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176 決闘日和②

 問題が派生した。決闘場所は王城にある練兵場なのだが、ここに来る途中に相手のウルフが死亡した。

 発端は私の偽物がウルフをクートと呼んだ事だ。本物のクート君がイラつき、ウルフだけに殺気を放ったらショック死した。どんだけ弱いのか。

 しかも歩いてる途中に行き成り倒れたんだよ。物凄い表情だった。まるで怪物を見たかのような死に顔だったよ。


「あのような雑魚を我と呼ぶのは耐えがたい。それにあの程度の威圧で死ぬようなら主より賜ったクートの名が廃る」


 一応古い英雄の名前だしね。確かに情けない最後だったよ。しかし普段のクート君にも威厳は無いよ。黙って座ってる時はカッコいいけどね。特に横顔は精悍な顔つきと言えるだろう。私のペットに相応しい。


「では冒険者ホロウの決闘を行う」


 王様が宣言を行う。私は負けることが無い事を確信した児戯のような決闘だ。だが油断はない。

 ヘリオスモドキがハルバートを構える。だから武器も違うって。ヘリオスはこん棒だよ。そんなの使ったら折れるだけだから。

 アリシアさんモドキは本人同様にククリ刀のような剣を取り出した。最も形だけで通常の物だ。アリシアさんの物は魔力が宿ってる。

 開始の合図と共にヘリオスモドキが飛び出す。私はハルバートの横降りをしゃがんで躱す。戦力分析開始だ。まずは躱す。

 半身引いて振り下ろしを避ける。追撃の石突を躱す。速さはアーランドの騎士と同等。但し戦術に劣る。実戦経験は高いが、アーランドの騎士程ではない。

アリシアさんモドキが背後から切り付けるが、私は腰のホルスターからリボルバーを抜き、背後の剣を撃つ。

 ちびっこは完全に観客だ。腕を組んで動かない。司令塔でもない非戦闘員なのだろう。年齢が見た目的には私と同じくらい。つまり魔力はあるようだが、魔法行使はできないのだろう。子供であるほど、魔力回路は脆く狭い。魔法行使には最悪だし、下手に使えば魔力制御に失敗して暴走する。だから子供は魔法を殆ど使えない。私のように魔力回路を弄らなければね。


「遅い」


 私は『身体強化』を使い、アリシアさんモドキを蹴り飛ばす。アリシアさんなら難なく避ける蹴りはお腹に命中し、アリシアさんモドキが背後にバックステップで下がると膝をつく。脆すぎる。

 全く駄目駄目だ。これでは鍛錬にもならない。ヘリオスモドキはまだマシだが、見慣れた速度と劣る戦術では私の予想通りの動きしかしない。躱すのは容易い。

 伊達に騎士の鍛錬を観察してないもんね。相手をよく知れば悪戯の成功率は高まるのだよ。

 私はアリシアさんモドキに牽制の為にリボルバーを連射しながら左手に竜杖を握ると『ゴーレム・クリエイト』を発動させる。


「術式開放。出てこいモアイ」


 地面から勢いよくモアイ像が生えてきてヘリオスモドキを空に弾き飛ばす。おぉハルバートで一応防御したよ。私はリボルバーを『リロード』で弾を装填すると錐もみしながら落下してくるヘリオスモドキの鎧の金具を撃つ。鎧本体は強化魔法が掛かっているが、金具はどうしても脆い。銃で壊すのは余裕だ。そして『弾道予測』は精密射撃を可能とする魔法である。

 態勢を整えて落下しようとするヘリオスモドキの鎧が無残に剥がれていく。私は身体強化した状態で突撃し、竜杖を背中に回すとグラディウスを代わりに握る。


「鳴けグラディウス」


 グラディウスの刀身が高周波を発し始める。遅い私の振り下ろしをヘリオスモドキは余裕を持ってハルバートで受け止めるが、ハルバートは柄を真っ二つに斬られる。武器の性能が違うのだよ。


「『アース・バレット』」


 ハルバートが斬られた瞬間、グラディウスから逃れるためにのけ反ったヘリオスモドキに岩の弾丸を急所に当てるとヘリオスモドキは倒れて動かなくなった。手加減はしてるので気絶程度だろう。


「残り2人」


「っく! 」


 アリシアさんモドキを見るとあり得ない物を見たかのように驚いている。この程度の力じゃ一流じゃないよ。多分アノンちゃんでも対処出来る。お兄様とかも普通に銃弾切り落とすしね。

 そして私は己の内に眠るモフモフの暗黒面を解き放つ。

 私の思考速度が爆発的に加速して、周囲の動きが遅く感じる。私はグラディウスを背中に回すと、『クイック・ドロー』で宝物庫から魔法の櫛を取り出すとアリシアさんモドキに向かって駆け出す。

 アリシアさんモドキは反応しない。私の速度に思考が追い付かない。そしてすれ違う時に念入りにブラッシングする。

 そしてモフモフの暗黒面が終わりを告げると、時間の流れが普通に戻る。私は高速移動の反動で膝をつくが油断なくアリシアさんモドキを見る。

 彼女は立ちながらに気絶していた。そしてその尻尾は美しくなっていた。降り注ぐ陽光を浴びて煌びやかに光る尻尾は美しいとしか言えない。

 まあ、アリシアさんには劣るけどね。何年も魔法の櫛を使い続けてるアリシアさんと比較は出来ないが、及第点を与えよう。

 ふっふっふ。獣人では私に勝てないのだよ。私のモフモフ力は53万だ。

さあ残りはちびっこただ一人だ。


「その仮面のデザインは最悪過ぎる。私の偽物を語るのならば、もう少しマシな仮面を作るべきだった。

 それは私を怒らせる最悪のデザインだよ」


 私は魔法の櫛を宝物庫に戻すと、ホルスターから再びリボルバーを抜き、威力を調整して放つ。

 私のリボルバーは魔法銃なので威力調整も出来るのだ。そして弾丸が仮面に当たると仮面にヒビが入り2つに割れる。

 どうやら仮面に偽装魔法が掛けられていたようで、ちびっこの髪が茶髪に代わる。顔は将来有望そうで、少し気が強そうな印象だが、怯えと涙が浮かんでいる。怖いのだろう。この程度で怖がるとはね。

しかし周囲に居た人達が驚きの声を上げる。


「あの少女はガイエル公爵家の令嬢では無いか! 」


「ではあのホロウを語っていたという事か! 」


 ガイエル公爵はウザル家にあの男を送った家だ。つまりやらせである。

 と言うか何故一発で発覚する人材を選んだのか。そのガイエル公爵はアホなのだろうか?

 私は油断なく拳銃を向ける。ガイエル家の令嬢は額が少し赤い程度の怪我だ。殺さなくて良かった。そして令嬢は……


「うあああああああああああお父様~~~~~! 」


 泣き出した。それも盛大に泣いている。

 いや本当になんでこんな人選をしたんだろうか。私はため息を吐きながら王様を見る。


「これは明らかに陰謀だ。そして勝った方が本物のホロウだろう。衛兵よガイエル公爵を逮捕せよ」


 騎士達が何処かに走っていった。とりあえず何でガイエル公爵家の令嬢がホロウのフリをしてたのかモヤモヤする決闘だった。

 私はリボルバーをホルスターに戻す。

 さて、後はオストランドに任せよう。私の証言とかはオストランド側に代理人を立ててるので問題ないのだ。偽物が周囲を騒がせなければだけどね。でも偽物騒動も終わりだ。

 ガイエル公爵も関与は間違いないだろう。王様はそこから第5王子への連帯責任に持っていって廃勅にするだろう。実際第5王子が変な事を始めた結果だ。責任は取らされる。だが、そこら辺はオストランドがやるべき事なので私は関与しない。

 この決闘もあの仮面にイラついたのが原因だしね。私は仮面を処分したのでスッキリしたのだ。割れた仮面とアリシアさんモドキの仮面を回収して火魔法で消去したので問題ない。

 さあ残るは勝手に私のシュークリームを食べた分身を地下労働させるだけだ。

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