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年賀状は見ている —祖母の奇妙な“教え”—

作者: 希乃咲 空
掲載日:2025/12/02

 お店に色とりどりの年賀状が並び始める季節になると、私はいつも、祖母が語ったとある”教え”を思い出す。


 小学生の頃の私は、部屋は散らかしっぱなし、身だしなみにも無頓着という、どうしようもなくだらしのない子供だった。そんな私を見かねたのか、ある日、祖母がこんな話をしてくれた。


 祖母によると、私と顔も性格も瓜二つと言われる叔父は、子供の頃、酷い癖を持っていたという。それは——鼻をほじる癖だ。

 ……それだけならまだしも、ほじった”何か”を、よりによって食べていたらしい。家でも学校でもその癖は治らず、祖母が注意しても全く聞かなかったそうだ。


 ところが、ある年のお正月、その習慣に突然終止符が打たれたらしい。

 元旦に届いたクラスメイトからの年賀状。そこには、あまりにストレートな一言が書かれていた。


「鼻くそうまいか」


 これについて祖母は、まるで昔話のオチを語るように言った。

「悪いことはね、必ず誰かが見てるんだよ」

その声は、不思議なほど説得力があった。きっと、だらしなかった私への、祖母なりのユーモア交じりの戒めだったのだろう。


 とはいえ、祖母はお茶目なところがあるので、この話が本当なのかは定かではない。祖母の作り話という可能性だってある。

 叔父と私は仲が良いが、こんなことをわざわざ本人に確認する勇気もない。叔父は私と瓜二つと言えど、私よりずっと奇行が多い”正真正銘の変人”なので、聞いたら最後、とんでもない返答が返ってきそうで、それはそれで怖い。


 けれど、祖母の言葉そのものは今でも心に残っている。

 悪いことは誰かが見ている。逆に、良いことだって誰かがきっと見てくれている。

 ——年賀状というたった一枚の紙が、人との繋がりや視線をそっと思い出させてくれる。


 だからだろう。今でも店頭に並ぶ年賀状を見る度に、ふと祖母の話が蘇る。真偽は分からなくても、あの時の昔話を語るような祖母の表情だけは鮮明に覚えている。


 今度、年末に帰省したら、思い切って祖母に真相を尋ねてみようと思う。

 もっとも、祖母のことだから「そんな話、したかしら?」と笑って返されそうだが。

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