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150 一時帰還

 オストランドでは発見されたばかりのダンジョンが全て休眠すると言う珍事件が発生したが、それは忙しい復興で忘れ去られると思われた。現にダンジョンの事は発表されていない。公になっていないダンジョンが休眠しても気が付く人は極少数なのだ。

 私は事情を知るギルドマスターに感謝されたが、私と王国との協議の結果である。

 そして王都近くに現れたグレートダドンと言うドラゴン並に大きい牛ともイノシシとも言える魔物を討伐してギルドに戻ると変態が居た。


「全く話の分からんギルドマスターだな」


「全くです。殿下の要請を断るなど不敬の極みと言うものです」


 何やら不機嫌そうにギルドを歩く変態。名前はまだ知らない。

彼は数人の取り巻きと共に不機嫌そうにしている。私は近くで飲んでた冒険者に話しを聞いてみる。軽い付き合いもあるし、アリシアさんが恐怖伝説を作り続けてるので割と有名になったのだ。主に無理やり仲間にしようとしてくる人を排除してるせいで。


「何があったの? 」


「お、箱入り嬢ちゃんか。何でも俺達を配下にしたいんだってよ。普通の王族なら大歓迎だが、ありゃ駄目だ。明日も分からん奴に仕える馬鹿はいねぇガハハ! 」


 箱入り嬢ちゃんは私の渾名みたいになってる。他にもケモナーと言われている。動物は大好きだからね。寧ろこっちの方を広めるべきだ。

 しかし、考えが分かり易すぎる。大方仲間を増やして国王に対する圧力を掛けたいのだろう。自分にはこれだけの仲間が居る。王籍から外せば影響が大きいぞと。安直な策である。仮に王家が本気ならば、その行為自体が反逆と取られる可能性すらあるのだ。

 私の場合は副王家警備隊は元騎士が主力だから、王国への反逆には手を貸さないだろう。本気で私を止めると思う。

 冒険者から話を聞いてると変態王子が近づいてきた。見つかったか。


「お前が最近噂になってるホロウか。喜べ俺の配下にしてやろう」


「では日給白金貨1000枚で受けましょう」


 この値段は正式な値段だ。アーランドが試しに私自身の資産価値を計算した結果である。つまり私を飼うのは破産を意味する。この金額を素直に払える国は存在しない。

 最も1日中研究所に籠らせると言う条件下であるが。

 この結果を受けた大臣達は私がアーランドの王族である事を大変喜んだ。市井に生まれてれば大混乱になるんだって。今は私の『意思』で国の為に動いてるからね。報酬はそこまで求めていない。と言うか普通の役職給と成果報酬しか貰ってない。別に良いよ、欲しければ適当に魔道具売って稼ぐし。しかし、変態に力を貸す程人を見る目が悪い訳じゃ無い。お兄様も立派な変態街道を走ってるけど、私を酷使したりしないし、変な貴族から護ってくれてるのだ。お礼は重要。


「ふ、ふざけるな! 」


「私を雇うとはそう言う事ですが? 」


 因みに雇うと確実に牢屋行きの罠でもある。たかが第5王子では私を雇うのは不可能だろう。と言うかお兄様に暗殺される未来しか見えないし、雇うと言う事は私が格下扱いになるので、アーランドから抗議と言うレベルでは済まない外交問題に発達する。つまりお断りという事だ。

 第一何でこの男に仕えなきゃならんのだ。顔も普通だし、頭も残念。しかも欲望まみれだ。しかも拓斗みたいに面白い人でも無い。


「殿下が自ら勧誘なさっているのだぞ。喜んで受けるのが平民の義務であろう! 」


「これだから下賤な冒険者は」


 いや、冒険者は王国に仕えてる訳じゃ無いし、正確には国民と呼べる存在でも無い。嫌なら他国に移動出来る。無茶な命令は平気で拒否する連中だけど。


「では私も忙しいので」


面倒なので立ち去ろうとすると、取り巻きに囲まれた。


「これでも、この国の王様から何かあれば助けると言われてる身なのですが」


「な! 」


「よし騎士を連れてきて」


「分かったのである。鎧を着た集団を見つけて来るのである」


 囲まれていない場所で骨付き肉を貪ってたヘリオスが食べながら外に出た。近くに詰所があるから直ぐに来るだろう。

 そして暫くして本当に騎士が来た。10人くらい。


「殿下、一体何をなさっているのです。この方は王家の恩人です。何人も干渉する事を禁じると勅命が出て居るはずです! 」


 そんなに凄い事になっていたのか。


「僕には関係ないだろう。僕は王族さ、他の貴族とは違う」


「兎に角一緒に来ていただきます! 」


 取り巻きも身分を盾にするが、騎士達は気にせず連れて行った。これを国民が見れば、彼が王国からどう思われてるかなんて一目瞭然だ。

 私はその後数日は狩りをしてお金を稼いだ。変態からの干渉は無くなったが、ちょっかいをかけて来る冒険者が増えた。多分手駒になった人達なんだろうな。全員アリシアさんに縛られて逆さ吊りにされてたけど。




「と言う訳でこれが分け前です」


 私は王様の前に金銀財宝を出す。そう土地代の分け前の2割だ。


「うむ確かに受け取った」


「確認しないで良いのですか?」


「こういう物はどれだけ出るか分からんのだよ。確認のしようは無い。ホロウ殿を信用するしかないの。それと息子が迷惑をかけたな。すまない」


 私に頭を下げる王様。そうだよね近寄らせない筈だもんね。


「まあ偶然会っただけですし、騎士の方々も約束通り助けてくれたので、こちらは問題にしませんよ」


 別に数日で忘れる出来事だ。他の冒険者のちょっかいもアリシアさんの恐怖伝説が広がるだけの話だし。容赦なくお仕置きするアリシアさんは怖すぎる。

 そして、王都付近の魔物も大分討伐した事や、お父様の誕生日の為に一時帰国する事を話す。プレゼントが完成していないのだ。いや、材料があるのだが、本体を向こうの旧自室に置いたままなのである。

 王様も大分嬉しそうだったね。王都近くは本来ならば安全な地域なのに、魔物が闊歩してる影響で、経済や物流に支障が出る。魔物が減るのは良い事だ。

 その後私は転移でアーランドに一度戻った。オストランドよりも雪が積もってるが、王都とその周辺には雪は積もっていない。広範囲に対雪用の結界を張ってるのだ。これで雪を気にせずに工事出来る……寒さを除けば。

 まあ、寒さ対策の魔道具も構造は簡単だから副王商会連合で販売を始めてる筈だ。


「戻ったよ」


「お帰り。父上は相変わらず魔物の領域を解放してるよ」


 まだやってたのか。


「帝国は? 」


 普段なら国内の魔物討伐を邪魔して小競り合いをしてくる帝国も最近大人しい。


「全く何もしてこないね。それに冬にアーランドに攻め込むのは自殺行為だ。温暖な中央と違いこっちは雪国でもあるからね」


 ニヤリと笑うお兄様は、どう見ても悪役であった。

 確かにアーランド兵は雪の中でも平気で動き回る。昔、大規模な侵攻があったらしいが、雪で隠した罠や吹雪の中の奇襲等で大損害を受けてから、帝国は冬は大人しいのだ。


「お土産いっぱい集めてきた」


 私は土地代として徴収した金銀財宝と稼いだお金を出す。かなりの金額だ。普通に何代も遊んで暮らせる財宝である。

 この財宝を元手にして更に公共事業を行う。


「無理はしないでくれよ。大事な妹に倒れられたら私も倒れそうだ」


 お兄様に抱きしめられた。その後副王商会に向かう。


「これが集めた魔玉」


「どれも素晴らしいですな。在庫が足りずに困っていたのです。それとこちらがご要望の収納袋です」


 ポンポコさんが手を叩くと、使用人の人達が大量の収納袋を持って来た。容量は500キロの収納袋だ。オストランドのギルドに売る為である。正直私の稼ぎだけじゃ全然足りないので、向こうの冒険者からお金を貰うのだ。

 用意したのは500個の収納袋。お父様の誕生日が終わったら売りに行こう。


「それで、事業の方はどう、何か足りない物でもある? 」


 ポンポコさんは少し考えると口を開いた。


「足りないと言えば足りませぬが、こればかりは……正直人手が全然足りませんな。

 工事の方も既に開始され、王都の新城壁も工事が始まっております。区画整理もこの機に行われるようで、毎日お祭り騒ぎですよ。スラム民は罪を犯していない者は一応全員雇いました。防犯の関係上、行き成り役職を与える訳にもいきませぬが、皆喜んでます。

 今は貴族領のスラムなどに人を送り、人手を集めてる状況です」


 商会自らがうちで働いてくれと言う珍しい現象が大発生してるようだ。普通は雇ってくれって来るのだが、副王商会連合は、担当者が各家に戸別訪問して働かないか? と雇用の勧誘に向かっているそうだ。

 お蔭で、アーランドの失業率は物凄いスピードで低下してるらしい。


「今のうちに従業員を雇わないと他の商会に従業員を奪われるね」


「全くもってその通りです。他の商会もこの機に乗じて商会を大きくしようと、大募集を始めています。副王商会連合はこの機に中小商会を傘下に収めつつ足りない労働者を確保していきます。

 また、姫様ご要望の大規模工場も既に設計を終え、土地の話し合いに移行しました。多くの労働者を集め、大量かつ効率的に物を作る。良い物ですね。その根幹魔道具は我等が副王商会の独占品。副王商会も躍進を止めれる勢力はもはや存在しません」


 大規模工場を建設して効率的に物を大量に作るのは多くの雇用が生まれる。そして魔道具市場は順調に副王商会連合が侵食し、在野の商会では勝ち目が無い。つまりうちが一番良い魔道具を安く製造してる商会になるだろう。

 そうすれば従業員もうちの商品を買う。身内だけで買うのは商売上良く無いらしいが、品質が高ければ問題ない。良い物を安く買いたいと思うのが購買者だ。

 今はスラムに建てた臨時工場で製造してる魔道具も何れは工場で大規模に量産を始める。今は区画整理の関係上直ぐに建てれないだけだ。そしてスラムの再開発には時間が掛かる。故に臨時工場も暫くは運営出来るのだ。

 私は稼いだお金をポンポコさんに渡すと、副王商会から王城に戻るのだった。

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