15 学園へ
荷造り1日目
「俺は反対だ!アリスティアを冒険者にする必要は無いぞ!素材が必要なら俺が採ってこよう。金が必要なら俺が稼いできてやる、だから冒険者は駄目だ!学園も駄目だ~」
あれから一年近く経った。お父様は最初から強固に反対してて荷造りをしてる今も辞めさせようとしているのだがお母様の魔法で捕まってる。お父様なら脱出できるのでは?と思うけどどうやら本気で逃げれないらしい。
「ドラコもいい加減に諦めなさい。アリスちゃんの門出なのよ」
「駄目だ~!アリスティアは国から出さんぞ。あの可愛さだどこぞの馬の骨に狙われるか…それに学園にはギルバートも居るんだぞ」
お兄様は確かに学園に居るけど女子寮は兄妹でも男性立ち入り禁止だと何度説明しても分かってもらえない。確かにお兄様の能力なら警備を掻い潜って侵入も出来るだろうけどそんな事をしたら私が怒るから多分大丈夫だと思う。
それと恋愛をしに学園に行くわけじゃない。そこはアリシアさんが護衛兼メイドとして同行する事で話はついたのに安心出来ないらしい。安心してほしいぞお父様、私はそんな事に興味は無い。
「お父様は心配し過ぎ、もっと気楽に考えるべき」
「早まるなアリスティア!お前は意外と世間知らずだ、きっと悪い虫が近寄ってくるんだぞ?そんな所にお前を送れるか。それに冒険者だと?あれは女性のなる物じゃない危険がいっぱいだもしオークとかに捕まったら…」
確かにそれは嫌だがオーク程度に負ける気がしない。油断しなければ問題ないだろう。
「変装用の魔法もお母様に習ったし仮面&偽名で行くから私だってバレないしそもそも私は子供、普通は何もされない」
そ…その娼館とかこの世界にあるのは私でも…知ってるんだからわざわざ私みたいな子供に手を出す人は居ないだろう。居たとしてもアリシアさんは地味に強いから安心だ。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ駄目だ~分かってないぞお前は冒険者崩れの恐ろしさを分かって無い!クソぉ唸れ俺の筋肉、こんな束縛なんぞ!」
お父様が力を入れるとお母様が使っていた拘束魔法にヒビが入ってきたが急にお父様の力が抜けた。
「ぬぐぅ卑怯だぞシルビア…それは止めろ…すまん落ち着くから止めてください」
「?」
何がどうしたのかお父様が急に何かを懇願しだした。
「少しは落ち着きましたか?」
「落ち着いた!」
まあ漫才みたいな感じのノリで言ってるが本当に落ち着いたらしく渋々入学と冒険者登録を認めてくれた。正確には冒険者での修業はお父様でも変えれないらしい。変えようとしては宰相さん達に止められ貴族会議でも否決されたので私の方から辞めたと言わせたかったようだ。私も王族なので一度言った事に関しては簡単に翻せない、だからそれを盾に辞めさせる計画だと自供した。しょうもない事を考えてましたね少し鬱陶しいと思ってた。
「せめて俺から条件を出すぞ」
1.学園ではみだりに魔法に頼らない。
2.本名は出来るだけ隠し普段使ってる偽名で学園に通う事。尚学園ではアーランド国の伯爵家の長女と言う設定だ。
3常にアリシアと行動し別行動は認めない。
4異性と話すときはアリシアを間に挟む←お母様によって棄却されました。
改めて4.冒険者は学園とは別の名前で登録する事。
5.冒険者として行動するときは顔を隠し声を変える事。
6.知らない人とパーティーを組まない事、知ってる人間でもアリシアさんの許可を取り同行してもらう事
7怪しい人に付いて行かない事
以上7つの条件を出されました。面倒じゃね?いくら私でも知らない人に付いて行かないし信用出来ない人と行動を共にする事は無い。それにアリシアさんは放置するとトイレまで付いてくるのが日常なので別行動は無いだろう。
「…めんどくさい」
思わず呟いた一言でお父様は蹲った。
「……これがアルバートの気持ちなのか…」
「ウェルカム国王陛下♪」
いつの間にかお父様の背後に居たアルバートさんがお父様の肩に手を乗せていた。気が付かなかったね本当に何時来たんだろう?
「アルバート…済まなかった。今ならお前の気持ちがよく分かる今日は一緒に飲もう…秘蔵の酒を樽でだそう…」
「陛下…我々は同志です。今日は心行くまで飲み明かしましょう」
男の人の友情ってよく分からないけどお酒で強くなる物なのだろうか、さっきから凄く仲良しだ。お互いに涙ぐんでるけど。
「これ真似してはいけない事よ覚えておきなさい」
「はい」
流石の私もこれには付いて行けない。お母様の言う通り何も見なかった事にしようチラチラとこっちを見てるお父様も無視だ。
「それでアルバート殿は一体何故ここに?」
「おお忘れておりました陛下に頼まれていた事の報告をしに来たのです。では陛下こちらへ…」
「ああ分かった」
お父様とアルバートさんが部屋から出て行った。今日はドアを壊されずにすみそうですね。月に一回は部屋のドアが違う物…どんどん豪華絢爛になってうっとおしかったので助かります。
「何か良からぬ事を企んでそうね…まいいでしょう。アリスちゃんは何を持っていくか決めたの?」
「枕と本を200冊と素材と最低限の衣服があれば何処でも暮らせます」
「……その持っていく本の中に私の魔道書がかなり紛れ込んでるのだけど…これ!まだ読んでない!」
見つかったか木を隠すなら森の中と言うように本の中に隠してたんだけどな…
「アリスちゃん?こ~れは何かな?魔道書は勝手に読まないでって何時も言ってるよね?お仕置きです」
「ひゃ~~」
脱兎の如く逃げ出す私をアリシアさんが捕まえた。裏切り者!
「私は国に使えてるので♪…姫様が折檻…ハアハア」
「今日は20回ね、はい1,2,3」
罰が何だって?お尻ペンぺンですよ。お母様は王族なのにお尻ペンペンってあり得なくないですか?アリシアさんは何故か息が荒いし…お尻痛い…
「……ごめんなさい・・・もうしません」
「本音は?」
「今度は見つからない」
「…追加で20回」
しまった!誘導尋問とは卑怯な…さっきのお仕置きで腰が抜けた私に逃げる術は無い…終わりだ。
こうして荷造り1日目が終わった…魔道書は全て没収されました。まだ隠し持ってるけどね
荷造り2日目
今日は昨日の続きで荷造りをします。持ち物にドレスや小物なども必要なのです。学園ではパーティ等も有るので貴族階級の子息は持ってないと笑われますし持っていかないと家の皆に何をされるか…ガクブル。
「これは…要らない。これも要らない。これは重いからもっと要らない」
「姫様って物の価値より使い易さで物を選びますよね。しかもシンプルの物ばっかりじゃないですか、これとこれは最低限持っていくべきです。ああこれなんかも要りますねゴミみたいに捨てないでくださいこれとか高いんですよ」
私が鞄からポイポイと不要な物を捨てるとそれを拾って鞄に詰め直すアリシアさん。かれこれ1時間は繰り返してます。
「持って行ってもどうせ着ない、なら不要な物」
「そんな事言ってると下着をエロエロでスケスケな黒の下着と全部入れ替えちゃいますよ?姫様は下着までシンプルとか王族ですよね?」
「ゴテゴテしてるのは嫌いだし寮の部屋はそこまで大きく無いから邪魔な物を持っていけない」
実際私の部屋と対して大きさは変わらないが複数で暮らすのだ物は少ない方が良い。
「そんな事言っても主席を取れば一人部屋ですよね?姫様なら楽勝でしょう。そもそも何を学ぶ必要があるのですか?学業も魔法も独学で覚えてますし体力は…全然ですね。陛下みたいにマッチョになりたいとか言わないでくださいね国の品格を問われるので」
「主席を取れるかは分からないし今みたいに衣裳部屋は無い。だから部屋の広さは限定される」
「じゃあこの邪魔な本を10分の1に減らしましょうそうすればクローゼットが増やせます」
アリシアさんは分かって無い。服とか小物よりも本とかの方が重要でしょう。暇潰しに持って来いだし私はこの国の人以外は基本的に近寄らないのだ。何をして過ごせと?服なんぞより本とかの方が良いに決まってる。
「却下。そんな事するなら全て魔法で消去する」
「嫌ならこれは持っていきましょうね。邪魔にならないよう私が管理するので」
アリシアさんもメイドとして付いて来るのだがどうやら自分の部屋に私の私物を保管してくれるらしい。まあ私が使う事は余り無いから良いんだけどアリシアさんの生活スペースが減ってしまうよね。
色々と意見を言いつつもアリシアさんは小物とかを鞄に詰めると私の手が届かない棚の上に置いてしまった。魔法を使えば取れるかもしれないが中身が悲惨な事になる可能性もあるしアリシアさんはそれを分かってて私のお気に入りとかも数点混ぜていた。明らかに重そうで私では届いても下ろせないだろう。
「今日はここまでにしましょう。姫様は別に手伝わなくても良いんですよ?これらの雑事はメイドの仕事ですから」
「アリシアさんに任せると何を入れるか分からないし自分の持っていく物は自分で決める」
スタンビードの時は鞄の中にぬいぐるみが入ってたし…一緒に寝たけどさ。
「よよよ姫様は私を信用してくださらないのですね。嗚呼この窓から身を投げるしか私に出来る事はありません。姫様、永い間どうもお世話になりました」
そういうとアリシアさんが窓に近寄っていく。
「ストップ‼分かったから変なのを入れなければアリシアさんに任せる」
「はい、お任せください」
変わり身が早いな…騙されたのか……いやアリシアさんが私を騙す事なんて無いだろうきっとそれだけショックだったんだろう。もう少し言葉に気を付けようっと。




