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137 副王商会

「忙しいのに集まってくれてありがとう」


「また悪巧みですかな?我々としては仕事が増えるのは困るのですが……そろそろ部下が倒れそうです」


仕事明けでボサボサの金髪と立派なカイゼル髭の財務大臣が疲れたような顔をしている。外務大臣は今まで仕事が少なかったので楽しそうだ。外務大臣と国土の開発を行う国土大臣は仕事が少なかったのだ。片方は外交自体が無かった事。もう一つは予算が無い事だ。

 現在アーランドの予算は火の車だ。何故存続出来てるのか不思議に思うレベルである。最低限の経済を辛うじて回す事で破綻を先延ばしにしてる状態だ。

 私が打った手は外需を生み出す事。飛空船は今の所、大陸で作れるのは私だけだ。エイボンは飛空船に興味が無いので研究すら行っていない。彼は個人なので飛空船を必要としていないからね。

 しかし、予算不足は相変わらずだ。飛空船は利益を生み出しているが、それは今まで置き去りになっていた政策を行うので消えていく。私にも莫大な報酬が入る。別に要らないが、タダで行うと私が国に酷使されてると思われるのと、余計な介入が入るから支払いは行われる。ぶっちぇけ、溜まる一方で困ってる。

 次に私は収納袋を王国を通して外国に売ろうと考えたのだ。更に外国から資金を集める。

 収納袋は便利だ。便利故に需要は高い。値段も魔法王国製の10分の1なので、絶対に売れる。私は彼等に説明した。


「素晴らしい。外交の仕事は大歓迎です! 」


 緑色の天然パーマの外務大臣が仕事を受けて喜ぶ。


「……確かに。副王商会が直接外国に売るよりは王国に利益が出るでしょう。我々は『また』姫様に恩を売られているのですな」


 恩は押し売りする物である。


「しかし何故儂が……もしや軍の予算で購入しろと! 」


 アルバート団長は直ぐに私の意図を読んだようだ。


「その通り。考えてみて。収納袋を全員が持てば輸送がどれほど楽になる? 」


 無論軍にも買ってもらう。空軍も購入を決定した。私が決めたので、決定事項である。パッシュ隊長も反対しない。便利だし。

 今後の動きは経済だ。王国の経済を活性化し、スラム民に仕事を与える事で税収を改善。更に言えば、所得の増加で更に税収を増加させる事だ。

 幾つかの問題を解決すればアーランドは大国になれる。国民も増えるだろう。


「ぬぐ、それを言われると……しかし我々も国境砦の修繕が……」


「それは別途相談する。丁度、都市防衛結界を作ろうと思ってるから、試作品が出来次第国境砦に配備すれば城壁が無くても防衛力は高まると思うよ」


「あんな金食い虫を作るのですか! そんな物を作れば我が国は破綻します。魔力を何処から持って来る御積もりですか! 」


 財務大臣が激昂する。

 都市防衛結界を持ってるのは現在3ヶ国だけ。帝国・皇国・魔法王国だ。帝国は四方から恨みを買ってる自覚があるので帝都に設置……と言うか何処の国も首都に設置している。魔法使いが希少なこの世界では魔力の供給が難しい。魔玉から魔晶石に魔力を移すのも至難の業なんだって。私普通に使ってるけど。

 そう言う事情で魔法使いを常時首都に置かなければならない。そして魔法使いは高給取りだ。アーランドは魔力の少ない魔法使いが多いので、コスパが悪いと判断されているのだろう。エルフは魔力豊富だけど、道具扱いには拒絶反応を示すので、そう言う仕事はしない。と言うか領地に籠って出てこない。

 でも大丈夫。今は無いけど、大型魔導炉を置けば万事解決だ。今はちょっと……暴走気味で安定して無いけど、エイボンと分身が頑張ってくれるでしょう。駄目でも違う分身を送り込めばいい。前回の分身が駄目でも次の分身が頑張るだろう。


「予算の方は問題ない。大丈夫、理論上は異世界最強の核兵器を100発撃ち込まれても平気な王都になるから」


 魔法結界は地中まで及ぶ。私の知る全ての有害部質を通さない結界を作れば良いだけだ。結界の改良は割と簡単だから大丈夫だ。回路図に比べたらだけどね。


「ふむ、ならば儂は問題ないの。収納袋は是非とも欲しかった物、安定的に安く購入出来るのならば買う以外の選択肢は無い」


「無論私も賛同しますよ。早速王都に居る大使を集めて交渉しなければ……忙しくなるぞ! 」


「王国の財政が良くなるのならば文句は有りません。で・す・が、我々に何をさせる御積もりか聞かせていただきたい」


 アルバート団長と外務大臣は容易に懐柔出来るのに、財務大臣は引っかからなかった。


「ちょっと議会が五月蠅いから圧力でも何でもいいから黙らせて。絶対に私が関与してない方法で」


「最近寒くなって暇になったから盛大に騒いどるのう。大方空軍でポストを貰えなかったのが気に入らんのだろうが」


 アルバート団長が吐き捨てる様に呟いた。まあ、軍は花形だしね。今も貴族の子弟の騎士団を作れとか意味不明な事言ってるし。ぶっちゃけ役にたたない組織を作ってる暇も資金も無い。単に自分達を優遇しろと言ってるだけだ。

 当然私にも来るのだが、私は居ない事も多い上に、人事はパッシュ隊長に任せてる。

 最大の問題は彼が貴族嫌いと言う事だろうけどね。少し前までは空軍が貴族議会の管轄で、平民出の彼は散々嫌味を言われながら仕事をしていたようだ。隊長の座を奪われなかったのは、空軍が旨みの欠片も無い組織だったからである。


「もう全員爵位没収でも構わないと思います。私の所にも毎日姫様に会わせてほしいと詰めかけてきますよ。私と姫様の接点なんて殆ど無いのに」

 外務大臣と話すのって滅多にないしね。


「いい歳こいた大人が何と情けない事か。子供にすら嫌われるとは」


「私は割と大人だから」


「いえ子供です。ですからしっかりとお休みも取ってください」


 いや財務大臣よ、私はレディーだ。多分お酒も飲めるはずだ。この世界に飲酒の年齢制限とか無いしね。ドワーフは生まれた時から酒を飲む種族だし。

 それに夜更かしだって出来る様になった。ケーナちゃんの選ぶ小説は悩ましい。我等くっころ騎士団は面白かった。男だけの薔薇騎士団と魔法使いの多い白百合騎士団との確執から、彼等薔薇騎士団は自分達で手柄を手に入れる為に多くの戦いを挑む。盗賊に捕まって盗賊の首領に薔薇騎士団の隊長が壁際に追い詰められた後に何故か次の日になってるが。

 まああれも写本で割と割愛された物らしい。何で盗賊は疲れ切ってたのか、何故騎士団に捕まえられたのか謎が謎を呼ぶミステリー小説だった。後、実在する騎士団が居るらしいが、どうでも良いか。


「コホン、兎に角ご依頼は理解出来ました。連中が騒いでるのはこちらも知っているので、姫様とは無関係と言う線で圧力を掛けましょう。

 ついでに何人か爵位剥奪でもすれば少しは大人しくなるでしょう」


 まあ、元々居なくても困らない処か、年金を払う必要も無いしね。王国の財政を担う人からしたら害悪でしかない。


「どれ、若輩者を大切にしない老害には儂も説教をくれてやろう」


 額に青筋を浮かべたアルバート団長も圧力を掛けてくれるらしい。向こうも相当議会にはイラついてるらしい。


「私は知り合いの貴族や領主に情報を流します。得意分野ですので」


 それが何か圧力になるのか分からないが、これで十分らしい。外務大臣の一言にアルバート団長と財務大臣が何とも言えない顔をしていた。なんか可哀そうな人を見るような目だった。

 取りあえず、この場で商談を行う。まずは外務大臣が5000個の収納袋の商談を取り付けると確約してくれた。財務大臣は王国に必要な分と2000個。

 軍は取りあえず1000個だ。私はもしかしたら営業に向いてるのかもしれない。国だけで受注が8000個も入った。まあなるべく早くお願いねって感じなので、直ぐに増産だ。




「姫様! 4000個の受注を取れました! 幾つかの商会は我々側に付くとの確約も頂けましたぞ」


「ふふん。私は国が8000個。それと冒険者ギルドと提携してきた」


 空軍は買う数は決まって無いけど、多分後1000個くらい増えるかもしれないけどね。


「なん……だと。私が負けるとは……あり得ない」


 笑顔で副王工房に戻って来たポンポコさんは私の返答に落ち込んだ。商人のプライドを傷つけたのかもしれない。

 しかし、ポンポコさんは直ぐに立ち上がった。


「こうしてはおれん。直ぐに追加の受注を取らねば。生粋の商人である私が営業で負けるわけには! 」


「まずは多すぎる受注を捌こうよ」


「ぐぐ、そうですな、今後姫様の家臣に相応しい活躍をします」


 と言ってもやれる事は限られている。魔導レンジを増やしたりする程度だ。


「この際針子の人達を直接雇用した方が良いかも知れないね」


「左様ですな。この状況だと、向こう側に買収される恐れもあります。

 現状の副王商会ならば彼女達を直接雇用しても問題は無いでしょう。彼女達の腕も悪くありません」


 ついでに布から衣服とかも一括で作る方針にしないかと言ったらそれも良いらしい。布の生産から服などの加工品の販売に商売の幅も広げる。

 私は布の生産地に投資するのと、ミシンの生産を始める。これは大分前に作った原始的な物がある。この世界でも辛うじて作れる物がだ、これも使えるらしい。


「と言う訳で私の所で働きたい人は全員雇うよ」


 針子の人達の所に行って事情を話す。彼女達も非正規雇用は不安がある様で、直ぐに承諾した。

 後は彼女達の住居だが、賃金でスラムの外の借家を借りれるらしい。彼女達は既に副王家の人間だ。身元の保証は問題ないとの事。

 後でマンションとか作ろう。後はアリシアさん経由で、教会から神官を派遣して貰って子供達の教育を頼む。

 朝から夕方まで働いて2時間程基礎教育を行う。マッドは剣も習うらしい。と言うか最低限の護身術は全員に教える方針らしいが、そっちは副王家警備隊に任せた。多くの経験は彼等の将来の選択肢を増やすだろう。当然このままここで働くのも良い。

 近くのボロボロの建築物も全て撤去してカマボコ型の建物と、プレハブ型の長屋が建っていく。スラムの外に出ない針子の人達の仮宿だ。後で副王家の社宅を用意するが、次の目標が有り、社宅を無計画に作るのは不味い。都市開発は事前の計画が重要だ。下手をすると道路にマンションが建ってしまう。

 私は陣頭指揮を執りながらどんどん収納袋を出荷していく。木箱に収納袋が詰められると、副王商会と王城に運ばれる。運ぶのは警備隊の仕事だ。

 現在旧ポンポコ商会の馬車には副王家の紋章が入ってるから襲撃は無いと思っていたら数回襲撃されたらしい。

 無論警備隊に返り討ちにあって全員鉱山送りだそうだ。怒ったお兄様に幾つかの組織がそのまま鉱山に送られた。死なないだけ慈悲があるらしい。

 そして遂に商業ギルド本部のギルドマスターが逮捕された。ついでに貴族議会の議長と副議長が行方不明になり、書記が爵位剥奪された、何故に!

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