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沖縄・台湾侵攻2025 Hard Mode --Continue  作者: しののめ八雲
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ハラスメント

回想を一度打ち切った花は、隣の席で寝息を立てている中村を見つめる。

(まあ、このコを守れただけでもいいか・・・。)

そう思った花は、再び回想に入っていく。


きっかけは、当分は選挙活動に力を入れる方針になったSONが、新メンバーとの親睦会を兼ね、とある米軍施設に隣接するビーチで清掃活動をした時だった。

午前中に適当な活動をしたら、あとはバーベキューだ。

今回はSONの活動だが、これが久米のNPOが主催する似たような活動だと、「勉強会」への参加を引き換え条件に、「日当」が支給される。

ちなみにその金の出所は、沖縄県からの補助金か、寄付を装った中国からの秘密活動資金だ。


「あれ?」

ゴミ拾いや清掃に精を出していた花は、違和感に気付いた。

近くにいた中村が居ない。ある意味今回の主役である久米達も。

久米は運動嫌いなせいか、あからさまにさぼっていたが、いつの間にやら米軍施設のフェンスに数人で固まっていた。

ああ、そこで何かすることにしたんだと、自分の活動に戻ろうした花だったが、久米達と一緒に中村がいることにも気付く。

良く見てみると、少し揉めているようにも見えたので、花は少しだけ心配になって、彼女達の方へと向かって歩いた。


その少し前。

中村は何気なく、フェンス周辺でごそごそしている久米達に近づいた。

「久米さん達、何してるのー?」

「ああ、これね。」


久米とその友人達のグループは、米軍施設のフェンスにビラを張り付けていたのだ。中村はビラの文言を見つめる。

「沖縄に基地はいりません!」

「環境を破壊する基地にNOを」

そういった内容だ。ただ、ビラを張り付けるだけにしては妙に時間がかかっていた。


中村はビラの貼り付けに、彼女達が使っているビニールテープの巻きつけ方に気付くと、思わず声をあげた。

「ちょっと、ちょっとー!?久米さん何してるのー?そんなことしたら危ないよー!?」

久米達は、カッターナイフの替え刃や、カミソリの替え刃、ホッチキスの芯といった物を一つずつに分解したものを用意していたのだ。

それらをビニールテープに、目立たないように巻き付けながら、ビラを入念に張り付けていた。それで時間がかかっていたのだ。

「だめだよー。久米さんー。これを剥がそうとした人がケガちゃうよおー?」

「え?何が悪いの?このビラには正しいことが書いてあるのに、剥がそうとする連中なんてケガをして当然よ。だから罠をしかけておくの。」

「でもでもー。いくら内容が正しいビラだからって、相手にケガをさせたら駄目だよー。剥がす人は、米軍の人だけじゃくて、仕事を委託された日本の人かもしれないしー。」

「は?何言ってるのあなた?人殺しの米軍に協力して、お金もらってるような人達なんか、ケガして当然。殺されたとしても当然よ。」

「うーん、でも、私だって米軍基地には反対だけど、だからといって、米軍の人達だって同じ人間だよー?殺して当然っていうのは違うと思うなー。」

「・・。あなたしつこいわね。これだけ言っても分からないの?男子に人気があるからって、調子に乗ってるんじゃない?」

「え・・?調子に乗ってるって、そんな・・」


「中村ちゃん、久米さんどうしたの?」

そこへやって来たのが花だった。中村は彼女に事情を説明した。

「うーん。確かに。私も米軍の基地には反対だよ。でも中村ちゃんの言う通り、相手にも親兄弟がいるんだから、久米さん達もやり過ぎだって思うなあ。。。それに今日はそもそも清掃活動が目的じゃん?久米さん達、何もやってないでしょ?」

「ふーん。八木さん、私にそんなこと言っちゃうんだ。あなた、母に少し気にいられてるからって、調子に乗ってるんじゃない?」

「え?なんで?いきなりそういう話になっちゃうの?」


そこへさらに数人の男子メンバーがやってきた。

「どうしたの?何かあった?」

「あ、小田っち。」

「何でもないわ、行きましょう。」

騒ぎが大きくなりそうだと察した久米達は退散した。


その日の夕刻、解散後に花はサークルのリーダーである澤崎拓哉に、事の顛末を報告し、相談した。

だが、澤崎の反応はいつもと異なり歯切れが悪かった。

「うーん。それは確かに良くないかもしれないけど。そもそも悪いのは米軍だしね。それに久米さんのお母さんには、いつもお世話になってるし。八木さんも知ってるよね?久米さんにはこれから頑張ってもらうことだし、八木さんも大人の対応してくれない?」

「それってつまり、久米さんに忖度するってことですよね?」

「・・・言い過ぎだよ。八木さん。・・いったんこの話、終わりでいい?」


花は落胆した。確かに花自身も久米の母のことは尊敬している。だからと言って、その娘に無条件に忖度してしまうのでは、日頃自分達が批判している、与党の世襲政治と同じだと思ったのだ。


夏に解散総選挙が始まるというのが、大方の予想だったが与党は粘り、解散は冬までずれ込んだ。

それでも、SONは自然保護活動に力点を戻すつもりはまるで無かった。


選挙の準備活動と称する動きが夏から始まると、久米は遠慮なく二人に嫌がらせを始める。(ちなみに彼等がNPO群と共に推すつもりの候補は、前田という名前のゴリゴリの反米親中派だった。)

澤崎の言う通り、久米が活動の中心となっていた。その中で、意外にも久米は花と中村に、割と重要なポジションを与えて来た。

だが、それは罠だった。


久米はまず、わざと処理しきれない量の仕事を二人に与えたあげく、必要な連絡を寄越さずに、二人に任せた仕事が失敗するように仕向けたのだ。

そのことを、多数のメンバーと澤崎の前で叱責して曝しものにすると、以後は些細なミスで執拗に責め立てるようになっていった。

久米のやっていることは、典型的なパワーハラスメントの手法。要は虐めだった。


花はまだ耐えられたが、中村は相当に傷ついていた。周囲の人間は最初こそ男子メンバーを中心として、二人をかばおうとした。だが、肝心の澤崎が久米に遠慮して動かないものだから、結局のところ花と中村は、急速にSONの中で孤立していった。

花は負けずに抵抗したが、中村は見かけ通りに打たれ弱いのか、精神的なダメージが急速に蓄積していく。花は何とか彼女を擁護しようとしたが、久米は陰湿かつ巧妙に、二人を追い詰めていったのだった。


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