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165 王女の企み

遅れました。

 「パパ、僕ワイバーンのはく製が欲しかったんだ! 」


 ワイバーンのはく製か。確かに有名だよ。アーランドでも自分『で』討伐したワイバーンのはく製が貴族の間でブームになった事が有る。

 あれは酷かった。国中のワイバーンが血に飢えた貴族達に乱獲されたからね

 最初はボロボロのはく製ばかりだった。如何に苦労して討伐したかを自慢していただけだった。

 しかし貴族のプライドが事態を悪化させた。次第にいかに少ない損傷のはく製を作るかがブームになった。

 毒は駄目だった。貴族らしく『正面』から討伐するべきだという流調が生まれたのだ。

 一撃で心臓を貫いたり、頭蓋骨すら貫き脳を攻撃する。色々な討伐方法が考案され、ワイバーンが減っていった。

 更にタイラント種まで討伐しようぜ! と言い出し始めた所で王国政府から「お前ら死ぬ気か! 」と待ったが入る程だったよ。

 いや、別におかしくないよ。アーランドはゴブリンとかオークは標準種なら冒険者ギルドは依頼書が無いくらいだし。

 仮に依頼を出してもギルドから「それくらい自分で討伐出来るでしょ安直するな」って怒られるよ。ゴブリンもオークも10体以上の集団でないと討伐依頼は出ない。何故なら魔物の討伐依頼で溢れているからだ。

 余りお金にならない仕事は受けないのだ。それをやるとギルド職員が過労死するらしい。アーランド魔物多いし仕方ないね。

 因みに採集クエストや街中での依頼は低ランク冒険者用にあるよ。無いと低ランクの冒険者飢え死にか魔物の餌になるし。採集は必要……実を言うとエルフ領で量産してる物ばかりだけど、数が足りないのだ。最近は家庭菜園で薬草とか育ててお小遣いを稼ぐのが流行ってる。

 話が逸れたね。欲しい気持ちは分かるよ。でもこのパターンは……


「よいよい分かっておる。おい村長とやら、それを儂らに献上せよ」


 ですよねー。


「申し訳ありません。これは我々の物ではなく討伐した冒険者に所有権があるのです。私に決定権は……」


 村長さんが必死に無理だと説得を始めた。どうやら私達に感謝しているようだ。必死に土下座しながら無理だと言っている。そして騎士の禿男に蹴られた。

 むう、頭髪が生えない呪いなら覚えているが禿には効かない。さっきから領主にも掛けてるのでサラサラと髪が散っている。アイツ嫌い。禿げてしまえ。


「惨い……」


「さらりとえげつない事するよねアリスって」


「ああいう奴って大っ嫌い。議会に収容するべき」


「本来貴族議会は収容所では無いのですが……」


 いや、あそこは収容所だよ。オークみたいな貴族で溢れてるし、仕事しないで騒いでるし。隔離施設だって城内で働いてるメイド達も話してたし。

 やはり私が王様に密告するしかないのか。だけど、この状況は……


「おいお前達、お前達があのワイバーンを討伐したのか? 」


 禿騎士が偉そうに訪ねてくる。私達を見るとニヤニヤしだして、凄い鬱陶しい。この人生でこんな不快な視線を受けたのは初めてだ。(前世ではわりとあった)

 私がリーダーなので一歩前に出る。


「Bランクパーティー『ワンニャンクラブ』のホロウです。これは私達が討伐しました」


 別に誤魔化す理由は無いし。

 しかし騎士は背後のヘリオスとアリシアさんを見る。おい、私がリーダーだぞ。それと私のメイドにエロイ視線を向けるな。女はそう言う視線は直ぐに察知するんだぞ。


「ホロウ……」


 既に波○と化した領主が唸る。村人の肩がピクピク動いてるのは気にしない。普通目の前でフッサフッサから波○になったら笑うしかない。但し笑うと何をされるか分からないので堪えているのだ。失敗した。こういう悪戯は遅効性にするべき  だった。まあ魔力を探れば魔法使い居ないし、居ても察知出来ない細工を術式に施してるので問題ないけどね。証拠が無ければ罰する事は出来んさ。

 騎士達も気が付いたようだが何も言わない。息子は自然と自分の頭部を押さえて青い顔をしていた。将来を予感したのだろう。


「ふん、ならば領主様に全て献上せよ。それとお前とお前はこっちにこい」


「僕はコイツで良い! 」


 どうやら死にたいようだ。息子はアノンちゃんを要求した。コイツは真正のロリコン野郎だ。死刑を求刑する。

 それと禿騎士、お前はアリシアさんに相応しい相手じゃない。まずは私と決闘を行い勝利せよ。更に魔法講義を行い私を上回る魔法使いである事を証明しないとアリシアさんの婿とは認めないから。

 どう処理しようかと考えて居たら村長と視線が合った。

(ここは私が何とかします。ですからお逃げください)

 村長の心の声が聞こえた。その顔は既に覚悟を決めていた。アカンこの人死ぬ気で止める気だ。

 私は任せよとサムズアップする。驚愕する村長を無視して禿騎士に話しかける。


「これは私のだから献上しません。それと伽も御免だね! 」


 私は【クイック・ドロー】で黒い球体を取り出すと地面に叩きつける。そして私達は黒い煙に包まれた。煙玉(黒)である。


「開け宝物庫の扉、そして収容せよ。それとアノンちゃんは携帯回収ね」


「え、あ!」


 アノンちゃんの装備が一瞬で消える。元々使ってる装備は貸出品だ。全て揃えるには新しくインストールされたアリス式基礎学力テストで高得点を出さないと魔導携帯のストレージに収納されたままだ。貸出は必要点数が増えるのでおススメしない。今回は増えないけど。

 まあ、このままだとアノンちゃんは脳筋少女に成長してしまう。しかしアノンちゃんは興味の無い事はとことん興味の無いのでテストの成績次第で私製装備を順次解放出来るのだ。これで勉強も頑張ってくれるだろう。

 次に宝物庫から数十の鎖が飛び出し、ワイバーンの死体を引きずり込んでいく。数秒で全て収納し宝物庫が閉じる。

 私が風魔法で煙幕を吹き飛ばすとワイバーンは、あら不思議消えてしまった。


「な、なんだ! 儂のワイバーンを何処に隠した! 」


 いや、あれは私達のワイバーンだ。お金に変えてアーランドの開発費に消えるのだよ。ついでに村にも少し分ける予定だけど。


「ハンドパワーです」


 私は手を開いてウザル男爵に向ける。普通収納袋にワイバーンは1匹も入らないからね。ウザル男爵や騎士達はかなり困惑してる。


「それと違法行為はしっかり私が見たからね! 親父から王様に報告が行くから厳罰を受けるよ。ニシシ」


「パパ、コイツよく見たらシェフィルド家の娘だ。ヤバいよ」


 ようやくアノンちゃんの身元に気が付いたか。お前は終わりだ。ロリコンは鉱山送りだよ。


「忌々しいシェフィルド家……」


 並○男爵が物凄い表情でアノンちゃんを睨みつける。


「うちって王家の守護を担ってる家柄だから恨んでる人多いんだよね。私が剣を鍛えてるのも不意打ち誘拐が日常だからだし」


 アノンちゃんの家は王家を護る為に色々と裏でやらかしてるらしい。アノンちゃんの表情を見る限り裏切り者の処理とかもして来たのだろう。最もアノンちゃんは人殺ししてる匂いがしないけどね。護られてるだね。

 人を殺した事のある人は騎士を見慣れた私もよく分かる。気配が全く違うのだ。時折鋭い刃の様な気配を放ってる彼等に最初はびっくりしたものだ。最も今では仲良しだけどね。

 あの人たちは一見怖いから子供に逃げられるのだ。しかし、そう言う彼等は子供好きだ。私と普通に話すようになったら大分穏やかになった。最も訓練中はオーガみたいになってるけど。


「やややヤバいよパパ! 」


「お、落ち着け幸い護衛は居ない。シェフィルドの娘など居なかった事にすれば問題ない。お前達、さっさと拘束しろ」


 この展開は予想できた。悪徳領主のする事なんてテンプレだよテ ン プ レ。

 私は領主達の中に魔法使いが居ない事を利用して3人と念話を行う。


(ヘリオスは殺そうとしてくるだろうから、離脱して巣のお宝を回収してきて)


(心得た)


 ヘリオスは居なくても問題ないから自分の巣に蓄えた財宝とワイバーンの巣の財宝をアーランドに移送するように命じた。どれだけあるかは不明だが、アーランドの国庫が潤うね。最も直ぐに使い果たすけどね。


(アノンちゃん、アリシアさんはここはあえて捕まろう。その方が面白い展開に出来る)


(では在オストランド大使にこっそり救出の依頼を出しましょう。手札も色々と持ってるので喜ぶでしょう)


 外務系の貴族は長年暇だったから仕事が増えると喜ぶしね。


(王様が知ったら激怒して爵位剥奪が確定するね♪)


 これから経済協力でお互いにウハウハだ! って時に協力国の王族を違法に拘束すればどうなるかは考える必要も無い。

 それにこの領主は強欲過ぎだ。目の前でニヤニヤしながら拉致すればアノンちゃんの家に圧力を掛けられると呟いてる。

 私達は無抵抗で捕まった。私とアリシアさんは魔力封じの首輪を付けられたが、私は付けた瞬間首輪の効果が消える。安物じゃ私の魔力に耐えれないのだ。

 ヘリオスが邪魔だとばかりに騎士を投げ飛ばしながら歩いてこの場を脱出し、クート君は森に逃がした。お腹減ってたみたいだから森の魔物でも狩ってる間に全て終わるだろう……森の魔物が絶滅しない事を祈ろう。

 そして私達は追加の税を乗せる予定だった馬車の荷台に乗せられ王都へドナドナされる。これって軍の一部も腐敗してるよね? 普通王都の門で止められるし。王様よ、内部の清掃が必要だよ。私がきっかけをあげるから頑張りなさい。

 私は村人に手を振りながら村を去っていく。


「良い物を持ってるな寄越せ! 」


「私のクッションが! 」


 御者の騎士にクッションすら奪われる解せぬ。


「ウギャアアアアアアア! 」


 同時に領主の馬車から悲鳴があがる。己の頭髪が無くなった事にようやく気が付いたようだ。

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