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プロローグ ~Another~ ライラックの夢の中

また、私ではない誰かの感情が流れ込んでくる。



あの笑顔が、あの声が忘れられない。



『はじめまして、あなたがライラックさんね。


私は学級委員長のアンジュ・ネーロ・イベリス。


編入してきたばかりで不安だと思うけど、

私たちが精一杯サポートするからこれからよろしくね。』



それは乙女ゲームに必ずいる

主人公の恋路を応援するポジションの同級生の女の子。


シナリオ通りに動くキャラクターの一人。


だけど初めてゲーム画面に映った彼女のきれいな白髪、

優しい笑顔が私の頭から離れなかった。


ゲーム内でどんな時も主人公を見捨てない彼女は他の攻略対象よりも私には輝いて見えてしまった。



『またドジやって!

もうおっちょこちょいね貴女は‥。』


呆れつつもその女の子は最終シナリオまで主人公の世話を焼いてくれていた。


このゲームは、大人気乙女ゲーム「六花の聖女と王子様」の第二作目であり、前作から200年後の世界が舞台の「ミオアルフィオーレ」という作品である。




前作は平民であり聖女であるヒロインと王族が

魔王を討ち倒すというものであったが、

今作はそんな聖女と王子が婚約した後に行った政策により社会問題が解消され、差別がなくなった世界であり、乙女ゲームの舞台も年齢関係なく様々な人が通う6年制の学校となっている。




才能を見込まれ、編入試験に合格した孤児院出身の主人公が、学級委員長のアンジュの力を借りながら幼い頃からの夢を叶えるため、そして素敵な男性と結ばれるために日々頑張っていくという物語だが、前作と大きく異なるイベントが一つだけ存在する。



それはこの孤児院出身の主人公には、かつて滅ぼされたはずの魔王の血が混ざっているということが判明するイベントであり、終盤は彼女の暴走した魔の力を一番好感度の高いキャラクターが鎮めてその後結ばれるというものである。



力を鎮めるには愛の力、つまり好感度がある程度必要で、誰にも好かれていないと主人公は大罪人の魔族の一員として一生涯幽閉されるというバットエンドが存在し、その時も彼女への処罰に抗議したのはアンジュくらいだった。



私はバットエンドを迎えたときすらそばにいるアンジュに純粋に人としての憧れをいだいた。


『彼女が潔白なことはずっとそばにいた私が一番分かります!どうか適切な判断をお願いします…!』


アンジュのように優しく凛とした完璧な人になれたらなといつだって思っていた。




真っ白な病室でそんなことを考える


可哀想な女の子が独り。


「アンジュが王子様だったらな‥。」
















「…!!!あんじゅさん…!!」


いつもの夢から目が醒めた私はまた夢の中に出てくる「アンジュさん」の名前を叫んでしまった。



「またあの夢か」




あの「アンジュさん」を想う夢は1年ほど前から繰り返し見ている。



『乙女ゲーム』

この世界には存在しない言葉が頭に流れてきて、

でも夢の中の私はそれを違和感なく受け入れている。


まるで「私」のなかにもうひとりの私がいるみたいで不思議な感覚だ。






「…。やばい急がなきゃ!!!先生に怒られる!」




寝ぼけてて忘れていたけど、今日で私は16歳になる。


16歳になると成人となり、私たちが住まわせてもらっている孤児院では独り立ちできるように名字をもらって、社会勉強のため、孤児院を経営する教会で働き始めるのだ。



そんな大事な日に寝坊なんて我ながら先が思いやられる。



手短に身支度を済ませて仕上げに鏡をチェックすると我ながら可愛らしい顔立ちだなぁとペタペタ触って感心してしまう。


「まあ見せる相手も使う時もないですけどね‥。」


そんなくだらないことを言いながらも先生の待つ教会へ走って向かった。





「サラ・パルモ、


随分とのんびりしていたようだね。」





「せ、先生…!本当にすみません!

せっかくの大事な日に限って‥。

そ、そのとっても良い夢を見ていました。」




「そんな調子で大人の仲間入りをさせていいのか心配になってきたよ‥。」



そうですよね、私も自分が心配です。


いつものように呆れている様子のこの先生は

ファロ先生。

司教様であり、社会へ出るために必要な教養も私たち孤児院の子どもたちに教えてくれる本当に「先生」って感じの人だ。



「色々伝えなければいけないこともあるから、

早速で悪いけどあなたに名字を与えようと思います。」


「…?


 はい!お願いします!」



「あなたの名字は『ライラック』。

貴女のその美しい紫の髪が由来です。

サラ・パルモ・ライラック、

これが今日からの大人としてのあなたの名前となります。」



「ライラック‥?」


偶然だろうか。


でもライラックなんて珍しい名前‥




「本来は16歳になれば教会で働き始めてもらうんだけど‥。だけど、あなたにはムスカルータス国立学園の編入試験を受けてもらいたいのです。」




「…え!?


編入試験ですか?」




思いもしなかった言葉に驚いてしまった。


あの夢は正夢だったのか?



でもそれじゃあ私はあの

頭の中が混乱してぐちゃぐちゃになってしまいそうだ。




「はい、あなたの魔力量に目をつけた学園の理事の方に頼まれて…。

本人の意志は尊重するけど、編入試験を受けてもらえるならその後の借り家の宿泊費や、学費をすべて工面してくれるそうです。


今から1週間後の今日、9時に学園に来てくれるのを待っている


とのことですよ。」


「…。分かりました。」



「教会で働かないという選択をした場合、

私たちはあなたを立派な成人とみなさなれけばいけない。

つまり、ここに住んでもらうことができなくなります。


それでも学園の編入試験を受けますか?」



私はぐちゃぐちゃになっている頭で

考えられなくなっていた。



「急すぎてどうしたらいいか…


でもこの大きなチャンスを勝ち取れるのは今しかないですよね‥。


それに卒業して良い所で働けたら、

私でもこの教会のお力になれますか?」



「サラ…。優しい子に育ちましたね。


私たちはあなたにお金なんか求めてはいませんよ。


あなたたちは私たちの子どものような宝物です。


あなたたちがのびのびと生きているならそれだけで充分なんですよ。」



先生はそんなことを言ってくれるけど、

私はこの編入試験のお誘いがとても重要なチケットに見えてしょうがない。


あの変な夢のせいだろうか、

入学した後のことを考えるとどうしようもないざわつく気持ちが私を襲ってくる。


彼女が本当に出会えたなら、この気持ちの正体がわかるだろう。


なぜかそんな予感がした。



「…。



ファロ先生


やっぱり、私編入試験を受けてみようと思います。


ずっと夢に見ていたんです、


国立学園で過ごすことを。


…恥ずかしくて言えなかったのですが。」


私は1年前から見ていた夢という意味で言ったつもりだが、



「そうだったのか…。



あなたの夢がそうならば、私たちも


あなたの巣立ちを止める理由はありませんね。 


どうにもならなくなったら

いつでもここに帰ってきなさい、サラ。


わたしたちはあなたをずっと愛していますよ。」





…。少し噛み合ってないかな?

でもまあ問題ない!


学園生活に憧れていたのは事実だし。








ファロ先生やほかのお世話になった人たち、

そして孤児院のたくさんの兄妹にまた会いに来るということを約束して私は10年以上お世話になった孤児院を出発した。











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