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転生王女の国家大改造 ~無敵な国を作りましょう~  作者: 窮鼠
大魔導士エイボンと過去
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95 アイリスの過去⑤

 アイリスが帰国して半年。アイリスは劇的に成長を遂げていた。

 高校過程も難なく飛び級で卒業し、史上最年少でハーバードに無試験で入学を果たした。どちらも歴史的快挙であり、アメリカでもアイリスの名前は轟いた。

 無論ハーバード側も只で無試験等させない。アイリスには常に高度なテストを行い、それをクリアし続ける事が義務付けられた。

 しかし、アイリスにそんな事は関係ない。アイリスは結果を出す側の人間だった。カールスの育児方針の転換により、人と付き合う事を積極的に行い、多くの研究グループに参加し、相応の結果を残したのだ。

 但し、アイリスの人付き合いは、人の輪に入るだけの事だ。未だに他人と付き合う術を持たないアイリスは、形だけでも親の言う通りにしていた。

 その反面、毎週拓斗や拓斗の祖父である玄斎との関係は続いており、こちらは友好的な関係を構築出来ていた。特に玄斎は毎週ネットでアイリスに将棋や囲碁の対戦を持ちかけたが、ほぼ全敗に近い状態だった。

 獅子堂家は文武両道。玄斎も若い頃は将棋で竜王の座に1年だけであるが在籍した実力者だ。だが、アイリスはコンピューター顔負けの頭脳で玄斎の全ての手を読み切っていたので勝ち目など無かった。

 拓斗も珍しく狼狽する玄斎の姿にお腹を抱えて笑い、一層厳しい修練を課せられたが、毎週のテレビ電話でお互いの近況を報告し合った。

 拓斗から見たアイリスはよく分からない子のままである。この時期になると、アイリスの才能は日本にも届き始め、稀にテレビに出る事もある。最もアイリスが自らテレビ出演等する訳も無いので、主にパパラッチの撮った写真等を紹介する程度だ。そして、その全てにつまらなそうなアイリスの表情が写っていた。

 何故そこまで面白く無い事を続けるのか?何故そんなに頑張れるのか拓斗は未だに理解出来なかった。アイリスの生活は勉強漬けだ。如何に天才とて、身に余る物を習得するのは容易では無い。アイリスの年齢を考えるとどうしても無理をしてるようにしか思えなかったのだ。


 一方アイリスはその才能を生かし、世界初の仮想現実…バーチャルリアリティの実用化を成功させ、世界に名を知らしめる功績を遂げた。

 これはハーバード側が学校内の研究グループに参加するように要望した物だが、アイリスは僅か3ヶ月でそれを成し遂げていた。

 未だ8歳程度の少女はその才能を伸ばし続けていたのだ。更にこの技術を応用する事で義手等の性能も向上できる。脳波を完全に解析出来たアイリスの研究は多くの分野に転用出来る優れた物であった。

 当然アイリスはその年の化学賞の最有力候補に名を連ねた。しかし、ここでアイリスの我慢も限界に達する。つまり面白く無いのだ。テレビに出る為に勉強した訳じゃ無い。周りに賞賛される為に勉強した訳じゃ無い。

 アイリスは全ての賞を辞退した。


「私はそんな物に興味は無い」


 しつこく付きまとうパパラッチに吐き捨てるようにアイリスは言い放った。その目は明らかに怒りに染まっていた。四六時中付きまとわれ、家に居ればチャイムを鳴らし続けるパパラッチをアイリスは嫌った。

 しつこく付きまとうのは、まだ我慢出来る。しかし家にしつこく訪問するのは許さない。家には仕事で疲れて帰って来た家族が居るのだ。更に疲れを溜めるパパラッチはアイリスの敵だった。

 そしてアイリスに付いた渾名は傲慢な少女であった。

 世界はアイリスを認める者と認めない者で別れたのだ。未だにその姿をメディアに出さない少女。才能・実績。全てが揃って尚も表に出ない。テレビでは偏屈な少女と嘲笑される事もあったが、アイリスは自宅に押し掛けなければどうでも良かった。元々テレビは時事系のニュースしか見ないし、自分の事など見る必要性も無い。誰にどう言われても気にもしなかった。




「拓斗~アイリスちゃんから荷物が届いてるわよ」


 暫くして拓斗にアイリスから荷物が届いた。中身は高性能PCと言慣れないヘッドセットである。総額にすると数百億する物だ。何が高いかと言うと仮想現実を体感する装置である。これは未だに1機しか存在しない筈の代物だった筈なのだが、アイリスとカールスが独自に小型化し、拓斗に送った物である。

 尚、本来のデバイスはかなり大きく、初期のPC並の設備を使うのだが…アイリスもカールスも互いに意見を出し、家庭用に何時でも出せる性能と価格を実用化したのだ。量産出来れば数万円程度で買える装置である。しかし、他に存在しないので想像も出来ない値段なのだ。勿論これを然るべき場所に持ち込めば拓斗は億万長者である。

 拓斗は売る事はしなかった。何故なら、それが莫大な財産だと認識出来なかったのだ。

 例えば普通に知り合いから送られた手紙に貼ってある切手を数百万もする物だと思うだろうか?答えは否である。拓斗は興味深々に手書きの説明書を読み指定された時間にログインした。


 そこはアイリスの日本の屋敷だった。どうやらアイリスが作り出した仮想現実は日本をモデルにしてるようだ。拓斗はそこにポツンと一人で立っていた。そして、目の前に光の粒のような物が現れる。どうやら少し早かったようだ。そして、光の粒は2つに集まり、2人の体を構成する……そして拓斗の思考は停止した。現れたのは裸の男女…と言うより裸の親子だった。


「ああ…アリ…アイリス‼」


「ん?どうしたの?」


「NOOOOOOOOOO‼アイリス、失敗だ‼服を生成し忘れてるよ‼と言うか女の子なのだから恥ずかしがって、そこの変態に鉄拳制裁しなさい」


 直ぐに状況を察したカールスがコンソールを呼び出して、超高速でキーボードのような物を打ち込むと、直ぐにアイリス達に服が出現した。尚、拓斗に渡されたデバイスには体をスキャンする機能は存在しないので、予めアイリスが作った精巧なアバターである。なので拓斗は服を着ていた。しかし、カールスは初歩的な事を忘れていたのだ。

 無論アイリスの方もカールスが用意してる物だと思ってたので何もしていなかった。

 そしてアイリスには羞恥心も存在しなかった。


「なんか変…データの構築がおかしい」


「アイリス、いくらパパでも直ぐに着心地の良い服は作れないよ。後で幾つか作るから調整しよう………所で少年。君は何も見ていないよな?もし見てたら僕は何をするか分からないよ?」


「な、何も見てませんよ‼」


 ばっちり見た処か、しっかり脳内保管した拓斗だったが、仮想世界上でも分かるほどの殺気を放つカールスを前に正直に話せる度胸は拓斗には無かった。


「所でこれって本当にゲームみたいな物なのですか?何か凄い自然な感じなんだけど」


「空も飛べるし、ゲームを作ればドラゴン退治も出来る」


「そう言えばゲーム会社が動いてるね。気の早い連中だ。販売されるの何か相当先になるのにね」


 本来小型化を成し遂げるのに数年掛かる筈の技術はアイリスとカールスと言う天才2人が化学変化を起こす勢いで成し遂げていた。

 と言うかぶっちゃけこれが発覚すると周りが五月蠅い。勝手に先端科学の結晶を他国に輸出したような物なのだから。

 しかしアイリスはカールスの娘である。カールスは自分の発明品や発見にはきっちり特許を取るので、アイリスも同じく、この技術には特許を取っている。つまりこの技術は彼女の物であった…まあ駄目な物は駄目なのだが。


「次からはここで会う。電話より便利」


「爺ちゃんも喜びそうだね。それにアイリスが日本に居た時を思い出して楽しそうだ」


「ミニゲームとかも作れるから色々出来る」


 確かに凄い技術なのだが、どうにも拓斗の想像の出来る範囲外に有るので、拓斗は割と冷静だった。人には認識出来る限界があるのだ。


「所で少年。この世界にはハラスメントコードが有るので気を付けなさい。もし、娘に何かしようものならアズカバン送りにされるだろう。僕は映画を30回も見ている。本物に等しい牢獄を用意しておいたよ。気を付ける様に」


 何やらドヤ顔で語る父親が居るのだが、拓斗はアイリスの手を取って日本の屋敷を探索に出てしまったので、そこには誰も居なかった。

 まさか娘に置いていかれるなど、考えもしなかったカールスは少し落ち込むと、コンソールを呼び出して色々と弄り出すのだった。カールスは凝り性なのだ。


「すげぇ、何処もかしこも本物と同じじゃん!」


「拓斗と探検したから全部覚えてる」


 データで構築された屋敷はほぼ全てが本物と同じだった。

 壁の自然な模様や、石像の表情など、何処を見ても現実と変わらない世界。ある意味アイリスは世界を作ったとも言える。因みに時間が無かったので、この屋敷以外には何も無い。いずれは拓斗の家も作ると言うと、拓斗も喜んだ。

 しかし、元々散策し尽した屋敷を巡っても面白味は少ない。アイリスは出不精なので、屋敷は地下室まで散策済みなのだ。結局30分程でカールスの元に戻って来た。


「どうだったアイリス」


「精巧に作り過ぎた。違和感が無い」


「そうだね。僕も君の記憶力には驚きだよ」


 この世界は全てアイリスの記憶から出来ている。屋敷の細部まで記憶してるアイリスの記憶力は確かに驚異的だろう。実際アイリスは覚えようとしたことは全て覚えている。数年前に目の前でカールスが転んだ数すら覚えているのだ。

 戻って来たアイリス達の目の前には豪華な食事が用意されていた。カールスがデータを弄って用意した物だ。

 これは味覚こそ再現出来てるが、満腹感などは満たせない所詮データの塊だが、味は良かった。


「ふむ、やはり満腹中枢は刺激出来ないのか。しかし、これを弄ると餓死者が続出するな。ここは手を加える必要は無いだろう」


「寧ろラグの方を何とかする。誤差が微妙に有る」


「何だって‼僕は感じなかったが…少し最適化が必要だね。現実と同じ程度に動けなければ意味が無い。帰ったら調整しよう」


 流石に進歩したPCでも回線には限界もあるし、PCもかなり容量を取られる…と言うか無理に使用してるので、ほぼ専用にしなければならない。デバイスよりPC代の方が高いだろう。


「じゃあまた来週」


「これって普段どうすれば良いの?」


「偶にゲームとか入れとくから好きに使って良い。おじいちゃんの分ももう少ししたら送るね」


 そう言ってアイリス達はゲームの世界から現実に戻って行った。

 

  そして2年後アイリスは日本に移住してくる。

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