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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突アーランド王国VSグランスール帝国
237/377

221 領都シュルン攻防戦

 領都シュルンを治めるシュレイン伯爵家はアーランドより少し歴史ある伯爵家だ。

 元は今は亡き他種族連邦の所属であったが、内部の腐敗と連邦を纏める王家の裏切りにより他種族連邦は瓦解。その際に領地をアーランドに捧げる代わりに国民の亡命を求めたシュレイン伯爵家は、自身の事よりも国民の安全を求めた功績から領地を安堵され、現在では5侯に次ぐ伯爵家であり、アーランドの食糧庫とも言える家柄になっている。

 そしてそのシュレイン伯爵家の本拠地である領都シュルンは規模だけなら王都に匹敵する城塞都市だ。最も長年の予算不足で城壁も老朽化している。

 そして帝国戦では帝国の侵攻ルートに近く、略奪の被害を受ける可能性が高い事から領民は王都へ避難した。

 現在ここに居るのは201部隊だ。

 彼等はここで防衛戦を行い、近隣の避難の遅れている国民が王都へ避難する時間を稼ぐのが目的だ。


「トラップを仕掛けつつも都市の構造を体に叩き込め! 市街戦準備もだ! 」


 201部隊の隊長であるユーディスが大声で叫ぶ。


「お前等は逃げ遅れた国民が居ないか捜索しろ。お前達の部隊はシュルン入口に地雷を埋設するんだ」


「っは! 」


 走り去る部下を眺めながら参謀と作戦を練るユーディス。


「勝てると思うか? 」


 ユーディスの言葉に参謀は首を振る。


「数が足りませんな。時間稼ぎが精一杯でしょう。寧ろ勝つお積りでしたか? 」


「っふ。不可能だな。しかし……この地雷は何とかならんかったのか? 」


「隊長が無理を言うからですよ」


 ユーディスは補給隊に届けられた地雷を眺めて眉を顰める。

 届いたのは地雷なのだが、それは武装飛空船用の127ミリ砲弾を流量した物だった。

 当然だろう。教本には地雷の事も乗っているのだが、地雷の生産は未だに行われていないのだ。しかし、教本の内容からユーディスは地雷をアリスティアに要求したが、送られて来たのがこれだった。

 重さだけで30キロを超える地雷は本来の負傷を目的とした物よりも凶悪で、相手を殺すのが容易な威力を誇る。これをユーディスはシュルンの城門付近に埋設しまくった。

 そして201部隊がシュルンに到着してから5日で帝国軍略奪部隊が姿を現す。

 既にアーランド軍主力部隊は砦に包囲されているのと、略奪の成果も無く、補給が少ない事から略奪部隊は増員され、シュルンに来た連中だけでも3万近い。

 対する201部隊は300人程度だ。

 帝国軍はまず降伏勧告を行った。しかしユーディスは部下のシモンと言う狙撃手に命じて狙撃させる。交渉を行う人員も居なければ、行う道理も無い。

 勧告の使者が殺されるのはよくある事なので、帝国も気にする様子も無く攻撃を始めた。

 当初は201部隊は城壁から機関銃掃射を行い、多くの帝国兵を殺す。しかし兵力差からジワジワと近寄られ、遂に城壁近くにまで食い込まれる。その時点で201部隊は城壁を放棄し、都市内に逃げ込む。しかし城壁に取り付いた帝国兵が梯子で城壁をのぼり、誰も居ない事を確認した後に城門を開けてしまった。多くの帝国兵が城門から入ろうとした結果、埋設された地雷が次々に起爆し、帝国軍に甚大な被害を与える。

 突然の大爆発に驚いた帝国軍だが、全体で見れば被害は継戦不可能な程ではない。謎の爆発で怯える帝国兵を叱咤しながらシュルン内部に侵攻した。

 そしてシュルン内部に入った瞬間多くの建物から銃撃を受ける。梯子から城壁を超えるよりも開門した城壁から入る方が楽であるが、城門の大きさでは一度に入れる兵士の数に制限がある。そこを利用して攻撃を始めたのだ。


「駄目だ撤退! 撤退! 」


 想定以上の被害に一度体制を立て直す為に帝国軍がシュルンから出ていく。

 それを見た201部隊の兵士達はニヤニヤと笑う。無理やり都市内に入り込んだ方が楽だと知っているのだ。無論入ってもトラップだらけなのだが。

 その日は想定以上の被害から帝国軍は少し離れた所で陣を張り、体制を立て直した。

 201部隊は夜の内に再び地雷を埋設する。

 次の日も降伏勧告を行う使者が来た。前日よりも丁寧な挨拶を城壁近くで叫ぶ。

 内容は降伏すれば帝国に仕えれるように話を通すと言う物だ。この時点でアーランド軍は連発式の銃を持っている事に帝国軍も気がついていたのだ。201部隊を獲得すれば、それらが手に入るとの考えだ。

 結果はシモンがあくびをしながら頭を狙撃した。


「お前あくびしながら当てれるのかよ」


「そりゃ棒立ちしてる相手だしね」


 ハッハッハと笑う兵士と少し寝不足で目をこするシモン。

 帝国軍は夜の内に作戦をたてたのか、前日を上回る勢いで攻勢に出た。201部隊は前日と同じように城壁から機関銃掃射で大まかに帝国兵を殺し、形勢不利と見るや、都市内部に撤退する。

 そして前日と同じように城門付近の地雷を踏みながら帝国兵がシュルンに入ってきた。前日と違うのは魔法使いを先行させ、魔力を感知しようとした事だろう。しかし、地雷に魔力は無いので魔法使いに甚大な被害を出しただけであった。

 しかし今回は帝国軍も損害を無視して侵攻している。一度起爆させれば問題ないと前回で学んだのだ。

 しかしシュルンに入ってからが地獄だった。漸く略奪出来るとシュルン内部に入った帝国兵の一部が家に突入する。

 その瞬間爆発音が響き、扉を開けた帝国兵が吹き飛ぶ。近くの帝国兵も手榴弾の破片を受けて転げまわる。


「ぎゃああああああ」


「目が、目があああああ! 」


 都市中の建物や道に罠を仕掛けた201部隊は地形を活かして帝国軍を苦しめる。

 見慣れぬ都市での市街戦は帝国軍に圧倒的に不利であり、また何処に罠が仕掛けられているのか分からない。


「シモン行けるか? 」


「余裕」


 シモンが引き金を引くと、遠くの指揮官の一人が額を撃ち抜かれて馬から落ちる。シモンは次弾を装填すると、近くに居る将校を撃つ。

 彼と同じく狙撃が得意な兵士はシュルン中央の鐘のついた塔に居た。そこから帝国軍を狙撃していたのだ。

 しかし、音は聞こえずとも倒れた方向からある程度の方角は分かる。


「あの塔だ! 」


「ふざけやがって。殺してやる」


 弄ばれるように味方を失った帝国兵。しかも多くの指揮官を撃ち殺された事で統率も無いに等しい帝国兵達は碌な警戒も行わずに塔に殺到する。


「それじゃ脱出しますか」


 仲間がライフルを肩にかけると、ロープを下ろす。そしてシモンを抱えると、そのままロープを使って降下し始めた。

 シモンは抱えられて居るので両手が使える。降下しながら地上の帝国兵を撃ち抜く。シモン達が地面に降りると同時に塔のてっぺんが爆発した。


「分かり易い罠に掛かるとはな。惚れ次の狙撃ポイントに移動だ」


 シモン達はライフルを構えると油断なく動く。先頭だけでなく、後方や左右も警戒しながらチームで動いていた。当然一部の帝国兵に見つかるが、狭い通路では槍も振るえず殆どが剣を持っていた為に見てからの反撃も余裕である。

 シュルン内部に居る201部隊は全員通信機を付けているので各自の連絡も緻密に行えるために組織だってのだ反撃が可能なのだ。

 そして指揮官であるユーディスはシュルン地下に居た。

 ここは下水道だ。最も古くて内部構造は地図が無いと分からない上にいざと言う時の避難ルートも兼ねて居る為に下水道に入れる箇所は少なく、それらは全て隠蔽されている。ユーディスは避難する伯爵家からこれの地図を借り受けたのだ。元々シュルンはこの下水道を使い防衛戦を行えるように作られているので、下水道の一部には指揮官達の基地になる場所もある。


「様子はどうだ? 」


 ユーディスは通信機を持っている兵士に尋ねる。本来なら自分も銃を持って戦いたいが、指揮官に万が一の事があるといけないと周囲に止められて不機嫌であった。

 尚、通信機は地下でも水中でも使える。


「シモンが指揮官を何人も殺しているので組織的な動きが出来ずに大混乱の様ですね」


「かっはっは! アイツの狙撃の腕は201部隊の中でも随一だからな。隠れるのも上手い」


 シモンは元来臆病であり、隠れる場所を探すのが上手く、本気で隠れれば見つけるのは201部隊でも容易ではない。

 次々と狙撃ポイントを変えて帝国軍を混乱させているようだ。


「地下の事もバレてませんね……いえ、探してる暇も無いのでしょう」


 思わぬ反撃と未知の攻撃で本来の制圧任務を行えない帝国軍は罠と銃で蹂躙されている。

 しかし帝国軍は甚大な被害を出しながらも地上を制圧した。

 しかしこれからが本領発揮である。碌な物資も残っておらず疲弊した帝国軍は指揮官の多くを殺された状態でシュルンに留まった為に多くの奇襲を受ける。

 地上を制圧された事で201部隊は下水道を移動ルートに昼夜問わずに帝国軍を苦しめる。

 何度目かの援軍が届き、漸く下水道の事に気がついた帝国軍が下水道を虱潰しに捜索する頃には役目を終えた201部隊は罠だけ残して撤退した後であった。

 帝国軍が完全に領都シュルンを攻略するのに8日程掛かり、その時間で近隣の国民も多くが王都に避難した事を帝国軍が気がつくのは暫くしてからだった。





「さて、隊長、次の任務は何ですかい? 」


 シュルンから少し離れた場所に201部隊は居た。巧妙に偽装された出口には既に罠を仕掛けている。


「実はな、次の計画は聞いてないんだ。だから俺に与えられた独自作戦権を使う。

 国境沿いに移動だ。連中の『撤退中』を襲うぞ」


 201部隊はこうして独自に国境沿いに移動を開始した。数日前に王都侵攻軍の顛末を通信で聞いた彼は勝利を確信していたのだ。


「それと王都侵攻は案の定失敗したそうだぜ」


「ガッハッハ! 出来る訳がねえ。俺達だって『魔都』の攻略戦なんか参加したくねえよ。恥をさらすだけだからな」


 彼等は王都が降伏でもしない限り落とせない事を知っているのだ。元々心配してなかった。


「指揮官は顔を真っ赤にして叫んでたそうだぜ。戦争じゃないってな」


「オイオイ相手にして貰える訳がないだろう。忙しいんだからな」


 王都の住民はアリスティアの指示で現在も王都を拡張工事をしているのだった。

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