表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突アーランド王国VSグランスール帝国
245/377

229 決死の戦い③

 私の軍勢はジリジリと後退していく。完全に押し込まれる……皇帝辺りはそう考えるかもしれない。

 しかし帝国軍は大変だな無能な皇帝が着いてきているせいで動きに精彩さが足りない。

 恐らく皇帝が自身の威光を強める為に指揮を執っているのだろう。


「まあ、馬鹿の相手はどうでも良いけどね。どうせ皆死ぬ」


 精々夢でも見ているが良い。この軍勢など囮に過ぎない。どれだけ壊されてもゴーレムなら辛くないし、苦しくない。

 しかし、私の目的は皇帝だけじゃない。寧ろ皇帝は優先順位的には下の方だ。この敗戦で皇帝は力を失うのだ。殺しても生かしても変わりはない。

 私の目的は帝国軍に甚大な被害を出し、帝国の大陸計画に致命的な破綻を生み出す事。つまり一人でも多くの兵を殺す。

 帝国軍は明らかに民を兵士にしている。一部に士気の低い部隊が居るが、士気の低さに気がついたわんこーずに蹂躙されている。ろくに反撃も出来ずに大混乱だ。

 これならここで数十万人程殺せば帝国の勢いを削ぐ事が出来る。

 そして帝国の混乱はアーランドにとって好機なのだ。内部が混乱し、外に兵を出す余力が無ければ、その隙にアーランドは発展出来る。10年……いや、5年あれば帝国はアーランドに勝てなくなる。これは私が居なくても同じだ。

 アーランドは効率的な魔法付与技術を既に取得しているのだ。強力な魔導兵器で蹂躙出来る。


「魔力濃度が足りないからアレはまだ発動しないんだろうな……変な改良したせいで発動条件が厳し過ぎだよ。何人反応してくれるかも分からないし」


 でも待つ。腕を組んで居る私の周囲には一体のゴーレムが副王旗を掲げているだけだ。青い生地に羽ばたく鳥。その前面に交差する杖と剣。

分かり易いだろう。私はここで護衛も無しに立っているぞ。出てこい第二騎士団!

 因みに私を倒してもアリスティア軍は止まらないし、混乱も無い。各連隊が独立してるし……多分私の分身も私が死にかけても助けに来ないもんね。大丈夫私も助けに行かないし。おあいこだよ。

 暫く私は軍を下げながら平原を目指す。帝国軍は民兵を前面に押し出して攻撃してくる方針を取ったようだ。

 民兵の後ろに槍兵が居る事から間違いない。逃げ場のない民兵が必死にこっちに向かって来る。市民殺してる私が言える事じゃないけど……これってあの有名なソ連式だよね。後ろの槍兵が督戦隊って奴だっけ? 気が滅入る事してくれるよ。どっちにしろ殺す事に変わりはないが、戦意の低い民兵を殺すのは……駄目だ。甘さは持っちゃいけない。

 ジリジリと下がるアリスティア軍に帝国軍の後方に移動した本隊の士気が上がってる気がする。お前等さっき大打撃受けて逃げまどってたじゃん! 騎兵ほぼ壊滅してるじゃん! 何で喜べるのだ。戦場心理は全く分からない。

 まあ確かに私の軍勢も少しずつすり潰されている。ゴーレム弱いし仕方ない。

 でも砦の包囲を解きつつ、全軍でこっちに向かってきてるようだ。包囲を崩すとか正気じゃない。私でも包囲の為の部隊は残すよ。私の動きを牽制出来るだろうし。


「皇帝には感謝だね。お礼に歴代最も無能で大戦犯な皇帝と言う汚名を歴史に刻んであげよう」


 どう考えても皇帝の意向で動いてる。帝国内に居れば私の思惑通りには動かなかったのにね。

 そして私が草原の半ばまで下がった頃に漸く魔法陣が起動した。


「よう馬鹿なアイリス。まんまと罠に引っかかったか」


 戦場なのにチャラチャラした格好の男とゴスロリ姿の女。

 最初から知っていたと言ってはいけないのかもしれない。凄いドヤ顔で自分の作戦通りだと確信しているようだ。

 と言うかこの男の顔……気のせいか。記憶にない……ってアイリスの知り合いか! 記憶に無いぞ。

 誰だ……ジョゼフ小父さんの息子は……メタボだったし顔的に日本人だ。

 アイリスって日本人の知り合い殆ど居ないんだよね。そして記憶に無い以上は【覚える価値のない】人間だ。


「お前達が帝国軍第二騎士団を名乗ってる奴等? 」


「俺の言葉を遮ってるんじゃねえよクソアマ。

 まあ良い。第二騎士団? ああ、あの役立たず共かドラコニア一人に半壊させられるとかあり得ねえ失態を犯した連中もここに居るぜ。但し俺は第一騎士団のトップだがな」


 その後もペラペラを自慢するように話し出す男。

 どうやら第一と第二騎士団は基本的に同組織らしい。と言うのも、第一騎士団のトップらしいこの男が第二騎士団も乗っ取ったのだとか。

 いやそこまで聞いてないから。少しうるさいし、気取った態度もイライラするので腰のホルスターからリボルバーを抜くと、そのまま発砲。

 しかし男の目の前に老騎士が現れ、銃弾を掴む。

 知ってた。お父様もライフル弾をデコピンで弾けるし。

 やはり銃じゃ駄目か。そして私はこいつ等の戦力が侮れない事を理解する。しかし挫けない。既に死兵の私ならば道連れは可能だ。

 しかし行き成り発砲した事に男が顔を真っ赤にした。


「相変わらず……相変わらず礼儀のなってねえクソガキだな。少し教育が必要だと思ってたんだ。

 3人で良いぞ。手足でもへし折ってやれ」


「兄さん。私も良いかな? 」


「お前もか栞」


「兄さんのお嫁さんになるんだから少し教育しておかないとね。家族として」


 私の背筋が凍り付く。

 私の本能がミューン・ミューンと鐘を鳴らしている。私知ってる。こういう人ってロリコンって奴だ。小学校の通学路とかで待ち伏せして世間を騒がせる危険な奴らだ。

 確かハ○エースを近くに止めていてト○タに風評被害を与えて悦に浸ってるとも聞いたことがある。

 それに私王女だぞ。どこぞの馬の骨とも知れない男と結婚とか立場的にあり得ないから。しかるべき地位をアーランドで築くか、王国騎士団とお父様を倒して強さを証明するかでもしないと無理。


「気持ち悪い男……」


「ッ! やれ! 」


 栞と呼ばれるゴスロリ女と男三人が私に襲い掛かってきた。4人になってるじゃん!

 とっさに私は【イージス】と言う魔法障壁を展開する。魔法・物理共に優れた魔法障壁だが、私は強烈に危機感を感じてしゃがみ込む。

 すると案の定【イージス】は砕かれていた。しゃがみ込まなければ今の一撃で私は終わってた。


「【短距離転移】」


 しゃがんだ状態では動きが鈍すぎる。掴まれる前に転移で離れるが、目の前に既に他の男が走りこんで来ていた。


「無駄だぜ。ソイツは魔力を視認出来る魔眼持ちだ。短距離転移じゃ出る場所がまる分かりだぜ」


 名前を知らない男が悦に浸るように笑っている。と言うかワイン飲んでる。コイツ戦場に居る事を自覚していない?

 疑問を持ったが、魔眼持ちはそれ程恐ろしいとは感じなかった。ナイフを突き立てて来るが、【イージス】を再び展開するとあっさりと止められる。


「燃えろ【フレイム・バレット】」


 魔眼持ちの男が【フレイム・バレット】を容易く避ける。成程魔法の通り道まで見えているのか。

 私は高速で思考する。魔眼持ちを潰すのは難しくない。避けれない広範囲魔法で吹き飛ばせばいい。コイツ一人なら可能だ。

 しかし、他の二人が絶対に邪魔をする。

 もう一人は………ドルドレット将軍じゃないかな。顔とかの特徴がお父様の話の内容と一致する。持ってる槍の形状もそうだ。

 お父様に引けを取らないシルニア共和国の猛将が何でここに! と言うか帝国と戦争に負けた筈じゃ…生き残って帝国側についた……いや、お父様曰く脳筋の愛国者だからあり得ない。

 私は逃げながら観察する。そして気がついた。3人の男に表情が無い。洗脳系の魔法か何かか。あいにく解除できる魔法が手持ちに無い。第一洗脳魔法も種類があるので目の前の相手と戦いながら解除は無理だ。殺すしかない。


「邪魔! 」


 距離を取らせない魔眼持ちの男に、動きこそ早くないが、一撃が死ねるレベルのドルドレッド将軍。更に一人は魔法を撃ち込んで来る。

 連携が上手いので、反撃するには崩すしかない。私の放った【エクスプロージョン】だが、あっさりと全員に躱される。


「ついでに術式解凍【グラビティー・プレス】」


 3人の内魔眼持ち以外が膝を着く。上からの圧力に耐えてるよ。全力展開だよ。普通潰れる。


「【オルタナ・ドラゴンブレス】」


 魔眼持ちは躱すが、後ろの魔法使いとドルドレット将軍が火炎で焼かれる。

 私は態勢を立て直す為に【飛翔】で空に飛ぶが、火球の中から槍が飛んできた。

 私は辛うじてそれを躱そうとするが、躱した時にはジャンプでドルドレット将軍が飛び上がっていた。


「術式解凍【プロテクト】っぐぅ! 」


 50m程飛んだドルドレット将軍の拳が私の交差した腕に直撃する。私の使える防御魔法で最硬度を誇る【プロテクト】軋む。

 しかし継続的に飛ぶことが出来ないのか、ドルドレット将軍はそのまま落下した。普通に着地したよ。この世界の強者はやっぱり人外だ。


「本当に嫌になる」


「降伏しても良いんだぜ」


 後ろで見てるだけの男が偉そうに叫ぶ。イライラするから口を閉じろ。

 しかしドルドレット将軍は完全に無傷だ。魔装すら使ってないと言う事は自身の闘気を纏うだけで耐えたと言う事だろう。

 魔法使いは……普通に死んでいた。これで漸く一人とか嫌になるね。

 私は背中から竜杖を取ると詠唱を始める。


「誰が降伏するものか【獄炎】」


 ドルドレット将軍に赤黒い炎を放つ。ドルドレッド将軍の立ち位置的に後ろに居る栞を護るかもしれない。


「ちょ、避けるな私が燃える! 」


 案の定炎を嫌った栞の命令でドルドレット将軍が腰の収納袋から新しい槍を出すと【獄炎】を闘気の斬撃を飛ばして吹き飛ばそうとする。しかし、勢いが強すぎる【獄炎】はその程度じゃ無理だ。

 栞が射線から逃げると同時にドルドレット将軍も躱すが、所々焦げていた。

 マジでこの将軍如何しよう……RPGで初手魔王戦をやらされる気分だよ。

 それに栞とか言う女の意味は何だ?


「あっぶないなー! 許さないんだから。ちょっとどけ! 」


 全身にある程度の火傷を負ったドルドレッド将軍を蹴飛ばす栞。仲間意識は無いようだ。


「まあ噂通り近接戦は全くなのね。それなのにノコノコと出て来るとか馬鹿じゃないの? 」


「お前の恰好程は馬鹿じゃないし」


「ッ許さない! 」


 栞は傘を閉じると刺突の構えで突っ込んで来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ