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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突アーランド王国VSグランスール帝国
218/377

202 出陣

 お父様は軍を率いて出陣する。お兄様も一緒だ。多くの将兵を引き連れ出陣する。


「本当に良いのか? 」


 王都から出る門の前まで見送りに行くと、お父様に問いかけられる。

 実は王都警備隊もお父様についていく事になったのだ。

 お父様は反撃の準備が出来るまで徹底的な遅滞戦闘を行う。その為に必要な戦力として王都警備隊も連れて行くように私が言ったのだ。

 王都警備隊の練度も高い。実戦でも十分役立つレベルだ。

 しかし、帝国軍は確実に王都も襲う。王都にも防衛戦力が必要だとお父様が渋った。

 しかし、帝国が王都を攻め込んだ場合、王都警備隊では数が足りない。なら、無くても問題ない。どうせ王都には『入れない』のだ。


「問題ないよ。直ぐに残りの魔導炉を完成させて王都防衛結界を張るからね」


 王都防衛結界。既に試作品は帝国との国境近くにある砦に設置された物の複層構造の物だ。これの防御力は凄まじく、地球レベルで話すとソ連が作った世界最大の原爆を計画通りの物を使っても問題ない。寧ろそのレベルを想定して作ったからね。

 王都侵攻は絶対に起こるだろう。王国軍だけで全ての帝国軍を押さえるのは不可能だ。常識的に考えれば強力なアーランド軍を主力で抑え込んで別動隊が王都を落す。首都が落ちると士気が維持できないからね。士気が落ちれば屈強なアーランド兵もまともに戦えないだろう。だから必要以上に頑丈な防衛結界を構築してある。


「将来的な物だった筈だったんだがな……すまないアリス。お前に王都を任せる。決して無理をするなよ」


「防衛は気にしなくていいよ。但し、絶対に死なないでね。時間を稼ぐ事に専念して。必ず勝てる物を作るから。

 それと、これを持って行って」


 私はお守りを2人に渡す。エイボンと作った試薬O-201を仕込んだ物だ。但し効果は保証できないので中身は秘密。世界樹の葉が有れば完全な物が作れたんだけど、代用品の選定をミスった結果、最低限の効果しかない魔法薬が完成した。それが一滴だけ入ってる。必要になれば自動で使われるはずだ。


「アリスのお守りか効果がありそうだ」


「無理はしないでね。もし勝手に死んだら………世界中を焼き払うからね」


「必ず生きて帰る」


 お父様とお兄様は多くの兵士を率いて出陣した。

 私は家族と軍を見送ると、残った貴族達に指示を出す。残ったのは純粋な文官だ。一部武闘派の文官もお父様と一緒に出陣してしまったけどね。


「これより王都に厳戒態勢を発令する」


「「「「ざけんな! 俺達も戦うぜ!」」」」


 国民が盛大に怒った。よく見れば日用品を武器にして持ってる。金槌で剣に立ち向かうつもりなのか……出来そうなんだよなぁ……

 国民レベルでアーランドは戦闘民族だ。日本で言うと薩摩武士が江戸で町民をやってるようなものである。兎に角血の気が多い。普通に釣り野伏をやる国民性とか怖すぎる。

 元々中央から迫害されて出来た国家の性質上団結力がハンパないのだ。しかし、非戦闘員である事には変わりはない。そして私は彼等を戦わせるつもりはない。

 彼等は国民であり、私は王女だ。国民を守る義務が私にはある。


「絶対に駄目」


「俺達だって防衛戦くらい出来るぞ」


「絶対に駄目! もし勝手に戦うなら終わるまで牢屋に入れるからね! 」


「「「……」」」


「王都は絶対に落とされない。私を信じて欲しい。お願い」


 絶対に王都は護りきる。何千何万と兵を送られても護りきる。だから戦わなくても良い。


「これより私は一切の公務から外れる。直ぐに訓練部隊を動かす為に武器の生産を行う。貴方達に任せるよ」


「訓練部隊が何か未だに知りませんが了解しました。姫様に代わり全ての些事を我らが代行しましょう」


 訓練部隊は秘匿されているので国民も残った貴族も知らない。但し私が何かをしようとしてる事は理解出来るようだ。今後の書類仕事を任せる。

 私は宝物庫内の軍事工場に直ぐに籠り、施設拡大と生産増加に取り掛かる。

 現状1000を超える研究開発を行っているが、即応性のある物以外は中止だ。まずは人員を整理する。

 第一が王都の魔導炉設置の為の人員。これが一番多い。そして完成間際の武装飛空船2番艦の建造。3番艦は未だに着工していないし、魔導戦艦も船体の半分も出来ていないので中止だ。

 更に砲弾や銃弾などの弾薬と爆弾の生産拡大。錬金施設で火薬を作ってるのでこっちも拡大だ。必要な物資は最優先で取り寄せる。お父様から国庫の金と国のルートを最優先で使って良いと言われている。


「姫様、武装飛空船が出陣しました」


「アリシアさん。無理をしないようにと伝えて。練度に問題があるから、絶対に敵の射程圏外からの攻撃に集中させる事を徹底させて」


「分かりました。姫様も無理をしないでくださいね」


「それと訓練部隊から第2訓練部隊に緊急出陣を命じて。基地内の物資を集中すれば直ぐに運用できるはずでしょう? 」


 そう言うとアリシアさんが苦い顔になった。


「既に新設された参謀本部で物資の融通を行ったそうですが……第二訓練部隊の隊長が……その基地内で略奪まがいの事を行ったとの事です」


 第二訓練部隊のトップである男は超問題児だ。ルドルフが悪戯小僧に思えると報告書が何度も来ている。仮に帝国侵攻が後数か月後だったら軍を除隊させられているレベルだ。

 本人曰く「ちょっと人生を楽しんだだけです」だそうだ。

 但し部下の扱いは上手く、軍人としての能力は高い。そしてカリスマもある。実際第二訓練部隊を私が動かせると考えたのはこの男の成果だ。数か月で地球でも運用可能な特殊部隊を作り上げた手腕は本物だ。


「またなの? 」


「文句を言う補給担当官に「君達は拳銃を持っているだろう? それで何とかしたまえ」と言い放ったそうですよ。自分の部隊には完璧な装備が必要だって言って試験運用中の迫撃砲まで持ち去ったようです。

 それと強襲輸送艦で既に国境沿いに派遣されたそうです。暫くは避難の遅れる辺境の村から避難民逃がす作戦に従事するそうです」


 確かに国境近くの村は避難が間に合わないかもしれない。なので問題ない。彼なら上手くやるだろう。軍人としては……人格はともかく能力と愛国心は本物だ。命令も一応聞くだろう。不安だけど。


「じゃあ参謀本部に頑張るように言っておいて。それと訓練部隊に訓練をもっと早く終わらせるように指示を出して。一秒でも早く彼等を送る必要がある」


 出来れば動かしたくはない。訓練部隊は将来の軍の根幹要員の育成を行っているのだ。つまりは未来の将校達だ。ここで死なせて良い人材ではない。しかし、王国に予備戦力が存在しない以上は出すしかない。


「分かりました」


 アリシアさんが宝物庫から出ていくと、私は一息ついて宝物庫内を見渡す。どう見ても工業地帯です。宝物庫内は既に地球レベルの工業力を誇っている。無論これを全て表に出す訳ではない。流石のアーランドでも大混乱が起こるレベルだ。しかし、こうしないとどうしようも無かった。私も追い詰められているようだ。

 宝物庫内の家に入ってソファーに座ると、精霊と契約関係の改定を始める。

 方法は精霊と互いに合意するだけだ。大分渋られたけど、説得は成功。私に過度な異変が起こった場合は繋がりを遮断する事になった。

 更に魔導携帯で私と家族と友達にだけ搭載されている転送機能でアノンちゃんとケーナちゃんとシャロンちゃんにお守りを渡す。何か嫌な予感がしたのだ。少なくとも魔導携帯には防衛機能もあるし、アノンちゃんも装備を使えば何とかなるだろう。


「武装飛空船の2番艦はどの程度で戦力化出来る? 」


 私は分身に問いかける。


「約2か月程度かかる。一番艦で得られたデータを反映させるので手間取った」


 やはり多少の不具合が出たか。勿論戦闘に支障はないが、直すべきだろう。


「それと王都の外に放置してる20インチ砲を整備して」


「そっちは使えるけど、砲弾が無い」


「じゃあ量産。せめて迎撃施設でも作らないと居座られるからね」


 攻め込めなくても包囲されるのは鬱陶しい。国民も不安に思って帝国軍に突撃しかねない。なので有力な迎撃装置が必要だ。

 取り敢えず余ってる武装飛空船の砲台も新王都の空き地に設置させよう。扱いは私の親衛隊に覚えさせる。どうせ勉強自体はさせていたのだ。問題ないだろう。

 王都の治安に関しては王城の警備をしている騎士と副王家警備隊を動員する。更に副王商会連合で雇ってる護衛を自警団にすれば問題ないだろう。王城の警備レベルが下がるが、兵士が足りないので我慢だ。問題は無いと思う。

 次にゴーレムレギオンの増産だ。こちらは既にゴーレムを用いた自動生産を行っているが、最近はゴーレムの改修が多くて500体程しか居ない。2か月で5千まで増やしたい。

 気が付いたら日が暮れる時間だった。


「姫様おやつを食べなかったのですか! 」


「私がおやつを食べない事がそんなに驚く事なの? 」


「天変地異の前触れと言われると思いますよ」


 酷い言われようだ。


「戦争中だから私的にも頑張ってる」


 兵士達が命がけで戦う中で後方で私がおやつを食べてるとか何処の外道だよ。私も我慢するべきだ。さっきから目眩がするけど。


「まあ、それは置いといて、馬車での輸送はどう? 」


「え、ええ問題なく国境砦に物資を送っています。収納袋のお陰でかなり効率的に輸送が可能になりましたので。

 しかし送り過ぎではとの意見も出てますが」


「負傷者とかも国境砦に送られるからね。潤沢な物資が有れば前線も安心して戦えるんだよ。お腹の減ってる状況で戦わせたくはないから、出来る限り送り込んで」


 軍の食事関係は収納袋の量産でかなり良くなったと評判だ。この世界で戦争中の軍の食料は保存性を高めた硬いパンに乾燥野菜や干し肉と軍人でもため息を吐くレベルだったが、アーランドではそこら辺も改善されたようだ。

 戦争中でもシチューが出ると発表された時は騎士も兵士も大泣きしてたからね。よほど嫌だったのだろう。パンも柔らかい物に代わってるし。

 これは軍が使ってる収納袋に保存の魔法が追加付与されているお陰だ。今でも国境砦で大量に料理が作られて保存されているだろう。

 更に軍用に開発した水筒も喜ばれた。見た目は500ミリ程度の容器に大量の飲み物を入れられる。これを各個人が携帯しているお陰で水の運搬も容易だ。水を作る魔導具もあるので、今までみたいに水瓶を運ぶ必要は無くなった。

 

「分かりました。でも、食事だけは絶対に取ってくださいね」


「後で食べるよ」


 今は忙しいのだ。明日の朝にでも食べればいい。


「駄目です。さあ行きますよ」


「ちょ、ちょっと待って今は忙しい」


「駄目です。姫様が倒れたらどうするのですか? 休憩は強制的にとって頂きます」


 こうして私はアリシアさんに引きずられて行くのだった。

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