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第玖話 王都酒呑

 ウツギが王都にある学園への入学を決意してから1ヶ月、ウツギは王都酒吞(しゅてん)へ向かう馬車に揺られていた。


「ええっと都に着いたらまずこの地図に載ってる学園に向かえば良いんだよな」


 ウツギは馬車に揺られながら、王都に着いた際の手順を両親から渡された地図とにらめっこしながら確認している。


「それで学園に着いたらまずアカネさんを頼れば良いって書いてるけど、アカネさん僕の事ホントに覚えてるのかな……ああだんだん不安になってきた」


 ブツブツと不安を口にするウツギに馬車の御者が話しかける。


「大丈夫か坊主?王都にはもうすぐ着くぞ」


「あ、はい、なにせ王都に行くのは初めてのものでして」


「だろうなあ、行動がお上りさんそのもんだしなあ。まあ王都に着けば着いたらでなんとかなるさ。だからその辛気臭ぇ顔をどうにかしな」


「僕の顔そんなに辛気臭いですか?」


「ああ、これ以上ないってくらいにな。っと王都が見えて来たぜ」


 言われてウツギが幌馬車の外を見てみる巨大な白亜の壁に囲まれた都市が目に入ってきた。


「うわぁ、こんなに大きな建物、僕初めて見ましたよ」


「そりゃそうだろ王都なんだからな、さ、坊主都見物は都に入ってからだ。さっさと馬車を降りる準備をしな」


「はい!」


 それから十数分後、ウツギは何事もなく王都酒吞の地を踏む。


「やっぱり都は違うなぁ、何もかもがサカエ村とは比べ物にならないくらい大きい。それに鬼人族だけじゃなくて、人間族や獣人族までいる。」


 言いながら王都の建物を見上げたり、不躾に鬼人族以外の人々を見るウツギ。その姿は正にお上りさんそのものであったが、行き交う人々はそんな人も見慣れたものと、ウツギの事を特に気にかける様子もなく通り過ぎてゆく。


 一通り周りを見回したウツギはハッと正気に戻って、両親から渡された王都の地図を見て、学園までの道のりを目でたどる。


「ええっと、ここが南門だから学園にはこの大通りを真っ直ぐ行けば良いんだよな……よし!」


 そう意気込んだウツギは、学園までの道のりを歩き始め、しばらく歩くとすぐに学園らしき建物を見つける。


「あそこが学園かな?門番さんもいるみたいだし、テントみたいなものまである……ん?テント?」


 ウツギは自身の目を疑い目をパチクリさせたりこすったりする。しかしウツギの目には門の前にテントが張ってあるのが見えた。


「なんでテントなんかが……」


 そうウツギが言った時、テントの出入り口が開けられ一人の鬼人族の女性が顔を出す。


 その女性はスキル研究者のアカネであった。


「アカネさん?」


 見知った顔の出現に戸惑うウツギ、そこでウツギとアカネの目が合った。瞬間、とてつもない速度でアカネがうずきの下へ突撃――駆け寄ってくる。


「ウーツーギーくーん!!」


「わ!!」


 ウツギの下へ駆け寄って来たアカネはウツギの手を取りブンブンと振りまわす。


「ウツギ君久しぶりですお元気にしてましたか?私は元気でしたよ、いやーウツギ君がついに学園に来てくれるなんて私感激で昨日の夜からいてもたってもいられなくて、門の前でテントを張って一拍しちゃいましたよアハハ、ところでウツギ君身長伸びました?そりゃあ一年もすれば身長も伸びるか、今じゃもうすっかりお兄さんですね。ところでスキルの成長具合はどうですかスキルは、スキルはスキルスキルスキルスキルスキルスキル――」


 矢継ぎ早にどころかマシンガンのような速さでまくし立てるアカネにウツギは圧倒される。


「アカネさん、ちょ、ちょっと落ち着いて!!」


 ウツギの必死の訴えにアカネはハッと我を取り戻し、コホンと一つ咳払い。


「失礼、取り乱しました。兎に角積もり積もった話もしたいですし早速入学の手続きに移りましょうか。ウツギ君私の後に付いて来て下さい」


「あ、はい」


 そう言ってアカネはウツギを先導するように学園の中に入って行き、ウツギもアカネを追って行く。


 そしてアカネとウツギは学園のある一室に着くとそこには巨大な水晶版が鎮座していた。


「アカネさんこれは?」


「これこそ我が国の誇るスキル鑑定の水晶版です。これは従来のスキル鑑定の水晶玉とは違いスキル名だけでなくそのスキルの詳細まで解る優れモノなんですよ」


「へぇ~」


「さ、ウツギ君早速スキル鑑定をしましょう。そうしないとウツギ君を正式に入学させられませんからね」


「わかりました」


 ウツギはアカネに促されるままに水晶版に触れるすると水晶版にウツギの保有するスキルが浮かんで来る。


~~~

真名 空木(ウツギ)

保有スキル

ユニークスキル

ケン……同音スキル。ケンの付くスキルの獲得及び成長に補正がかかる。

検索……世界に接続しあらゆる事象を検索することが出来る。

ノーマルスキル

壮健……状態異常にかかりにくくなる

剣術level8

喧嘩殺法level5

見識……見聞きしたものに対する理解に補正がかかる

乾坤一擲……スキル保有者と同程度の戦闘力を持つ者との戦いにおいて補正がかかる

~~~


「すごい……ユニークスキルが2つに増えてるじゃないですか、それに見たこともないスキルまで持ってる」


「そんなにすごいことなんですか?」


「すごいなんてものじゃないですよ!!ユニークスキルを2つ持ってる人なんて世界中探してもそうはいませんよ!!それに剣術levelが8!?これはもう達人のレベルに達してますよ!!」


「でも僕父さんには一度も勝てたことないですよ」


「コガマさんは元Sランクの冒険者です。11歳の子供がそんな人に勝てるわけないでしょう」


「Sランク!?」


 アカネの言葉にウツギは驚きを隠せない。


「そうですよコガマさんはすごい人なんです。だからこそウツギ君のことを任せてもよいと思ったんですよ」


「そうだったんですか」


「兎に角、これでウツギ君の入学は決まりました。――改めまして、ウツギ君、酒吞学園へようこそおいで下さいました。学園はウツギ君を歓迎いたします」


 そう言って恭しく礼をするアカネにウツギは「あ、はい」と何とも言えない気の抜けた返事をする。


「それじゃあ後は制服の支給とか寮の手続きがりますので引き続き私に付いて来てください」


「わかりました」


 そう言ってスキル鑑定を行った部屋を出た時だった。ウツギの目の前を炎のように赤い髪をした少女が通りかかる。


「ツバキ!」


 喜色の混じった声で少女の名を口にするウツギ。その少女は一年前にウツギよりも先に学園への入学を果たしたツバキであった。しかし、ツバキはウツギの事を一瞥するとフンっと鼻を鳴らして足早にその場を後にする。


「アカネさん、あの子ツバキですよね」


「え~とそうなんですけど……」


「どうしてあんな態度を?」


「ツバキちゃんまだ一年前の事を根に持ってて」


 アカネがそれだけ言うとウツギはすべてを理解した。確かにあの日以降ツバキには会うことがなかった。いや、ツバキが村を出発するまでツバキの事を避けていたのは自分だ。ツバキが怒るのも無理からぬことである。


 しかし、


「よし!!」


「どうしたんですかウツギ君」


 それは一年前までのウツギの話だ。


「ツバキと仲直りします」


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