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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突アーランド王国VSグランスール帝国
238/377

222 王都防衛戦①

 アーランド王国首都アルブルド近郊に帝国軍が現れた。

 戦力は約30万程の大部隊である。対する王都アルブルドは兵力は500人に満たない程度の戦力しか残っていない。


「……何と、これほどの王都を築こうとしているのか」


 帝国軍王都攻略隊の指揮官は呟く。本来の王都の城壁は遥か彼方であり、新城壁が広大な土地に築かれようとしている。

 もし、この王都が完成すれば、それは大陸一の規模を誇る超規模な都市が完成するだろう。

 そして指揮官は王都が目の前に来た時に己の眼を疑う。

 数千を超えるゴーレムと自軍に匹敵しかねない市民が作業を行っているのだ。

 目の前に侵略者である自分達が居るのに誰も気にせずに己の仕事を全うしている。

 この国は危険だ。指揮官はそう思った。野放しにすれば手に負えない事になる。

 指揮官は全軍の前に出ると大声で叫ぶ。


「聞けアーランドの民達よ。貴様らの軍は既に壊滅した。今日、この瞬間を持ってこの地の占領を宣言する。今すぐに跪け! 」


「…………阿呆らし」


「馬鹿は放置して仕事しようぜ」


 王都の市民は指揮官の言葉に嘲笑で返すと、再び仕事に取り掛かる。内心は目の前の侵略者を八つ裂きにして生きたまま火炙りにして殺したい程怒り狂っているが、彼等には仕事がある。アリスティアが戻ってきた時に立派な王都を築いて出迎えると言う目的があった。

 更に王都には地方からの避難民が居る。彼等とて仕事をしなければ暮らせない。そして王都は致命的に人手が足りない状況だ。

 その結果、避難民は一時的な出稼ぎと自身を納得させ、新王都を作る労働者になっていた。

 向けられる嘲笑に指揮官だけでなく、帝国軍の兵士達の顔まで赤くなる。

 グランスール帝国において軍人とは重要な地位にある。故に末端の兵士であっても平民が侮辱する事は許されないのだ。

 それが自分達に跪くべき平民が亜人が自分達に侮蔑の嘲笑を向けているのだ。

 そして自分達が目の前に布陣しているのに、誰も逃げないどころか防衛戦の為の兵士すら現れない。いや、居るには居るのだが、堂々と目の前で欠伸している。

 自分達は侮られている。それを理解した時、彼等の中に憤怒の炎が燃え上がる。


「適度に殺して奪え。我等を侮るとどうなるか教育してやれ! 」


 指揮官の言葉に帝国軍が雄叫びを上げて進む。しかし、国民達の目の前に来た時に壁にぶつかった。半透明な壁は新王都外周を覆う結界だ。空まで閉ざされた結界は明らかに都市用の防衛結界である。


「これは都市防衛結界だと、魔法王国め流出させたか」


 指揮官の言葉に国民の一人が嗤う。


「ばーか。これは姫様製だよ。魔法王国製なんか買う訳ないだろう」


「どうだ、これでも俺達を殺せるか? 」


「糞が! 魔法師団、魔法攻撃だ」


 帝国軍の魔法師団が魔法を唱え多くの魔法が結界にぶつかる。しかし、その結界を揺らがす事すらできない。

 目の前に煙幕のように土煙が上がるが、それが風で散っても健在の結界に帝国軍は魔法を撃ち込んでいない場所から兵士達で攻撃させる。

 都市防衛結界には欠点がある。それを帝国軍は知っていたのだ。

 強力な結界を張れる都市防衛結界は相応の魔力を消費する。そして結界攻撃を受ければ魔力を消費するのだ。

 つまり負荷をかければいずれは結界が壊れるか、魔力が足りずに消えるだけだ。

 帝国軍が一生懸命結界を攻撃している間、王都の住民達はせっせと新王都建築に勤しんだ。

 そして昼の鐘が鳴ると、その場で昼食を取り始める。


「いや~美味ぇなあ~ 」


「腰が入ってねえぞ! 」


 各々が角材等の上に座り好きな昼食を食べながら未だに結界を攻撃している帝国兵をまるで野球の試合をテレビで眺める親父のように見ている。

 昼食は基本的に屋台等だ。最も売れているのは副王商会連合が運営しているバーガー屋だ。今アーランドで大ヒットしている店の屋台が何個も並んでいる。一つでは行列を捌けない程売れているのだ。

 ハンバーグ自体はアーランドにも存在していたが、地球と同じく元は貧困層の食べ物であったのだが、アリスティアの要請で庶民用に開発されたのだ。

 因みにハンバーグもジューシーな物に改良され、これも大ヒットしている。

 野次を飛ばしながら昼食を取る王都の住民達を帝国兵が憎悪の視線を向ける。


「卑怯だぞ! 今すぐ出てきて戦え! 」


「俺達兵隊じゃねえよ。それにお前等の相手をしてるほど暇じゃない」


「戦いたかったら入って来いよ。出来ればの話だがなハッハッハ」


 憂さ晴らしに帝国兵を徴発して遊ぶ国民と、徴発に乗って怒り狂う帝国兵。しかし、日が暮れるまで攻撃しても結界は壊せなかった。

 疲労困憊の帝国兵はトボトボと少し離れた所の陣に戻る。


「どうやら中に入り込んだ仲間は駄目だったようだな」


 総司令官の言葉に残りの参謀や指揮官達がため息を吐く。


「せめて内部で混乱を起こしてくれれば良かったのだが……あの様子だと全滅だろう。少し侮ったな」


「閣下夜襲です。夜襲で潰しましょう。結界だってもう直ぐ壊せる筈です」


 騎士隊の指揮官がテーブルを叩く。


「本当にそうなのか? 」


 総司令官は疲れ果てていた。これ程自分の常識が通じない戦争は初めてであった。歳もそれなりなので更に疲れが激しい。本来なら帝都の防衛でも行っていたかったと思っている程だ。

 総司令官の言葉に魔法師団の指揮官も同意する。


「我々の解析した所では、アレは複合結界だ。少なくとも7枚の結界を張っている。今日の総攻撃で一切びくともしなかった結界が7重に張られているんだぞ。壊せる訳がない。

 一度撤退してアーランドの主力を潰す方が良い」


 魔法師団の指揮官の言葉に騎士隊の指揮官が顔を真っ赤にする。第一に帝国や魔法王国ですら首都の都市防衛結界は一つである。

 それが7つ。信じる事が出来なかった。騎士隊の隊長はアーランドを未だに魔法後進国だと信じているのだ。

 更に言えば、仮に7枚の結界を張っていても、それを維持する魔力は途方もない程に必要であり、長時間の維持は出来ないと考えた。

 ならば結界に負荷を与え続ければ魔力が尽きるのが道理。遠くに見えるアーランドの王都は既に城壁の取り壊しも始まっており、籠城は不可能。

 結界さえなければ自分達だけでも蹂躙出来ると考えていたのだ。


「我々が亜人共に侮られて居るのだぞ! 貴様それでも帝国軍人か! 我らが本気を出せば、あの程度の結界等恐れる事は無い! 」


 結局結界の維持をさせない為に夜襲を決行する事になった。明らかに首都の防衛戦力は乏しい。例え逆襲されても数の暴力で潰せると騎士隊の隊長の主張が通ったのだ。確かに王都の防衛戦力は乏しかった。

 時刻は深夜と呼べる時間だ。帝国軍は再び動き出す。

 しかし、指揮官の思惑とは違い、士気が低い。

 理由は昼間の攻撃だ。自分達に跪いて命乞いをするべき連中が嘲笑した事に帝国軍は激怒して全力で攻撃したのだ。当然体力の消耗が激しい。

 指揮官は指揮を執るのが仕事故に、そして指揮官もキレていた為にそこまで配慮が無かったのだ。

 帝国軍が疲れた体を押して再び結界の前に近づく。


「王手」


 パチンと言う音と共に唸り声が聞こえる。

 帝国軍の前には10人程の兵士が居た。副王家警備隊の兵士達だ。


「……待ったは駄目か? 」


「隊長、12回目ですよ」


「ぬう……仕方あるまい」


 副王家警備隊の兵士達は投光器を持ち出して夜間勤務を行っていた。

 最も王都に侵入するのは不可能だと気がついているので嫌がらせも行っている。

 実際目の前で堂々とゲームに興じている兵士を見た帝国兵も怒りを通り越してため息しか出なかった。

 副王家警備隊は今晩にでも夜襲を仕掛ける事を察知していた。彼等は元々は王国軍の兵士であり、年齢などの理由で除隊した古強者である。故に帝国軍の思考等手に取るように読める。特に怒りで冷静さを失っていれば尚更だ。

 この夜、帝国軍が攻撃する中、副王家警備隊は緩やかな雰囲気で将棋を楽しみ、更に帝国軍の冷静さを失わせた。

 王都を攻撃している帝国軍。本来であれば自分達の士気が上がり、攻撃される王都の住民は不安に怯え、士気を落す。そうすれば王都の普人が決起し、自分達に従うだろうと考えていた。

 しかし実際は王都の統制は完璧だ。アリスティアの名声は王都の住民の不安を払拭し、安心を齎す。自分達が耐えれば絶対に王都は落とせないと言う自信があった。更に言えば王都の普人主義者は殆ど動けないのだ。どうやって結界を消せばいいのか見当もつかない。更に動けば王都を騒がした連中と同じ目に合うと言う恐怖があった。捕らえられた連中は今では正座をしながら自分が鉱山に送られるのを静かに待っている。反省したようだ。少し虚ろな瞳をしている以外は健康である。心は知らん。

 そして怒りに冷静さを失った帝国軍は夜の闇に紛れ、武装飛空船が王都へ帰還した事を確認出来なかった。更に……


「よーし、準備完了! 」


「砲弾も十分あるよ」


「戻ってきた武装飛空船も戦闘に参加するって」


 帝国軍が陣地を張っている反対側の地点にアリスティアの分身達が居た。

 彼女達はお披露目に使い、回収するのが面倒で放置していた20インチ砲を直ぐに動かせるように整備し、砲弾の生産を終えていた。

 更に王都に武装飛空船が戻った事で、武装飛空船は2隻に増加。反撃の戦力が整う。


「帝国軍は殲滅する」


「侵略者は殺せ」


「敵は皆殺しにすれば良い」


 感情の無い分身は与えられた命令通りに帝国軍の喉元に静かに牙を近づけているのだった。

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