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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
石油だ!蛮族だ!メリケンだ!
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117 授爵④

 集まった貴族の人達はリリカさんをガン見している。リリカさんは物凄い嫌そうだ。そりゃそうだろう。ベクトルは違うが、私も似たような視線を受けて非常に嫌な思いをしているのだ。慣れるしかない。だけど、慣れるより先にマーサさんが青筋が浮かんでいる。薄々感じていたが、マーサさんは愛妻家だと思う。


「さて、転封先の候補地だが……」


 私は手をあげる。良い意見があるぞ~こっちを見るんだお父様。

 しかしお父様はチラリと私を見ると、そのまま視線を外した。お兄様はずっとこっちを見ない。悟ったな! 私が干渉する事を悟ったな。


「国王陛下に無視されるのなら隠居するのもありかも知れない。僻地に引き籠るか」


 ボソっと呟くと、2人がダラダラと汗を流しながらこっちに振り返った。私を無視するからだ。


「そうだな。アリスティアに良い意見があるようだ。聞いてみよう! 」


「そ、そうですね父上。今すぐに聞くべきです」


ひそひそと話してた貴族も、候補地の事を考えてた大臣達もギョっとした顔で静まり返った。私が政治関係に口出しするのは初めてなのだ。

 元々私は政治に適正がある訳でも無い。どうすれば税金を多くとれるかと聞かれたら「国民を増やして雇用を増やす。具体的には知らん」くらいのレベルだ。マダムも「姫様に政治は不可能ざます。国が混乱するざます」と白旗を上げた程だ。何がいけなかったのだろう。《国民3時のおやつ法》は絶対に必要だと思うんだけど。未だに諦めていないぞ。いずれオヤツタイムを普及させてみせる。


「前に解放した…ダードン平原にするべき」


 私とお父様が地竜を倒して解放した名も無き魔物の領域にも開放後に名前が付いた。最初は私の名前を付けられそうだったが、アーランドの歴史に登場する人の名前を暫定的に付けてる。どうせ貴族領になれば名前も変わるから意外と適当なのだ。人も住んでいないから猶更だけど。


「あそこには何も無いぞ。確かに立地は王都も近いが…それはあんまりだろう」


 まあ普通はある程度出来上がってる土地を渡すのが普通だね。代官を置いてる土地もそれなりにあるから。

 でも、あの村人達を行き成り受け入れるとは思えない。流石に文明から離れすぎだよ。絶対に軋轢が発生する。


「そうですな。丁度良いでしょう」


 しかしここで貴族も賛同する。賛同するのは議会の連中だ。どうせ「田舎者には何も無い土地でも与えれば良いだろう」とでも考えてるのだろう。他の貴族や大臣は露骨に眉を顰めてる。流石に非常識だからね。

 マーサさんは既に村を持ってるのだ。変わりが何も無い土地を渡されたら赤字もいいところだ。私は視線でお父様とお兄様を説得する。

 数秒間睨むと、お父様とお兄様も折れた。どうやら任せてくれるようだ。


「良いだろう。あの地も上手く開発すれば子爵領には相応しい広さもある。更に王都も近く、交通量も多い。ダードン平原一帯を転封地とする。異論は無いな? 」


 流石に私の言動に違和感を持った大臣達は何も言わなかった。更に、他の眉を顰めてた貴族も特に何も言わない。確かに街道の拡張とかを行えば十分発展出来る場所なのだ。何も無いのが問題なだけだ。


「では決定とする」


「お父様。将来性が高いけど、バレル準男爵の境遇を考えると王国が潤沢な支援を行うべきだと思う。具体的には私の作ってる魔道具を全面的に導入させたい」


「そうか……分かった。この件はアリスティアに一任する」


 良し、これで堂々と介入出来る。マーサさんとは既に話が済んでるのだ。だけど、王族が一貴族を優遇するのは具合が悪い。痛くも無い腹を探られるのは面倒だしね。

 ここで贖罪と言う形で私が介入するのだ。

 マーサさんは地球の技術を使って効率的な領地開発。私は魔道具の性能実験と改修。結局使ってみないと分からない不具合等があるかもしれないのだ。なので、マーサさんの村と同程度の村が出来るまでは手を貸す。互いに利益がある。 

 無論損害が出れば私が保証するし、家等のインフラもこっちで手配する。王都の大工の親方には顔が利くのだ。どうせ今も大工ギルドでお酒を飲んでるだろう。最近暇だって嘆いてたし。

 周りが納得した顔をしてくれた。流石の私も何も無しの土地を「ほれ開発しろ」とは言わないよ。最も新しい領地に私の影響が入るのを嫌がる人達も居るけど、「じゃあお前が同程度の支援するのか?」とお父様に言われて撃沈。

 授爵は終了した。マーサさんに娘との婚姻を画策してた一部の人も、私が後ろ盾だと具合が悪いのリリカさんの美貌に無理だと判断したのか何も言われる事は無かった。

 取りあえず大量の金貨は私が収納袋を作ってあるので、それをあげる事で持って帰る事になった。王都で新しい野菜等の種や苗を買ったり布とか色々と買うのだろう。


「私はちょっと出かけて来るね」


「何処に行くんだ?」


 謁見が終わると、宰相さんに膨大な書類を渡して私は出かける事をお父様とお兄様に告げる。


「ちょっとオヤツ食べに行く。3時には働かない主義だから」


「そうか」


 お父様とお兄様も私の用事は知ってるので、何も言わなかった。私は定期的にある人物に支援してるのだ。ただ、彼は基本的に敵が多い。なのでこっそりと会うしかない。私がお父様に魔道具を売る事になったきっかけでもある人だ。


「いらっしゃいませ!」


 今日はアリシアさんは外で警備だ。密会の話はアリシアさんも立ち会わない。場合によっては邪魔になる。


「紅茶とクッキー」


「かしこまりました」


 今日はマリの喫茶店と言うお店に来た。銀月と並ぶ私のお気に入りだ。お店も大きいので銀月と違い並ぶ必要が無い。向こうはお店が小さめなので、何時でも人が並んでるのだ。

 暫く紅茶とクッキーを味わってると、後ろの席にローブを着た人が座った。


「お待たせしました姫様」


「最近どう?」


 ローブの男は紅茶を頼むと私に話しかけてきた。何時ものパターンだ。


「頭の痛い事ばかり起こってますよ。一部不穏な動きしてる連中が居るようですが、ドナルド爺さんと共同で押さえてます。しかし、親帝国や反王国主義が蔓延し始めてるのも事実です。

 抜本的な改革をして頂かないと我々も抑えきれません」


 やっぱりか。何処の国もそうだけど、貧困層は無くならない。文明の未熟なこの世界では貧困は死に直結する。だけど、そこから反社会主義が生まれるのは困る。それを彼とドナルド爺さんなる人がある程度の活動を行う事で押さえてるのだ。

 ドナルド爺さんと言う人とは私は会った事が無い。あっちはお父様が支援してる人だから。

 そして彼は元城務めの騎士だ。将来を期待された人だが、スラムの実情を知った時に、義憤に駆られ、騎士を辞めてスラムに住んだ変わり者。名前をマルクスと言う。

 城務めなので私の知り合いだ。辞める時に偶々遭遇して、話を聞いたのが始まり。

 彼はスラムの住民で適性のある人を冒険者になれるように訓練したり、自警団を作って最低限の秩序を作った。犯罪組織の情報を王都警備隊に流したりする事もあるので敵が多い。

 スラムでの立場は若き顔役だ。彼の他にも何人も顔役は居るらしい。


「そう、丁度良い話が有る。私とお父様が解放した土地が新しい貴族領になる」


「羨ましい限りですね。しかし我々は噛むことも出来ませんよ」


「そうとも言えない。300人集めて。家族がある人……出来れば子供が居る家族が良い。子供をスラムには置けない。

 だからなるべく問題の無い人をその領地の領民にする事にする」


 息をのむマルクス。私が既に決定事項として話してるのだ。新しい領主では無く、私が話す。つまり私の意思が介入する領地だと理解したのだろう。


「新しい領地は形になるまで私が支援する。土地は余ってるからスラム民の村も作れるから大きな問題も無い。向こうの領民は問題があるから同じ村に入れる事は多分出来ないけどね。

 問題を最小限にする為に別の村を作る事になった」


 蛮族スタイルのマーサさんの所の村人達は、ある意味スラム民より生活レベルが低い。食べ物に困って無かったのが唯一の救いだろう。


「成程、分かりました。直ぐに募集を掛けます。姫様のご加護があるのならば直ぐにでも集まるでしょう」


「この一件が終わればスラムの事も何とかする。私も何れはスラムを見に行くよ」


「反対です。危険過ぎます」


「見ないと何も出来ない。知らないと何をすれば良いのか分からないよ?まあ方法は考え中だけどね。

 それと今回はパナップ商会に行って。これを渡せば物資を渡してくれるから」


 危機管理として、彼に渡す物資は複数の商会を使っている。どれもある程度の付き合いがあるので『大丈夫』な商会だ。ポンポコ商会が一番仲が良いけど、あそこにばかり利益を上げさせると商人が嫉妬するのだ。砂糖の独占商会のポンポコ商会にはもっと砂糖を供給して欲しいから、もっと大きく成って欲しんだけどね。


「何時もありがとうございます」


「医薬品は幾つか新しいのが出来てるけど、使用量とか間違えないでね。使い過ぎは毒にもなるから」


 私は科学と医学を専攻していた身だ。作る物は魔道具だけじゃない。今も分身達が新しい薬とかも作ってる。魔法薬だけでなく、向こうの鎮痛剤等だ。幾つかの薬の製法もお父様に売り払ってるが、精製に手間取ってるらしい。科学も医学も魔法便りなこの世界では、魔法が衰退したせいで文明化が遅れてる。個人である魔法使いに依存してるのだ。

 そして魔法使いは秘匿主義だから基本的に情報を渡さない。面倒な世界だよ。


「分かりました。新しい医学……魔法に頼らず、個人の努力で習得できるのが素晴らしいですね。魔法使いでも無いのに学べるのは良い事だと思います」


「いずれは医学学校の設立も考えてるんだけどね。アレって凄いお金かかるから」


 医学も薬の開発に金が掛かるのだ。


「そうですね。何時か……何時か皆が自由に学べる世の中になりましょう。

 それではこれで失礼します」


 マルクスは紅茶を飲み干すとお店から出て行った。私は暫くクッキーを味わってからお店を出る。次は大工ギルドだ。親方達が暇を持て余してるだろう。莫大な量のお仕事持っていくよ。

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