『ヒらがな村』のヒラガナのうた。
『ヒラガナのうた』
【起】
ヒとつひとつの文字たちが、しずかに目をさました朝。
「ヒらがな村」に住む五十の仲間たちは、それぞれの場所でそれぞれの夢を見ていた。
だけど今日は、なんだか空気がちがっていた。
【承】
ラクガキのように、子どもたちが書いた文字が、川を流れてやってきた。
ラップみたいに音を刻みながら、「コトバってなに?」「オモイってどこからくるの?」と問いかけてくる。
ラ行の仲間たちはちょっと困った顔をして、村の広場に集まりはじめた。
【転】
ガマンできずに、「が」が立ち上がった。
「ガラクタみたいに思われたくない!ぼくらは、ちゃんと意味があるんだ!」
「がぎぐげご」の五兄弟は、少し怒り気味に、でも真剣な目で空を見上げた。
【結】
ナにもない言葉が、そっと風に乗って届いた。
「ナミダも、ナゾも、ナンにもならなくても、君の声が、ぼくの文字になる」
「なにかを伝えるために生まれたのが、わたしたち"ひらがな"なんだよ」
そして村には、またやさしい音が戻ってきた。
この作品は、元毛玉さんの割烹でのやり取りから生まれました(^^)