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142 仲間を増やす

まだイケるはずだ。多分明日も更新します。

王国で最も不遇な大臣である国土大臣を探しに王城に戻った私。しかし、国土開発局は屍の様な職員達で埋め尽くされているだけで大臣は何処かに行ってしまったらしい。

 何で暇な国土開発局が過労で死にかけているのかと言うと、内職して予算を作ってるらしい。泣ける王国の財政事情を知ってしまった。国内開発って花形でしょうに。


「さて、大臣は何処に居るのかな」


「多分ですが、薔薇園に居るかと思います。偶に目撃情報が入るので」


 そう言えば王城には薔薇園があるね。お母様以外に誰も見に行かない場所だけど、1年中薔薇が見れるようになっている。

 アリシアさんの助言通りに薔薇園に行くと国土大臣であるラッシュ・ブラウンさんが居た。立派なカイゼル髭も萎れ、今にも死にそうな顔で薔薇を見ている。

 これから忙しくなるのに大丈夫だろうか。

 ラッシュ大臣はこっちを見ると目を見開いた。私は構わず彼に近づく。


「えっと、ラッシュ大臣だよね? ちょっと良い事思いついたんだけど興味ない?

 最近財政で悩んでるでしょう。私に手を貸してくれれば、もう予算で悩む必要は無いよ」


 私が居るからには彼の不遇な生活も終わりだ。今日から大臣に相応しい仕事をして貰う。その為に、彼が一番必要としている予算の事を告げる。

 するとラッシュ大臣は嬉しそうに跪いた。


「そうですね。予算さえあれば私は王国を飛躍的に躍進させてみせましょう。姫様の御心のままに」


 どうやら私の本当の目的に気が付いたようだ。これは彼の評価を変える必要がある。一言の言葉から真意を読み取ったのだ。

 私は彼に用意していた計画書を渡す。王都の拡大事業と鉄道事業の書類だ。

 ラッシュ大臣はパラパラと書類を読むと、目を見開いて、一字一字大事に読みだした。そして暫くして溜息を吐く。


「普通に越権行為です。国土開発は我々の管轄です。ですが、これほどの開発事業を作るなんて我々には出来なかったでしょう。細かい修正点はありますが、十分実用的な計画書です」


「王都をただ広げるだけでは意味が無い。技術を使うなら私の技術開発局の仕事だよね? 鉄道とか上下水道に浄水施設。更に王都防衛結界と王都中の魔力供給網を国土開発局だけで計画出来るのならば越権行為だと言える」


「そうですね。これが可能ならば異論はありません。寧ろ協力させていただきたい」


 この計画は魔道具の普及にも役立つ。王都外周に魔導炉を付けた塔を建設し、そこから電線の様な物を通して各家庭に魔力を流す。魔道具には2種類ある。魔法使い専用と魔力の無い人、あるいは少ない人用の汎用。汎用品は魔玉や魔晶石を取り付けるが、魔法使い専用は道具に直接魔法を付与する事で、制作難易度は格段に下がるから安い。汎用は魔玉と魔晶石の魔法付与に難があって高いのだ。

 じゃあ魔法使い専用の魔道具を普及させる。電気のように固定型の魔道具ならば問題は無いのだ。冷蔵庫や冷暖房に明かりなどの魔道具は今まで以上に普及し、王国民の生活レベルを上昇させられる。 

 更に手工業から機械工業への転換。そう産業革命を起こす。

 史実ではイギリスで起こり、大混乱を起こした産業革命。今まで以上に効率的な経済活動は多くの失業者を生み出した。

 だから同時に公共事業で失業者を囲う。人材と資金を集約すれば短期間で王国経済を成長させられる。当然莫大な金が掛かるが。


「王国発展は良い事だよ。早速お父様に直訴しよう」


「しかし我々だけでは却下される恐れが……」


 ふむ、確かに2人だけでは駄目かもしれない。もっと仲間を……アルバート団長が歩いてる!

 私とラッシュ大臣は顔を見合わせるとアルバート団長の元に歩いて行く。


「アルバートさんも私の味方だよね」


「団長も我々の計画に加担して貰いましょう。反対は許しませんぞ! 」


「なんだ! ちょ、待つのじゃ、儂を何処に! 」


アルバート団長を物陰に連れ込む。


「大人しく国境砦の予算を渡して欲しい」


「そんな事出来ん! 」


「王都防衛結界の設置を先行すれば外壁なんて必要ない。それに軍に物資を売る時は副王商会から割引もするけど」


「ぐぬぬ。確かに防衛結界を設置出来れば外壁など不要ですが、何に使う御積もりですか」


「軍もお金の事で文句言われたくないよね? だから王国を豊かにする事で、軍の負担を軽減するんだよ。

 それに陸と空軍が協力すれば、その後の予算獲得にも発言力が上がるよ。あの時は我慢したんだから予算は多めに頂戴って」


 一時的な譲歩で発言力の向上はアルバート団長も唸る。更に計画を話すと渋々だけど、予算をこっちに流してくれるそうだ。


「聞き分けの良い人は大好きだよ。お礼に私の銃とか戦車を陸軍に供与するよ。後で実験部隊を作ってこっちに送って」


「本当ですか! あれがあれば無双の軍勢が作れる。儂頑張っちゃうぞ」


 アルバート団長は元々は私の使う武器に興味があったそうだ。アレを全軍に装備すれば戦力は飛躍的に上昇する。更にオストランドで使った多脚式戦車も欲しがっていた。しかし、銃は私の個人所有物。取り上げるのは不敬だと我慢。戦車は師匠が抱え込んでるので手が出せずに悩んでたらしい。取りあえず1000人程の人員を送ると明言した。航空機の実験部隊と合流させよう。


「何処か良い場所ある? 他の人に見られると困るんだけど。

 それと空軍は戦闘機…偶に私や師匠が乗ってる奴ね。アレを配備するから。空から陸軍を援護出来るよ。

 それと爆撃機もあるから陸軍との協力関係の為に基地が欲しい。出来れば平坦な場所で」


「それならば去年廃棄した集積施設跡が宜しいでしょうね。あそこは儂の管轄ですし、地面を均せば飛行機も置けるはずです。

 そっちは儂の方で手筈を整えましょう」


 軍の物資を一時的に置いておく施設があるらしい。昔ほど重要な場所では無いので廃棄した物をリサイクルするのだとか。

 私はパッシュ隊長に携帯で連絡すると、既に戦闘機と爆撃機の乗組員の選定は終わり、用意した座学を行ってるらしい。

 私はパッシュ隊長に基地設営を命じる。

 これでアルバート団長は仲間になった。


「さあどんどん仲間を増やそう」


「「おお~~! 」」


 次に見つけたのは財務大臣。


「ねえ税収増やしたくない? 」


「増やしたいです! 」


「じゃあ私と協力して」


「喜んで! 」


 財務大臣は簡単だった。雇用の増加とスラムの解消を説明したら問題ないと仲間になった。私のお金だから王国の懐が痛まないのが最大の理由だろう。ついでに歩いてた外務大臣が仲間になった。皆で歩いてたから付いて来るらしい。


「お父様は? 」


 執務室に行くと宰相さんしか居なかった。


「陛下でしたら、何時ものように逃走いたしましたが……こんなに集まって何かありましたかな? 」


「宰相さんも私の味方だよね。私に協力してくれたら、仕事を増やしてあげる」


「そうですね。私は王国に仕える身ですので、姫様の味方です」


 超笑顔でサムズアップする宰相さん。よし、開発関連の書類仕事は全部宰相さんがやってくれる。


「皆は私の味方? 」


「姫様の仰せのままに」


 城にある神殿の様な施設に集まる獣人貴族に仲間か聞いたら全員跪いた。そして何も聞かずに協力すると明言した。何か怖いんだけど。

 さあどんどん味方を増やそう。次はお兄様だ。


「と言う訳で邪魔な資産の整理を兼ねて公共事業を行いたいの」


「邪魔って……それだけで、これだけの貴族を懐柔したのか」


 失敬なお互いに利益が出るだけだだよ。私は増えすぎた資産の整理。ぶっちゃけあれだけのお金は要らないのだ。持ってても使い道が無い。貴族の人達は王国の財政健全化と発展。それとお仕事の増加だよ。


「良いでしょ。王国も豊かになるよ。お願い」


「アリスのお願いは兄として何でも叶える義務があるからな。無理をしないのが条件だぞ。それと仕事は私も手伝おう」


 お兄様も仲間になった。凄い笑顔だったけど、何か良い事でもあったのかな?

 次は師匠だ。この人が一番重要。線路の設置と列車の生産を頼みたい。私が作ると面倒。


「ねえ師匠買ってよ」


 私は工房に居る師匠の袖を引っ張る。さっきから食いつきが悪いどころか顔色が悪い。


「……」


「ねえ師匠~」


 暫くゆるすと師匠は立ち上がる。


「あのな……テメエは何でそうやって何時も金の卵を売り払おうとするんだよ! 少しは物に愛着を持ちやがれ! 」


「だって私が作るの面倒だし。そうだ利権を流そう! ってなった。反省も後悔も無い」


 面倒なんだよ。仕事も宰相さんに押し付ける事に成功したし。それに今後は私も忙しいんだよ。もっと稼がないといけないし。

 全く冬はコタツに籠るのが私のライフスタイルなのに嫌になるね。


「お前なぁ……クソ、買えば良いんだろ。だが俺はやらねえぞ。全部息子に押し付ける。俺は空軍の方を手伝うからな」


「戦車は飽きたの? 」


「あっちは大体理解出来た。次は航空機を調べるから何機か寄越せ」


「じゃあアルバート団長と相談して。陸空共同の基地作る事になったから。それと師匠も私の仲間だよね」


師匠もきっと私の味方のはずだ。


「……それで貴族が外に集まってるのか。ハァ……俺も手を貸せって言うんだろ。ついて行けば良いんだな」


 師匠が仲間になった。集まった貴族達と会議室で会談を行う。丁度誰も使っていなかったのだ。


「さて、まず私の資産の9割と、飛空船の報酬10年分を王国に献上して当座の予算を作る。これで王都の拡張・近代化事業を行う」


「当座はなんとかなるでしょうが、如何に姫様の資産でも長期では支えきれませぬぞ」


 宰相さんが懸念を告げる。確かに私の資産と飛空船の報酬では全然足りないだろう。


「では儂が軍を動かして魔物を駆逐して資金を稼ごう。最近帝国の動きもめっきり減ったようだから少しは余裕がある。魔物の領域の解放を行いつつ魔物の売買で利益を出せる筈だ」


 軍ってそう簡単に動かせるのかな?


「暇になると練度が落ちるのでな。軍事行動は定期的に取るのが一番良いのじゃよ」


 いや、今年も帝国と戦闘してるし。まあ、アルバート団長が問題ないと言うのならば問題ないのだろう。


「解放地の開拓も進められるね」


「そちらは私の方で勧めましょう」


 開拓は宰相さんが指揮を執るようだ。


「では私達は作業員を領地から派遣しましょう。ついで我等の領地のスラム民も動員します。飛空船を使わせて貰えますか? 」


「問題ない」


 獣人貴族は余ってる人員を派遣するようだ。王国中のスラム民に仕事を与えられる。移動も飛空船を使えば問題ない。


「私は王都拡張の指揮を執りましょう」


 ラッシュ大臣が王都の工事の指揮を執る。あれ私は?


「私は何をするの? 」


「「「姫様はお休みください。資金の調達で十分な貢献です」」」


 おかしい。私立案なのにハブられてる。私もお仕事したいのに。


「魔導炉の開発などで姫様もお忙しいでしょう。計画書もありますし、姫様に陣頭指揮を執らせるような事はありませぬぞ」


「別に魔導炉はエイボンも共同で研究してるし。それにあっちは分身使ってるから問題ないよ。私にも仕事頂戴」


「既に過剰な執務を行ってる姫様にこれ以上の負担は……」


 ノリが悪いな。いいもん自分で何とかするから。


「じゃあオストランドでダンジョンから土地代でも取ってくる。予算を稼いでくるね」


 皆がキョトンとした顔をする。その中でお兄様とアリシアさんと師匠が慌てだした。


「ちょっと待て、あれは危険過ぎる」


「そうですよ姫様。私だって死にそうになったのに! 」


「「「死にそうに! 」」」

 事情を知らない貴族が驚く。土地代請求は余り知られない裏技だからね。

 ダンジョンは2種類存在する。一つは古代の施設や自然の洞窟などに魔物が生息した場所。次に生物型のダンジョンだ。生物型のダンジョンはゲームの様な生き物で、内部は空間からおかしなことになってる。魔武具等はそっちから得られる。

 魔物を生み出す生物型のダンジョンには最下層に大きい魔玉がある。これを奪うとダンジョンは消滅するが、他に利益を出す方法がある。

 ダンジョン内の魔物の討伐や、内部で精製されるお宝の獲得。そして土地代の請求だ。

 ダンジョンは人を食べる為に魔物や道具などをコピーして精製するので、使い道次第では国に利益を出す。しかし反面放置するとお腹を空かせて魔物を吐き出してくる。

 ダンジョンの魔物は特殊で、外で人間などを攫ってダンジョンに持ち帰るのだ。つまりスタンピードが発生する可能性のある危険な生き物だ。

 アーランドにもかつては存在していた。しかし、土地代を取られたダンジョンは数年から数十年間の間は活動を止めて入口も塞いでしまう。そう、アーランドのダンジョンは現在活動停止中なのだ。

 原因はお父様。邪魔だからと片っ端から土地代を請求して活動停止に追い込んだのだ。

 方法はただ一つ。ダンジョン内部で、本体であるダンジョンを攻撃する事だ。

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