おまけ
会社の経営者が急逝する。
経営会議が開かれ、後継者について話し合われた。
もちろん自分が選ばれるだろうと思っていた経営者の親族は、後継者が役員の中から選ばれたことに納得がいかなかった。
「本来なら創業者の血筋が会社を継ぐべきだ」
そう考える人たちも少数ながら存在した。
この対立はやがて組織の内部対立へと発展し、長い年月の中で別のグループとして分かれていく。
そして、その確執は何百年も続くことになった。
突然何の話かと思われるかもしれませんが、ニュースでよく聞く
シーア派とスンニ派の対立は、実はこうした「後継者問題」から始まったと言われています。
創業者の血筋こそ正当な後継者だと考えた人たちが シーア派。
役員会の合議で経営者を選ぶべきだと考えた人たちが スンニ派です。
もちろん現在の中東政治は、宗教だけでなく国家や安全保障、石油など様々な要素が絡んでいますが、そもそもの発端はこのような後継者問題だったとも言われています。
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さて、実はイラン人は親日的な人が多いという話を聞いたことはあるでしょうか。
日本ではニュースなどで「イラン=政治的対立」というイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし実際には、日本とイランの関係は比較的良好だと言われています。
理由の一つは、日本が中東を植民地支配した歴史を持たない国だからです。
中東の多くの国は欧米列強の支配を受けた歴史がありますが、日本はその当事者ではありませんでした。
また、日本とイランの関係は政治的にも比較的良好でした。
1992年には当時の皇太子徳仁親王(現在の天皇陛下)がイランを公式訪問しています。
イラン革命後、西側諸国の首脳級の訪問がほとんどなかった中で、この訪問はイラン側からも高く評価されたと言われています。
また日本の文化や技術に対して好意的な人も多く、日本車はイランでも非常に人気があります。
日本のアニメや漫画もイランでは人気があります。
特に『一休さん』はテレビで放送され、国民的な人気を得た作品として知られています。
また『NARUTO -ナルト-』『ドラゴンボール』『ワンピース』などのアクションや冒険作品も、若者を中心に多くのファンに支持されています。
ただしイランはイスラム社会であるため、宗教的・文化的な理由から作品の放送には一定の配慮が行われています。
例えば女性キャラクターの肌の露出が多い場面は修正されたり、衣装が描き替えられることもあります。
また、家族愛や友情、努力といった道徳的な価値観を重視する作品が比較的受け入れられやすいとも言われています。
サッカー人気の高いイランでは『キャプテン翼』もよく知られた作品の一つだと言われています。
こうして見ると、政治の世界では対立や緊張があっても、文化の世界では意外な形でつながっていることがあるのかもしれません。
国民同士の感情は必ずしも同じではない。
こうした点も、国際関係の面白いところかもしれません。
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日本はかつて、イラン最大級の油田であるアザデガン油田の開発権を持っていた。
この油田は世界有数の埋蔵量を持つ巨大油田で、日本企業は当初75%という非常に大きな権益を取得していた。
これはエネルギー資源に乏しく、石油の大部分を輸入に頼る日本にとって重要なエネルギー戦略であり、いわば「切り札」とも言える存在だった。
しかし2001年のアメリカ同時多発テロ以降、中東政策は大きく変化する。
アメリカは「テロとの戦い」を掲げ、イランを「テロ支援国家」として強く警戒するようになった。
その結果、アメリカによる対イラン制裁や外交圧力が強まり、日本企業も事業の継続が難しくなっていく。
権益は徐々に縮小され、最終的に2010年、日本はアザデガン油田から完全撤退することになった。
その後、この油田の開発には中国企業などが参加することになる。
つまり日本は、かつてイランの巨大油田開発に深く関わっていたが、国際政治の影響によって撤退することになったのである。
中東問題は遠い地域の出来事のように思えるかもしれない。
しかし実際には、日本のエネルギー政策や外交とも深く関係している問題でもある。
そう考えると、この地域の歴史を知ることにも少し違った意味が見えてくるのかもしれない。




