第二話 振り分けの儀
第二話 振り分けの儀
『振り分けの儀』
僕の生まれた世界では、人は皆ステータスを持っている。
12歳までは各自の自宅で普通に成長していればそれほど大きなステータスの差は個人の間にない。いや、ないと言われている。
実際にはそこまででどれだけきちんと生活したかによって若干の差は出てくるのだが、
正直に言うと『振り分けの儀』以降に生じる差に比べれば微々たるものだ。
人々は皆、12歳の春に『振り分けの儀』を行い、自分がこれから進もうとする道で有利になるように、12歳の春に与えられる100ポイントの未配分ステータス値を各ステータスに振り分ける。
たくさん振り分けたステータスほどしっかりと使いこなして鍛えることが出来るため、次の年から20歳になる年まで毎年行われるレベルアップの儀でのステータス上昇度が大きくなると言われている。21歳以降は鍛えることでステータスを伸ばすことはできても、神様から与えられる「レベルアップの儀」ほど顕著な成長はない。
1回のレベルアップで上昇するステータスは、各パラメ-ターごとに0~99の100段階で、運によって上昇度は左右されるが、良く鍛えたステータスほど高い数値が出やすくなるという。
例えば、ほとんど魔法を鍛えていなければ、魔力の数値の上昇度は0~99の内、0や1が出やすく、良く鍛えていれば20以上が出やすい。それより大きい数値はよほどストイックに鍛えていないと出ないといわれている。
しかしそれはあくまでも出やすいと言うだけの話であり、鍛えていなくてもたまたま20ポイント以上上昇することもあれば、鍛えていてもほとんど上がらないこともある。
まあ、数百万人に一人いるかないかのことらしいが……
いずれにしても、伸ばしたいステータスに振り分けの儀で多めに配分するのが定石である。
例えば戦士の職業に就きたい人は、体力や筋力のステータス値を多めに配分し、職人を目指す人は器用さや集中力を多めにする。
魔法職や神官などは、魔力や知力を高めに設定する。
高めに配分した能力は要領よく鍛えることが出来る。
例えば筋力を多めに配分すれば、筋力トレーニングで最初から重いものを持つことが出来るので、訓練の効率が上がるという具合だ。
99以上の数値は出ないのかというと、実はそうでもない。
ステータス値が100を超えると100以上の上昇をすることがあると言うことが分かっている。
伝説では500年前の大英雄と言われたアレクルスが、一度のレベルアップで力が201伸びたと言われているので、もしかしたら200以上延びることがあるのかも知れない。
もっとも、ステータス値が100を超えるには、何かに大きく極振りし、レベルアップの儀を5~6度は経ないと到達出来ないので、実際に100以上上昇を経験した人は少なく、また、いびつなステータスとなるため、それ以外の能力が他の人よりとても低くなり、何かがあったときにとても困ったことが起こる。
過去に筋力に極振りして筋力ステータス100アップを3度も経験した戦士職の人が、体力不足から大怪我をしてしまい、利き腕を切断するという痛ましい事故があったそうだ。
その教訓から、極端な極振りは敬遠される傾向にある。
加えて忘れてはいけないのが、運の数値である。
運は鍛えることが出来ないためか、振り分けの儀で配分したポイントから増えたという報告は今のところほとんど無いらしい。まあ、運を高めに設定したら運も延びると言われているが、他のステータスに比べると後回しにされがちなので、自分の人生を賭けて試してみた人は、周囲では聞かない。
しかも、運があまりにも低いと、何かの拍子に事故に遭ってしまう確率が上がったり、自分にとって都合の悪いことが良く起こったりするらしいのだ。
12歳の振り分け前ステータスは、全項目が10~12程度であり、この初期値のままだと外の世界で最弱のゴブリンやスライムに襲われても死んでしまう。
だからこの世界では、12歳の『振り分けの儀』までは、親が過保護なくらい子供に気を遣って育てているのだ。
振り分けの日の朝、僕はお隣に住む幼なじみのフォーと連れだって教会への道を進んだ。
「ねえ、ラクー。
あなた、振り分けはどうするつもり?」
「やっぱり、バランス型かなって思ってる。
今何になりたいとか特に決まってないから、バランスよく配分しておいて、あとは自分に向いているものが見つかったらそのステータスを鍛えれば、レベルアップの儀でそこそこ上がっていくだろうからね。
それは最初から極振りしている人には敵わないだろうけど、その分他の能力もそこそこになるから、それはそれでいいかなって思ってるんだ」
フォーの問いかけに、僕は今思っていることを正直に話した。
「そうよね。
普通はそうよね……」
「フォーは何かに極振りしてみるの?」
「うーん……
特になりたいものは無いんだけど……」
「何か気になることがあるの?」
「うん、あのね、もし運に極振りしたらどうなると思う?」
「運に?」
「そう、運よ。
もしかしたらとっても幸運になって竹藪でお金を拾ったり、河原の石ころを拾ったら金塊だったりとかするかもって考えたら、普通に割り振るより楽しいかもって思ったの」
「はははっ、それはすてきだね。
けどいくら運が高くてもさすがに石ころが金塊にはならないと思うよ。
それに他のステータスが低いとゴブリンやスライムにもやられちゃうよ。
これから学校に通わなければならないんだから、登校中の弱い魔物くらいは自分たちでやっつけないと、死んじゃうんじゃないかな」
「そうよね。
やっぱりバランス型がいいかな」
そんな話をしていると突然小石が飛んできて僕の背中に当たった。
「いたっ!
誰だよ。石を投げるなんて。
危ないじゃないか!」
僕が振り向いて文句を言うと、近所の悪ガキのジャーイが子分のズールとワールを引き連れてニヤニヤしている。
「やい、オトコンナのラクー!
朝っぱらから何イチャイチャしてるんだ。
お前なんかこうしてやる。
お前達、やれ!」
そう言うと悪ガキ三人トリオは僕に向かって小石を投げはじめる。
「あなたたち止めなさい!」
フォーが制止するが、言うことを聞くような連中じゃない。
「逃げよう、フォー」
僕はフォーの手を引くと教会へ向けて走り出した。
「やーい、弱虫ラクー!悔しかったら戻ってきてみろ」
後ろからジャーイ達のはやし立てる声が聞こえるが僕たちはひたすら教会を目指して走った。




