14 姫様の休日
久しぶりに町に出た感想…私が外に出るとトラブルに巻き込まれる&トラブルに首を突っ込むという事が判明した…
「ふにふに~ふふ…久しぶりの休みは娘と一緒が一番ね」
「うにゅう本が読めない…」
私が今何をしてるって?読書です、お母様の膝の上ですが。どうやら今日はお仕事をお休みして私と一緒に居るみたいです。
と言うのも前日の一件から調子が出ず寧ろ体調を少しだけ崩してるのです。お医者さんの話だと軽い風邪とストレスだとか…ふむ最近色々あったからな。
「今日は本を読むのも駄目って言ったでしょう?それに私の魔道書は勝手に持って行っちゃ駄目っていつも言ってるのに…今日はお休みだから没収っと」
「プロ…!うひゃぁ…脇は…駄目!分かった。本は読まない」
安定の【プロテクト】で本をガードしようとしたら脇腹を擽られました。相変わらずお母様には勝てない…杖はお父様が嫌がったので没収されずに済みましたがお母様が見てると2回に1回は失敗するし成功しそうでもこうやって妨害される。お父様曰くお母様はそういうものだと遠い目をしながら言われた、一体どういう事だろう?お母様は魔法の発動はコツを掴めば分かると言っていたが私にはよく分からない。
「魔法は一見万能に見えるしアリスちゃんは大抵の事が出来るから気が付きにくいけど実際にはそこまで万能じゃないのよ、明確に出来ない事が定義されてるし発動も分かる人は分かるの。私より感知能力がある人は魔法の種類や名前まで分かる事があるのよ」
「そこら辺を詳しく聞きたい」
「だ~め、いきなり全部知ると後の楽しみが減っちゃうよ」
むう…お母様は余り魔法を教えてくれない。なので私はお母様の魔道書を強奪して学んでるのだが本とかに余り載って無い技能は全然使えないし上級魔法の魔道書は流石に管理が厳しく見れない…まあ魔法を合成してたら偶に出来るけどあれは先駆者が居る事もあるし一から作ってる訳じゃない。魔道書はあくまで完成した魔法が乗ってるのだ。それを合成する人は少なからず居るらしい、基本的に合成するのは詠唱の簡単な初級魔法らしいけど。
「本が無いと私は動けない…」
「読書家なのは良いけど魔道書は危険な物も多いから勝手に読んじゃ駄目。アリスちゃんは基本を飛ばし過ぎなのよ」
「基本を教えてほしい」
「まだ早いんだけど…何で基本を飛ばして魔法を使えちゃうかな~」
今度は私の頬をむにむにしてきた。仕方ないと思うんだ、だって読めば大抵使えるし魔法の行使も精霊が補助してくれるから。
「魔力制御を鍛えれば無詠唱での魔法の誤差を減らせるけど魔力が多すぎて制御が難しい。指先に小さい火を出そうとすると火柱が立った。あれじゃ危険すぎる」
「使わないって事は……出来ないのね」
魔法あると便利だから普通に使います。夜でも読書出来るし。
「便利な物を使わない理由が分からない。危険でも使い方を間違えなければ生活の助けになるのに何で教えてくれないの?」
「アリスちゃんには才能が有ると思うけど早すぎるのよ、アリスちゃんの持ってる力はアリスちゃんの想像を超えてるわ、きっと貴女の力になるでしょうけどそれ以上に貴女を縛る物なの。貴女はまだ幼いのよだからその力を悪い人間に使われるかもしれない。貴女は自分を護れるの?人を傷つける事を恐れてるなら力は持たない方が良いのよその力が貴女を傷つけるし貴女を狙う者が現れる原因にもなるのだから」
「悪い人は捕まえるだけじゃ駄目なの?」
別に殺すとかしなくても良いと思う悪い人は罰が待ってる流石に私も捕まえるのなら容赦しないけど。
「捕まえるね…悪人は殺されても文句は言えない。それだけの事をしてきたのよ。それにこの世界では貴女が考えるほど命の価値は低いの。捕まえてどうするの?軽い罪状や奴隷に落ちる罪ならともかく盗賊なら問答無用で縛り首か斬首なのよ、私達は国の秩序を守るべき立場で彼等に同情する事は出来ないの。彼らを殺す事で同じ事しないよう警告してるのだから」
あっちとは違うって事か…私には人を殺すって考えれないけどこの世界ではよくある事らしい。私の持ってる常識はあっちの世界のだからそこら辺のズレが出てるんだろうね。
「難しい」
「そうねその覚悟を持てないなら教えられないのよ。魔法は人を傷つける事が出来貴女はその特異性で多くの困難を乗り越えなければこの世界では生きていけない…例え貴女が王族でもね」
覚悟か…私は魔法の利便性しか見て無かったな。私が他の人達と違うのは理解してるつもりだったけど考えが足りなかったのだろう。
「……」
「まあ覚悟するのは暫く先でいいのよ。貴女はまだ子供なんだからね。魔法の危険性をよく知って欲しかっただけで貴女の言う通り魔法の利便性が高いのも事実だからね」
厳しい話だったけど私には力より先にもっと覚悟しないといけないらしい。
その後は魔法の話じゃなく色々な事を話した。町で見た珍しい物や町の人と話した事とか一緒に本を読んだりして楽しく過ごした。
「今日は一緒にお風呂に入りましょう」
ご飯を食べ終えた後にお母様が急に一緒にお風呂と言い出してきた。お母様は忙しいので滅多に無い事だねいつもはアリシアさんが体を洗ってくれたりするしお父様とは余り一緒に入らない。五歳児でも私は女の子なのだ。
「一緒に入るのは良いけどくすぐるのは禁止」
たまに一緒に入るとくすぐったりしてきて困るのだ。私の悪戯好きは遺伝なのだろう。
「プニプニでちっちゃくてついくすぐっちゃうのよね~つまりアリスちゃんが悪いのよ?これは仕方のない事なの」
「私は悪くない。それにもう少しすればもっと大きくなる……筈」
そう言いつつお風呂場に到着。この世界ではお風呂は滅多にないけどお母様は力技で解決した。それはまず浴槽に水を溜める、これはそこまで難しくないらしい川から水を取ってるこの国は井戸みたいに汲み上げる訳じゃないのだ。そして溜まったら火球を打ち込んで温めるだけの簡単なお仕事らしい。普通は魔道具を使うけど高いのと自分で出来るから買って無いらしいけどこの方法を取るまでは普通に魔道具だったらしい。うちは他国の人とかが見る場所以外はそんな感じだ。普通一国の国王が城のドアとか屋根を直さないだろう。
「髪が邪魔…切って良い?」
長い髪は良いと思うけど維持するのが面倒なんですよね、髪を洗うのに時間が掛かるし乾くのも時間が掛かる。第一邪魔なのだ私は現在背中くらいまで髪が伸びている。
「駄目に決まってるでしょう、アリスちゃんも女の子なんだからもう少し身だしなみを考えなさい。普段みたいにラフな格好ばかりじゃなくてドレスとかも着た方がいいと常々思ってるわ」
「動きずらいしすぐに破れるから嫌」
ドレスや装飾は持ってるけど必要最低限しか着ない。だって破けやすいし動きにくいと着ててストレスを感じるのだいつもみたいにシャツにスカートで良いと思う。お父様も偶に町の人と同じような服を着て町に出てるし。
「…慣れなさい」
「無理!」
無理です。嫌いじゃないけど疲れる服とか着たくない。パーティーとか公の行事なら嫌々でも来ますけど私は城で貴族の人と居るより町に居る方が落ち着くのだ。
「ドラコに似ちゃったか。あの人もああ言う服は嫌いだしいつまでも昔と変わらないものだからアリスちゃんが似ちゃったのね」
何やら落ち込んでますね。まあお父様は元々下級貴族の四男で家を継げないから冒険者やってたらしいからどっちかと言うと庶民的だしそれを見て育った私が似た感性を持ってても不思議じゃない。お兄様は礼服とか似合うんだけどな本人も着なれてるしお母様に似たのだろう。無論私はお父様似だろうお母様はそこら辺は諦めるべきだと言ったら頭を軽く叩かれた。
「本来は貴女もドレスに慣れる立場でしょう?変な所は真似しちゃいけません」
「…すみません」
お母様をこれ以上怒らせると危険なので素直に謝ろう…反省は余りしてないけど。
お風呂イベントも終わり今日はお母様の部屋で一緒に寝るのだ。私は結構お母様大好きなので時間が合えばお母様と一緒に寝る事が多々ある。お父様も好きだからそこそこあるけどお兄様とはお母様かお父様と一緒じゃない限り一緒に寝ない。年々危険な気がしてるのだ。
「やっぱりアリスちゃんは学園に行かせる方が良いのかもしれないわね」
「?」
「学園に行けば多くの経験が積めるしアリスちゃんの事だから王族の義務を利用して冒険者になるのでしょう?なら学園に行けばそういう事ももっと理解出来るのよ学園の地下にはダンジョンもあるからね」
ダンジョン…剣と魔法のこの世界には当然ある。ダンジョンは迷宮とも呼ばれるが実態は自然や人工物の魔物だ。原理は謎だが過去の文明の遺跡が迷宮化したり洞窟が迷宮化する事があるらしい。当然私達の国にもあるが最低Bランクの迷宮しかなく私は冒険者になっても入れないだろう。
そして王族の義務は冒険者になる事だ。冒険者でBランク以上に成らなければ次の国王にはなれないし皇太子以外も冒険者として実力をつける義務がある。ちなみに騎士団で訓練するのは良いが騎士団に入団して鍛えて貰うのは禁止らしくこれは騎士団の腐敗防止でもあるらしい。なので私にもその義務が出るのだが私は女の子なので成らなくても問題は無い。当然お母様も冒険者の経験は無いらしい。だが私は冒険者になりたい私の目標に近づくには冒険者になって経験を積むのは必須なのだ。
「ばれてた…反対しないの?」
「反対よ、でもこれは私にどうこう言える事じゃないの国の規則は絶対で私も破れない…破れば過去を否定する事よ。それに王族には強さを求められるのがこの国なの、アリスちゃんなら何か考えがあるのでしょう?」
「成功すれば国が楽になる。外の敵に怯える必要が無くなってもっと良い生活が出来るようになると思う」
目標は大きく国の平和だ!そもそもこの国の魔法とかが遅れてるのは全部帝国と聖皇国のせいなのだあの2つの国を黙らせればこの国は豊かになる。だってそれだけの地力があるのだから。
「他国に攻め込まない私達が平和か…難しい道のりよ?あの2つの国は絶対にこの国を諦めないのよ」
まあ歴史を見れば諦めが悪いのはよく分かる500年近くうちと戦争を続けてるらしい。この世界の歴史はあっちの数倍の長さがあるがちょくちょく文明が滅んでるので中世より少し前くらいで文明が止まってるね。と言うか500年近く戦争をしても落とされないこの国も凄ければそれだけやっても諦めないのも凄いと思う何があの2つの国を駆り立ててるのだろう。
「諦めさせる方法を思いついたけどまだ出来ない。私の知識が足りないのと経験が無い」
「そうね色々とやってみなさい。もし国が平和になるのなら私も力を貸します」
まあ構想段階なのでお母様は深く聞いてこなかった。そこまで期待してないのだろうなんせ目標が大きいからね。
「とにかく6歳になったら学園に通えるようにしましょう」
「1年も待つの?」
「国境が安定して無いのよ、1年あればドラコが蹴散らして大人しくさせるからそれまでは待ちなさい」
1年待てば学園生活か…いっぱい面白い事があると良いな。




