157 ダンジョンが鉱山ならボスは鉱脈
遅れてすみません。若干スランプみたいです。
半月ほどソルジャーゴーレムを最下層に放置してたら壊滅寸前だった件について。
「別にゴーレムだから良いや」
「酷いです姫様! 」
残ってたのは3体のソルジャーゴーレムだけだった。残りは機能停止し、収納袋に仕舞われていた。放置するとダンジョンが取り込んで魔物として生産されるからね。同じゴーレムなので、普通に食べられます。
ここに来るまで、各階層のトラップを回収してたらすっかり遅くなったんだよ。代わりに物凄い量の金属をゲットした。これで武装飛空船はかなり作れる。最近材料不足も深刻なのだ。
それとM5軽戦車は履帯をアイアンゴーレムのパンチで壊されて修理中だ。所詮軽戦車なので、防御力はお察しなのだ。後ろの私の所に来ない為の盾だからどうでも良いけど。
「ボスは何かな? 」
「オリハルコンゴーレムの大群じゃないですか? 」
それは嬉しいね。オリハルコンは伝説素材ではないが希少金属なので、ゴーレムとして出て来るのはありがたい。
私は現在残ってる200体程のソルジャーゴーレムとゴーレムタンクをボス部屋のドアの外に配置する。重装突撃仕様は、その攻撃方法から損傷を受けやすく、既に壊滅状態だ。後5体しか残って居ない。
「じゃあドアを開けると同時に撃ち込んで」
一体のソルジャーゴーレムがドアを押して開ける。中はかなりの広さの広間だ。天井も物凄い高い。階段を下りるのに苦労した訳だよ。そして、中央に10mクラスのゴーレムが一体だけ立ってる。部屋には入って無いので動かない。これって欠陥品じゃ……
撃ち込まれたRPG-7はゴーレムの右腕と左足に当たり破壊した。残りは奥とかに飛んでいった。所詮ゴーレム。RPG-7で一撃だよ……外れた腕と足を自分で繋げて直りました。
「卑怯な」
「明らかにオーバーキルな武器を使ってるこっちが卑怯ですよ。あんなに簡単にオリハルコンは砕けません」
こちらにノロノロと走ってきたビッグ・オリハルコンゴーレムはゴーレムタンクの砲撃を足に受けて衝撃で転ぶ。重装突撃仕様が凶悪なパイルバンカーを向けながら走り出す。やっぱりタンクの攻撃力じゃオリハルコンは砕けないや。転ばすので精いっぱいだ。しかしこの場合は役に立つ。
まず、相手は大きい。そして頑丈だ。反面動きは遅いので、転ばせて立ち上がりを攻撃する。
轟音と共にビッグ・オリハルコンゴーレムの両肩が砕ける。パイルバンカーで粉砕したのだ。
「オリハルコンは回収よ~」
開いた宝物庫から鎖が伸び、ビッグ・オリハルコンゴーレムの両腕を宝物庫内に引きずりこむ。これで再生できまい……そうかダンジョンから供給されるのか。
ビッグ・オリハルコンゴーレムの両腕が地面から生えてきた……閃いた!
「これはオリハルコンの鉱脈だ。採掘だよ」
「ボスも資源なのですね……」
「じゃあ私達は宝物庫の中でゆっくり休もう」
別に魔法を使って来る相手じゃない。ひたすら頑丈なだけだ。そしてオリハルコンは魔法耐性が高いので、私がやる事も無い。全てはゴーレム達に任せよう。
3日後
「行けわんこーず」
暇だったのでわんこーずに新しい芸を覚えさせた。宝物庫の外では、ビッグ・オリハルコンゴーレムの解体と再生が進んでいる。壊して回収して再生させる。そして壊すの繰り返しだ。実に暇である。
30匹程のわんこーずが逆立ちし、前足だけで走りながらアリシアさんの周囲をグルグル回るように走ってる。
「……なんでしょうかこのイラつく動きは」
っぐと拳を握るアリシアさん。そのままパンチを繰り出すが躱される。そして走ってたわんこーずが逆立ちのまま止まるとドヤ顔をする。アリシアさんが襲い掛かるが、逆立ちのまま逃げ出した。
「待ちなさいこの駄犬共が! 」
「わふふ」
わふわふと笑いながら走り回るわんこーず。追いかけるアリシアさん。これ面白い。
私は暇だから研究をしている。後はエイボンが持ってた魔薬書の解析だ。魔導書には魔法が書き込まれているが、魔薬書には魔法薬の事が書かれている。語呂が悪いが、これがかなり面白い。全部盗んだ物なのが気になる所だが、エイボン曰く「返す前に滅びた国の物ですヨ」との事だ。
内容は蘇生薬や強化薬など、色々な魔法薬の事が書かれているが、どれもこれも素材が絶滅している物が多い。何とか現存する物で代用できないか研究が必要だ。
薬品の調合も割と面白いよ。魔法薬は調合失敗すると毒ガスが出たり爆発する。研究は爆発するのが基本だ。それに宝物庫内なら怒られる事は無い。
「魔導炉の安定化に成功した。これより量産を始める」
「安定出来たのは規定値までで、出力を上げすぎると暴走するから注意ね」
分身が魔導炉を完成させたようだ。
「魔玉の融合の方は? 」
「私達のやり方は直観的。だから体系化する事にした。既に融合施設も出来てるけど……施設が大きすぎる。現状の人員では最適化出来ない」
「今の所はそれでいいと思う。技術開発局に技術を流して王国で魔玉の融合を行えるようにするのが最優先」
「分かった」
多くの技術を王国に流さないとね。私だけが頑張るのでは無意味だ。私が居なくても同じように動ける体制作りは絶対に必要だ。
しかし集めたオリハルコンの量が膨大だ。いや、鉄とかも、物凄い量だが、このダンジョンの生産量は凄まじいね。
そしてボス部屋に居座る事15日。ダンジョンに入って一ヶ月後、ダンジョンがボスの再生を止めた。リソースが尽きたのだろう。
「だからと言って吸収はさせない」
力尽きたビッグ・オリハルコンゴーレムが地面に沈んでいく。ダンジョンはせめてコイツだけでも吸収するつもりのようだ。しかし認めない。
宝物庫から伸びてきた鎖が、ビッグ・オリハルコンゴーレムに巻き付くと、宝物庫内に引きずり込む。ダンジョンはさせまいと地面にビッグ・オリハルコンゴーレムを鎮めようとするが、出力はこっちの方が上だ。少しずつ宝物庫に近づいていく。
「本当に全部持ち帰るのですね」
「当然。私の目的はダンジョンの縮小だからリソースは残さない」
2時間程掛かったが、ビッグオリハルコンゴーレムは右足以外が宝物庫に収容された。そう右足だけダンジョンに持っていかれたのだ。許せん。
「と言う訳でダンジョンのコアにお仕置きを敢行する」
私はマスクとゴーグルそしてグラインダーを取り出す。ちょっとコアも貰っていくね。
真球のコアは削られ、モアイ像になった。これでも機能するから問題ない。
「姫様って、その像好きですよね。異世界の神像か何かですか? 」
「さあ? 多分そうだと思うけど、滅びた文明の物だし」
何故か頭に残ってるだけだ。
そしてそのままダンジョンから立ち去る。ボス部屋から出ると、ダンジョン内の魔物は弱くなっていた。具体的にはマッドゴーレムやクレイゴーレムなどの、ゴーレムの中でも最弱の魔物だ。更に、ダンジョンコアが小さくなったせいか、階層も10層まで縮小されていた。
まだある。ダンジョンで生まれたゴーレムが皆モアイ像になっていた。そして勝てない癖に私に襲い掛かってきた。
「明らかにダンジョンが怒ってるじゃないですか! 」
「まあ雑魚だし、魔玉だけ貰って行こう」
アリシアさんがゴーレムの手足を切り落とすと、胸にククリ刀を突き刺して、魔玉をほじくり出す。これだけでクレイゴーレムは動かなくなる。土や泥のゴーレムは弱いから倒しやすいのだ。
「ダンジョンのコアの破片……削りカスって役に立つのですか? 」
アリシアさんが無双しながら私に問いかける。
「普通に役に立つよ。秘薬の材料になる。魔道具にも使えるけど……まあ、そっちはどうでも良い」
魔玉の削りカスは秘薬の材料になる。秘薬級の魔力ポーションも作れるレアアイテムだ。
さっさとこのモアイのダンジョンを出る。外に出ると一面真っ白の世界だった。
「寒い! 」
私は手袋とマフラーと耳当てをつける。もう寒い時期だ。防寒は重要。特に私は寒さに弱い。普段はこの季節になると部屋から出ない。コタツに入ってのんびり過ごす時期だ。
「風邪をひかないでくださいよ」
アリシアさんは卑怯にもモフモフの尻尾で手を温めている。それはズルい。獣人は卑怯だ。私も欲しい。
私はじ~っとアリシアさんの尻尾を見る。アレがあれば私も温かい思いが出来る。いずれ変身薬を完成させて尻尾を手に入れよう。それまでは……
「私も尻尾で温まる! 」
「ちょ! 」
私はアリシアさんの尻尾に飛びついて暖を取った。後ろでクート君がバッチ来いと尻尾を向けているが、今日はアリシアさんの尻尾に魅了されたので今度にしよう。ヘリオスは炎竜だから寒さに強い。魔法でなければ耐性が高いらしく、この場で裸になっても平然としてるだろう。但し、体から焔が出ているけど。
後に私が攻略したダンジョンは異世界人にモアイの楽園と呼ばれた事がきっかけで、ゴーレムの楽園からモアイの楽園へと名称が変更されるようになったのであった。




