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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
石油だ!蛮族だ!メリケンだ!
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120 王女を野放しにしてはいけない

遅れてすみませんでした!

 ドラコニア視点


 アリスティアがもう2か月も帰ってこない。不安だ。何かを仕出かしてるかもしれない。

 それに城に居る魔獣がいつの間にか減ってる。向こうからクートに召喚させたのだろう。

 娘が飼ってる魔獣はどれも危険種だ。野放しにするのは非常に危険なのだが、クートが恐怖で従えてるので悪さはしない。精々城の木が数本爪とぎで倒された程度だ。今では暇な魔獣が王都警備隊と協力してる事もあるし、騎士と模擬戦の相手をしてる事もあるので助かっていると言えるだろう。餌代はかかるが、それ程の物でも無い。アリスティアが自費で出してるしな。

 それと工作員が捕まりやすくなった。報告では1週間で10人程度捕縛してるらしい。優れた感覚を持つ魔獣が自由に城内を歩いてるので難攻不落と化したのだ。

 アリシアからの報告だと向こうでも何人か捕まえたらしい。

 ただ、情報漏えいを考慮して殺すしか無いようだ。多くの職人が居るので、人目につかせる訳にはいかない。こっそりと処分してるらしい。

 捕らえた工作員を拷問したが、半分以上は何も話さずに死んだ。ただ、アリスティアが捕まえた工作員がおかしな死に方をした。行き成りオーガに変わったのだ。魔物が人に擬態してたのか?いやあり得ない。まだ調査中だが、連中の背後関係はどうやら帝国では無く皇国のようだ。何やら怪しい動きをしている。アリスティアだけでは無く、何かを探してるようだ。


「父上」


「分かってる。アリスティアには内緒だ。只でさえ忙しく働いてるのだ。こっちは俺達で処理すべきだ」


 息子のギルは優秀だ。さり気なく悪意ある者達をアリスティアから引き離してる。

 俺達は今、新準男爵領に視察に向かっている。報告書は来るのだが、途中から分からない物が出てきたのだ。アリスティアは熱中してる時は電話にも出ない。アリシアでは「あうあう」言うだけだ。向こうも混乱して話にならない。盛大にやらかしてるのは明らかだろう。ストッパーになる人物が居ないのだ。

 シルビアが妊娠してから怒る人物が居ないと判断したのだろう。今まで以上に好き放題してる。基本的に国に利益を出してるから怒り難いのも問題だ。しかも泣かれでもしたら俺達ではどうしようもない。アリシアはアリスティアには甘いから結局は許してしまうだろう。マダムを付ければ、今度は萎縮して飼い猫みたいに大人しくなってしまう。難しいな。


「やはり馬車もアリス製の方が乗り心地が良いですね。今まで気にもしなかった事が気になって落ち着きません」


 色々考えてるとギルが俺も思っていた事を呟いた。今乗ってるのは普通の馬車だ。飛行馬車は付与魔法の更新の為にアリスティアに返却された。向こうの飛行魔法は既に旧式で、燃費が悪すぎるらしい。

 今後は魔玉一個で使えるように改修するらしい。最も原型は留めて無い改修だろうがな!


「生活用品はアリスティアが一番だな。知っては居たが異世界は恐ろしい所のようだ。繋がらない事を祈ろう」


 あんな物が溢れてるなら、もし次元が繋がった瞬間にこの世界は植民地にされるだろう。一部の異世界人は、その関係でこの世界を見下す風潮がある。幸い我が国に居る異世界人はそうでも無いらしいが。城で働いてる異世界人3人も普通に暮らしている。休みの日に甘い物を食べに行くのを楽しみにしている位には順応している。


「父上、そろそろバレル準男爵領です。やけに道が均されて……これは……」


「どうし、何だこりゃ」


 チラリと外を見ると、土を踏み固めた街道では無く黒い道が出来ていた。真新しいようで、中央には障害物がある。どうやら車線で進行方向を決めてるようだ。しきりに案内板が立ってるので分かり易い。中央には障害物があるので馬車同士がある程度の距離を取れて安全に走れるだろう。それに、道自体が極めて平らに作られているので振動も少なくなった。

 更に、未だに開発されていない草原を見ると、20匹程のゴブリンが岩で出来たゴーレム数十体に追い掛け回され蹴散らされていた。更に空には飛行機が飛んでいる。軌道を見る限り領地を偵察してるようだ。


「もしかしたら携帯で通信を拾えるかもしれませんね」


「そんな事出来たのか?」


 アリスティアから貰った魔導携帯なる物は色々と機能を詰め込んだ上に将来的にインターネットなる物を使えるように高性能かつ、高発展性があるようで、アップデートを行えば色々な機能が実装されるらしい。

 最も本人の気分次第で更新するので何時になるのかは不明だ。俺は通話以外は苦手で詳しくは無い。


「そうですね。我々王家だけが持ってるのは特別製で、普通の通信機能もあるそうです。アリスの魔導携帯は契約魔法の派生に当たるので、既存の物とは互換性が無いそうですよ。

 それに対してこっちは普通の魔導携帯と同じ機能もあり、説明書通りだと軍用の秘匿回線も繋がってると書かれてるのですが……読んでなかったのですね」


どうして俺達の説明書だけ異様に分厚いのか疑問だったが、性能が違ったのか。ギルに教わりながら軍用の秘匿回線を繋ぐと直ぐに会話が入ってきた。


「こちら偵察機、B-1地区にオーク発見。数は…10匹くらい」


「司令部了解。わんこーずを2~3匹放っとくね」


「ゴーレム足りないよもっと増産して」


「要請を棄却する。既存の人員で作業せよ」


「オリジナル何処行った! 」


「3時」


「捕まえろ。私達だけ働かせる気か! 」


「私達では勝ち目は無い諦める」


 ふむ、同じ声っと言うか全員同じか。見分けがつかない事を利用した悪戯を考えそうだな。しかも自分の分身は働いてるのに本体は休憩中か。


「それにしてもここまでやるとは……生まれが平民だったら貴族が泣いて喜んだでしょうね」


「奪い合いで内乱が起こる未来しか見えん」


 王族なのに奪い合いの対象だぞ。大陸中から狙われて何処かに引き籠るだろうな。やる事が無い時は基本的に本を読んでるし。

 嗚呼懐かしき過去のアリスティア。今じゃ分厚い猫の皮を被っていた事が理解出来る。寧ろ良くあれ程の猫の皮を被せたなマダムよ。今は地方で教育を行ってる彼女を思うと涙が出そうだ。戻ってきたら確実に折檻されるだろう。俺は止めれない。マダムは事教育においては王家を上回る権力を持ってる。

 しかし……人が居ないな。居るのはどれもゴーレムばかりだ。俺にはよく分からない魔道具とか乗り物とかで作業を続けてるが、アリスティアが王都中から連れて行った職人たちが一向に見当たらないのだ。

 これも問題だった。現在王都の大工ギルドは大混乱だ。主だった職人がアリスティアに付いて行ってしまったのだ。大工ギルドはギルドの権限がさして強く無い。仕事を斡旋するだけだからだ。故にアリスティアに付いて行く職人を宥める事しか出来なかった。

 しかし、説得で思い止まったのは極僅か。殆どが未知の技術を求めてアリスティアに付いて行ってしまった。金に釣られたと言う話も聞いたが。何やら相場の10倍近い報酬を出したらしい。何を考えてるのやら……


「と言うかこれほどの数を制御出来るのか?領内に入ってから既に100体以上のゴーレムを見てるぞ」


「アリスの事だから自分で操作しない方法とかを考えたのでしょうね。分身とかに任せるとか魔道具かするとか。一人欲しいですね」


「お前は部屋に閉じ込めそうだから駄目だな」


 こいつは色々と危険な性格だ。全ての悪意から遠ざける為に幽閉を強行する可能性もある。最も国中の裏切り者を問答無用で粛清しそうだ。アリスティアとは別の意味で自制心を持って欲しい。法に則って統治しなければ誰も従わなくなる恐怖政治なんぞ長続きしないのだぞ。

 暫く馬車が進むと広場が見えてきた。煙も見えるので人が居るのだろうと思ったら――


「何だオヤツの時間だったのか」


「父上、現実から逃げないでください」


 職人が誰も居ない訳だよな! 皆広場のテーブルで紅茶飲んでやがった!

 数からみて端の仮設と思わしき小屋で寝てる奴も多く居るのだろう。しかし、働いてる人員は優雅に紅茶を楽しむ姿に馬車から下りた俺達は唖然とした。

 王都の職人なら俺の知り合いも居る。何人かは直ぐに知り合いだと分かったが、連中は紅茶を嗜む程紳士的では無い。寧ろエールを寄越せと言い出す酒好きの連中だ。と言うか平民が大規模な茶会をするなんて前代未聞だぞ。別に違法では無いが。

 そう言えばアリスティアは豊かな暮らしにはゆとりが必要だと言ってたような……5歳くらいの時に。

 あの時は確かアリスティアの政治能力を見極めていた時期だ。異常に物覚えが良かったので詰め込み授業を行っていた。

 結果は適正無し。寧ろ混乱を引き起こす可能性アリ。まさに傾国の王女になりかねないと言う物だった。具体的な政策を考える能力も無く、興味も無い。

 アリスティアは興味のある物には物凄い集中力と行動力を持っているが、反面興味の無い事には極めて冷淡だ。だが、今回は資金力で強引に物を進めたようだ。

 アリスティアの支払った賃金は膨大だ。多少金を使っても職人は小金持ちになっている。これを好機にオヤツタイムを導入しようと画策したに違いない。


「今日の紅茶は当たりだな。俺達お茶を淹れる技術を身に付けてしまったな」


「新しい世界の扉を開いた気分だ。御貴族様達の気持ちがよく分かるぜ。俺達も慣習化してみるか」


 自分で淹れた紅茶を飲みながらスコーンやクッキーを優雅に楽しむ職人達。服こそ職人らしく汚れているが、その姿は貴族を思える気品を持っていた。何より粗暴さが無くなっている。


「普及させてみた」


「仕事をしなくなるのは困るぞ」


「休憩時間を使ってるから問題は無い。寧ろ皆楽しそう。

 それにお菓子を食べる文化が無ければ創造すれば良い」


 うむ、確かに俺の娘だ。極めて強引に物事を進めている。作業も遅れが無い事は作業進行表が送られて来るので分かっている。

 寧ろ、遅れる処か異常な速度で進んでいる。既に幾つもの家や領主館が完成しているようだ。

 そして後ろで佇んでるアリシアは白くなっていた。まあ、俺達もここまでスムーズに仕事が進むとは思ってなかった。全てが異常な領地だが、良い領地になるのは確定だろう。

 来るまでに色々な機材や、明らかに農民には大きすぎる家が並んでいたのは気にしない。確か2階建てで、子供部屋もそれなりにあるそうだ。平民で子供が一人部屋とか珍しいんだがな。

 まあアリスティアにも考えがあるのだろう。


「まず領主館は大体完成。将来的に伯爵になっても問題の無い出来。良い職人が集まったお蔭。

 畑も完成したし、道の舗装ももうすぐ終わる。水路は現在近くの川に水門を設置中で、排水路等の整備もそれほど時間は掛からない」


「随分早かったな」


 普通はそこまで早く終わらない。


「姫様すげえや! あっという間に基礎を作ったり畑や水路を作っちまう。俺達の知らない建築法も知ってるし、道具も一級品だ。これだけでも参加したかいがあるぜ」


「それはあげる。改良点だけ報告してくれればいい」


「流石姫様だ」


 何やら工具の引き渡しも行っていたようだ。本当に色々作ってるな。自動で釘を打つ道具や、多くの魔道具……あれだけでかなりの金額だが、本人が遊びで作ってた物だろうから問題ないのだろう。寧ろ使わせて改良点を探しているんだろうな。アリスティアの創作の基本だ。最初は問題が有っても改善して使い易くする。


「ま、まあ良いだろう。それで幾つか用途不明の機材の事を聞きたいのだが」


「まだ15分休憩が残ってるから分身に任せる」


「俺パパだよね! 国王だよね?適当過ぎない」


 俺泣くぞ。


「大丈夫大丈夫。殆ど私だから」


「殆どなのか」


 俺から見たら目以外に違いが分からないのだが。


「私も分かりません。並べばどっちが本物か分かるのですが…一人で居ると本物なのかは」


 それはそれで凄い。アリシアが泣きそうな顔でギルを見てる。見分けられないんだな。悔しいんだな。羨ましいんだな。アリシアはアリスティア大好きだもんな。


「どうにもブレが出るみたい。継承魔法も術者次第だから変質したのかもね」


 分身は既に廃れた継承魔法だ。多くが謎に包まれた魔法で、エイボンもほとんど分からないらしい。数万年前の古代に存在した魔法なので仕方ない。

 どうやら個体で性格等に変化が出るらしい。暴君だったり怠惰だったりマッドサイエンティストなる者だったり色々なのだとか。

 その後、色々な機材の話を聞いたが俺にはよく分からなかった。畑を耕したり、稲を植える機械等、多すぎだ。

 ギルは真顔で「これは量産すべきです! 」と豪語してたので凄い物なのだろう。しかし、俺には分からない。

 畑を耕す?人じゃ駄目なのか……効率が悪いのか、そうなのか。俺も老いたな付いて行けない。取りあえず説明はギルが興味深々で聞いて、それを分かり易く俺に教えてくれる感じで終わった。アリスティアの話は専門的過ぎて分からん!

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