24 初めての依頼は茶番1
「すみません冒険者登録をしたいのですが」
私は現在冒険者ギルドに来ています。時間は大体5時くらい後1時間程で夜の鐘が鳴ります。
「え?…はっはいこちらへ記入をお願いします」
受付をしてるのは18歳くらいのお姉さん。胸のサイズに共感を覚えるね。金髪を肩まで伸ばした人で近所に居る優しいお姉さん系の人です。
黒のフードの下はスカートとシャツの私をじろじろ見てます。狐さんの仮面付けてますしね普通は不審に思うでしょうけど。
「その子供?ですよ?まだ冒険者は早いのでは?」
その言葉に私は杖をだし【ファイヤー】を小さ目で出すと直ぐに消す。
「これでいい?」
「ままま魔法使い様でしたか申し訳ありませんでした‼」
魔法使いは数が少ないので冒険者になるのは稀でギルドとしても欲しいらしい。理由は魔法使いが一人居るだけで依頼の達成率…特に魔物の討伐などが段違いになります。そして初級魔法【クリーン】を覚えてればもう引っ張りだこで女性が居るパーティーは絶対に欲しがるらしい。冒険者でも女の子で居たいんでしょうね。
取りあえず記入項目は年齢・名前・出身国・職業(自称)だけです。簡単だけど深く詮索しないのも冒険者ギルドと言えますね。記入が終われば犯罪履歴の確認をします。これは水晶の上に手を置くと殺人などの重罪限定ですが犯罪を起こした事があるか識別できる魔道具らしいです。原理は私も知らないし特に興味も無い。
「それではこちらがギルドカードになります。カードの説明を行いますか?」
「お願いします」
「まずこのカードも一種の魔道具です。機能としては討伐した魔物を記録できます。また殺人などの犯罪を起こすとカードが黒くなります。これは自衛の為の場合はギルドで解除出来ますがそのままにしてると犯罪者になりますので気を付けてください。又紛失時には再発行に金貨2枚が掛かるので無くさないでください」
「分かりました」
「それと魔法使いのかたはFでは無くDランクからになります。F~Dランクは一階の掲示板に有る依頼しか受けれません。基本的に自分のランクより高いランクの依頼は受けれませんし依頼を失敗すると違約金が発生する依頼も有るので確認をしてから依頼を受けてください。
ランクは依頼の達成数によって決まってますが内訳は秘密になってますが討伐依頼は評価ポイントが高いです。それとCランクへ昇格するには試験があります。それ以下のランクは評価が貯まれば自然と上がりますが、えっとホロウ?様はDランクなので昇格可能になったら試験を受け合格すればCランクになります」
「緊急クエストについて教えてください」
「よくご存じですね。緊急クエストはギルド登録した者に拒否権の無いクエストになります。町が魔物に襲われた等の場合利用規約に書かれている通りこれを拒否する事は許されません。例外はAランク以上か何らかの要因で参加できない事が証明された場合のみです」
ふむテンプレ通りですか。想定通りのルールなので特に質問も無い。どうやって犯罪行為を記録してるのは少し気になって来たけど。
「ありがとうございました。今日は時間も時間なので明日から活動します」
「はい、ご活躍を心よりお祈りしております」
挨拶を済ませると早々にギルドから出る。
「お…ホロウ様?どうかなさいましたか?」
「気が付かなかった?かなり見られてた。意外と恥ずかしい」
「おや気が付いてましたか、ですが慣れれば意外とかいか…いえ気にならなくなります」
アリシアさんが何か言いかけたがアリシアさんって言い間違う事多いな…
「処でシアさんは元冒険者でしょ?何で登録してるの?」
「それは一度ギルドカードを返却したので再登録するより新規登録してやり直す方がホロウ様と一緒に居ても違和感がありませんから」
「さて、ここから私の伝説が始まる。さっさとランク上げて竜を狩ろう」
「‼何故最初から目標が竜なのですか‼あれは基本的に手出し無用ですよ」
「お父様に狩れて私に狩れない筈は無い、私はお父様を超え大魔導士になる」
私の言葉を聞いたアリシアさんは崩れ落ちた。
「何故…何故、どこで私は間違えたのですか?神よ私達に試練を与えすぎではありませんか?」
取りあえず放置すればそのうち再起動するので宿に帰ろう。
「あそこに依頼があるんだよね?横の神官は依頼のアドバイザー?」
「いえ、例の依頼を妨害する為に常駐してるのでしょう。無視してもかまいませんよ」
朝になってギルドに来ると凄い人が一杯居ました。冒険者と言うものを私は前世の知識しか持ってないのですが冒険者の人達って武器を何個も持ってるんですね。
ゲームとは違って武器や防具は壊れる物なので予備に何個か持ってるのが普通だとガイドブックに書いてあったが邪魔そうだな。
私とアリシアさんは人をかき分けながら依頼が張ってあるボードの前に行くと赤い依頼書がど真ん中に貼ってあります。
緊急依頼
「王の孫娘を治療してほしい」
「報酬 金貨150枚」
「条件 治療魔法、又は医術に詳しい者」
「破格の依頼だけど誰も取らないね」
「まあ治療魔法の使い手など早々居ませんしね」
取りあえずこの依頼を受けるので紙を外そう…届かない。
「シアさん取って」
「はいはい」
アリシアさんに頼んで紙を剥がす。これをカウンターに持っていき受注手続きを行わないと規約違反になります。そしてアリシアさんが紙を外すと横の神官が近づいてきた。メタボで神官とかどう見ても悪徳神官にしか見えない。
「そなた達はその依頼を受けるのか?現在その依頼を受ける事は教会が認めていない。治療魔法が使えるのなら通達が来ているだろう?紙を元に戻せ」
「?シアさん、通達って何処から来るの冒険者ギルドに貼ってある時点で公式な依頼だよね」
「そうですねこのままカウンターに持っていきましょう」
そう言って立ち去ろうとするとメタボ神官がさらに近づいてきた。
「その依頼に有る孫姫は国王の信仰心の足りなさゆえに天罰を受けている‼勝手な事をするなと教会から通達が来ているだろう‼」
「私達は教会とは無関係だからそんなの来てないしどうでも良い。邪魔」
私とアリシアさんが横を通りすぎようとするとメタボ神官も横にスライドするように移動して邪魔をしてくる。目に悪いので排除しようかな。メタボとか胸の次に罪悪だと思うんだ、両方消えれば良いと思う。
「まだ野で勝手に動く治療魔法の使い手が居たのか。治療魔法を使える者は教会で然るべき教育を受けなければならない。私に付いて来るように」
そう言ってメタボ神官は立ち去った。……いやそれで付いて行く訳ないじゃん。今のうちに依頼を受けて立ち去るか。
「これをお願いします」
カウンターに立ってるのは昨日のお姉さん。半日ぶりですね。
「え?これを受けるんですか!報酬は良いですが教会に睨まれますよ」
「私達はアーランド出身だからどうでも良い連中です」
ワタワタと忙しなく動いていた受付嬢のお姉さんがああ、と言う感じで状況を理解してくれた。アーランドと教会の仲の悪さは他国でも通じるらしい。
「手続き完了です。皆様のご活躍をお祈りしています」
さっさとここから出て人ごみに紛れればメタボ神官も私を見つけれまい。私はギルド内だと何処に居るのか分からないのだ(身長的に)。
ギルドから歩く事30分位。疲れてきたけどさっきからチラチラとメタボ神官が視界に入って邪魔だ。幸いあっちは私達を見失ってるらしいのでコソコソと城へ向かってます。
「あのメタボ神官がうっとおしい」
「簀巻きにして川に流してきますか?」
「そこまでは望んでない」
アリシアさんもいい加減イラついてきたようですね。まあ城ももう目の前ですから城門にたどり着けば私の勝ち…いや別に見つかっても強行突破するから問題は無いけどあの人は嫌いだ。私の直感が告げているあのメタボ神官は悪人だとね。
そうこうしながらも城門に到着‼私の勝ちー!っとまず依頼書を門番の人に見せないと
「依頼を受けたのでこちらに来ました。冒険者のホロウです」
「え?貴女が依頼を受けたのですか?」
「ええ。私は治療魔法も使えるのでこの依頼を受けました。後ろから神官が来てるので早くなかに入れてください。あの人うっとおしい」
取りあえずメタボ神官が真っ赤な顔をしてこっちに来てるので門番の人に中に入れて貰った。入ったと言っても門番の人達の休憩所でさっきの門番の人は走って城の中に入っていった。メタボ神官は入口で何やら騒いでるけど他の門番に止められて入れないらしい。
そして待つ事1時間…帰っていいかな。
「お待たせしました。国王陛下が自らお会いになるそうです。申し訳ありませんが粗相の無いようにお願いします。…それとこの依頼を受けてくれた事を感謝します」
門番の人は泣きそうな顔をしていた。国王陛下って部下に慕われてるんだね。そういう人がトップだと国も良くなると思いますね。
「出来るだけの事はします」
「よろしくお願いします」
そうして再び謁見の間…何やら昨日と空気が違いません?凄い空気が重いんですけど。私はとりあえず跪く、仮面は取らないけど。
「そなたが冒険者ホロウか?顔を上げよ」
「申し訳ありませぬが顔を晒せぬ身です故仮面をつけたままなのをお許しください」
私が仮面を外さないと告げると周りが騒ぎだした。
「無礼な‼仮面を付けたまま謁見をするなど我等を舐めているのか薄汚い冒険者風情が」
「身の程を知れ‼」
周りの貴族が騒ぎますが騎士や兵士が私に近づく事は無い。ここに来るまで何も言われない時点で話が通ってるんですよ。
「静まれ‼この者の格好については言及しない。よくぞ教会の圧力に屈せず依頼を受けてくれた早速儂の孫娘を救ってはくれぬか?必要な薬草などがあれば直ぐに用意しよう」
「いえ私は薬草を使いません」
薬草学は学んでないので使い方も知りませんよ。それに最悪は【女神の癒し】で治す事になりそうなので必要も無い。
「そうか、ではこちらについてまいれ」
私は立ち上がると国王陛下の後ろに付いて行く。当然私と国王陛下の間には騎士が居ます。話は通ってても信用は出来ないと言う事ですね騎士の皆様。そして再び歩く事10分。やっと目的の部屋に来ました。
「アルディウスよこちらが治療魔法の使い手のホロウじゃマリア―ネの容体はどうじゃ?」
「父上…娘はもう長くありません。何故…何故娘が」
中に居たのは国王陛下と同じ茶髪に茶色の目をした人でした。元はかなり美形の人なのでしょうけど今はやつれ髪も少しボサボサになってます。多分この人が王太子なのろう。そしてベットに横たわったまま意識の無い眠れる金髪ドリルさんが孫姫ですか意識が無いのにドリルの髪型ってあれ毎朝セッティングする物ですよね。いや深くは考えてはいけないのだろう。
「落ち着けこの者ならマリア―ネを救ってくれるはずじゃ‼」
「…この怪しげな者がですか?私には娘を救えるとは思えません」
「儂が知る中で最高の治療魔法の使い手じゃ並の神官では足元にも及ばないぞ」
あの…そういう事言われると後ろに居る神官(さっきとは別人)の額に青筋が浮かぶんですけど。と言うか何で居るの?さっきすれ違った時に余計な事をするなって言ってたよ。
「では容体も余り良くないので取り掛かります。【ヒール】」
私の手に淡い緑色の光が灯り孫姫さんの方へ手を向ける。
「おお‼」
しかし多少顔色が良くなった程度で魔法が終わってしまう。やっぱり【ヒール】では治せないようですね。ここで治せれば楽なのですが【ヒール】で治ってれば今頃元気になってるでしょう。これは使うしかないですね。
「【ヒール】で治せる病気では無いようです。私の秘術により治療しますが部外者は出て行ってください。特にそこの神官の人は邪魔です気が散るので絶対に追い出してください」
私の発言にまた周囲が騒ぎだした。病人の前なのに…




