140 副王商会連合
あ、明日も更新します。
毎日莫大な利益を生み出す副王商会。毎日のように貴族や商人・王国から収納袋の増産を依頼されている。生み出す利益は大きい。
なんせ価格が魅力的なのだ。ボロ儲けである。希少な魔法使いを使わずに生産される収納袋は価格は安いが、原価も相応に安い。副王商会は儲けに儲けている。
「素晴らしい売り上げです。これは更に商会を大きくできますよ! 」
ポンポコさんも忙しそうだが楽しそうだ。足りない人材はスラム民を優先して雇用している。これにより、スラムでも反王国主義は急速に力を失っていると報告が入った。
彼等は仕事が無いのだ。更に言えば、仕事が有っても劣悪な環境かつ低賃金で苦しい生活を送ってる人達だ。
副王商会は雇用者の生活向上を狙って作った商会だ。彼等をどんどん雇って市場の拡大と安定を促す。
「でも足りない。これじゃ何時まで経ってもスラムは消えない。
次の段階に計画を移行する必要がある」
そう、これは前段階だ。私は王国を豊かにする為に動いてる。商会一つを大きくしても力が足りない。王国政府を動かす必要がある。
「そうですな。しかし政府を説得できるかが今後の課題でしょう」
「そう。だからポンポコさんには副王商会を他の商会と連合を組で欲しい。トップが副王商会ならば王国に対する圧力も掛けれないでしょ? 」
幾つかの商会や技術者と連合を組んで公共事業を行わせる。公共事業は国家開発の基礎だ。アスファルトの道路に上下水道に鉄道。仕事は多い。これを王国負担でやらせれば国民の所得は増えるし、経済も活性化する。所得を増やす事で税収を増やす。取れる人を増やすのだ。
その為にバルド準男爵領の開発に携わった。あの領地は今や他の貴族が視察に訪れまくってる。上下水道と計画的に作られた道路は貴族も興味深々だ。
しかし問題がある。私が直接作れば低コストかつ短時間で作れるインフラも国民を動員すれば莫大なお金と時間が掛かる。しかし見返りは大きいが、それはこの世界では普通の方法じゃ無い。国が国民の為に動く程、政治が成熟していないのだ。
当然アーランドもそうだ。王国は国民の安全を守るだけだ。それ以外に手を出してる余裕は無い。
更に王国は貧乏だ。しかし、金が無ければ供給すれば良い。最近王城にある国庫を圧迫するレベルで増え続けてる私の資産を献上すれば問題ない。お金を溜め込むと経済が停滞するし、あの量を見れば私個人で使い切るのは不可能だ。
ポンポコさんには複数の商人に連合構想を伝えさせた。
「やりました! 皆連合に参加するそうです」
「早いね」
予想以上に食いついてきたようだ。
「彼等も商人ですから。チャンスを見逃す事は無いのですよ」
餌が大きいのだとポンポコさんが言う。私は彼等に招集をかける。次の日、15人程の商人が副王商会に集まったのだが、何故かロレンスさん率いる職人衆も集まった。
「俺達を除け者にするのはヒデェぜ姫様。これには俺達も乗る! 」
「別に除け者にはする気も無いけどね。良いよ」
彼等の協力も必要だ。ポンポコ商会には会議場がある。円卓には商人と職人衆の代表である数人の親方が座る。
「面倒だから挨拶は省く。この連合の目的は王国の発展を願う者の集い。
正直に話すけど、王国の財政は厳しい。だから王国の財政を改善する為に貧困を減らす。私でも完全に無くすのは不可能だけど、一人でも減らす事は出来る。
スラム民を雇用して税を取る。それが私の計画。貴方達は豊かになった彼等に商品を売れるから利益は出せる」
「成程。連中に恩を売りながらこちらも利益を出すのですね。商売が捗るのならば文句はありませんし、貧困を減らす姫様の計画は何処からも文句は出ない。
極めて健全な話ですな。しかし、王国の財政が厳しいのならば如何して改善する御積もりか聞かせていただきたい」
当然の質問が商人の一人から出て来る。他の数人も同意するように頷いている。
反面ロレンスさん率いる親方は興味が無いようだ。信頼して貰えてるのかもしれない。
「方法は簡単。新バルド準男爵領を見た人は居る? 」
7割ほどの商人が手を上げて見たと言う。やはり商人だ。あそこはチェックしてるらしい。
「なら話は簡単。王国中にあの道路と上下水道、それと鉄道を敷く。これらの事業を行う事でスラム対策と所得の増加を王国へ要請する。金額は……この程度は掛かるかな? 」
私の提示した金額は王国の国家予算を優に上回る。それどころか数年分は掛かる大金だ。
更に動揺が広がる。
「これほどの大金を王国政府が出すとは思えませんが。確かに効果的な経済政策だとは思うのですが、これは荒唐無稽……実現できませんぞ! 」
「そうです。確かに経済効果は凄まじいでしょうが、王国が破綻します」
「別に一括で出す訳じゃ無いよ。数年から10年程掛かるからね。当座の資金は私が供給すれば割と問題ない」
邪魔なお金は処分だ。多すぎても鬱陶しいのだ。
「それでは姫様に得が御座いませんが」
「対価として料理人学校とか作って貰うから良いよ。それに私が溜めこんでも、皆嬉しく無いでしょう? じゃあ盛大に放出しよう」
お金は無限では無い。溜めこめば、そのお金は動かない。お金は動かしてこそ意味のある物だ。それにお金単体では食べれないし。
料理人学校に製菓部門を作るように要請すれば私の個人的欲求も満たせるから問題ない。新しいお菓子を待っているのだ。
「相変わらずですな。ならば我々に異論はございません。姫様の望みのままに」
集まった人たちも納得したようだ。しかし、ロレンスさんが立ち上がる。
持っていたカバンから一つの本を私に差し出す。
「これを見て欲しい。これが俺の子供の頃からの夢だ」
「……これって」
パラパラと中身を確認して私は動揺した。
世界の主要都市と言う題名の写真集だ。年代は2016年創刊と書かれている。日本で出版された写真集をロレンスさんが持っていた。
中身は世界各国の首都の写真だ。ビルが乱立する人智の極み。
「何で持ってるの」
「昔本屋で売ってたんだよ。親父に頼み込んで買って貰ったんだ。金づちよりも先に親に貰った俺の宝だ。
何で姫様が異界の知識を持ってるかなんてどうでも良い。俺はこれが本当に人間が作った物なのか知りたい。そして俺はこれを作りたい。
すげえだろ! 人は天高くそびえ立つ塔をこんなに作ってるんだぜ。俺もいつかこんな仕事がしたかった!
姫様について行けば俺もこんな仕事が出来るかもしれない。頼む、俺にデカい仕事をさせてくれ」
成程。これには小さいが飛行機も写ってるし、アスファルトも写ってる。私が地球の技術を持ってる事に気が付いて居たのか。
「理由は言えないけど、確かに私は異界の知識を持ってる。断言するけど、これは確かに人間が作った物だよ。異世界人にでも聞けば故郷だって答えるんじゃない? まあこの世界から来たか分からないけどね。
それと、ここに至るには長い年月が掛かるよ。基礎技術に差が有り過ぎる。それも数百年レベルでね。私でも数十年掛かるかもしれない。でも、いずれはここに至ると確信してる。
豊かでしょう? でもね、これって歪んでるんだ。世界の利益を一部の国が集めた結果の都市なの。
この繁栄の影には貧困がある。他者が豊かな生活を送れば、貧しい暮らしをする人も居る。だから私は動いてる。
王国に負け組に成って欲しく無いから」
これも理由だ。繁栄の影に貧困は付きまとう。自由主義、共産主義に王政や帝政など、人は多くの政治を生み出した。しかし、貧困は無くならない。
世界は富を奪い合うゲームだ。他者より良い生活をしたいと言う欲求から発展してきたのだから仕方のない事だ。
でも負けるのは嫌だ。私は勝つ側で居たい。
「……姫様がそれを考えていたのは知らなかった。
確かに良い生活の影に貧しい生活があるのは理解した。でも夢だ。他者を蹴落としてでも俺は叶える! 」
「その意気があればいずれは到達出来るよ。私は基本的に王国が豊かならそれで良いからね。他の国の事情は、その国の貴族と国民次第だし」
貧困から立ち上がる人も居る。私は私のやりたいように動くだけだ。
「じゃあ異論は無いね。各商会は自分の商圏を利用して副王商会の商品を扱う権利をあげる。今以上の努力と成果を期待する」
私とポンポコさんだけでは市場を開拓出来ない。隠れた購買層まで発掘して利益を出す為に、収納袋の販売権を一部別ける。彼等の利益も副王商会連合の利益になる。お互いに損は無い。
しかし問題もある。現状の生産能力の低さだ。これはミシンを導入する事や、人員の増加で対応するしかない。作って売る。これが基本だ。
「それと研究所の件はどうなってるの? 」
私はそれ以外にも私の技術を習得させる研究所を副王商会に作らせた。
王国の技術開発局は基本的に魔法技術を学んでるが、こっちは科学技術だ。色々と生産させたい。
「市井から良い人材が集まっております。今も試作品を作ってる最中です。ブルドーザーやショベルカーなどは優先して研究と解析を続けてますが……あれも素晴らしい出来です。数か月もすれば当商会だけで生産する事も可能でしょう。最も魔導レンジが無ければ生産は不可能に近いので技術を盗まれる可能性も低いでしょう。
ただ、魔導レンジを置いてる孤児院は魔導レンジの盗難の危険が有りますので、最重要施設として厳重な警備を行っております」
「ならば良し。ポンポコさんも少し休みを取ってね。倒れると困るから」
「はっはっは。姫様こそお休みが必要でしょう。私は慣れてるので暫くは大丈夫ですが、一段落すればお休みを頂ます」
休暇ね~。まあ後で貰うかな。空軍の関係もパッシュ隊長に大分任せれるようになってきたし。まあ、王国の説得後かな。
さて、次に説得するのは国内開発を担当する国土大臣だ。彼にも私側に来て貰おう。




