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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
大魔導士エイボンと過去
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106 対中央諸国連合③

遅れてすみません。

 今回の襲撃は極秘裏に処理される事になった。幸い他の国の人は城に誰も居らず、隠蔽は可能だからだ。もし、この件が漏れればアーランドの警備関係に不信が発生するから無かった事にされたのだ。無論警備の見直し等で担当は大忙しだし、私にも警備用の魔道具の制作を依頼された。今付けてるのよりグレードの高い物が欲しいらしい。


「ドルム王国はドラコニア国王の呼び掛けに賛同し、同盟を結ぶ事もやぶさかでは無い。但し対等であるのが条件だ」


 最初に言葉を出したのはドルム王国国王、ガゼット・バーラス・ドルムと言う10代前半の国王だ。

 ドルム王国は40年前の帝国戦に敗北し、唯一の穀倉地帯を奪われ、半ば属国状態だった国だ。

 この国は現在山岳地帯しか残っておらず、食料関係が致命的に弱い。しかし、その反面鉱山ではアーランドを上回る国だ。そこから得られるお金で強力な傭兵を常時雇っている。


「しかし、俺達の領土を奪還する事に異議を出さないで欲しい。旧ジルベール公爵領は我々が古来から保有していた土地だ。それを認められるのなら我々はアーランドに力を貸す事を確約しよう」


 ニヤリと笑うガゼット国王。行き成り自分の弱点を出しているが、これは私が欲しがってる物を正確に理解してるな。唯の子供じゃ無い。

 アーランドは超大量の金属を必要としている。それはアーランド国内の生産量を遥かに凌駕するほどだ。向こうも何に使うかまでは分かって無いだろうが、金属の値上がり具合から私が『何か』をしてる事は察してるのだろう。

 更に言えば旧ジルベール公爵はガゼット国王の父親…先代王太子の異母兄弟で、家族であり親友の関係だった。

 ジルベール公爵は領民を一人でも逃がす為に何度も敗北しながら帝国と戦い続けた。しかし、帝国軍の数には勝てず捕縛され処刑された。

 先代ドルム王国の国王は帝国に隷属する事で講和を結んだが、労働者としてジルベール公爵領から逃げてきた人々を帝国に差し出してしまった。

 ガゼット国王の父であるガタール王太子はこれに対し、準備を重ね、1年前にクーデターを起こす。結果先代国王は処刑されたのだが、「反逆者に従う家臣は無い。私は反逆者として全ての罪を受ける」と王太子も自害。その際残ってた直系の王族が今のガゼット国王だ。内部で物凄い反対が起こったが、彼も物心つく前から王になるべく厳しい教育を施されていたようで、直ぐに鎮圧し、王位を継承したのだ。子供だからと侮る人はこの会議場には居なかった。

 更に言えば、金属を全て私に持っていく事も出来ないのがアーランドの現状だ。国内でも使うし、他国に輸出もしている。その分は私も手を出せない。

 もし、そこまで手を出すとアーランド内の貴族が私にちょっかいを掛けて来るだろう。「何故税収が減ってるのですか?」とね。

 例え私が、それを上回る収入を国にもたらしても損失は損失だと糾弾する連中が居る。つまり、アーランドの既存の利益には傷を付けずに更に利益を出さなければならないのだ。材料不足にもなるよね。私は政治家じゃ無いから貴族相手に論戦しても丸め込まれるし。


「お父様、ドルム王国には成るべく譲歩して欲しい。金属が足りない」


「分かった。譲歩出来る範囲で譲歩しよう」


「父上、和の国の戦力やジルビットの商売力も侮れません」


 この会議は3人まで国王以外の部下を背後に置いておける。基本的に大臣や宰相なのだが、アーランドは宰相と私達兄妹だ。私は向こうからの頼みだし、お兄様は次期国王としての経験を積むためだ。

 他の国は財務と宰相と軍務関係を連れてきている。度々耳打ちして話し合ってる。お互いに何処に譲歩できるかを話しながら会談を行ってるのだ。


「私達は商業の国ですからね~関税を何とか…と言ってもアーランドの関税は帝国や魔法王国に比べると遥かに安いんですよね~何を頼みましょうか~ああそうだ。優先的に魔道具を供給して欲しいですね。この国の魔道具は破格の安さで羨ましいですよ~。

 魔法王国だと10倍の値段な上に法外な関税を盗られますからね~」


 ジルビットが元首と呼ばれるジルビット一の商会であるグランデール商会のシルフィさんと言う女の人だ。多分20代だと思う。苗字とかは無いみたい。元々貴族制じゃ無いから仕方ないけど。


「構わんぞ。好きに買って行けアーランドは法外な値段も関税も取る気は無い…製作者本人の意向だ」


「製作者さんですか~きっと凄い職人なんでしょうね」


「後ろに居る娘だ。量産してるのは別の者だがな」


 その量産してる魔法使い達に会った事無いんだよね…だって工房から出てこないし、碌にお風呂に入らないで仕事ばかりだから私は立ち入り禁止なんだよ。何でも凄い悪臭を放ってるらしい。私もそんな所には近寄らない。


「羨ましい限りですよ~一体どうやって量産出来てるのか~私達も知りたいのですよ~魔道具って付与成功率が魔法王国の一等魔道具職人でも4割くらいじゃないですか。でも、流石に教えて貰うのは無理ですよね?」


 魔法王国は魔法使い・魔術師・魔導士・魔道具職人に1~4位のランクが存在するらしい。


「無理だな。我が国の次期主力商品だ。製法は早々出せんさ」


「…ん~まあ、それでいいですよ。私達は安心して商売が出来ればいいのですよ~帝国さんは上納金の値段をあげるばかりで商隊の護衛すらしてくれませんし、してくれても邪魔ですからね。

 魔法王国は私達が魔法使いの少ない国だから露骨に見下す処か関税やぼったくりで商売になりませんから~アーランドが魔道具を量産してくれるなら向こうとは縁を切りま~す。無論私達にも飛空船を売って貰えますよね?ずっと欲しかったんですよ~アレがあると商売が捗りますから~」


 商人に嫌われた国は亡びるんだけど…帝国は…ケチで有名だから仕方ないとしても魔法王国は魔道具の輸出が減っても良いのかな?良いんだろうな。この世界は輸出が無いと潰れる様な国は無いからね。基本的に食料自給率が100%無いと危険と言う考えだし。ドルム王国は30%くらいだけど。因みにアーランドは160%位だよ。連邦のくれた穀倉地帯は豊艶な大地だし、食事も出来ない国だと国内の纏まりすら危ういので、工業と農業と軍事『は』頑張ってる。反面魔法関連が置き去りだったけどね。今は違うけど。


「儂は既にアーランドとは協定を結んでいる。今後も経済・軍事等で協力してくれるのなら何も言う事は無い」


 オストランドとは話がついてるので何も言う事は無いらしい。後ろの貴族が慌てて何かを囁いてるが王様の裏拳を食らった。意外と武闘派?


「我々も同じだ。何時までもアーランドの援助を受ける訳にはいかない。それにアーランドが立つと言うならば我等は恩を返す為にも貴国の力となろう」


 この国は国王から騎士のような国だ。名前をファフール騎士国。100年程前に帝国に攻め滅ぼされるも、曾御婆様が帝国皇帝を打ち取った時に潜んでた生き残りの王族が帝国から国土を取り返した国だ。現在帝国と緊迫状態になってるのだが、向こうがアーランドのお蔭で国を取り戻せたと考えてるようで、アーランドとは良好な関係を持ってる。しかもこっそり武器や防具にエルフの秘薬等を援助して支援している国でもある。

 珍しい親アーランド国なのだが、固い国でもある。別に曾御婆様もファフール騎士国の為に皇帝を討った訳じゃ無いし、援助も帝国に永遠と攻め込まれるのが面倒だからだ。安全保障上の付き合いなのだが、向こうは恩としか受け取らない。最も裏で繋がってた程度の関係から公けの関係に成れるのは向こうも嬉しいようだ。義憤に駆られてるような顔をするシルドレッド国王。背後の家臣も異は無いようだ。

 実際結構強い国だから戦力的には仲間になってくれるのは嬉しい。ファフール騎士国も未だに国土を全て取り戻した訳じゃ無いから、そこにアーランドは干渉しない事で話は済んだ。

 まずはお互いの脅威の排除と奪われた領土を取り戻す事を各国間で同意したのだ。いざ戦争が起こって俺のだ、いや俺のだで争う事を無くすために、お互いにここは自分の国だと主張してる訳だ。

 アーランドは別に性根の腐った差別主義者の国なんか要らないから「どうぞどうぞ」で済ませる事が出来る分だけ楽だよね。私達が目指すべきは北の無人地帯だし。フロンティア精神で開拓を進めれば良い。喧嘩する必要は無いのだ。未開の土地を開拓して国土を広げるのは誰も文句は言えないし、最果てとも言われるアーランドから北方面に侵攻出来る国はアーランド以外に居ないだろう。別格の強さの魔物で溢れてるし。私はいずれそこを目指す。国土なんて先に盗ったもん勝ちだからね。

 残りに小規模の都市国家でもあるザムドとティファニアと言う国家は交通の要所だけど、この2つに関してはいずれ無くなりそうな…何というか存在感が無い国だ。と言うか都市国家だから規模が恐ろしく小さい。その2つは通行税等の関係で調整が済んだ。基本的にどの国も飛空船が欲しい。貿易で稼ぎたい。中央の横暴には耐えれないと言うのが言い分なのでアーランドとしても楽な交渉でもある。互いに相互防衛条約も結ばれるので、帝国などの侵攻にも盾が増えるのだ。この条約が結ばれた事で帝国は半包囲される事になる。旧連邦領を覆う形で殆どの国が隣接してるのだ。何処に攻めても他から攻め込まれる。今まで以上に攻撃し難いだろう…最も兵力ではまだまだ圧倒されてるけどね。


「残りは我が国か。我は飛空船を望む。それも早急にだ。我が国と貴国達とは距離があり過ぎる。交易では多少不利であろう?しかし見返りも用意している」


 和の国の国王…いや帝だった筈。この国のトップは帝であり、名前も帝だ。そう言う風習らしい。遠すぎて余り情報が無い。と言うか極東の果てにある和の国が何故この同盟に参加したのかも分からない。

 帝は背後の部下に指示を出すと部下の人が幾つかの木箱や袋をテーブルに出した。それはこの同盟の為に集まった多くの王達を魅了する物だ。例えば日本刀のような物…お兄様が興味を持ってない…だと。

 例えば漆塗りの見事な木箱に入った小物。どれも繊細な模様等が入っており、このあたりの国では手に入らない物ばかりだ。


「我が国は友好国に贈り物を届ける風習がある。まずはこれらの品々をアーランドに送ろう」


「素晴らしい」


「これほどの細工技術を持っているのか…遠く離れすぎているので武威しか伝わってこなかったのが悔やまれるな」


「これ~貿易品として売れますよ~是非私達にも噛ませてくださいな~」


 物に見惚れるのも分かる。これは確かに良い物だ。しかし、私は目の前の麻袋に目を奪われている。アレは砂糖だ…あれが安定的に安く調達できるのなら王都内のお菓子の値段も下がり、国民のおやつタイムを導入出来るのでは?いや私はおやつタイム制度を導入するべきだと思う。兎に角欲しい!


「お、落ち着けアリスティア」


 お父様に声を掛けられてッハっとなった。どうやらガン見してたようだ。そこの悪戯小僧のようにニヤニヤとこっちを見てる子供の視線は気にしない。気にしない…やんのか!

 ギロリと睨むと噴き出して顔を逸らした。ふっと隣から寒気を感じたので、隣を見るとお兄様が笑顔でこっちを見てた。何だろう?


「何?」


「いや、何でもないぞ。しかし…少しは芸術品にも興味を持って欲しいのだが」


「アレが凄い物なのは理解してるよ。お母様もきっと喜ぶと思う」


「アリスは要らないのかい?」


「私にはまだ早いし…………お菓子の材料」


 ぶっちゃけ前世に何度も見てるし、拓斗の家にもいくらでも有った物だ。私的には珍しくも無い。作れる訳じゃ無いから職人は凄いな~程度だ。


「ホッホ。おなごは甘い物に目が無いのは万国共通と言う事だな。構いませんぞ。我の娘も似たような物だ」


「帝も苦労するようだな。うちの娘はどうにも、そう言う物に興味を持ってくれなくてな。魔法や魔道具の事ばかりだ」


「我の娘は舞の才能に溢れてるかよく分かるぞ。親馬鹿だとは思うが娘を持つとどうも甘く接してしまうものだ…それをあの痴れ者どもが…」


 どうやら和の国は帝国に宣戦布告を言い渡されているようだ。和の国では巫女と呼ばれる職業があり、ヤマタノオロチを封印する要らしい。と言うか存在するんだ…。

 その巫女の現トップが帝の娘さんらしいのだが、帝国の第2皇子の第2妃として寄越せと帝国が要求してきたのだ。帝国は基本的に婚姻関係から外交を始めるけど、脅迫外交だから、アーランドや和の国みたいな軍事国家には通用しない。

 激怒した和の国は即座に拒否。何度も交渉に訪れる使者の余りの横暴ぶりな交渉で遂に使者を斬首刑に処したらしい。

 更にその娘さん、舞姫さんは国民の人気も高く、「帝国討つべし慈悲は無い」と言う世論になってしまったらしい。


「あ~分かるわ~何でアイツ等、人の嫌がる要求しか出来ないんだろうな。帝国に嫁入りさせるとかどんな扱いをされるか分からねぇだろ。うちも同じわ」


「正直亡ぼしたくなるな。数年後に娘の死亡報告が来てもおかしく無い扱いの癖にふざけおってからに…」


 何故か会議室の壁際で立っているアーランドの騎士達も頷いてる。何か共感する事があったのだろうか?

 まあ大きな問題も無く2日程で会議は終了した。取りあえず和の国とドルム王国には即座に飛空船の引き渡しが決まった。お父様もまさか今すぐに引き渡すとは思って無く、ボルケンさんも慌ててたが、私の新魔法により増産スピードを劇的に向上できると説明したら納得してくれた。ぶっちゃけ私が魔法で作る方が遥かに早いし、今は多重存在の魔法を覚えたから分身出来るのだ。私が手伝って月2隻の建造から15隻くらいに増やす事が可能なので飛空船を2隻輸出するのは何も問題ない。どうせ軍用でも無いし。

 こうして帝国は半包囲され、新たな時代の幕が開いた。

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