第八話 遠足は洞窟へ
第八話 遠足は洞窟へ
それからは万事がこの調子である。
僕には幸運が訪れ、僕に嫌がらせをしようとする人にはもれなく不運が訪れる。
夏休み直前の暑い日、期末テストも終わったので、今日はみんなで涼しい洞窟に遠足だ。
昔はダンジョンだった洞窟で、踏破された今は雑魚魔物すらほとんど見かけない。はずだった。
しかし、ここで僕達の幸運が斜めあさっての方向に仕事をする。
炎天下の遠足は、もはや遠足と言うよりも行軍に近い。目的地に着くまでおよそ2時間にわたって歩き続け、洞窟の中を更に1時間ほど歩いて鍾乳石の美しい広場に出る。そこが目的地なのだが、幸運以外は12か11のステータスしかない僕は、洞窟に着くと同時に体力の限界を迎えてへたり込む。
「頑張って、ラーク。
後は洞窟の中を少し歩けば目的地よ」
同じく疲れているはずのフォーの励ましの言葉が凄く遠い気がする。
しかし、ここでのんびり休むことを許してくれる程、僕らの学校は甘くない。
「分かったよフォー」
僕は重い腰を上げてなんとか立ち上がると洞窟の入り口へと向かう。
疲れた足を気合いで動かし、洞窟入り口にたどり着いた。
入り口は大人3人が並んで通り抜けられるくらい広く、そこから先は緩く下っている。
魔法の光で中はそこそこあくるく照らされており、石灰化した床が光を乱反射して美しい。
「滑らないように気をつけて進め」
引率の先生が大きな声で注意を喚起している。
「枝分かれしている細い道に入り込むなよ。
中には未発見の洞窟もあるんだからな」
中の美しさにはしゃぐ子供たちをたしなめる引率の先生たちだが、入学して半年もたたない12歳の悪ガキどもには効果が薄い。
景観の珍しさに浮かれた子供たちは、ギャーギャー言いながらあたりを駆け回っている。
僕はどうかって?
察してくれよ。体力の限界に達している僕に、走り回るような元気はない。
ふらつきながらなんとか滑りこけないように注意して、洞窟を進んでいる。
左手に分岐する細い洞窟がある場所に差し掛かったとき、その不幸な事故は起こった。いや、幸運な事故だろうか。
僕より後ろの方で遊び回っていたジャーイたちが、何を思ったか猛烈な勢いでみんなを追い越して駆け込んできた。
そして僕の右側を走り抜けて追い抜くときに、フラついている僕が邪魔だったのだろうか、ジャーイは僕を左へ押した。
「邪魔だー、ラクー!
端によけろよ!」
普通なら左側の壁に手をついて倒れるのを防げばよいのだが、あいにくそのとき、僕の左側はかなり急傾斜の下り坂に見える細い支道だった。入り口は僕の肩幅、高さは僕の腰くらいの子供なら屈めば通れるくらいの洞窟だ。そこに僕は頭から突っ込んだ。
中は薄暗い30度ほどの勾配があるトンネルだった。
僕は滑った。
床がつるつるな上に少しぬれているのだ。
これがもっと別の状況だったら、天然の大きな滑り台に歓声を上げていただろう。
しかし今は、薄暗い洞窟を頭からかなりの勢いで突っ込んで滑っている最中だ。
出てくる声は悲鳴だけだった。
「うわああああぁぁぁぁぁーーーー」
「らーーーーくーーーーー」
僕の悲鳴とフォーの叫びが洞窟にこだまする。
「やべ……」
ジャーイのつぶやきは僕らの叫びにかき消される。
「あんた達、なにすんのよ!まっててラクー私も……」
上で叫んでいるフォーの声が遠ざかる。
ジャバッ
どれくらい滑ったか分からないが僕は浅い水たまりに突っ込んで止まった。
座った状態で胸までしか使っていないのだからまあ、溺れる心配はなさそうだ。
あたりはヒカリゴケが繁殖しているのだろうか、ぼんやりとした光に満たされている。
僕が滑り落ちてきた穴は、振り向いた先の壁にぽっかりと口を開けている。
穴の先から小さく声が聞こえた。
「ラクーーー」
フォーの声だ。
しばらくすると上からフォーが滑り落ちてきて僕の真横で止まった。
何やってんのフォーと思った人は評価お願いします。




