104 対中央諸国連合①
目が覚めるとアイリスの姿は無かった。
多分アイリスは外に出るのが許されなかったんだと思う。あの魔法は意図しない結果なんだと思う。それはテトの想定外だったんだね。
しかし私は他の事に驚いた。アイリス何やってるの!である。
自分の出自も驚きだけど、他の魂が自分の中に存在するとか嫌なんだけど!しかも何勝手に私を作る材料に使ってるの?早くあの魂を追い出さなきゃ(使命感)確かに自分の中に異物があるとか嫌だよ。まあ異物扱いに出来るのは私の魂の殆どがアイリスの魂を使ってるからだろうけど。
私の中でテトの評価が地に堕ちた瞬間である。勝手すぎるでしょう?本人の同意が無いのに無理やり転生させた上に、勝手はするなとか将来邪神として祀ろうかな?嫌がるだろうな~困るだろうな~やっちゃいたいな~誰も止めないよね?この世界に固定されれば亡ぼす事も出来そうだし。
「アリス~アリスってば!」
「ん?何」
「どうかしたの?昨日から何か考えてるみたいだけど」
現在飛行機で空の散歩中。マーク1では無くマークXと言う練習機だ。後部に3人程座れる仕様で、武装も無い。単に飛行とはどんな感じなのかを教える為の物だ。飛行機自体が自由性のある軌道を取れる。それは飛空船より遥かに自由だ。空軍に戦闘機や爆撃機を配備するには、そう言うのに慣れないといけないのだ。つまりアーランドの空軍は向こうの第二次大戦期の後期程まで技術レベルを押し上げる。
これは師匠とも話しあってる事で、今のままじゃ私の技術をアーランドは生かせない。根幹技術に差があり過ぎるのだ。ネジ一つ作るのも困難な状況である。
「何でもないよ」
「少しは素直になれば良いのにって鳥があんなに下を飛んでる!」
「凄いでしょう」
ふふん。私が本気を出せばこれ以上の物だって作れるんだから。
「落ちないよね?本当に落ちないよね?何か凄いスピードで動いてない?」
「時速で600キロ程度だよ。これじゃ無ければ800キロまで出せるよ。まあこれでも並の風竜より早いけど」
「早すぎて…雲が凄い事に…なってる」
概ね好評だ。ケーナちゃんが涙目になってるみたいだけど、暫くしたら純粋に楽しみだした。これをヤケクソとも言う。
尚、アイリアさんと師匠は地上に置いてきた…!
「ちょっと降りる…エンジンが止まった」
「ちょっと!何か揺れてるよ大丈夫なの」
「問題ない。ちょっとテキトーに作ったからエンジンが止まっただけ。非常用に飛行魔法も組み込んでるから墜落はしない。飛行船のようにゆっくり降りるだけだから」
制作時間4時間程で手抜き制作だから仕方ない。だって人数オーバーで残ってるパーツとかで作った物だし。まあエンジン自体が爆発しても問題ない。安全装置として飛空船と同じく飛行魔法を組み込んでるからゆっくりと降下出来る。
「楽しかった~山より高いんでしょ?また誘ってよ」
「ちょっと怖かったけど…大丈夫なのそれ…煙出てるけど」
「ちょっと…揺れたけど綺麗だったね」
エンジンは完全にお亡くなりになったようだ。これも経験。師匠が勿体ないと言う感じで見てるがまた作れば良いさ。どうせ量産した軍用機も空軍に組み込むから経験を積めるのは良い事だ。
「これはスクラップだね。後で分解するから大丈夫」
「畜生…これ一つで城を建てられるのに…」
未だに飛行機が存在しないこの世界では、飛行機の値段は恐ろしく高いようで、師匠曰く「金で買える物じゃねえ。そして買えれば儲けもんだ」との事。
そこに使われてる技術の殆どが未知の物で、それを解析するだけでも多くの物が得られるらしい。まあ良いじゃんもっと良い物作ろうよと慰めたら軽い!!っと怒られた。
「姫様…少々よろしいでしょうか?」
次は何しようと考えてたらアリシアさんがこっちに来た。どうやら電話…面倒なので電話と呼ぶことにした(原理は別物)してたようで、青褪めた顔をしていた。本国で何かあったのかと私は駆け寄る。
「何かあったの!お母様とか大丈夫なの!」
「落ち着いてください。アーランドは平和です。唯、姫様に至急お戻りしていただきたいとの連絡が来たのです。
どうやら連合の話がかなり大事に成りました。」
ふ~っと溜息が出た。確かにお母様はわんこーずが警護してるし、暗部も付いてるから早々手出しは出来ないだろう。国も王都なら警備隊に暇なわんこーずがジャーキー目的で手を貸してるから大丈夫な筈。クート君が何も言わない時点で問題は無いと気が付くべきだったよ。
さて、落ち着いたのでアリシアさんの話を聞いた。
まずアーランドは帝国の膨張と皇国の横暴に対して連合を結ぶと公式に発表している。予想では集まるのはオストランドを含めた4国と思われてたのだが、合計で7ヶ国が参加を正式表明し、国王が直接アーランドに来てしまったのだ。
まず、これで問題なのは3つある。
一つは参加しないと思われてた3ヶ国が現れた事だ。一つは東の果てに有る和の国。日本っぽい国だ。距離的に参加しない筈だと思われていた。
他の2国は帝国の属国と軍事力が殆ど無い商業都市国家だ。
2つめは国王が直接アーランドに来た事だ。普通なら、まず大使を送る。国のトップが行き成り来る事はほぼあり得ない。
3つめは集まった国王が会議に私の参加を要求したのだ。
これも私には政治的な影響力はさほど無いと思う。技術開発局局長の地位を持ってるが、基本的に部下に当たる人間に任せてる。私は今後書類仕事と大まかな方針だけ示して、残りは自分で開発活動を行うからである。この地位のお蔭で一切の制限が無く活動できるし、それを盾に貴族の横やりも回避出来る。何を作ってもそれが職務で切り捨てられるからだ。
それと空軍のトップも兼任してるが、こっちは軍と呼べる規模じゃ無い。現在は大型飛空船の訓練を行ってる程度だ。まず影響力は無い…筈なんだけど。
「姫様、ご自分の影響力を過小評価してませんか?そもそも連合自体が姫様有っての物ですよ?飛空船を作れる技術を持ってるのは姫様一人ですし、連合のもう一つの目的である、相互貿易には飛空船が必須です。立地的に飛空船が無いと交易出来ない国とかもありますから。和の国は…何で来たんでしょうね?あの国は大陸に興味は持ってない筈ですが…まあ、取りあえず国にお戻りください」
「何時まで?」
「明日の昼までだそうです。出来れば交渉を有利に持っていきたいので戦闘機でお戻りくださいとの事です」
ああ、我が国はこんな物を持ってるぞと無言の駆け引きを行うのね。実際ヘリオスを撃ち落とせる性能だから脅威だとは思うけど…コレ一機…いや、師匠も操縦は出来るから2機か。それだけじゃ大した戦力じゃないんだよね。やっぱり数百機は無いとかっこよさが半減する気がする。空を埋め尽くす様な飛行機…うむカッコいい。
「良いけど王都の外に平らな滑走路だけ作っておいてって伝えて。城の魔法使いでも平らな滑走路位作れるでしょ?最近見てないから知らないけど」
初めてののスタンピード戦以降、修業するとかで会わなくなった城の魔法使い達。いつの間にか私から隔離されてるんだよね。会いに行こうとすると周りが止めるし。何が起こったのやら。
「伝えておきます。それとオストランドの国王様は転移で送りますのでメイドをお借りします。彼女達は先に戻らせますので…一応転移の準備だけはしてください。未だに何が起こるかは分からないので」
「分かった」
王様は大変だね。つい先日にアーランドと交渉を終えたばかりなのに。まあ連合の発表に1ヶ国だけ参加しないのは不味いからね。それに他の参加国とも関税とかで話し合いがあるから。それと私の転移はいざと言う時の逃走手段だろう。流石に護衛は居るけど、前のような襲撃だと、直ぐに逃げろって言われたし。
「もう帰るの?」
「元々禁書を読みに来ただけだからね…エイボン拾ったけど」
尚、エイボンはオストランドの王宮で強欲な貴族と激しい闘争を繰り広げてる模様。
魔導炉がイカンのだ。アレが欲しいとオストランドが騒いでるのだ。エイボンは死んでるのだからあれは我々の物だと主張し、エイボンが「虫けら風情が!」と怒り出したのだ。別にあげれば良いじゃんあんな粗悪品。
「骨が動いててキモイんだけど。本当に持って帰るの?趣味悪いよ」
ケーナちゃんが若干酷い事を言って来るが、あれは私の趣味じゃ無い。変態過ぎると浄化すると脅してるから一応大人しい。まあアリシアさんのスカートをめくろうとして激怒したアリシアさんに殺されかけてたけど。あれは怖かった。
後、お兄様も一緒に送ろう。アリシアさんを後ろに乗せたら乗員オーバーになるからね。お兄様もエイボン関連でオストランドの王宮だけど。
取りあえず私と一緒に帰ると騒いだお兄様は近衛騎士達に縛られて強制的に帰還した。王様も20人程の護衛と共にアーランドの王都に転移していった。
「師匠、そっちの調子はどう。不調は無い?」
「こっちは問題ないな。後はエンジンの精度を上げて耐用時間を延ばせば完成だろう。これと言った癖も無い。こりゃ連中も驚くぜ」
私の乗ってるマーク1複座型は単座に比べると性能が若干低い。元々単座で設計した物を無理やり連座に変えたからだ。なので最高速度で若干劣るけど、置いて行くような師匠じゃ無い。偶に宙返り等を行い、ペースを合わせてくれてる。
「お前の世界は広いんだな。俺達は今まで自分の技術に自信を持ってた…俺達が居ればアーランドは負けねえと思いあがってた。お前が居てくれて良かったぜ。俺はお前のお蔭で自分の至らなさがはっきり自覚できたからな。もしお前が困ったら、俺達ドワーフはお前を助けるぜ。」
「私の世界は基本的にアーランドだけだけどね。他の国がどうなっても知らないと思ってる自己中心的な人間だよ」
今はもう迷いが無い。自分は自分のやりたいようにやるし、護りたい物は全力で護る。失うなんて二度と御免だ。
「そりゃお前が他国の事なんか気にする必要なんかねえや!お前はアーランドの王族なんだからな。
他国の事は他国の王族と貴族が考える事だ」
ガハハと笑う師匠。確かに私が考える必要は無い事だ。この世界は弱肉強食。人権何て無いし、人類の友和など夢物語だ。それを実行出来る程人が成長できてない…向こうの世界でも出来なかったから不可能に近い事だ。ならば私は最大限アーランドの人達の為に頑張ろう。苦手な事はお父様やお兄様に押し付ければ良いのだ。
時間を確認すると昼の10時を少し過ぎた位だった。アーランドの王都であるアルブルドが見えてきた。王都の名前はこの世界の古い言語で「鳥の民」と言う意味らしいが言語が消失してるので真偽は不明。
しかし、相変わらずみすぼらしい。所々外壁にひびが入ってたりと、早急の改修が必要だって要望が出ていた気がするし、少しづつ増えてる王都の住民には狭すぎる。いずれは拡大する必要があるね。
国土大臣のオベントさんが私に良案が無いか聞きに来た事があるけど、私に聞くと遊んじゃうよ?上下水道に都市結界や、魔道具用の魔導炉を設置する未来都市計画を推進してみよう。達成すればアーランドの王都はこの世界で最も優れた都市に成れる筈だし、王都限定になるが、魔道具も今の10分の1の値段まで抑えれる…ふむ、話が逸れたね。
王都の外には見慣れない飛空船が着陸してる。更にその周辺にはテントが立ってる。恐らく王都内の空港的な所に入れなかったのだろう。あそこは2隻までしか飛空船を入れないし。他国にドッグを見せる訳にはいかない。あそこは技術の結晶となってるのだ。
後で増えた飛空船の待機場も建設しないといけないね。
更に、飛空船が泊まってる所からほんの少し離れた場所に地面を均した所が見える。そこに着陸だ。
但し、私は発進できても着陸は出来ない。難し過ぎるのだ。なのでエンジンを止めて、飛翔魔法を発動させる事で超小型の飛空船になるように機体に魔道具を積んでいる。これで安全に着陸出来るのだ。
「ただいま」
「よく戻った。直ぐに協議を行う」
飛行機から降りると、お父様とお兄様が駆け寄って来た。私は直ぐに2機の飛行機を収容するとお父様の後に着いて行くのだった。




