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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
激突アーランド王国VSグランスール帝国
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198 戦争準備

来週は夜勤なので更新速度が上がる気がします。

「うん、健康そのものだね」


 私は聴診器等の機材を仕舞う。本日は、お母様の定期検査を行った。

 どうもこの世界……と言うか我が国では妊婦は大人しくしていろと言う考えがあり、それが貴族階級では更に部屋で大人しくしているべき。と言う考えになっていた。当然そんなのは健康に悪いので、私は散歩などの軽い運動と音楽鑑賞等の芸術鑑賞を進めた。

 城内の人達が最初は過剰に部屋に戻ってって言ってたけど、しっかりと私が説明したので現在はそういう風習は無くなった。私の一言はそれなりの影響力があるらしい。

 ついでに妊娠してるご婦人方が、私に大変感謝しているというお手紙が届いた。私的には妊婦閉じ込めるなよと呆れるだけだ。

 その成果か知らないけどお母様は健康その物だ。つわりも殆ど無かったし、病気も無い。


「本当に妊娠してる間は退屈で仕方なかったのよね。アリスちゃんのお陰で助かるわ」


「妊婦にストレスをかける方がおかしいだけ。分かってるお父様? 」


「う、うむ。直ぐに国中の貴族に悪しき風習であり、早急に改善せよと王命を出しておいたぞ」


 いや、王命の使い方がおかしい。まあ、簡単に考えを変えない人も居るかもしれないから放置で良いか。王命なら仕方ない。


「ついでに性別が判明してるけど」


「「どっちだ!」」


 お父様の隣で大人しくしていたお兄様もお父様と一緒に立ち上がる。

 今日の診察は腹部超音波検査。つまりエコー検査を行ったのだ。機材の制作に手間取ったが、なかなかの出来だ。


「女の子だね」


「娘だ~! 」


 お父様が踊り出す。五月蠅いよ。


「しかし良く分かったな」


「そこら辺は向こうの世界の方が発達してるからね。因みにこれが写真ね」


「うん全然分からん」


「人の形してるじゃん」


 どっからどう見ても赤ん坊だよ。


「これで性別が分かるのか? 神官の方は男の可能性が高いって言っていたが」


「あれは単なる2択だよ。ちゃんと写真で判別してるから、それほど間違いはない筈。但し、私も熟練の産婦人科医ではないので一応男の子の場合の名前も考える事を推奨する」


 見た限りは女の子だ。前世の知識的には間違いないと告げている。但しアイリスは医療知識こそ持っていたが、医者ではない。

 それと神官のやってるのは単なる占いだ。元が2択なのだから信憑性は低いよ。その点エコー検査は分かり易い。


「では何処で見分けているのだ」


「普通に着いてるか着いていないかだけど。ほら」


 私はエコー写真をお父様に見せる。


「…………それだけ? 」


「それ以外に判別できない事も無いけど、現在の機材だとそれだけだね」


「実に分かり易いな」


「じゃあこれも量産ね。それと出産の際に必要な消毒等の基本知識の資料を作るから王国中にばら撒いてね。これで出産の際の危険も大分緩和出来るから」


 せめて最初に手を洗えと言いたい。産褥熱での死亡例も多く、抗生物質の生産が整うまでは消毒が重要なんだよ。

 因みに抗生物質等は生産が難しく、宝物庫内の小規模施設で最低限の生産しか出来ていない。設備作るのまで手が回らないよ。代わりに治療魔法の簡易化を進めてるけど。

 間違った民間療法は徹底的に排除しないとね。でも、それらは私の仕事じゃない。新しく出来た医療大臣の仕事だ。最も私の傘下的状態だけどね。

 医療大臣の仕事は王国内の民間療法を調べ、それが効果的なのかの判断と、間違いの場合はそれを周知させる事。

 そして医学関連の管理だね。新薬開発もそこで行わさせている。ぶっちゃけ医学まで面倒見れない。取り敢えず地球の医学書を1000冊程提出して置いたので頑張ってほしい。


「分かった医療大臣と相談しよう。

 しかし新しく大臣職を増やして正解だな。少しはアリスティアの負担も減るだろう」


「父上、アリスの分身は何時までも怨嗟の声を上げていますが」


 ちょっと働かせてるだけだよ。1日24時間くらい。

 全くその程度で悲鳴をあげるとは軟弱な連中だ。無論支配者たる私は優雅に休憩を取るけどね。

 その日はのんびりと過ごした。そして次の日。

 私達は何時も通り執務を行っていた。お父様も主要な魔物の領域を解放したので執務中だ。執務室に監禁されているとも言う。椅子に鎖で繋がれた王様はシュールだと思うんだ。


「何時も思うが俺は国王だよな? こんな扱い許されるのか? 」


「父上が逃げなければ不要なのですがね」


 ギラリとお兄様が睨む。既に今日だけで2度も逃走未遂を起こしたので仕方ない。最初は拘束されてなかったからね。因みに私は既に仕事が終わったので開発中のロケットの小さい部品を組み上げている。

 うむ、このペースだと半年後にはエンジンの噴射実験も可能だな。来年には衛星を打ち上げよう……30機くらい。


「ちょっと人工衛星も開発しておいて」


「死ね! 」


 私一人だと面倒なので分身に連絡すると罵倒された。


「良い度胸だな」


 分身の分際で私を罵倒するとは……そんなに武装飛空船を建造するお仕事につきたいのか?


「お前は私達がどれだけ忙しいか理解してない。現状の人員だと無理」


 取り敢えず分身を増やす事で対応を取る。現在300人程居るから大丈夫だろう。研究中の物は1000を超えてるけどね。


「相変わらず凄まじい扱いだな……少しは手加減してくれ。こっちの気が滅入る」


「必要な研究を肩代わりできる人員が居ればね」


 科学者の育成は王国の仕事だ。全く使えない人員ばかり送ってこられても困るんだよ。

 技術開発局も同じで、多くの人材が送り込まれたが、殆ど現場の人員に送り返されているので人手不足は致命的だ。ごく一部が使える程度。

 因みに元からいる人員は殆ど外に放り出されない。曰く「姫様の偉業を見慣れているので偏見等が無いのでしょう」と言われた。まあこれまでの常識を覆す物ばかりの魔境と言われてる我が技術開発局だから仕方ない。


「出来る限り有能な連中を送ってるのだが……」


「逆に有能さが目立って常識を変えてやると言う気概が無いって報告書に書いてあるけど」


 有能だが常識に凝り固まってる連中は要らんと毎日要望書が来てるよ。真顔で宇宙に行くのは不可能だと言い放つ連中は使えない。

 必要なのはやってやる! と言う気概を持った人員だ。要は夢を持っている人だ。彼等は凄いよ。自分の夢を叶える為なら努力を惜しまない。そして常識も捨てている。つまりMADである。

 MADによるMADの為の技術開発局と言われる所以だ。因みに私は常識的だよ。


「選考過程を見直す事にしよう」


 静かな日だった。王国の経済は長年の停滞を打破し、これまでの努力は一体…と貴族が嘆くほどの成長力を持った。10年もあれば帝国はアーランドの脅威ではなくなり、15年で大陸全土とも戦えるだけの国力を手に入れるだろう。

 数的不利を技術的超越で覆すのは私の得意とする所だ。武装飛空船による艦隊が出来れば如何なる国家もアーランドを攻め込もうとは思わないだろう。そして仮に事実を見れずに戦争を起こしても勝てる。

 それが私の傲慢だった。全ては時間が解決する。私は理解できていなかった。それを相手が黙って見ているだけなのかを。

 執務室の外が騒がしくなる。そして慌てているようにドアを叩く。ノックではない。礼儀を無視しても届けなければならない報告。


「どうした? 竜の谷のドラゴンでも攻め込んできたか? 少し前に〆た筈だが」


「いいえ陛下。緊急事態です。

 帝国に動き有りとの事です。かつてない規模の軍勢を持って我が国を滅ぼそうと侵攻しています! 」


「何だと! 暗部からは何も動きは無いと報告が来たばかりだろう」


「その情報は……帝国内の暗部は壊滅したそうです。一人の暗部が命がけで届けた情報です。帝国は国内の戦力を全てかき集めて我らが祖国になだれ込むとの事です」


「総戦力だと……糞、皇帝の無能さは俺達の想定を超えてやがる」


 常識的に考えてアーランドに全ての戦力を投じれば他の同盟国が国土を取り返す為に動く。人員を引かれた国境警備隊は蹂躙されるだろう。


「父上……恐らくアリスを欲したのでしょう。仮に同盟国に国土の一部を蹂躙されても帝国全土を奪う国力はありません。国境沿いは時間を稼ぎ、電撃戦を持ってアーランドを蹂躙。そして次に同盟国を滅ぼせばいいと考えた可能性もあります」


「私か……」


「報告します。帝国軍が国境を超えるまで10日程しかありません」


「帝国より宣戦布告はありません! 」


 お父様が立ち上がると振り下ろされる腕で机が砕け散る。その身を拘束していた鎖も全て引き千切られた。


「あの蛮族共が……宣戦布告すら忘れたか」


「恐らく奇襲を狙ったのでしょうが……軍が大きすぎて不可能なのを理解出来ないのだろう」


 この世界で主要な輸送手段は馬車だ。飛空船もあるけど、数が少ない。軍勢を多くすれば機動力は落ち込む。機動力が落ちれば帝国内部の暗部が居なくても察知出来るが、生き残った暗部のお陰で早く知れたのは重要だ。その時間でこっちも対応が取れる。


「直ぐに全軍を集めろ」


「報告します! 北方にて魔物のスタンピードが発生。辺境の砦より増援要請です……何時ものだと思われます」


「クソが! 」


 アーランド国内でのスタンピードはここ数年でかなり減った。あるいは小規模化された。私の初陣以降お父様が国内平定政策を取ったからだ。出来る限り魔物の領域を減らす事で国内のスタンピードを抑制する。

 しかし辺境の砦は別だ。そこより北は全てが魔物の領域なのだ。


「二方面作戦か……直ぐに集めても15万がせいぜいでしょう」


「それは総数だぞ。前線戦力は精々12万だ。集結にも多少の時間が掛かる」


 王国全土から兵を集めるのにも時間が掛かる。


「飛空船を出させましょう。大型なら現在30隻程あります」


 お兄様が飛空船を出すように要請する。当然私も同意だ。大型なら多くの兵員を搭載出来るし、中型の以下の既存飛空戦よりも機動力がある。

 そして軍招集も魔導携帯の普及で今まで以上に早く集まる。


「そうか。では俺は先に手勢を率いて敵の進軍速度を落とす。ギルお前が後発部隊の指揮官だ」


「分かりました」


「わ、私も出る。戦力は多い方が良い」


 王国の魔法師団だけでは能力に不安がある。ビルドアップして蛮族になっただけだから。あの人達強くなったけど、魔力は言う程増えていない。前線で騎士と肩を並べて戦う謎の魔法集団にジョブチェンジしただけだし。

 これだと帝国の魔法師団へ対抗できない。しかも今はお母様と言う最高戦力も居ない状況だ。最悪の展開過ぎる。


「……………駄目だ」


「アーランドの魔法師団じゃ帝国の魔法師団に対抗出来ない」


「お前は人を殺せるのか? 」


「…殺せる」


 お父様が私の頬を叩く。私は床に倒れこんだ。


「この程度で動揺する者を戦場には連れて行けん。しかもお前は一瞬躊躇っただろう? 味方を殺す気か! 」


「で、でもお母様の居ない魔法師団の戦力が」


「だからと言って躊躇う者は使えない。

 それにお前にはお前の仕事が有るだろう。預けた部隊を動かしたい」


 確かに私は王国軍から軍を預かっている。しかし……


「実験部隊を直ぐに動かすのは無理だよ。教育中の部隊で練度の問題もあるけど、まず弾が足りなすぎる」


 教育部隊故に訓練弾等の生産が殆どだ。更に言えば生産施設も建設中であり、現在の武器や砲弾の製造は私依存の状況である。

 第一正式運用が数年後なのだ。私も準備なんてしていない。


「それだ。アリスティア……この戦争はアーランドも総力をあげなければ勝てない。

 あの部隊も遊ばせる訳にはいかないだろう。直ぐに増産を頼む」


「そりゃ……出来るけど」


 現状の研究を停止し、殆どの人員を回せば生産できる。しかし、それだと宝物庫内の設備じゃ足りない。

 そうなると一から生産設備を増加させなければならない。私でも少し時間が掛かる。


「どの程度の時間があれば実験部隊を動かせる? 」


「訓練の密度を上げて銃弾等の増産を行うと……最低でも2か月は掛かる。

 で、でも武装飛空船なら直ぐに動かせる筈だよ。あれは砲弾も別ラインだから潤沢な補給がある」


 武装飛空船は既に一応の運用可能と判断されている。


「しかし一隻だぞ。向こうの戦力的に200隻以上の飛空船団が居る筈だ」


「それだけなら大丈夫。速度と戦闘距離はこっちの方が遥かに上の筈だから」


 確か帝国も大砲の製造に成功し、飛空船に搭載してるが、報告書を見た限りカルバリン砲より悪い物だ。更に艦艇用で軽量化された結果、短砲身であり有効射程は精々150メートル以下程度。更に弾も鉄球を撃ちだしてるだけであり、結界すら貫くのに200発以上打ち込む必要があるだろう。防御に魔力を集中すれば撃ち落とすのは更に困難だ。

 更に飛空船は帆船だ。速度も遅い。

 一方アーランドの武装飛空船の主砲の有効射程25km武装の上に機動性でも遥かに上回っている。包囲されないように遠距離攻撃を続ければいい。追われても追いつけないし、レーダーのお陰で先回りも不可能に近い。


「成程。ならば空は空軍に一任する」


「2か月あれば2番艦も就航するから、更に戦力も増す」


「運用は出来るのか? 」


「現在一番艦に2倍以上の人員が乗って訓練中だから問題ない」


 お陰で狭い狭いと文句が届いて居るが、それでも船の自動化を施してるからだ。元が非常に少ない人員で運用できる武装飛空船だから多く感じるだけ。


「分かった。それと恐らく第二陸軍訓練隊は動かす事になるだろう。一部なら動かせるだろう? 」


「そっちは元々特殊部隊だから弾薬を集中すれば動かせるけど」


 第二陸軍訓練隊は将来の特殊部隊用に作った精鋭部隊だ。訓練が他とは比べものにならないので、既にある程度の運用は可能だ。


「直ぐに出せ。帝国の侵攻ルート全ての村や町から国民を逃がす。兵員を輸送した飛空船はそのまま国民を王都に届けさせろ。王都なら落されまい」


 現在王都では3基の都市型魔導炉が動いている。お陰で都市防衛結界の強度は高い。こっちも2か月あれば全7基の運用が可能だ。7重の都市防衛結界はソ連の作った世界最大の核爆弾で計画通りの物が直撃しても壊せないし、王都内部は放射能被ばくすら起こらない。私が全力を持って構築中の物だ。現状でもICBM程度なら余裕で防御出来るけどね。


「分かった。副王工房から収納袋を王国で徴発するから全部の物資を持ってこさせよう。帝国に補給させない為に」


 疑似的な焦土戦を行わせる。どうせ帝国も物資が足りない筈だ。


「そうだな。井戸なども全て破壊しよう」


「流石に毒を入れるのは……」


「そこまではせんわ! 何処の外道だ! 普通に埋め立てるだけだ」


 それは良かった。


「では直ぐに出るぞ」


 お父様が執務室を出ようとすると、お母様が入ってきて部屋を塞ぐ。


「それよりも先に言う事があるでしょう? 」


「俺は死ぬ気は無いぞ」


 お母様の言葉にお父様が少しむっとする。


「歴代の王族は全員そう言って帰ってこなかったそうよ。伝えなければならない事を貴方の代で途絶えさせるつもりなの? 」


 お父様は少し考えると頷く。


「分かった。お前等は集めれるだけの部隊を集めろ」


「っは! 」


 騎士達が執務室を出ていく。


「ギル、アリスティア……お前達に伝えなければならない事がある。この国の真実だ。仮に俺が戦死すればお前達が後世に伝えなければならない物だ。ついてこい」


 私達は首を傾げながらお父様とお母様についていった。

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