表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
大魔導士エイボンと過去
116/377

100 アイリスの過去 終わりの始まり⑩

「良いの‼」


「別に嫌じゃ無い」


 拓斗の言葉にアイリスの返答はそっけない物だったが、頬は若干赤くなってそっぽを向いている。隣のカールスは思わぬ娘の反応に歯ぎしりをしていた。

 そもそもカールスはアイリスが拓斗に気があるとは思ってなかった。と言うかアイリス自身も考えて無かった。

 だからカールスは拓斗を仮の婚約者にして時間を稼ぎ、祖国と交渉して事態を治める事を画策してたのだ。しかし蓋を開ければアイリスの思いを表面化させただけである。最もアイリス自身は嫌じゃ無いと言う程度の認識だ。まだ幼い心には刺激が強すぎて自分の思いにストップがかかってるのだ。

 しかし第三者から見れば明らかな反応である。


(なんてこったい。これじゃ僕は本当に娘の恋心に火を付けただけじゃないか…しかし僕は20歳になるまではアイリスに手は出させない。まだ子供なんだ……きっと一時的な物なんだ)


 カールスは心地よい妄想で自己暗示をすると正気?に戻る。別に今回の婚約は獅子堂家とフィールド家の利害が一致しただけの物である筈だった。

 しかし、静とリムは察してるが玄斎は別に仮で終わらせる気は無い。アイリスの返答は分からなかったが、拓斗の意思は察してるし、アイリスを孫のように可愛がってる。彼自身そう長くは生きれない事を知ってるので孫にちょっとしたサプライズを送ったのだ。

 別に互いが望むなら婚約は構わない。玄斎が終わらせるべきと思ったのは家同士の無理やりな婚姻だけなのだ。本人同士が望むなら虫除けの為にさっさとくっ付けるに限ると考えていた。


(儂もひ孫が見たいのう)


 上座に座る玄斎は静かに考えていた。多分自分の武道は終わりを告げた。彼にも終わりは近い事が理解出来ていた。

 彼は心臓に病が発覚したのだ。多分保って数年。極度の運動に値する獅子堂流はもう彼の体には耐えれなかった。治療は不可能に近い。もしかしたらアイリスか静かなら時間を掛けて何とか出来るかも知れないが…


(年寄りの為に若い者の時間を浪費する事もあるまい。これが儂の天命なのじゃろう。こんな日々が続くのなら悔いは無いの)





「決まっちゃったんだ」


 舞は拓斗からアイリスとの婚約を聞かされた。既に一度断られた身だ。寧ろよく友達のままで居れただろうと思ってた。

 まさかこんなに早く決まるとは思ってなかったが、拓斗の家柄は知ってるし、恋人=結婚相手の家だ。


「やっぱり駄目だったな。だって勝てないじゃん」


 本当はアイリスを見た時に感じた事だ。表情は乏しいが、人形のように愛らしい。普通に良い所のお嬢様…と言うか中世の貴族令嬢でも通用すると思える。

 しかも本人が資産家でその筋では世界的に知られた天才だ。最も今は趣味に生きてると聞いている。アイリスが家の地下にコンピューター室を作ったりそこで世界的な発明をしたり、衛星を落したり。モモニクの小屋を作った事は知らない。

 確かに公には何もしていない。

 舞はベットに蹲るとちょっと泣いた。断られた時点で無理なのは分かってたし、かといってアイリスに怒るのもお門違いだ。舞はアイリスを友達だと思ってたし、目を離せない妹のような感じで接してた。


「と言うか今までどんな生活をすれば、あんなダメ人間に成れるのよ。せめてもうちょっと可愛らしくしてくれても良いじゃん」


ベット脇に置かれたフォトフレームに映る拓斗と和仁と舞とアイリスの4人で撮った写真のアイリスの額にデコピンをする。確かこれは遊園地に行った時の物だ。

 その時のアイリスの服装は可愛かった。しかしリムが2時間も考えた物だった筈だ。目を離すと直ぐにどっかに行ってしまう。気になる事を見つけると難しい顔をして考え込んで現実に帰ってこない。モモニクに曲芸のような物を教え込む。偶にモモニクが執事に見える事すらあった。(モモニク的には騎士あるいは保護者です)


「大丈夫、最初から分かってた事なんだから…少ししたら何時もに戻る。だからちょっとだけ…」


 多分1・2週間は落ち込んでアイリスの顔を見れないだろう。でも立ち直れる。別に付き合ってフラれた訳じゃ無い‼っと舞は考えを改めた。彼女もアイリスが来てからの生活は楽しかったと認めてるのだ。時間が経てば何時もの皆で楽しい時間に戻れると思ってた……しかしそれが訪れる事はもう無かった。


 アイリスと拓斗の婚約は獅子堂家に結構な動揺を与えた。アイリスの家は彼等からすれば成り上がり。町ではかなりの発言力を持つ獅子堂家の次期当主である拓斗との婚約に反対する者も多かった。しかし玄斎の発言力は絶大で、拓斗の両親も支持してる状況では表立って反対出来ない。

 更にアイリス自身が有名人でもあるのだ。両親も学会で名を知られた才人である。これでは反対派も黙らざるおえなかった。この状況を利用しない玄斎では無い。早急に反対派を説得して、取りあえず認めさせることに成功した。最もこれも危うい状況だが、後は時間が何とかする問題だろう。

 拓斗とアイリスの仲の良さが知られれば本人の望まない婚約を言い出す連中も黙らざるおえない。前時代的な事だが、結局は獅子堂家の金や局地的な名声を利用したいだけの連中なのだ。拓斗の怒りに触れれば将来が危ういと理解出来るだろう。


「と言う訳でアイリス。僕は休暇を取って来たよ。誕生日は何処に行こうか‼」


 カールスはアイリスの12歳の誕生日から3日前の事だった。彼は次の日から1週間程休暇を取ったのだ。最も1週間もカールスに休まれると大変困る連中が半泣きでしがみ付いてきたが、カールスは一切妥協しなかった。元々こういう時には絶対に休むと伝えているのだ。妥協の余地は無い。


「…………パパとママは旅行に行くべき。何時も私の事ばかりで夫婦の楽しみを犠牲にしてる」


「‼」


 カールスの眼が見開くと、一瞬置いてアイリスに抱き付いた。

 まさか娘が自分達を心配してくれるなど…しかも年に一度しかない自分の誕生日を自分達の為に使ってくれと言う等思っても無かったのだ。

 確かにカールスと静は旅行とかに行かない。アメリカに住んでた時は仕事一筋だった。新婚旅行すら行かなかった身だ。


「その後に遊園地に連れて行って」


「OH…」


 但し自分も見ろと仰るアイリス。

 取りあえず3~4日は夫婦で旅行に行き、その後に自分を遊園地に連れて行けと言うハードスケジュールを要求したのだ。

 流石にカールスも苦笑いしたが、娘の思いを無駄にする訳にはいかない。別にそれでも良いかと静と話し合い、獅子堂家の縁を使って温泉に行く事になった。

 拓斗の両親も丁度良いので同じ旅館に行く事も決まり、アイリスは獅子堂家に預けられる事になった。

 流石に夫婦水入らずを満喫して欲しかったのだ。尚運転手はカールスでは無くリムだ。


「どうして私が‼お嬢様の服を選ぶ仕事が…」


「貴女も少し休んでも良いのよ。アイリスは向こうのお手伝いさんに任せるから。一緒に楽しみましょう…それにカールスの運転する乗り物は死神が憑いてるから乗りたくないのよ」


「……」


「僕は悪い事は何もしてないよ‼」


 カールスの悲しい叫び声は無視された。拓斗の両親もカールスの悪運は知っている。彼は乗り物を運転してはいけないのだ。無論運転しなければ、これと言った事は無い。

 アイリスの両親と拓斗の両親。それとリムの3部屋を予約し、彼等は車でそこに向かって行った。

 アイリスは車が見えなく…数キロ先で曲がるまで見つめると、獅子堂家の中に入って行った。

 獅子堂家のお手伝いさんは割と仲が良いし、嫌な人は玄斎が近づけない。少し寂しいと言う感情が湧くが、数日すれば皆で遊園地だ。何時もの感謝の気持ちを両親は喜んでくれたとアイリスは縁側で足をプラプラさせて両親が帰って来るのを待っていた。

 道場で護身術を学んだり、拓斗の自習を見てたり、4日は直ぐに経つ。子供の4日は意外と短いのだ。しかし両親は帰ってこなかった。

 昼ぐらいには戻る筈だ。アイリスは道路の交通状況からそれを察していた。

 しかし日が傾いても車は戻ってこない。無論アイリスは一度も屋敷に戻らない。両親が帰って来た時は一番最初に出迎えるのだと、ベンチを持ち出して待ってたのだ。途中にお手伝いさんが飲み物を持ってきてくれたりしたが、陽が沈んでも誰も帰ってこなかった。


「った、大変です‼」


 隣でのんびりと座ってた玄斎…何時の間に居たのかはアイリスには分からない。の元にお手伝いさんが慌てた様子で駆けてきた。余程焦ってるのか、履物は片方が脱げている。

 そしてアイリスはその先の言葉を理解出来なかった。


「事故で水樹様たちの乗った車が崖の下に‼」

 

 慌てたように話すお手伝いさん。唖然とする玄斎。拓斗はその場に居なかった。

 全ての言葉を理解した後の記憶は無い。

水樹は拓斗の父親です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ