアリシアさん私を怒るのは止めてください私は悪くないんですあの音声には【スリープ】が入ってるんです。だって半分くらいの人が寝てましたよ。


「私が子供だと言う事をアリシアさんは忘れてる。子供は暇過ぎると寝てしまう。だから私が悪いんじゃないこれは子供特有の習性…お父様も偶に会議で寝てるらしいから大人になっても残る可能性もあるけど」


「いい訳しないでください‼都合の良い時だけ子供のフリをしないでください」


 酷い‼どっからどう見ても幼女ですよ‼


「お嬢様は見た目と中身があって無いのは既に分かってますから、単に暇だったから皆寝てたから便乗しただけでしょう‼」


「何故バレた‼」


「普通に周りの反応を見てから寝たでしょう」


 アリシアさんめあの人混みの中、私をロックオンしてましたか。油断出来ないですね今度からは魔法でデコイでも設置してどっかで昼寝しよう。


「思ったより退屈だった。これは想像外…図書館塔に籠ろうかな…」


「まだ学園生活は始まったばかりですよ、いきなり引きこもり宣言しないでください」


 だって面白く無いんですよ?他の生徒…と言うか貴族の子息・令嬢が明らかに私を睨んできて怖いし、よく考えたら私がこんなに知らない人の中に放り出されたのって初めてで…うちの王都に出た時もここまで怖くなかった。少し足が震えます。


「皆見てる…睨まれてるもう帰りたい」


「え?ちょ!本気で嫌なんですか?だから社交界に出るべきなんですよ。いつまでも嫌がるからこういう視線に慣れないんです」


 それはつまりアーランドの社交界に出ればここと同じ視線を向けられると言う事ですか、そんなの御免ですよ。


「早く終わらないかな」


 そう願うも今日は夕方まであるしそのまま寮に行くから慣れるべきか…仕方ない全員居ないものと考えよう私は誰も見えない。うん完璧。


「もう大丈夫。次は試験だよね」


「ええ!もう大丈夫なんですか?確かに次は試験ですね。まずは学科になります。基礎数学に文字になります。歴史は国毎に全然違うので大まかな世界史になります。まあお嬢様なら、なんら問題にならない物ですし、その後の魔法適正試験は魔法が使えるのかと言う試験と魔法の技術試験です」


 どっちも問題は無さそうですね数学など向こうの世界に比べれば児戯にも等しいですし文字は上手くは無いけど書けます。歴史も読書好きがこうじて大体大丈夫です。魔法は…まあ威力を落とせば制御可能ですから問題ない。

 ならば大丈夫だ!と意気込み試験部屋に行きましたが…これは眠い。足し算で首を捻る時期は前世で終わってるのですよ四則演算の基礎しか出ないこの程度の問題なら数分で終わりまたもスリープ…アリシアさんに怒られるも文字や歴史も同じ結果…段々飽きてきました。


「簡単過ぎるけどこれが試験なの?」


 取りあえず試験にする意義が分からないのでアリシアさんに聞いてみた。


「普通はここで躓くんですよ。お嬢様みたいに迷わず答えが出る事などあり得ません。ご自身の頭脳を基準に考えないでください」


 何か納得出来ない言い方されたけどこの世界の基準だと普通は分からないらしい。確かに前世の私も小学生の頃に苦戦……したのかな?そこら辺の記憶が無いので実体験が無いこの世界に来た時から四則演算は出来るからね。


「魔法が使える人はそのまま実技に向かってください。使えない人は適正を見るのでこっちに並んでください」


「ん?」


 私はあっちか。基本的に使えない属性は無いの(覚えていない属性はある)で適性検査に意味は無い。さっさと実技に行きましょう。


「そう言えばお嬢様のあのキモイ杖どうしたんですか?」


「封印した。あの活動以外では使わない。だからこっちを作った」


 あの竜杖はぶっちゃけ目立つので竜の涙を使った杖を作りました。見た目は50㎝位の棒の先に竜の涙がついてるシンプルな物です。込めた魔法は投影と言う映像などを映す魔法ですね。


「シンプルと言うか飾りも何も無い唯の棒では…」


「邪魔だったから」


 竜杖も意外と竜の部分が邪魔なんですよ。何か竜の部分が動いて今では魔玉を銜えた形状になってましたしあれって動くんですね。五月蠅かったから厳重に封印してきたけど。

 さて実技の試験はっと。あれですね的に使える属性の攻撃を当てる奴らしいです。壊せたら凄いって言ってました、かなり頑丈だから上級生でも難しいらしいです。なら粉砕しましょう。


「多重起動【アイスランス】【フレイムランス】【バーンランス】【アースランス】【ウォーターランス】…貫け‼」


5つのランスが別々の的にぶつかる。まずは命中だね。

 氷と土のランスは的に突き刺さるも壊せず他は壊す事以前に刺さらなかった。何か腹が立ちますね今度は一つの属性の魔法を投影による魔法陣で多重起動して一つに纏めると3m位の氷の槍が出来た。私は杖を新しい標的に向けると氷の槍を射出する。氷の槍は的の強度など無視して粉々に粉砕した。


「楽勝」


「…………」


「…………」


 ん?何やら周りが静かですね?何かこっちを見てますが何か変な事をしましたかね。


「何で壊しちゃうんですか?」


 アリシアさんが分かり切った質問をして来た。


「だって的を壊せば良いんでしょ?」


「違いますけど…当てれば良いんですよ。お嬢様は最初の魔法だけで十分合格です」


 え?簡単過ぎやしませんか?だって硬いから壊して見ろっていう奴じゃないのですか?これじゃ私の魔力が無駄に…いや意外と楽しかったので無駄では無い。


「お嬢さんがこれを破壊したのかな?」


「そうですけど」


 いきなり近づいてきた教師の人が私に問いかけてきた。見て無かったのかな?普通に私が壊してましたよね。


「ふむ。無自覚か次は別の魔法であの的を壊して見なさい」


 オーケーこうなったら全力行使。


「ソレは煉獄の焔。破壊の象徴にして始まりの焔よ我に力を貸したまえ【獄炎球】


 私は手のひらの上に黒い焔を出すと的に向けて射出する。それはさっきのランスより遥かに高威力な焔だ。中級魔法【獄炎球】それは超高温のまさに地獄の業火とも呼べる物だ。火球は的に当たるとそのまま何処かに飛んでいった。的は当たった場所が完全に消滅していた。


「……獄炎球まで使いこなすか、天才だな」


「アリシアさん、私何か変な事した?」


 アリシアさんは頭を抱えたまま蹲っていた。ちょ!無視しないでください。ねえねえと肩を揺さぶる事数秒で正気に戻ったようです。


「あの…お嬢様?あの魔法は何処で覚えたんですか?」


 え?ああ【獄炎球】ですかあれなら…


「お母様の魔道書に載ってた」


 アリシアさんはクワ‼と目を開くと私の肩を掴んで揺さぶりだした。


「何で…何でこんな危険な魔法まで覚えてるんですか‼人に当たったら蒸発しちゃいますよ‼どっかに飛んでったじゃありませんか‼」


「何言ってるの?そのまま上空に飛んでったから他に当たらないよどっかで消えるでしょう」


 流石にこの広場の結界を粉砕した時点で弾道を上空に逸らしたので人に当たる事は無いだろう。それにあの【獄炎球】は収束させたので爆発もしないでしょう。空の彼方へさようならです。


「今年は凄い人材が来たものだな」


 私達の後ろで教師が冷や汗を流していた。

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