159 矯正依頼
ちょっと短いです。
更新が遅れて申し訳ありません。携帯を買い替えたらブラウザが無くなりクロームにお気に入りを移動するのに手間取ったのと、寒暖の差で体調を崩してました。決してうっかり書いた物を消したとか……ありませんよ?
「面倒事は嫌。それに第5王子嫌い関わりたくない」
あの変態は苦手なのだ。何か目が嫌だ。クート君みたいに綺麗な目じゃない。ヤバい時のお兄様よりよどんでいた。と言うか地味にお兄様も最近ヤバいけど。
「それに我々はBランクですよ。普通は同格か格上を呼ぶ案件でしょう」
私が乗り気じゃない事を察したアリシアさんが正論で逃れようとアシストしてくれる。
普通、冒険者の粛清や矯正は、格上或は同格の冒険者に任される。ランクは指数だ。Aランク冒険者はそれなりに戦闘経験がある優秀な人間だ。一方Bランクは狩りも収集もそれなり出来る一人前程度だ。私に頼むのは筋違いだ。
「そうだな……お前らが普通のBランクならばそうだろう。
但しお前らの実力ならば問題ないだろう。持ち込んで来る魔物の数は大型クランにも劣らない。それだけの数を狩れる力があるのだろう? 」
クランは……まあ、パーティーの集合体だ。
「……」
「確かに強要は出来ん。但し、連中の増長を止めるにはお前しか居ない」
「他のAランク冒険者やSランク以上は?」
私以外にも多くの冒険者が居るはずだ。だが、帰ってきた言葉は悲惨だった。
「前回のスタンピードで負傷して引退した連中が多くてSランク以上の冒険者はこの国に残ってねえ。只でさえ、アーランドに行っちまう奴が多いんだ。この国は冒険者自体少ないんだよ」
「……」
うんごめんなさい。優秀な冒険者は稼げるアーランドに移住する人が多いらしい。だよね。この国の魔物弱いし、アーランドは同じゴブリンでもそれなりに稼げる魔玉持ってるからオストランドに居る意味ないや。
アリシアさんもあ~っという顔をしている。それにアーランドは礼儀さえ守ってれば冒険者の扱いもかなり良い優遇政策取ってるからね。じゃないと兵士だけじゃスタンピードの処理が大変だし。
しかし、予想以上に被害が大きいらしい。私の蘇生魔法は周囲に災害をもたらすので自由に使えない。これは秘薬の製造もおこなう必要があるな。エイボンの持ってた魔道書に蘇生薬の事も乗ってるけど、あれはあれで使いにくい上に、幾つかの素材が絶滅しているので、代替素材の研究も必要かな。最も、蘇生薬何て他国に売れる代物じゃないからこっそり作ろう。
それとちょっと心が痛んだ。もう少し早く気が付ければもっと助けれた可能性もある。でも感傷に浸るつもりは無い。私にも出来る事と出来ない事があるのだ。蘇生魔法は数日間寝れないし、失敗すると私毎死ぬ危険魔法なのだ。
あれは猛烈に怒られた。一歩間違うと自爆するのだ。流石に今後は使いにくいだろう。
「お前さんなら連中にお灸を据える事も出来るだろう。少なくとも俺はそう判断した。
安心しろ破格の報酬も用意したぞ。陛下が迷惑料をくれたからな。何人か殺しても罪には問わないともおっしゃられた」
それって私にちょっかいを出したからだよね? 頭を抱えてる王様が容易に想像出来るよ。ただ、巡り巡って私に依頼が来たのは王様も予想出来なかったのだろう。
しかし相当お怒りのようだ。殺しも許すって特例だよ。前例を作るのが大嫌いな政府は特例なんて滅多に認めな……私も色々と特例まみれなので何も言えない。
「おいおいふざけんなよ。こんな子供にやらせるなら俺達で始末するぜ。いい加減連中のやり方には我慢の限界だぜ」
酒場で飲んでた冒険者達が行き成り殺気だった。
「お前らでは実力不足だな」
「ふざけんな! 子供に任せる事じゃねえだろうが! それに嬢ちゃん達に関係ある事か? これは俺達の問題だ。それにあの屑共が大人しく矯正を受けると思うか? 数だけでも150人も居るんだぞ」
多すぎ! 私の戦い方って機密多いんだけど。ゴーレムレギオンは使えないし、クート君の本気も無理。私の魔法も制限が入る。下手をすると身分がばれる。
「少ないですね。その程度なら王国の警備隊でも蹴散らせるでしょうに」
アリシアさんが私にしか聞こえない程度の声で呟いた。確かにアーランドの警備隊なら普通に捕縛するね。治安維持に誇りを持ってるから容赦しないだろう。
しかしここはオストランド。大陸でも上位の弱さを誇る国だ。警備隊も相応のレベルなんだろうね。
どうしようかな。相手は大人しく矯正されない相手らしいし。でもギルドマスターの提示した報酬もそれなりに美味しい。私は幾つかの作戦を計画する。
相手の実力は前に会ったので大体分かる。話を聞けば、あの中にリーダーが居たらしい。強さはアーランドの騎士にも劣るレベルだ。残りは寄せ集めでD~Bランク。多くがDランク程度の実力だろう。負ける相手じゃない。
「負けると思う? 」
私はアリシアさんの意見も聞いてみる。私より実戦経験豊富なアリシアさんなら、私が気が付かない危険も察知してるかもしれない。
「有象無象ですよ」
結果は脅威ではないだった。
「これも経験になるかな? 」
「対人戦としての経験にはなるでしょうが……接近戦はしないでくださいね。ホロウ様だと負けなくても怪我をするので」
「んな! 」
周囲の冒険者が驚く。確かに接近戦でも負けないよ。自爆特攻で巻き込んで、私は自前の防御魔法と治療魔法で私だけ生き残るからね。但し、この戦法は家族が嫌がる。危ないからだ。
グラディウスを持たせて同士討ちさせる手段もあるけど、グラディウスは認めた人以外が持つ事に対して凄い反発するので、無駄な死者が出る。
よし、普通のゴーレム戦で殲滅しよう。ゴーレム使いなのはバレても問題ない。
そしてギルドから錫の牙? に対して矯正が行われる事が発表された。これは強制依頼と同じで逃げればギルドカードが剥奪される。内容は素行不良に対してギルドは実力行使で彼等の考えを改めさせると言うものだ。
ギルド周辺で少し歓声が上がった。どうやらかなり嫌われているようだ。慌てた第5王子がギルドに文句を言いに来たが、私は見つかる前に転移で逃げたよ。あの人嫌いだし。
因みに冒険者ギルドは他のギルドと違って国家に帰属しない組織なので、王子の文句は黙認。寧ろ王様の勅命で謹慎処分を受けたそうだ。恐らくそろそろ王籍抹消を受けるのではないかと言う噂が広まった。
「やっぱり群れてるね」
3日後、指定された王都の外の草原には150人程の冒険者が居た。なんとかの牙と言うオストランド最大のクランだ。150人って少な! アーランドには紳士連合と言う総数が確認できないクランがあるのに。
「私達はBランクパーティー『ワンニャンクラブ』だ。そして私が会長のホロウである。大人しくお仕置きされなさい」
リーダーじゃないよ。会長だよ。いずれは大陸レベルのペット愛好会を作るんだ。
名乗りを聞いた錫の牙? がゲラゲラと笑い出す。
「どうせお貴族様の寄生だろ。テメエ如きが俺達の相手になるか」
寄生とは地位を使って強い冒険者を仲間にしている冒険者の事だ。彼等の言い分だと、私は弱いが、アリシアさんとヘリオスが強いと考えてるのだろう。
それと矯正と粛清は返り討ちになるとギルドは何も言えなくなる。一種の賭けだ。
それ故にギルドも総戦力で粛清する事が多い。最もギルドが何も言わなくても国は逮捕しに来ることがあるし、ギルドも失敗した場合は依頼の受注拒否に走るので、基本的に対象者は土下座するんだけどね。第5王子に何とかなる権力があると思っているのだろう。
「弱い犬はよく吠える。うちのワンコの威厳を見習うが良い」
「我は……」
諦め顔のクート君が凛とした表情をする。ウルフに擬態しているが、漂うは王者の気品だ。
はっはっは羨ましいだろう。この素晴らしい毛並は私の物だ。しかし返ってきたのは……
「ギャハハハたかがウルフが威厳とかありえねえだろ。そのショボいウルフも後ろの亜人も獣だろうが」
………………今何と言った?




