12 ニート姫
??視点
「どうだった?あの国は」
私は庶民が生涯働いても買えないような服に酒や女などいくらでも持ってるまさに神に選ばれた人間だ。今回は田舎者の国に【瞳の刻印】を持った者が生まれたらしいので調査とちょっとした悪戯を仕掛けてみた。あの亜人を庇うような国など無くても困らないしね。
「正直、規格外です。隙はありますが攻め込むような隙はありませんでした」
この男は私が育てた男で…名前は忘れたがゴミにしては有能なので使ってる。
「少しくらいあるだろう?それに北の魔女はちゃんと殺せたのかな?」
あの魔女はしっかりと殺さないとね私の求婚を断るとか許されないし
「それが……怪我を負わせる事には成功しましたがそこまででした」
「あり得ないよね?例え家畜のゴブリンとは言えあの弓を使わせたのだろう?何故生きてるのかな?毒だって使ったんでしょう?じゃあ死ぬ筈じゃん」
「それがあの王女が治療の魔法も使えるらしく戦場に出れない程度で終わったそうです弓は連中に回収されました」
嗚呼これだからゴミは使えないんだよね。でも私は優しいのでこの男を10回蹴る程度で許してあげよう。
「このっ屑が!誰がお前を拾って育てたんだ?私の役に立とうとか考える頭も無いのかい?」
しかしアリスティアか…私は年下でもイケるから顔次第では私の30人目の妻にしてあげてもいいかな。
「それで?君は他に何をしてきたのかな?あれは回収したの?壊されたなんて言ったら君で代用するよ?まあそんなどうでもいい事は後だ。私の花嫁はどうだったかな?魔女の娘だから顔は良いんだろう?」
「恐れながらまだ5歳です。それに恐るべき魔法使いで既に魔導士レベルかと…」
ほほうそそるねぇ。
「君の意見とか聞いてないし良いねぇ、でも何で私の元に持ってこないの?前々から連れてきなさいって言ってたよね?僕の命令をこなせないとか死んだ方がマシだよ?神に対する忠誠心が足りないんじゃない?」
「あの国で人望があるらしく街中で捕まえるのは不可能です町中の人間が敵になりますし国の暗部らしき者達まで陰で護衛してるらしくこれまでに100人以上捕まりました」
つまらないな~何で私の言う事もこなせない無能しか居ないんだろう。
「ですが、あの王女は将来冒険者になるかと…捕まえるのはその時でも」
ああ、あの古臭い因習をまだ続けてるんだ。私は優しいので少し待ってあげよう。どうせ私の物になるんだからね。嗚呼私って優しいな~
「ああ君は無能だからもう要らないや、連れてってあれの素材にしよう」
幸いあれは無事らしいからねコイツも『混ぜ』ちゃおう。
「い…嫌だー!俺はお前に何年も仕えてきたんだぞ!ふざけんな!辞めろ離せー」
暴れるけど私の部下に引きずられていくゴミを無視して私は思いをはせる。
「君の泣き顔はきっと美しいのだろうな、全部奪って殺して君を絶望させてあげる」
「くしゅん……寒気がする…兄様が変な事でも考えてるのかな…」
兄様は学園に入ってるのでここには居ないはずなので不穏な事を考えてても実害はないだろう。3年前に入学したのだが私は兄様が入寮して半月は入学した事すら知らなかった。最近静かだな~くらいで聞いた時は少し驚いたよ、せめて見送りくらいはしたかったからね。
「殿下なら姫様に毎月恋文を書いて姫様に届けてるじゃありませんか。姫様が返事を書かないから焦ってるのでは?こう…全裸で殿下のベットに行けば喜ぶと思いますよ」
うんアリシアさんは今日も絶好調だな。それじゃ私は変態だし兄様と言う野獣に何をされるか知れたものじゃない。
「兄様とはあり得ない。兄妹だし」
「兄妹での結婚も可能ですよ。嗚呼姫様が困惑しながら殿下と結婚するシーンが頭の中に浮かびます」
ふと思う事があります。もしかしてこの人は私の教育に悪いのでは?兄様は兄様以上にはなりえないので私はその可能性は無いと思ってる。イケメンで強く頭も良い完璧な兄様ですがシスコンが無ければモテるだろう。手紙で愚痴ってたし。
「私も早く学園に入りたい城の本は殆ど読んだし学園には世界最高峰の図書館があるんでしょう?」
「確かにありますが姫様の場合籠るでしょう?勉強よりそっちが目的では?」
確かに私の目的はそっちだ。魔道書とかどんどん読みたいし知ら無い事もいっぱいだからきっと有意義な学園生活を送れるだろう。
「魔力制御は今でも練習してるし勉強はそこまで困って無いから読書が出来ればどうでも良い。それにゴーレムとかかっこいいと思う」
「…あれは雑魚いですよ。姫様なら魔法生命体関連を研究した方が…」
魔法生命体ですか。確かに魔法使いの使い魔として有能らしいですが何か興味が湧かないんですよね。この国じゃ作れないらしいから本とかも全然無いし。でもゴーレムは面白そう、きっと面白いゴーレムが作れると思うんだ。
「迷宮とかも有るんでしょう?この国に居ない魔物とかの素材にも興味がある」
「迷宮は駄目ですよ。危ないので陛下も許可しないでしょう」
「お父様はそこら辺がケチだ。私なら問題ない」
先の一件で私の実力も大体分かった。魔物に近づかれなければ無双出来るだろう。
「はあ…甘く考えすぎです。確かに姫様なら遠距離から殲滅できるでしょうが迷宮は入り組んでますし背後等からの奇襲も多いんですよ、陛下ですらパーティーを組んで入るのですから単独で行くのは自殺行為です」
「だからゴーレムを使う」
要は足止めですね。
「あんなのは直ぐに壊されます!力はありますが、遅い、脆い等使える代物じゃありません精々、魔法使いの時間稼ぎです」
確かに弱いんですよね。他の国では魔物よりマシ程度の認識らしくお母様の作ったロックゴーレムもうちの騎士の手にかかれば数分で土塊に戻るらしい。
「土で作る必要は無い。鉄で作れば防御力も上がる」
「余計動きが遅くなるでしょう…」
「動きが遅いのは大きすぎるから人間より少し大きい程度にすれば問題ない」
「お好きにどうぞ」
アリシアさんは余り魔法に詳しくないので魔法関連では話してても面白くない。
アリシアさんとお話してたら急にドアが粉砕された…まあお父様だろう。
「アリスティアー!いい加減に部屋から出てきなさい!とうに謹慎も解けただろう」
ふむ
「めんどくさい…私は部屋で暮らす」
「ぬぐぐ…謹慎がまさかこんな結果になるとは」
確か謹慎が解けて一ヶ月位経ってますね。私は相変わらず部屋に居ます。だって慣れたし本とか読んでれば時間が経つのが早いし。
「どうやら謹慎は姫様を怠惰にしただけみたいですね。しかも知識欲は反動のせいか前以上になってますし」
そうですね自由に本を読めるのは何と素晴らしい事でしょう。寧ろこのまま部屋で本を読み続ける有意義な時間をくれて感謝してます。
「ボルケンの奴も失敗だったとか言ってたな、やはり俺の膝の上に置いておくべきだったか…後で奴らを説教してやろう」
妙にニコニコしてきましたね。
「姫様もいい加減外に出ましょうよ…町の皆も心配してますよ」
「ぬ…」
「そうだぞ。部屋に籠りっぱなしじゃ体に悪いぞ。今出ればこの風の魔道書をお前にやろう」
何と!それはお母様が見せてくれない魔道書…ふむ。
「早速町に行こう!今すぐに行くよ。だからそれ頂戴!」
「…育て方間違えたかな…」
「陛下…」
やる気が私の体を満たしてきた…私は何て怠惰な生活を送ってたのだろう今後はこんな間違いを犯さない。ついでの風の魔道書は喫茶店で読もう!




