00 転生
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ここは何処だろう?
自分は真っ白な空間に居た。そこは何も無い、自分を見てみると自分も体が無くふわふわと漂ってる感じだ。
―やってくれたね―
誰かの声がする。自分はそちらを向くが、誰も見えない。そこには何も無い空間が広がっていた。
もしかして気のせいだったのかな?
「誰?」
自分は問い返してみる。
―誰でも無いよ、それより自分の事分かる?何か覚えてるかな?―
自分はフルフルと首を振るが、そう言えば首が無かった。霊魂?みたいに丸いしね。
「何も分からない僕?私?は誰?」
―ふむ、成功だね。まあ一言で言えば君は死んだのさ―
え?死んじゃったの。何で?と言うか自分は何も覚えてないよ。
―君に話が合ってね、ああ記憶は既に消してあるから無駄だよ―
「何で記憶を消すの?貴方は誰?」
分からない。自分が何だったのか、名前や性別だけじゃなく家族や周りに居たであろう人達の記憶が一切ない。それは私を私として構成する物が何も無いと言う事だ。
―君はねえ運命を乱したんだ。本来君が死ぬのはずっと先で、多くの家族に看取られ穏やかに死を迎える筈だった。でも君は18歳で死んじゃったんだ―
自分は18歳で死んじゃったんだ。
「自分が何かしちゃったの?」
―悪い事じゃないよ、君は車に轢かれる筈の小さい少女を助けて、代わりに轢かれてしまった。本来あの子はあそこで死ぬ筈だったんだよ。まあ安心していいよ。
あの子は君の代わりに君が歩む筈の未来が与えられたからね。成長して結婚して子供を作り、子供や孫に看取られて死ぬと言う未来がね―
へーそうなんだ。自分は悪い事もしてないし、誰かを助けられたんだ。
「よかった」
―まあ君は良かっただろうけど、こっちは大忙しさ。でも自分の運命をこんな風に変える君がこのまま消えるのは可哀想だと思ったんだ―
この人?は何なんだろう。自分は目が無いのに、周りが白いとか何も無いとか分かるのにこの人が何処から話してるのかも分からない。そもそもこの状況自体が異常事態なのでどうすれば良いのかも分からない。
「貴方は誰ですか」
だから自分は正直に聞いてみた。
―さっき言ったよ。誰でも無い。僕達…いやもう僕だけだが、僕を定義する物が無いんだよ。昔は仲間も多かったけど、僕達は曖昧な存在だからね。人間に定義されるとソレになってしまうんだ。例えば神や悪魔とかね―
「悪魔なの?」
―それは君達が作り出して、僕等に押し付けた幻想さ。
この『世界』には神や悪魔なんて居ないんだ。僕達はこの世界の創造と維持に関わったからよく知ってる。この『世界』には人間しか居ないし魔法も無い。そして本来死後も無いんだけど、こうやって偶に介入はする―
そうなんだ。でもスケールの大きい人?だね創世に関わるとか自分にはよく分かんないや。
「自分はどうなるの?」
分からない事はとりあえず置いといて、本命を聞いてみよう。このままじゃ、話が進まない。
―ああそうだった。その為に呼んだんだったね。まあ君には転生してもらうよ。
この世界には無理だけどね、本来転生なんてシステムは無いし、同じ世界に転生させたらどんな不具合が出るのか僕にも分らないから、所謂異世界に行ってもらう―
「いいの?自分でルールを破っても」
自分が運命を乱したせいでここに居るらしいけど、自分は何も覚えてないので未練も何もないなのに、自分の為に世界の理?に干渉していいのかな。普通はここで消滅させるべきじゃないの?どうせ記憶も無いから未練も無いし。
―構わないよ。君が居た世界は既に僕等の加護が無いし―
加護?何かわからないけどこの人?は言ってた。自分達は神にも「定義」される人達?だって。そんな存在が加護をしないって事は世界が滅ぶって事なのかな
―まあ君の考えてる事は読めるから反論するけど世界は壊れないよ。まあ自滅する可能性は出るけど、僕は世界が崩壊しないよう色々とやってたからね。
もうしないけどね―
「何かあったの?」
少し寂しいって感情が伝わってきた。
―いいやあそこの住民は自立したんだ。もう僕の存在は要らない程度にね。だからあの世界に対して僕が何かをする事はもうないよ。
そう考えると僕が救うのは君が最後だね。まあ僕が居なくても存在するのが世界だから。
僕らは作り管理し成長を促す。そして自立すれば他の世界を作る。そうして世界を巡るんだ。僕の居なくなった世界は自分で考えて生きていくそれだけだよ―
「じゃあ何で寂しそうなの」
さっきから寂しいって感情がひしひし伝わって自分も寂しくなるよ…
―僕はこの世界が気に入ってるからね。それは君に依頼したい事にも関係するよ。どうか僕の作った世界を変えて欲しい―
世界を変える。世界を作れるのに?
「自分でやった方が早いし確実では?」
自分には多分何の力も無いんだろう。有ればここには居ないでしょうし、死んでも無い筈だ。何が理由で死んだのか分からないけど。
―僕は世界に直接関わらないんだ。もし何かに定義されれば、世界の創造もできない。その世界に囚われその世界の理になってしまう―
うーん。よく分からないけどこの人?は世界は作るけど介入はしないらしい。でも自分の居た世界じゃ色々やってたんじゃ…
―僕はね、人が好きだけど世界を作る使命が残ってる。君の世界に介入してたけど危うく定義されかけてね。だからもう介入はしないんだ―
まあもう一度生きれるのなら、お願いを聞いてみるのも良いかもしれない。拒否する理由も無いし、もう一度生きれるのなら悪い話では無い。出来る事だったらの場合だけど。
「いいけど、余り難しい事は多分出来ないよ」
自分には力が無い。だから出来る事はしてあげると言うと、その人?は笑ったようだ。
―ありがとう。と言っても難しい事じゃない。君がその世界で唯生きてくれればいいんだ。君の記憶は消さないといけないから消したけど、知識は残してる。そして君の行く世界はまだ幼い。まあ世界の年齢は地球より遥かに古いけどね。
そこで君は何らかの影響を与えてくれるだろう。出来れば僕の作った種族を救って欲しいけど、そこまでは望まないし、君が例え自分以外を排除したりしても僕は怒らないよ。
ありのままで生きてくれ。それが世界の為になるから―
「種族?」
―まあ所謂剣と魔法の世界だね。色んな種族を作ったんだけど、何故か人間…まあ向こうでは普通の人、つまり普人と呼ばれてるね。その普人が他の種族を見下して排除しようとしてる世界なんだ。君はそこに人間として生まれる。君の魂は人間だから他の種族になれないし、無理やり他の種族にしたら知識も消えてしまうからね―
面白そうな世界だけど、多分治安とか良くないだろうな~と自分は考えたりする。と言うか他の種族になれるんだ。って知識まで消えたら自分はもう別人になっちゃうよ!
「多分見下したりはしないよ。むしろ仲良くなりたい!!」
―誰かの為に命を捨てた君に頼むのは忍びないが、よろしくお願いするよ。
生まれはランダムだけど僕の加護をあげるきっと君の助けになると思うから―
そう言うとその人?の気配が消えていく。そして自分の意識もそこで途絶えた。
享年を変更しました。6/14