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節分ラプソディ

 シェリアとファレルが出会ったのは青空学級の訓練所での事。無茶な訓練方法したシェリアをファレルが怒って辞めさせた時。二人は気まずい気持ちのまま、その日の夜キャスリングで再開した。

 二人の仲を心配したひりょの仲裁も会って、二人は仲直りをして、より親しい関係になった。その時からシェリアはファレルを意識していたのだろう。

 修学旅行を二人きりで行く提案までして、了承された。それなのにどうもファレルの態度が曖昧で、友達以上恋人未満のまま時間は過ぎて行く。


 2月3日。その日凛は外出しており、ルナも店には出ていなかった。芽楼が開店準備をしていると、開店一番に訪れたのはひりょだった。


「どうやら開店早々の来店になったようだな。お邪魔します。睦月さんコーヒーもらえますか?」


 ルナがいないために、珈琲に詳しくない芽楼は普段店では出さないとびきりのキリマンジェロをひりょに出す。あとでルナが知ったら顔を青くするような高級品だ。


「こんばんわ~です。今日も遊びに来たです」


 ひりょに続いて現れたのは、着物姿の小柄な少女映姫。6日前にキャスリングに初めて来て以来、気に入ったのか毎日顔を出している。今日も楽しそうだ。

 その後シェリア、明日奈、ファレルと続々と客が集まり賑やかになり始めた。

 今日は節分という事で、節分関係の話題でほのぼのとしていたはずだったのだが……。ファレルがダイス目で引いたフルーツタルトを、映姫がじっと見つめた所から話題が変わった。


「そのフルーツタルト美味しそうなのです~。一口食べさせて欲しいのです~」

「ん……? ……いいぞ?」


「一口だけでいいですよ~。ではいただきますです~。やっぱり甘いものは最高なのです~」

「なんか甘いもの食べてるときの映姫さんって結構可愛いよな」


 そんな映姫とファレルのやり取りを面白くない気分でシェリアは見ていた……。自分が食べたお菓子を食べさせて、その上可愛いだなんて……。嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。


「ん~シェリアさんいる前でそういう台詞はどうかと思うがなぁ」


 ひりょがさりげなくそう言ってもまったく通じてない、鈍感なファレル。芽楼も他の従業員もみんながニヤニヤとこの恋の模様を見守っていた。

 無邪気に見えた映姫がぼそりとシェリアに向かって言う。


「これぐらいやらないとおとせませんですよ~」


 挑発を受けて黙っていられるシェリアではなかった。


「くっ……そ、それくらいわたくしだって……! ファレル。そのフルーツタルト、わたくしが食べさせてあげますわ。さあどうぞ。遠慮なさらずお口を空けて? はいあーん……」


 シェリアはファレルのフルーツタルトを取り上げて無理に食べさせようとする。ファレルは慌てて逃げに入った。


「えっ!? い、いいよ。自分で食べられるから」

「遠慮なさらないで。さあ!」


 なかなか落ちないファレルと、諦めないシェリア。どちらが根を上げるかの根比べになってきた。ファレルが周りに助けを求めても、やっぱりニヤニヤと見守るだけだった。


「何を騒いでいるのです! こっちを見なさい。わたくしだけを見て。さあ! このフルーツタルトを食べて……」

「ちょっ……マジで勘弁! 恥ずかしいんだってばっ!」


 あまりに往生際悪くファレルがいつまでも抵抗し続けるので、シェリアの方が元気がなくなってきた。


「……もう。そんなに嫌がらなくてもよろしいじゃありませんの。まるでわたくしが悪者みたいではないですか」


 いつも強気なシェリアのしょんぼりとした姿に、ファレルはとうとう根負けした。


「くっそ……。……わーったよ。降参だ。大人しく食うよ。ったく……」


 小声で「落ちた」と言いながら、シェリアは黒い笑みを浮かべた。


「最初から大人しく食べていればいいのですわ。ふふ、それでは気を取り直して……あ~ん――」

「はぁ……あむ……は、恥ずかしい……」


 不服そうに恥ずかしそうに食べながら、他の客にむかって愚痴をこぼす。


「まぁ、恥ずかしいしな……。今後は勘弁してもらいたいもんだな……。彼氏彼女の関係ならともかく、俺たちって友達同士だからな」


 シェリアとファレル以外の客は、ファレルの鈍感さにみんなして盛大にため息をついた。それでもこれをきっかけに二人の仲が進展すればと願ってもいた。


「ふふ、照れるなんて可愛い。もう一口いかが?」


 シェリアはあ〜んができてご満悦のようだ。ファレルの愚痴など気にも留めてない。

 二人の甘々な雰囲気のまま2月3日という日が過ぎて行くのかと思われたが……、この日のキャスリングはまだまだ終わらない。

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